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「使い魔のカービィ 05」(2007/08/21 (火) 22:14:40) の最新版変更点
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ルイズは意気揚々とミセス・シュヴルーズの『錬金』の授業を受けていた。
それもそのはず、先程カービィの意外な能力を発見し、役立たずではないと証明されたのだ。
カービィのあの吸い込み、風力だけならかなりの物だ。
何に使えるかは未知数だが、色々道はあるだろう。
風っぴきが教室に入ってきたとき野次を飛ばしてきたが、今まで感じていた劣等感を感じずに済んだ。
カービィが凄い力を秘めた使い魔だったことの嬉しさが、ルイズを苛んできた劣等感を上回ったのだ。
(優しくて、特殊な能力も持ってて、珍しくて……最高じゃない! 私の使い魔!)
あとは強ければ……とも考えたが、それは流石に望みすぎだ。
とにかく、自分が理想としていた使い魔より若干劣るものの、カービィは使い魔として申し分のない存在だ。
あの食欲には驚かされたが、その辺はしっかり躾ればきっと最高のペアになれるだろう。
そんなことを考えながらニヤつくルイズだった。
一方ルイズの隣の席では、カービィがミス・シュヴルーズの話を熱心に聞いていた。
真面目に授業を受けているのか、というとそうではない。
ただ単に、カービィは周りの生徒達の真似をしているのだ。
第一カービィに魔法のイロハが分かるはずもなかった。
段々真似をして授業を聞くのにも飽き、睡魔が彼を襲いつつあった。
そんな2人に関係なく、授業はどんどん進んでゆく。
「……と、言うわけで。一年生の時に出来るようになった人もいるかと思いますが、もう一度おさらいしてみましょう」
そう言うと、ミセス・シュヴルーズは石ころをいくつか取り出した。
その動作が気になったのか、夢の世界へ旅立とうとしていたカービィの意識がゆっくり覚醒する。
ミセス・シュヴルーズがルーンを唱え、小さく杖を振った。
するとどうだろう、ただの石ころが輝きだし、光沢ある金属へと変わったではないか。
生徒達から感嘆の声が上がり、キュルケが興奮のあまり立ち上がた。
「ゴ、ゴ、ゴ、ゴォルドですか!? ミセス・シュヴルーズ!?」
「いえ、ただの真鍮です」
「なんだ」
熱を失うと、キュルケはつまらなそうに席に着いた。
「ゴールドが錬金金出来るのはスクウェアのメイジだけです。私はまだトライアングル……って、あ、あなた! 授業中ですよ!」
その声に教室中の視線が一点に注がれた。
授業を真剣に聞いていた者も、居眠りしていた者も、トリップしていたルイズも注目した。
追記しておくと、ルイズは今にも顔から火が出そうだった。
「カービィ!」
「ぴぃよ、ぽよぉ♪」
なんとミセス・シュヴルーズがたった今錬金した真鍮を、カービィがおもちゃにして遊んでいるのだ。
「やっぱりルイズの使い魔だな! やってくれるぜ!」
「主人が主人だからな!」
教室から湧き上がる爆笑。
ルイズは先程の考えも吹き飛び、穴があったら入りたい思いでいっぱいだった。
そうこうしている内にミセス・シュヴルーズはカービィを捕まえ、ルイズの下へ運んできた。
「コホン。ミス・ヴァリエール、使い魔の躾はちゃんとして下さいね?」
「すみませんでした……」
「ぽよ?」
主人が怒られているというのに、カービィは相変らずボケた顔をしている。
ルイズは初めて己の使い魔が恨めしいと思った。
しかしルイズの不幸はまだ続く。
「それでは、丁度良いですね、錬金のおさらいをあなたにやっていただきましょう」
ミセス・シュヴルーズがそう口にしたとたん、教室中が凍り付いた。
生徒達の顔からは血の気が引き、一部机の上を片付け始めた者もいる。
「わ、私がですか!?」「ええ、そうですよ。石ころを望む金属に変えてみなさい」
「あの、先生……やめておいた方がいいと思います……」
ミセス・シュヴルーズがルイズを教壇へ連れていこうとしたとき、キュルケが何かに怯えるようにそれを止めた。
「何故です? ミス・ツェルプストー」
「危険だからです」
キッパリと答える。
他のほとんどの生徒も大きく首を縦に振った。
しかし、昨年ルイズを教えていなかったミセス・シュヴルーズは、生徒達の忠告を嫌がらせだろうと捉えてしまった。
それにこれは錬金の授業、余程のことがなければ危険はない。
そう高を括ったのが彼女の不運であった。
「さあ、ミス・ヴァリエール。失敗を恐れずやってみなさい」
「………はい!」
ミセス・シュヴルーズと共に教壇へ上がったルイズは、杖を石ころへと向けた。
「やめて、ルイズ!」
キュルケが叫んだが、もうルイズは杖を構えていた。
(『サモン・サーヴァント』が成功したんだもの……錬金だって!)
ルイズが自分にそう言い聞かせ、ルーンを唱え始める。
その様子を見ていたカービィは、視界が急に広くなったことに気が付いた。
「ぽよ……?」
周りを見回すが、誰も席に着いている者はいない。
机の下に隠れ、まるで『何か』を怖がっているようだ。
「カービィ!」
「ぽょ?」
カービィが後ろを振り向くと、キュルケが必死で手招きをしている。
その様子から、とても焦っていることが伺えた。
「悪いことは言わないから、早くこっちにいらっしゃい!」
「ぽぉよ?」
言われた通り、席から降りてキュルケの下へ向かうカービィ。
しかし、カービィがあと少しでキュルケの下へ『避難』できる寸前。
教室が爆光と爆煙と爆音と爆風に包まれた。
「ぽよぉぉーーーーー!?」
「あ……遅かったわね」
爆風に飲み込まれたカービィは、教室の扉に勢い良く激突。
頭の打ち所が悪く、そのまま気絶してしまった。
爆心地にいたルイズとミセス・シュヴルーズにいたってはもっと被害が酷かった。
髪はアフロになり、衣服はボロボロ。
おまけに黒板に後頭部を強打し、脳震盪を起こして授業時間中に目を覚ますことはなかった。
「はぁ………」
ようやく目を覚ましたルイズは、1人寂しく荒れ果てた教室の片付けをしていた。
カービィはまだ気絶しており、教室の隅に寝かせてある。
「また失敗……」
カービィの召喚が成功していただけに、ルイズにとってこの失敗は手痛かった。
いつもの失敗ならばこれほど落ち込むこともなかっただろう。
しかし、自分の使い魔を得、自信を持った矢先の出来事だっただけに、ショックも大きい。
(カービィが来たから全部うまくいく、なんて……甘かったのかな………)
人間、一度気分が沈むと、底に辿り着くまでなかなか立ち直れなくなるものだ。
特にルイズは今まで罵られ続けたせいもあり、こういうネガティブになりがちな一面があった。
「はぁ……」
ルイズは何度目か分からないため息をく。
「あの……」
その時、ルイズは不意に後ろから声をかけられた。
どこかで聞いたような声に後ろを振り返ると、シエスタが教室の出入り口に立っていた。
「シエスタ……どうかした?」
「お手伝いしましょうか? ミス・ヴァリエール」
「えっ、でもあなた仕事は……」
ルイズはシエスタからの意外な申し出に一瞬戸惑った。
確かにメイドに手伝いを頼むのは禁止されていない。
だからと言って、忙しいメイドの身である彼女に頼ってしまっていいのだろうか。
しかし、シエスタはルイズに向かってにっこりと微笑んだ。
「少し余裕がありますので、お掃除くらいでしたら手伝えます」
「……また世話になっちゃうわね」
「いえ、私は使用人ですから。お気になさらず」
「……そ、そうよね。あなたはメイドなんだし、当然よね! …………………でも、ありがと」
最後の方は小さすぎて、シエスタには聞こえていなかった。
シエスタという強力な助っ人を手に入れ、片付けの速さは驚くほど早くなった。
さすが現役メイドである、素人貴族とは格が違う。
そして、やっと片付けが終わりそうになってきた頃。
「あの、さっき落ち込んでいたようですが……」
シエスタが急に口を開いた。
しかもルイズが一番触れてほしくない内容について。
「………ええ、また失敗しちゃってね……」
いつもの彼女なら『関係ないでしょ』と怒鳴りつけそうなものだが、今の精神状態では無理があった。
自嘲気味に今日の失敗や、今までもそうだったことを堰を切ったように話すルイズ。
シエスタはルイズが話し終えるまで、黙ってそれを聞いていた。
そしてすべてを一通り聞き終えた後、シエスタはゆっくりと語りかけるように話し出した。
「私のような平民が、貴族様にこのようなことを言うのは厚かましいと思いますが……ここはトリステイン魔法学院です」
「?」
何を言っているのだろうかと、ルイズは作業をする手を休め、シエスタの話に聞き入った。
シエスタもそれに気が付いたのか、同じく手を止め、話しに集中する。
「つまり、勉強できる場所ということです。ですから、『今』は出来なくてもいいんじゃないでしょうか? ここでもっともっと勉強して、『いつか』使えるようになれば。」
「それに、ミス・ヴァリエールはカービィさんを召喚出来たじゃないですか。なら、他の魔法も使えるようになります。いつか必ず。……出過ぎた事を申しました。申し訳ありません、ミス・ヴァリエール」
シエスタは自分の非礼をルイズに詫び、深々と頭を下げた。
貴族を恐れているシエスタがこんなことを言えたのは、魔法を使うことができないルイズに何か近いものを感じたのかもしれない。
だからこんな少し無理があるようなことも言えたのだろう。
しかし、それは決してルイズを卑下しているという意味ではない。
普段の生活から垣間見える努力の姿から、ルイズは立派な貴族だとシエスタは思っているのだから。
「………本当に、そう思う?」
やはり不安があるのか、ルイズは躊躇いがちにシエスタに問った。
シエスタは穏やかな笑みで答える。
「はい。ミス・ヴァリエールなら大丈夫です」
「ぽよ!」
「ほら、カービィさんもそう言ってます」
「そうね……って、いつ起きてたのよ」
「ぽよ?」
「まったくもう……」
今更出て来て美味しい所を持っていった使い魔に苦笑いを浮かべるルイズ。
その顔からは先程の暗い雰囲気は感じられなかった。
「分かったわ、もう少し頑張ってみる! そして私のことをバカにした奴らみんなを見返してやるんだから!」
「その意気ですよ、ミス・ヴァリエール!」
「ぽよ! ぽぉよ!」
やる気も新たにルイズは拳を握りしめ、使い魔とメイドに自分の目標を公言した。
果たして、彼女がこの目標を実現することが出来る日は来るのだろうか。
それは神のみぞ知るところだが、意外にも、それは遠い未来ではないのかもしれない。
#navi(使い魔のカービィ)
ルイズは意気揚々とミセス・シュヴルーズの『錬金』の授業を受けていた。
それもそのはず、先程カービィの意外な能力を発見し、役立たずではないと証明されたのだ。
カービィのあの吸い込み、風力だけならかなりの物だ。
何に使えるかは未知数だが、色々道はあるだろう。
風っぴきが教室に入ってきたとき野次を飛ばしてきたが、今まで感じていた劣等感を感じずに済んだ。
カービィが凄い力を秘めた使い魔だったことの嬉しさが、ルイズを苛んできた劣等感を上回ったのだ。
(優しくて、特殊な能力も持ってて、珍しくて……最高じゃない! 私の使い魔!)
あとは強ければ……とも考えたが、それは流石に望みすぎだ。
とにかく、自分が理想としていた使い魔より若干劣るものの、カービィは使い魔として申し分のない存在だ。
あの食欲には驚かされたが、その辺はしっかり躾ればきっと最高のペアになれるだろう。
そんなことを考えながらニヤつくルイズだった。
一方ルイズの隣の席では、カービィがミス・シュヴルーズの話を熱心に聞いていた。
真面目に授業を受けているのか、というとそうではない。
ただ単に、カービィは周りの生徒達の真似をしているのだ。
第一カービィに魔法のイロハが分かるはずもなかった。
段々真似をして授業を聞くのにも飽き、睡魔が彼を襲いつつあった。
そんな2人に関係なく、授業はどんどん進んでゆく。
「……と、言うわけで。一年生の時に出来るようになった人もいるかと思いますが、もう一度おさらいしてみましょう」
そう言うと、ミセス・シュヴルーズは石ころをいくつか取り出した。
その動作が気になったのか、夢の世界へ旅立とうとしていたカービィの意識がゆっくり覚醒する。
ミセス・シュヴルーズがルーンを唱え、小さく杖を振った。
するとどうだろう、ただの石ころが輝きだし、光沢ある金属へと変わったではないか。
生徒達から感嘆の声が上がり、キュルケが興奮のあまり立ち上がた。
「ゴ、ゴ、ゴ、ゴォルドですか!? ミセス・シュヴルーズ!?」
「いえ、ただの真鍮です」
「なんだ」
熱を失うと、キュルケはつまらなそうに席に着いた。
「ゴールドが錬金金出来るのはスクウェアのメイジだけです。私はまだトライアングル……って、あ、あなた! 授業中ですよ!」
その声に教室中の視線が一点に注がれた。
授業を真剣に聞いていた者も、居眠りしていた者も、トリップしていたルイズも注目した。
追記しておくと、ルイズは今にも顔から火が出そうだった。
「カービィ!」
「ぴぃよ、ぽよぉ♪」
なんとミセス・シュヴルーズがたった今錬金した真鍮を、カービィがおもちゃにして遊んでいるのだ。
「やっぱりルイズの使い魔だな! やってくれるぜ!」
「主人が主人だからな!」
教室から湧き上がる爆笑。
ルイズは先程の考えも吹き飛び、穴があったら入りたい思いでいっぱいだった。
そうこうしている内にミセス・シュヴルーズはカービィを捕まえ、ルイズの下へ運んできた。
「コホン。ミス・ヴァリエール、使い魔の躾はちゃんとして下さいね?」
「すみませんでした……」
「ぽよ?」
主人が怒られているというのに、カービィは相変らずボケた顔をしている。
ルイズは初めて己の使い魔が恨めしいと思った。
しかしルイズの不幸はまだ続く。
「それでは、丁度良いですね、錬金のおさらいをあなたにやっていただきましょう」
ミセス・シュヴルーズがそう口にしたとたん、教室中が凍り付いた。
生徒達の顔からは血の気が引き、一部机の上を片付け始めた者もいる。
「わ、私がですか!?」「ええ、そうですよ。石ころを望む金属に変えてみなさい」
「あの、先生……やめておいた方がいいと思います……」
ミセス・シュヴルーズがルイズを教壇へ連れていこうとしたとき、キュルケが何かに怯えるようにそれを止めた。
「何故です? ミス・ツェルプストー」
「危険だからです」
キッパリと答える。
他のほとんどの生徒も大きく首を縦に振った。
しかし、昨年ルイズを教えていなかったミセス・シュヴルーズは、生徒達の忠告を嫌がらせだろうと捉えてしまった。
それにこれは錬金の授業、余程のことがなければ危険はない。
そう高を括ったのが彼女の不運であった。
「さあ、ミス・ヴァリエール。失敗を恐れずやってみなさい」
「………はい!」
ミセス・シュヴルーズと共に教壇へ上がったルイズは、杖を石ころへと向けた。
「やめて、ルイズ!」
キュルケが叫んだが、もうルイズは杖を構えていた。
(『サモン・サーヴァント』が成功したんだもの……錬金だって!)
ルイズが自分にそう言い聞かせ、ルーンを唱え始める。
その様子を見ていたカービィは、視界が急に広くなったことに気が付いた。
「ぽよ……?」
周りを見回すが、誰も席に着いている者はいない。
机の下に隠れ、まるで『何か』を怖がっているようだ。
「カービィ!」
「ぽょ?」
カービィが後ろを振り向くと、キュルケが必死で手招きをしている。
その様子から、とても焦っていることが伺えた。
「悪いことは言わないから、早くこっちにいらっしゃい!」
「ぽぉよ?」
言われた通り、席から降りてキュルケの下へ向かうカービィ。
しかし、カービィがあと少しでキュルケの下へ『避難』できる寸前。
教室が爆光と爆煙と爆音と爆風に包まれた。
「ぽよぉぉーーーーー!?」
「あ……遅かったわね」
爆風に飲み込まれたカービィは、教室の扉に勢い良く激突。
頭の打ち所が悪く、そのまま気絶してしまった。
爆心地にいたルイズとミセス・シュヴルーズにいたってはもっと被害が酷かった。
髪はアフロになり、衣服はボロボロ。
おまけに黒板に後頭部を強打し、脳震盪を起こして授業時間中に目を覚ますことはなかった。
「はぁ………」
ようやく目を覚ましたルイズは、1人寂しく荒れ果てた教室の片付けをしていた。
カービィはまだ気絶しており、教室の隅に寝かせてある。
「また失敗……」
カービィの召喚が成功していただけに、ルイズにとってこの失敗は手痛かった。
いつもの失敗ならばこれほど落ち込むこともなかっただろう。
しかし、自分の使い魔を得、自信を持った矢先の出来事だっただけに、ショックも大きい。
(カービィが来たから全部うまくいく、なんて……甘かったのかな………)
人間、一度気分が沈むと、底に辿り着くまでなかなか立ち直れなくなるものだ。
特にルイズは今まで罵られ続けたせいもあり、こういうネガティブになりがちな一面があった。
「はぁ……」
ルイズは何度目か分からないため息をく。
「あの……」
その時、ルイズは不意に後ろから声をかけられた。
どこかで聞いたような声に後ろを振り返ると、シエスタが教室の出入り口に立っていた。
「シエスタ……どうかした?」
「お手伝いしましょうか? ミス・ヴァリエール」
「えっ、でもあなた仕事は……」
ルイズはシエスタからの意外な申し出に一瞬戸惑った。
確かにメイドに手伝いを頼むのは禁止されていない。
だからと言って、忙しいメイドの身である彼女に頼ってしまっていいのだろうか。
しかし、シエスタはルイズに向かってにっこりと微笑んだ。
「少し余裕がありますので、お掃除くらいでしたら手伝えます」
「……また世話になっちゃうわね」
「いえ、私は使用人ですから。お気になさらず」
「……そ、そうよね。あなたはメイドなんだし、当然よね! …………………でも、ありがと」
最後の方は小さすぎて、シエスタには聞こえていなかった。
シエスタという強力な助っ人を手に入れ、片付けの速さは驚くほど早くなった。
さすが現役メイドである、素人貴族とは格が違う。
そして、やっと片付けが終わりそうになってきた頃。
「あの、さっき落ち込んでいたようですが……」
シエスタが急に口を開いた。
しかもルイズが一番触れてほしくない内容について。
「………ええ、また失敗しちゃってね……」
いつもの彼女なら『関係ないでしょ』と怒鳴りつけそうなものだが、今の精神状態では無理があった。
自嘲気味に今日の失敗や、今までもそうだったことを堰を切ったように話すルイズ。
シエスタはルイズが話し終えるまで、黙ってそれを聞いていた。
そしてすべてを一通り聞き終えた後、シエスタはゆっくりと語りかけるように話し出した。
「私のような平民が、貴族様にこのようなことを言うのは厚かましいと思いますが……ここはトリステイン魔法学院です」
「?」
何を言っているのだろうかと、ルイズは作業をする手を休め、シエスタの話に聞き入った。
シエスタもそれに気が付いたのか、同じく手を止め、話しに集中する。
「つまり、勉強できる場所ということです。ですから、『今』は出来なくてもいいんじゃないでしょうか? ここでもっともっと勉強して、『いつか』使えるようになれば。」
「それに、ミス・ヴァリエールはカービィさんを召喚出来たじゃないですか。なら、他の魔法も使えるようになります。いつか必ず。……出過ぎた事を申しました。申し訳ありません、ミス・ヴァリエール」
シエスタは自分の非礼をルイズに詫び、深々と頭を下げた。
貴族を恐れているシエスタがこんなことを言えたのは、魔法を使うことができないルイズに何か近いものを感じたのかもしれない。
だからこんな少し無理があるようなことも言えたのだろう。
しかし、それは決してルイズを卑下しているという意味ではない。
普段の生活から垣間見える努力の姿から、ルイズは立派な貴族だとシエスタは思っているのだから。
「………本当に、そう思う?」
やはり不安があるのか、ルイズは躊躇いがちにシエスタに問った。
シエスタは穏やかな笑みで答える。
「はい。ミス・ヴァリエールなら大丈夫です」
「ぽよ!」
「ほら、カービィさんもそう言ってます」
「そうね……って、いつ起きてたのよ」
「ぽよ?」
「まったくもう……」
今更出て来て美味しい所を持っていった使い魔に苦笑いを浮かべるルイズ。
その顔からは先程の暗い雰囲気は感じられなかった。
「分かったわ、もう少し頑張ってみる! そして私のことをバカにした奴らみんなを見返してやるんだから!」
「その意気ですよ、ミス・ヴァリエール!」
「ぽよ! ぽぉよ!」
やる気も新たにルイズは拳を握りしめ、使い魔とメイドに自分の目標を公言した。
果たして、彼女がこの目標を実現することが出来る日は来るのだろうか。
それは神のみぞ知るところだが、意外にも、それは遠い未来ではないのかもしれない。
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