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「ゼロの使い魔・ブルー編-13」(2011/12/23 (金) 00:48:35) の最新版変更点
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ルイズは夢を見ていた。
幼い日の頃の夢……まぁ、外見だけで言えば未だに幼いと言えるが。
夢の中のルイズは故郷の屋敷の中庭の池、そこに浮かぶ小舟の中にいた。
ルイズは、嫌なことがあると、この小舟に逃げ込むのだった。
その中でじっとしていると、霧がかかっている視界に、
マントを羽織った立派な貴族が現れる。
彼は、幼いルイズより10才は年上だろうか?
その男はルイズに近づくと、優しく語りかけた。
「ルイズ、泣いているのかい?」
ルイズは心臓が高鳴るのを感じた。
「子爵様、いらしてたの?」
「今日は君のお父上に呼ばれたのさ。あの話のことでね」
ルイズはそれがなんなのか知っていたので、顔を赤くした。
「子爵様は、行けない人ですわ」
「ルイズ、僕の小さなルイズ。君は僕のことが嫌いかい?」
いつもと変わらぬ口調……?で、目の前の青年が言った。
「いえ、そんなことはありませんわ。でも……わたしにはまだよくわかりません」
ルイズは恥ずかしがりながら言う。帽子の下の顔が笑う。あぁ……この笑顔が……?
あれ?この顔は……
「って、ルージュ?」
「探したよルイズ。こんな所にいたのかい?」
「え、えーと……ルージュこそ、何でこんな所に?」
言うが、答えが返ってくるまえに
遠くから声が聞こえてくる。
「ルージュ、ルイズは見つかったか?」
そういって近づいてきたのはブルーであった。
「ブルーまで、何でここにいるのよ!?」
「俺達だけじゃないが」
「ルイズ、こんな所にいたんだね」
「……アセルスさん?」
いよいよ訳がわからなくなってきた。
だが、更に声が聞こえてくる。
「ルイズ~、こんな所にいたのか?」
「みんな心配してたぞ?」
なにやらツンツンした髪の少年と、
穏和な雰囲気をしている青年が、
よくわからない……ゴーレム?ガーゴイル?
とにかく、よくわからないものを連れてやってきた。
「あ、貴方達誰よ!?」
「酷いなルイズ。俺のこと忘れたのか?」
「ちょ、置いてかないでよー!」
後ろから……あれはタバサの使い魔じゃなかったか?が走ってきた。
え?何が起こってるの?何これ?
「あれ?ルイズ、泣いてたのか~?
なら俺が歌を歌ってやるよ――」
そこで目が覚めた。
がばと跳ね起き、辺りを見回してみる。あの妙な集団は居ない。
自分の使い魔は床で寝ている。
……ルイズは呟いた。
「何だったのかしら……今の……」
「ったく、あいつらは何だったってんだい……」
フーケは呟く。片方は自らの全力を込めたゴーレムを剣で切り裂き、
もう片方もとんでも無い剣の腕で、さらに得体の知れない魔法を使ってきた。
疑問に思うが、もはや彼女にとっては関係のないことでもあった。
ここは牢獄である。しかも、これ以上ないほど厳重な。
周囲には結界が張り巡らされ、金属の製品など一つも置いていない。
当然、杖も取り上げられている。もはや、死を待つ身である。
どうでもいい、取り敢えず眠るとするか――
そう考え、ベッドに腰掛けたとき、足音が聞こえてきた。
「おや、あんたは――」
「これで二度目、と言うことになるのかな、『土くれ』よ」
その男は、捕らえられたあの日に、彼女が偶然出会った男である。
黒マントに、長い杖。恐らくメイジなのだろう。ここまでなら、まだ十分あり得る。
だが、白い仮面などしていれば、彼女が妙な格好の男、と評するのもまあ無理はないだろう。
あの夜渡した剣を、杖の反対側に下げている。メイジにしては妙なことだ。
「なんだい?まさかその剣が値打ち物で、
それを恩に助けに来てくれた訳かい?ま、そんなわけ無い――」
「助けに来た、と言ったらどうする?」
「何だって?」
「取り敢えず話を聞きたまえ。
そもそも、あの夜でさえそのためにわざわざ会いに行ったのだ。
我々の組織に雇われてみる気はないか?マチルダ・オブ・サウスゴータ」
フーケは、顔を青くし、驚愕に震える声で問い返す。
「……何者だい?」
それの問いに仮面の男が答えることはなかった。
代わりに続けてくる。
「おまえは優秀なメイジだ。当初は逃亡の援助を切っ掛けにするつもりだったが」
「へぇ?あれは秘密になってるかと思ってたんだがね」
「我々は何処にでもいるのだ」
「……その組織とやらの名前を聞かして貰えるかしら?」
「雇われる気になったのか?」
「まだ決めようがないね。取り敢えず、名前ぐらいは教えてくれても良いんじゃないかい?」
仮面の男は……と言っても、仮面でその口元は見えないが……
その口を開き、言った。
「レコン・キスタ」
ギーシュは剣を振っていた。
あの後女子からフルボッコされた後、
何故かアセルスが謝りに来たので、ちょっと剣の腕を見せて欲しいと言ったのだ。
的としてワルキューレを出し、剣が折れてしまったというので『錬金』で剣を作り出して渡す。
すると、彼女はずいぶんと離れた場所に立って剣を構えた。
準備運動でもするのかと思って見ていたら、素振りをしたらワルキューレが切れた。
( ゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
_, ._
(;゚ Д゚)
……えぇー!?ちょ、何したの!?
実はメイジ!?かと思ったけど、杖持ってないよね……
じゃあ純粋に剣でやってるよね……
あまりに驚いたので彼女に何をやったのか聞いてみると、こう返ってきた。
「え?慣れれば誰でも出来るって。皆伝技だよ?」
いや、そんなもの慣れた程度でやられたらメイジの立場がないよ!
まぁ、とにかくこんなものを見せられた後に
魔法の絶対性を信じろって方が無理があります。
そんなわけで、ギーシュは余り慣れない剣を振っているのであった。
「しかし、やはり剣を使うのは合わないんじゃ無かろうか」
自分に出来ることを考えてみるが、
錬金と、ゴーレム。
ゴーレムはああもあっさり切り裂かれると自信がなくなってくる。
錬金はそもそも実戦で役に立つのか?…………
\ __ /
_ (m) _
|ミ|
/ `´ \
「……今なんか来たような」
ところで、そのアセルスはと言うと。キュルケと対峙していた。
理由とは、取り巻きと化した女子生徒達にあることを聞いたのが切っ掛けである。
「ねぇ、あの青い髪の子、なんて言うの?」
「青い髪?……タバサの事ですか?」
「それがどうかされましたか?」
「いや、可愛いなと思っ――」
突如、赤い人影が疾走する。
それはアセルスに向かって駆け抜けると、途中で跳び、
両足を前に突き出し、助走と跳躍の勢いをその両足に乗せた。
ライダーキック?
まあとにかく、ジャストヒット。
半妖様吹っ飛ぶ。取り巻きが何か叫んでるが、まぁこれは大して関係ない。
「な、いきなり何をするんだ?」
「危ない人を蹴り飛ばしただけよッ!」
「私の何処が――」
「タバサがなんて言ってた?」
「いや、可愛いなって――」
「どう見ても危ない人じゃない!」
キュルケがなにやら凄い気迫なので、周りの取り巻きも黙り込む。
だが、それでも平然としていた半妖様は、少し考え込むとキュルケを見て呟く。
「そうか……」
「何よ?」
「君もタバサを」
「あたしにそっちの気は無いわよ!
ただ純粋に友人として危惧しているのよ!」
「何を?」
「あなたの行動をよ」
「大丈夫、ちゃんと幸せに――」
「殺してでも止めるわ」
このアセルス、半妖と言うよりは3/4妖ぐらいじゃなかろうか。
とにかく、ここにキュルケとアセルスの敵対関係が成立した。
教室のドアが開き、ミスタ・ギトーが表れる。
長い黒髪に、漆黒のマントを纏ったその姿は不気味で、
若いのに生徒達からは不人気であった。今は違う。
彼が口を開く。
「では授業を始める。私の二つ名は――」
「言う必要はありませんよ、ギトー先生」
「……知っているのかね?」
「ええ、『出戻り』のギトーと言ったら、もう有名です」
主に、笑いものとして人気であった。
ギトーが格好に似合わず顔を赤くして叫び返す。
「私の二つ名は『疾風』だっ!『疾風』のギトー!」
「『湿布』?ゴーレムに殴られて打撲でもしたんですか?」
生徒達が笑う。ギトーが黙り込んでも、その笑いは止まらなかった。
が、ギトーがある言葉を言う。
「所で私は最近雷を作り出す魔法を練習しているのだが、
……失敗して何処に飛ぶか解らんが、ここで一つ披露してもいいかね?」
黙り込む。笑われているが、メイジとしてのギトーの実力は確かである。
「よろしい。それでは、最強の系統は知っているかね?えーと……そうだな……そこの君」
そう言って、ブルーを指さす。
ブルーは何故俺が?と思いはしたが、取り敢えず思ったことを言う事にした。
「最強とか……中学生か?」
キングダムって中学校あるのかな?
シュライクあたりはありそうだけど。
「…………仮定の上での話をしているんだ」
いちいち引っかかる……?言い方で話すギトーに、ブルーは更に続ける。
「ならその仮定は何だ?状況は?相手は?そしてその数は?味方は?」
「え、えーと……とにかく、最強は『風』なのだ!」
ギトーは過程をすっ飛ばした。
そして、続けて言う。
「試しに、君の得意とする魔法を私にぶつけてきたまえ」
ブルーは無言で『剣』を取り出す。
「……そう言えば、君はメイジではなく、ミス・ヴァリエールの使い魔だったか。
まぁかまわん。それを投げてみたまえ」
ブルーは言われたとおり、『剣』を飛ばす。
ギトーがそれを見て詠唱を始めたあたりで、ボソッと呟く。
「『タイムリープ』」
『剣』がギトーの横を通り抜ける。
どすっとかいかにも物に何かが刺さったような音がした。
教室が沈黙に包まれる。どこからか失笑が漏れる。
「……それでは『風』が最強たる所以を見せてあげよう!」
ギトーは無かったことにした。
杖をたて、唱え始める。
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」
流石に『サイキックプリズン』はやり過ぎか、と思いつつも考慮していると、
扉を開けて妙な格好のコルベールが表れた。
ロールした金髪のカツラを乗っけている。
ローブは普段よりも飾り立てられた物であった。
その様子を疑問に思いつつ観察すると、コルベールが叫ぶ。
「ミスタ・ギトー!失礼しますぞ!
えー、今日の授業は全て中止であります!」
教室中から歓声が上がる。
……一番大きな声を上げていたのはギトーだったような気がするが。
そんなに辛かったのか?が、調子を取り戻すとギトーは聞いた。
「しかし何でですか?ミスタ・コルベール」
「そうですぞ!それを伝えに来たのです」
コルベールがそう言い、勢いよく生徒達の方を振り向くと、その回転の勢いでカツラがずれる。
ギトーのおかげで愉快な空気だった生徒達は、笑った。
コルベールはカツラを元に戻すと、静かな声で言う。
「黙れ」
一気に空気が氷点下へ。
ある意味これって教師の鏡じゃね?
コルベールは咳払いをして、調子を元に戻すと言う。
「こほん。皆さん!本日はトリステイン魔法学院にとって良き日であります。
始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります」
調子を戻したものの、生徒達は黙り込んだままであった。
コルベールが少々焦りながらも続ける。
「……恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインの誇る可憐な一輪の花、
アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸されます」
教室が流石にざわめいた。
「従って、粗相があってはいけません。急なことですが、今から全力を挙げて式典の準備を行います。
そのために本日の授業は中止。生徒諸君は正装し、門に整列すること!」
生徒達は頷いた。
その後は、いつもよりあわただしい時間となる。
#navi(ゼロの使い魔・ブルー編)
ルイズは夢を見ていた。
幼い日の頃の夢……まぁ、外見だけで言えば未だに幼いと言えるが。
夢の中のルイズは故郷の屋敷の中庭の池、そこに浮かぶ小舟の中にいた。
ルイズは、嫌なことがあると、この小舟に逃げ込むのだった。
その中でじっとしていると、霧がかかっている視界に、
マントを羽織った立派な貴族が現れる。
彼は、幼いルイズより10才は年上だろうか?
その男はルイズに近づくと、優しく語りかけた。
「ルイズ、泣いているのかい?」
ルイズは心臓が高鳴るのを感じた。
「子爵様、いらしてたの?」
「今日は君のお父上に呼ばれたのさ。あの話のことでね」
ルイズはそれがなんなのか知っていたので、顔を赤くした。
「子爵様は、行けない人ですわ」
「ルイズ、僕の小さなルイズ。君は僕のことが嫌いかい?」
いつもと変わらぬ口調……?で、目の前の青年が言った。
「いえ、そんなことはありませんわ。でも……わたしにはまだよくわかりません」
ルイズは恥ずかしがりながら言う。帽子の下の顔が笑う。あぁ……この笑顔が……?
あれ?この顔は……
「って、ルージュ?」
「探したよルイズ。こんな所にいたのかい?」
「え、えーと……ルージュこそ、何でこんな所に?」
言うが、答えが返ってくるまえに
遠くから声が聞こえてくる。
「ルージュ、ルイズは見つかったか?」
そういって近づいてきたのはブルーであった。
「ブルーまで、何でここにいるのよ!?」
「俺達だけじゃないが」
「ルイズ、こんな所にいたんだね」
「……アセルスさん?」
いよいよ訳がわからなくなってきた。
だが、更に声が聞こえてくる。
「ルイズ~、こんな所にいたのか?」
「みんな心配してたぞ?」
なにやらツンツンした髪の少年と、
穏和な雰囲気をしている青年が、
よくわからない……ゴーレム?ガーゴイル?
とにかく、よくわからないものを連れてやってきた。
「あ、貴方達誰よ!?」
「酷いなルイズ。俺のこと忘れたのか?」
「ちょ、置いてかないでよー!」
後ろから……あれはタバサの使い魔じゃなかったか?が走ってきた。
え?何が起こってるの?何これ?
「あれ?ルイズ、泣いてたのか~?
なら俺が歌を歌ってやるよ――」
そこで目が覚めた。
がばと跳ね起き、辺りを見回してみる。あの妙な集団は居ない。
自分の使い魔は床で寝ている。
……ルイズは呟いた。
「何だったのかしら……今の……」
「ったく、あいつらは何だったってんだい……」
フーケは呟く。片方は自らの全力を込めたゴーレムを剣で切り裂き、
もう片方もとんでも無い剣の腕で、さらに得体の知れない魔法を使ってきた。
疑問に思うが、もはや彼女にとっては関係のないことでもあった。
ここは牢獄である。しかも、これ以上ないほど厳重な。
周囲には結界が張り巡らされ、金属の製品など一つも置いていない。
当然、杖も取り上げられている。もはや、死を待つ身である。
どうでもいい、取り敢えず眠るとするか――
そう考え、ベッドに腰掛けたとき、足音が聞こえてきた。
「おや、あんたは――」
「これで二度目、と言うことになるのかな、『土くれ』よ」
その男は、捕らえられたあの日に、彼女が偶然出会った男である。
黒マントに、長い杖。恐らくメイジなのだろう。ここまでなら、まだ十分あり得る。
だが、白い仮面などしていれば、彼女が妙な格好の男、と評するのもまあ無理はないだろう。
あの夜渡した剣を、杖の反対側に下げている。メイジにしては妙なことだ。
「なんだい?まさかその剣が値打ち物で、
それを恩に助けに来てくれた訳かい?ま、そんなわけ無い――」
「助けに来た、と言ったらどうする?」
「何だって?」
「取り敢えず話を聞きたまえ。
そもそも、あの夜でさえそのためにわざわざ会いに行ったのだ。
我々の組織に雇われてみる気はないか?マチルダ・オブ・サウスゴータ」
フーケは、顔を青くし、驚愕に震える声で問い返す。
「……何者だい?」
それの問いに仮面の男が答えることはなかった。
代わりに続けてくる。
「おまえは優秀なメイジだ。当初は逃亡の援助を切っ掛けにするつもりだったが」
「へぇ?あれは秘密になってるかと思ってたんだがね」
「我々は何処にでもいるのだ」
「……その組織とやらの名前を聞かして貰えるかしら?」
「雇われる気になったのか?」
「まだ決めようがないね。取り敢えず、名前ぐらいは教えてくれても良いんじゃないかい?」
仮面の男は……と言っても、仮面でその口元は見えないが……
その口を開き、言った。
「レコン・キスタ」
ギーシュは剣を振っていた。
あの後女子からフルボッコされた後、
何故かアセルスが謝りに来たので、ちょっと剣の腕を見せて欲しいと言ったのだ。
的としてワルキューレを出し、剣が折れてしまったというので『錬金』で剣を作り出して渡す。
すると、彼女はずいぶんと離れた場所に立って剣を構えた。
準備運動でもするのかと思って見ていたら、素振りをしたらワルキューレが切れた。
( ゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
_, ._
(;゚ Д゚)
……えぇー!?ちょ、何したの!?
実はメイジ!?かと思ったけど、杖持ってないよね……
じゃあ純粋に剣でやってるよね……
あまりに驚いたので彼女に何をやったのか聞いてみると、こう返ってきた。
「え?慣れれば誰でも出来るって。皆伝技だよ?」
いや、そんなもの慣れた程度でやられたらメイジの立場がないよ!
まぁ、とにかくこんなものを見せられた後に
魔法の絶対性を信じろって方が無理があります。
そんなわけで、ギーシュは余り慣れない剣を振っているのであった。
「しかし、やはり剣を使うのは合わないんじゃ無かろうか」
自分に出来ることを考えてみるが、
錬金と、ゴーレム。
ゴーレムはああもあっさり切り裂かれると自信がなくなってくる。
錬金はそもそも実戦で役に立つのか?…………
\ __ /
_ (m) _
|ミ|
/ `´ \
「……今なんか来たような」
ところで、そのアセルスはと言うと。キュルケと対峙していた。
理由とは、取り巻きと化した女子生徒達にあることを聞いたのが切っ掛けである。
「ねぇ、あの青い髪の子、なんて言うの?」
「青い髪?……タバサの事ですか?」
「それがどうかされましたか?」
「いや、可愛いなと思っ――」
突如、赤い人影が疾走する。
それはアセルスに向かって駆け抜けると、途中で跳び、
両足を前に突き出し、助走と跳躍の勢いをその両足に乗せた。
ライダーキック?
まあとにかく、ジャストヒット。
半妖様吹っ飛ぶ。取り巻きが何か叫んでるが、まぁこれは大して関係ない。
「な、いきなり何をするんだ?」
「危ない人を蹴り飛ばしただけよッ!」
「私の何処が――」
「タバサがなんて言ってた?」
「いや、可愛いなって――」
「どう見ても危ない人じゃない!」
キュルケがなにやら凄い気迫なので、周りの取り巻きも黙り込む。
だが、それでも平然としていた半妖様は、少し考え込むとキュルケを見て呟く。
「そうか……」
「何よ?」
「君もタバサを」
「あたしにそっちの気は無いわよ!
ただ純粋に友人として危惧しているのよ!」
「何を?」
「あなたの行動をよ」
「大丈夫、ちゃんと幸せに――」
「殺してでも止めるわ」
このアセルス、半妖と言うよりは3/4妖ぐらいじゃなかろうか。
とにかく、ここにキュルケとアセルスの敵対関係が成立した。
教室のドアが開き、ミスタ・ギトーが表れる。
長い黒髪に、漆黒のマントを纏ったその姿は不気味で、
若いのに生徒達からは不人気であった。今は違う。
彼が口を開く。
「では授業を始める。私の二つ名は――」
「言う必要はありませんよ、ギトー先生」
「……知っているのかね?」
「ええ、『出戻り』のギトーと言ったら、もう有名です」
主に、笑いものとして人気であった。
ギトーが格好に似合わず顔を赤くして叫び返す。
「私の二つ名は『疾風』だっ!『疾風』のギトー!」
「『湿布』?ゴーレムに殴られて打撲でもしたんですか?」
生徒達が笑う。ギトーが黙り込んでも、その笑いは止まらなかった。
が、ギトーがある言葉を言う。
「所で私は最近雷を作り出す魔法を練習しているのだが、
……失敗して何処に飛ぶか解らんが、ここで一つ披露してもいいかね?」
黙り込む。笑われているが、メイジとしてのギトーの実力は確かである。
「よろしい。それでは、最強の系統は知っているかね?えーと……そうだな……そこの君」
そう言って、ブルーを指さす。
ブルーは何故俺が?と思いはしたが、取り敢えず思ったことを言う事にした。
「最強とか……中学生か?」
キングダムって中学校あるのかな?
シュライクあたりはありそうだけど。
「…………仮定の上での話をしているんだ」
いちいち引っかかる……?言い方で話すギトーに、ブルーは更に続ける。
「ならその仮定は何だ?状況は?相手は?そしてその数は?味方は?」
「え、えーと……とにかく、最強は『風』なのだ!」
ギトーは過程をすっ飛ばした。
そして、続けて言う。
「試しに、君の得意とする魔法を私にぶつけてきたまえ」
ブルーは無言で『剣』を取り出す。
「……そう言えば、君はメイジではなく、ミス・ヴァリエールの使い魔だったか。
まぁかまわん。それを投げてみたまえ」
ブルーは言われたとおり、『剣』を飛ばす。
ギトーがそれを見て詠唱を始めたあたりで、ボソッと呟く。
「『タイムリープ』」
『剣』がギトーの横を通り抜ける。
どすっとかいかにも物に何かが刺さったような音がした。
教室が沈黙に包まれる。どこからか失笑が漏れる。
「……それでは『風』が最強たる所以を見せてあげよう!」
ギトーは無かったことにした。
杖をたて、唱え始める。
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」
流石に『サイキックプリズン』はやり過ぎか、と思いつつも考慮していると、
扉を開けて妙な格好のコルベールが表れた。
ロールした金髪のカツラを乗っけている。
ローブは普段よりも飾り立てられた物であった。
その様子を疑問に思いつつ観察すると、コルベールが叫ぶ。
「ミスタ・ギトー!失礼しますぞ!
えー、今日の授業は全て中止であります!」
教室中から歓声が上がる。
……一番大きな声を上げていたのはギトーだったような気がするが。
そんなに辛かったのか?が、調子を取り戻すとギトーは聞いた。
「しかし何でですか?ミスタ・コルベール」
「そうですぞ!それを伝えに来たのです」
コルベールがそう言い、勢いよく生徒達の方を振り向くと、その回転の勢いでカツラがずれる。
ギトーのおかげで愉快な空気だった生徒達は、笑った。
コルベールはカツラを元に戻すと、静かな声で言う。
「黙れ」
一気に空気が氷点下へ。
ある意味これって教師の鏡じゃね?
コルベールは咳払いをして、調子を元に戻すと言う。
「こほん。皆さん!本日はトリステイン魔法学院にとって良き日であります。
始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります」
調子を戻したものの、生徒達は黙り込んだままであった。
コルベールが少々焦りながらも続ける。
「……恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインの誇る可憐な一輪の花、
アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸されます」
教室が流石にざわめいた。
「従って、粗相があってはいけません。急なことですが、今から全力を挙げて式典の準備を行います。
そのために本日の授業は中止。生徒諸君は正装し、門に整列すること!」
生徒達は頷いた。
その後は、いつもよりあわただしい時間となる。
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