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「呪いの使い魔-05」(2011/06/04 (土) 17:02:25) の最新版変更点
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#navi(呪いの使い魔)
教室内が大爆発を起こしたその時、花城花鶏は最大の危機を迎えていた。
朝食の後、ルイズと共に授業を受けることになった花鶏は面倒臭そうな顔で仕方なしに付いて行った。
教室内に入ると、やはり飛び抜けて美人である花鶏は嫌でも目立つ。
教室中の視線が花鶏へ集まる中、キュルケとタバサだけは彼女と微妙に目を合わさないようにしていた。
「おお……やっぱり凄い美人……」
「あれ?私どうしたんだろ?女なのにドキドキしてる……」
「何であんな美人がルイズの使い魔なんだ?」
彼女に対して様々な感想が教室内を飛び交う。
そんな中、少し太った中年の女性が教室内へ入り、教壇へと立った。
「え~、オホン。これより授業を始めます」
その一言で教室内は水を打ったように静まり返る。
それを見てご満悦そうににっこりと笑いながらその女性は言った。
「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
そしてルイズたちの方をちらりと見やると
「おやおや、変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
そう言って、にっこりと笑うシュヴルーズ。
悪意は無いのだろうが、空気は読めていない。
すると、そのシュヴルーズの言葉に被せるように小太りの少年が叫んだ。
「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺を歩いてた平民を連れてくるなよ!」
その言葉にルイズの瞬間湯沸かし器が爆発する。
「違うわ!きちんと召喚したもの!それなのに……」
「ボソッ喋るな……」
小さい声。
だが、ハッキリと聞き取ることが出来るくらいのインパクトを含めてそう言ったのはルイズの隣にいる花鶏であった。
明らかに不機嫌そうな顔で花鶏は小太りの少年を睨み付けている。
小太りの少年は花鶏へ向けて言い返そうとする。
「な、へ、平民のくせに……」
「五月蝿い黙れ」
短く、簡潔な言葉。
だが、それだけで小太りの少年は何も言えなくなる。
花鶏は小太りの少年を睨み付けたまま口を開いた。
「小汚い雄豚のくせに言葉を喋るな。耳障り。(ピー)。(ピー)。(ピー)。(ピー)。(ピー)。(とても聞かせられない言葉)!」
言葉の意味がよく分からなくても、その勢いと凄みに負けて小太りの少年はその場に泣き崩れる。
彼は男としての尊厳を花鶏に全て踏み躙られたような気がして、そのまま立ち上がる気力を失っていた。
ルイズは意外そうな顔で花鶏を見た。
「アンタ、もしかして私を庇って……」
「……勘違いしないでっての。私は男が死ぬほど嫌いなの。特にああいう醜く、何で生きているのかさえ分からない存在はね!……ああ、あんな豚に話しかけられて鳥肌ものだわ」
花鶏はそう吐き捨てると、そのまま机に突っ伏して寝息をたて始めた。
今朝から花鶏は、隙があると立っていようが歩いていようが関係なくこうして眠ってしまう。
しかし、彼女は眠りながらでもセクハラ行為だけはやって来るので油断は出来ないとルイズは身構える。
そんなこんなでシュヴルーズの授業は始まった。
「花鶏~!」
「ん……?智?」
花鶏の目の前には智こと和久津智が立っている。
可憐で美人で清楚で知的な少女。
それでいて胸は無いと言っていいくらい薄い。
ガードこそ固いものの、花鶏が今一番気に入っている少女であった。
「智……どうしてここに?」
「花鶏……実は話があるんだ」
「話……?何改まって……」
智はもじもじと顔を赤らめながら言った。
「花鶏……僕を……その、……調教して下さい!」
「ハイ来たアアアアアアアア!!!」
花鶏は目を特大のハートマークにした後、テンション最高潮で智へと飛び掛った。
ところで、花鶏の目が覚めた。
彼女に覚醒を呼んだのは、とてつもない轟音であった。
花鶏は壁に叩きつけられた形で座っている。
「ケホッ、ケホッ……何よ?何があったの?」
目の前は煙に包まれてよく見えない。
「またゼロのルイズか!!」
「何度目の爆発だよ!!」
「もういい加減にしてくれ!!」
教室内を怒号が飛び交う。
そこから大体何が起きたかを花鶏は推測していた。
(つまり、ルイズちゃんが何かをやらかしたってことね)
やがて目の前の煙が晴れた時、花鶏は瞬時に凍りついた。
彼女の中の時間が止まる。
「………………………………」
花鶏の目の前には一匹の蛇がいた。
お腹を丸々と太らせている。
蛇は舌をちょろちょろと出し入れして見せた。
「……ぃいやああああああああああ!!!!」
花鶏はみっともなく泣き叫ぶ。
そう、花鶏は蛇が大の苦手であった。
逃げ出したいのにその場から逃げ出せず、じっとこっちを見てくる蛇から目も逸らせず、何も出来なかった。
「いやああああ、た、た、たす……」
そこまで言いかけて花鶏は手で口を塞ぎ、それ以上言葉が出ないようにした。
しかし、目の前の蛇は花鶏の元へとにじり寄ってくる。
花鶏は涙をぼろぼろと零しながら再び叫ぼうとした。
「おい!僕のラッキーを吐き出せ!この蛇!!」
その時、一人の少年が蛇を掴み上げ、そのまま何処かへ持って行ってしまった。
目の前に蛇がいなくなり、花鶏は暫く茫然としていた。
(……何だ。蛇が苦手だなんて、あの子も可愛いところがあるんじゃない)
その様子を傍目から見ていたキュルケはクスクスと笑う。
しかし、すぐに花鶏の様子がおかしいことに気付く。
(どうしたのかしら?まるで、死ぬ寸前だったような……そんな顔しているわ)
花鶏は今まで見せたことの無い表情をしていた。
息は荒く、目は見開かれ、胸を押さえて肩を大きく上下させている。
いつもの余裕ぶった立ち振る舞いとは明らかに異なる姿。
彼女は脅えていた。
だが、その脅えは先程の蛇に対してでは無いようにキュルケには見えた。
「……あの子、変」
それはタバサも感じたようで、キュルケに向かってポツリと呟いた。
花鶏は暫くすると、フラフラと立ち上がって教室から出て行ってしまった。
そうとは露知らず、この騒動の原因であるルイズが教壇の上で言った。
「……少し失敗しちゃったみたいね」
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