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「ぜろめ~わく-01」(2009/07/11 (土) 15:13:24) の最新版変更点
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#navi(ぜろめ~わく)
召喚。
それは「彼ら」には馴染み深いものだった。
社会の発展のため、アドバイザーたる人間を呼び出す。それも相手の都合など考えず何度も。
召喚のタイミングの悪さ、無知・勘違いを叱咤され、時々は褒められ励まされ、
そして時間が過ぎれば「百合子様」はもとの世界に還って行く。
ここ数年繰り返した当たり前の日々。
今日も「彼ら」はそのつもりだったのだ。
博物館に設置された魔方陣。
その前で皆で呪文を唱えていく。
最初は半信半疑だったこの儀式も、回数を重ねた今では成功を疑うものなどいない。
あとは召喚者に気づいてもらうための鳴り物を鳴らすだけとなったとき、
「彼ら」の中でもリーダー格に当たる「彼」は、魔方陣の上に鏡のようなものがあるのに気づいた。
(このままでは「百合子様」の召喚の障害になる……)
そう思った彼は無謀にも魔方陣に足を踏み入れ、鏡をどけるため手を伸ばした。
共に召喚儀式を行う仲間が鳴り物を鳴らした、その瞬間。
急に「鏡」が周囲を吸い込み始め、「彼」は鏡に飲まれた。
---
トリステイン魔法学院。
まず失敗することなどない使い魔召喚の儀式において、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは
クラスメイトの嘲笑が聞こえる中、十数回と「爆発」という失敗を繰り返していた。
(これができないと留年、そんなことになったら家に連れ戻される……そんなわけには行かないのよ!
……次の召喚に私の全てをかける!今度こそ!)
大きく息を吸って杖を構える、そして呪文を口にする。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」
(ーーもう、なんでもいい!どひゃーっというような何かを!お願い!)
異世界の、天下無敵の女子高生がかつて抱いたものと同じ思いを込めて杖を振り下ろす。
一瞬の空白の後、
どんどこどんどこ。
遠くで太鼓の音がした。そして
ちゅどーん!!
やっぱり爆発の音も。
盛大な爆発の後、そこにうつ伏せに伸びていたそれは明らかに「猫」だった。
後頭部の模様から察するに多分、トラジマの猫。
だが、その猫は服ーーローブのようなものをーーを着ていた。
いや、服どころか、後ろ足に靴のようなもの履いていた。
「あれだけ失敗しておいてただの猫かよ」
「いや、猫は服着てないって」
「好事家なら着せるかもしれないな」
「でも靴なら前後両足履かせるだろ」
それまで続いていた周囲の嘲笑が好奇心丸出しの声に代わっていく。
ルイズは猫に近づき、杖でそっとつついた。
「……アンタ、大丈夫?」
通じるわけないのだが、言葉に出して聞いてしまう。
猫はそれで気がついたのか顔を上げる。そして前足をつっぱって体をおこす。
(よかった、無事だったのね……)
と安心したルイズは続いた光景に驚愕した。
猫の胴体はそのまま人間のごとく起き上がったーーつまりは二本足で立ち上がったのだ。
凍りついたルイズの眼前で、猫はローブを脱ぐ。その下から小さいとはいえ、仕立ての良い三つ揃えが出てくる。
軽く埃をはらうような仕草をし、つま先立ちになったあと、猫はルイズの方を向いた。
「お呼び立てしておきながら失礼しました、百合子様……って
人間の方がこんなにたくさん~~~~!ここはどこなんですか~~~~!?」
猫が喋った。それも「契約」前の。
ーーどひゃーっ!
ルイズは貴族らしくもない声を上げてしまった。
というか、そういう使い魔呼びたかったんでしょ?、という声がどこかから聞こえたとか聞こえないとか。
「多分別の世界から来た」という、猫の語る内容はあまりにも荒唐無稽だった。
曰く、猫をシンカ(人間と同じ知恵をつけること……らしい)させたのちに人間が立ち去り、猫しかいない社会にいた。
曰く、シンカさせてもらったため、その世界の猫はみな2本足で立ち、言葉を喋る。服も着るし靴も履く。
曰く、その社会でベンゴシ(裁かれる人を擁護する仕事……って犯罪者庇うの?)をしていて、
その傍ら、人間社会を再現するための活動をしていた。
曰く、ある日一人だけ人間が戻ってきた、それが『マイヤー』様。
曰く、猫嫌いの『マイヤー』様への対応として、別の世界から召喚儀式で人間を呼び出した、それが『ユリコ』様。
ただ、この「召喚儀式」は使い魔としての召喚ではなく、一時的に呼び出すだけで、時間が経つと元の場所へ戻ってしまうらしい。
そのため『ユリコ』様は『マイヤー』様対策と人間社会に近づけるためにアドバイザーとを兼ねて定期的に呼び出していた。
曰く、さらにその後『ヨーリス』様が戻ってきた。男性が二人となったことで、人間の区別がつかないことがあると分かった。
曰く、曰く、曰く…。
当然、人間がいないところからきたのだからハルケギニアという地名も聴いたことはない。
もっともルイズたちも、獣人どころか猫そのものだけの社会なんて聞いたことはなかったが。
元いた世界では希少にして神同然だという人間に仕えるならと、使い魔の契約も承諾してくれ
『コンクラクト・サーヴァント』も無事交わされた。
猫の額のしましまがルーンに変化した。ような気がする。
猫の使い魔は有能だった。少なくとも普通の猫の使い魔以上には。
感覚共有こそできなかったものの、喋れるどころか文字もあっという間に覚え、平民でもできない読み書き計算をこなすどころか
地図・図面のような図形も描き起こし、本の2・3冊は平気で運ぶ。
ということで校内のお使いくらいはこなし、ハルケギニアの地理を学び始めてからは触媒の探索もできるようになった。
また、『ユリコ』様なる人物が来た際のお世話役だったというだけあって、猫なのにマナーは一通り心得ているし、
人間サイズのポットでも器用にお茶を入れて見せる。ただ、お茶はちょっとぬるいし、受け取るときはしゃがむか床に座る必要があるけど。
さらに「ベンゴシ」という職業と、「人間社会の再現」という活動からなのか、学問、民族学、雑学の知識はかなりあった。
魔法をほとんど知らなかったり、争いごとに鈍かったりと何かがずれてはいるけど。
当初心配した「人間の区別がつかない」のも、日を追うごとになんとかなっていったようだ。
そういえば「カガク」って何なんだろう。説明されるたびに「そういうことが起きている」っていうのは分かるのだけど。
そんなある日、猫の使い魔がルイズに尋ねた。
「ところでルイズ様、この世界には『こたつ』はないんですか?」
「何よコタツって?」
「4本足のテーブルの裏に熱源を固定して布団をかぶせたものです。あったかいんですよ。」
「そんなもの聞いたこともないわ」
「そ、そんな。私達は人間の方の使わないものを作ってしまったんでしょうか??
発掘もしたし百合子様はそういうものだとおっしゃっていたし、ブリタニカにも載っていたのに!!」
「……え、えーと『ユリコ』様の世界にはあったのかも知れないわ。」
…この話は「火は破壊しか司らない」という悩みを抱えていたコルベールに伝わり、
後日コルベール協力の下、火石を用いて『コタツ』は再現された。
そしてこの『コタツ』は暖房器具として、トリステインはもちろん北方であるゲルマニアをも席巻した。
猫の使い魔が一時的に野生化(曰く「先祖がえり」)して、ルイズの顔に引っかき傷をつけてしまうといオチもついて。
また別の日、猫の使い魔はこうも尋ねた。
「ルイズ様、この学校には『修学旅行』はないんですか?」
「シュウガク…旅行?」
「学校のみんなと一緒に遠くへ出かけていくんです。それで旅館では枕の投げ合いをして、お土産を買って帰るんです」
「お土産はともかく…枕投げて何が楽しいの?」
「ええっと、百合子様のお話ではそれでお互いの理解と友情を深めるんだそうです」
「よくわかんないけど、決闘の一種かしら?」
この誤解から、後日ギーシュと猫の使い魔の間に発生した決闘にてルイズはこの「枕投げ」を提案、猫の使い魔が勝ってしまい、
以降トリステインにおける決闘が枕の投げ合いで決着をつけるという平和的(?)な争いになったとか。
ルイズが寝込んでしまったある日、猫の使い魔は学院のコック長であるマルトーにお願いした。
「マルトー様、ルイズ様のために桃缶をゆずっていただけませんか」
「何でぇ、その『モモカン』ってぇのは」
「桃のシロップ漬けを金属缶に詰めたものです。病気の人が食べると元気が出るんですよ。」
「『モモカン』はわからねぇが、桃のシロップ漬けを作ればいいんだな。」
「いいえ、桃缶じゃなきゃだめなんです!」
この言い争いは、偶然通りかかったミセス・シュヴルーズに缶と缶きりを『錬金』してもらうことで治まり、
猫の使い魔はこれを持ち帰って自身の主人に与えた。
このおかげで元気になった…かどうかはさておき、数ヶ月後、食べ切れなかったらしい桃缶の中身が
一切腐敗していなかったことを知った教師陣は驚愕し、しばらくの研究の後、
トリステインにて『モモカン』が実用化されることとなる。
……中身が桃でなくても『モモカン』と呼ぶようになってしまったが。
アンリエッタ王女が魔法学院を訪れた日、猫の使い魔は思い出したように聞いた。
「ルイズ様、そういえばこの世界には『レディースデー』はないんでしょうか?」
「……は?」
「レディが一番偉いことを称える日なんですよ、その日レディは映画を見るんです。」
「この国の一番偉い方は大后様だけど……そんなものは……」
「そ、そんな。私達は人間の方の……」
「そこから先は言わなくていいから。それより、『エイガ』って何?」
結局、ハルケギニアの技術では映画の再現は無理があったため、演劇においてレディースデーは制定された。
大后、王女も「レディ代表」として交代で参観することとなり、特にアンリエッタにとってはよい息抜きになったとか。
他にもボンサイ、ブリタニカ、ハナビ、列車、自動車、チーズ転がし、チューリップ市、オリンピックと
猫の使い魔が語った文化は多種にわたり、トリステイン(ラ・ヴァリエール領)を中心に貴族・平民を問わない知識・技術を伝えていった。
不思議なことに伝えられた知識の中に「軍事・武器・兵器」にまつわるものはなかったが、
『戦争』の説明を受けた猫の使い魔曰く「マイヤー様たちが教えてくれなかったし、人間の方が残した記録にもなかった」そうだ。
学院卒業後、ルイズは争いを知らない猫の使い魔のため、軍人ではなく文官としての道を選んだ。
使い魔の知識を元に優秀な文官として働いた彼女は、トリステインに大きな益をもたらした事で
主従とも王女(のちに女王)に重用され、ヴァリエール家の名をそう貶めることなく幸せに暮らしたという。
さらに後、猫の使い魔の話を伝え聞いた人々が、この二人にあやかろうと「富をもたらす『マネキネコ』」という置物も作られた。
この猫の模様はトラジマであったという。
ただ、某虚無の使い手に異世界より召喚された某人間の使い魔はこうのたまったとか。
「……なんかこの世界の人たち勘違いしてねぇか!?」
ーー
「ねこめ~わく」から、シマシマ・ハヤカワを召喚
#navi(ぜろめ~わく)
#navi(ぜろめ~わく)
召喚。
それは「彼ら」には馴染み深いものだった。
社会の発展のため、アドバイザーたる人間を呼び出す。それも相手の都合など考えず何度も。
召喚のタイミングの悪さ、無知・勘違いを叱咤され、時々は褒められ励まされ、そして時間が過ぎれば「百合子様」はもとの世界に還って行く。
ここ数年繰り返した当たり前の日々。
今日も「彼ら」はそのつもりだったのだ。
博物館に設置された魔方陣。
その前で皆で呪文を唱えていく。
最初は半信半疑だったこの儀式も、回数を重ねた今では成功を疑うものなどいない。
あとは召喚者に気づいてもらうための鳴り物を鳴らすだけとなったとき、「彼ら」の中でもリーダー格に当たる「彼」は、魔方陣の上に鏡のようなものがあるのに気づいた。
(このままでは「百合子様」の召喚の障害になる……)
そう思った彼は無謀にも魔方陣に足を踏み入れ、鏡をどけるため手を伸ばした。
共に召喚儀式を行う仲間が鳴り物を鳴らした、その瞬間。
急に「鏡」が周囲を吸い込み始め、「彼」は鏡に飲まれた。
---
トリステイン魔法学院。
まず失敗することなどない使い魔召喚の儀式において、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、クラスメイトの嘲笑が聞こえる中、十数回と「爆発」という失敗を繰り返していた。
(これができないと留年、そんなことになったら家に連れ戻される……そんなわけには行かないのよ!
……次の召喚に私の全てをかける!今度こそ!)
大きく息を吸って杖を構える、そして呪文を口にする。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」
(ーーもう、なんでもいい!どひゃーっというような何かを!お願い!)
異世界の、天下無敵の女子高生がかつて抱いたものと同じ思いを込めて杖を振り下ろす。
一瞬の空白の後、
どんどこどんどこ。
遠くで太鼓の音がした。そして
ちゅどーん!!
やっぱり爆発の音も。
盛大な爆発の後、そこにうつ伏せに伸びていたそれは明らかに「猫」だった。
後頭部の模様から察するに多分、トラジマの猫。
だが、その猫は服ーーローブのようなものをーーを着ていた。
いや、服どころか、後ろ足に靴のようなもの履いていた。
「あれだけ失敗しておいてただの猫かよ」
「いや、猫は服着てないって」
「好事家なら着せるかもしれないな」
「でも靴なら前後両足履かせるだろ」
それまで続いていた周囲の嘲笑が好奇心丸出しの声に代わっていく。
ルイズは猫に近づき、杖でそっとつついた。
「……アンタ、大丈夫?」
通じるわけないのだが、言葉に出して聞いてしまう。
猫はそれで気がついたのか顔を上げる。そして前足をつっぱって体をおこす。
(よかった、無事だったのね……)
と安心したルイズは続いた光景に驚愕した。
猫の胴体はそのまま人間のごとく起き上がったーーつまりは二本足で立ち上がったのだ。
凍りついたルイズの眼前で、猫はローブを脱ぐ。その下から小さいとはいえ、仕立ての良い三つ揃えが出てくる。
軽く埃をはらうような仕草をし、つま先立ちになったあと、猫はルイズの方を向いた。
「お呼び立てしておきながら失礼しました、百合子様……って
人間の方がこんなにたくさん~~~~!ここはどこなんですか~~~~!?」
猫が喋った。それも「契約」前の。
--どひゃーっ!
ルイズは貴族らしくもない声を上げてしまった。
というか、そういう使い魔呼びたかったんでしょ?、という声がどこかから聞こえたとか聞こえないとか。
「多分別の世界から来た」という、猫の語る内容はあまりにも荒唐無稽だった。
曰く、猫をシンカ(人間と同じ知恵をつけること……らしい)させたのちに人間が立ち去り、猫しかいない社会にいた。
曰く、シンカさせてもらったため、その世界の猫はみな2本足で立ち、言葉を喋る。服も着るし靴も履く。
曰く、その社会でベンゴシ(裁かれる人を擁護する仕事……って犯罪者庇うの?)をしていて、
その傍ら、人間社会を再現するための活動をしていた。
曰く、ある日一人だけ人間が戻ってきた、それが『マイヤー』様。
曰く、猫嫌いの『マイヤー』様への対応として、別の世界から召喚儀式で人間を呼び出した、それが『ユリコ』様。
ただ、この「召喚儀式」は使い魔としての召喚ではなく、一時的に呼び出すだけで、時間が経つと元の場所へ戻ってしまうらしい。
そのため『ユリコ』様は『マイヤー』様対策と人間社会に近づけるためにアドバイザーとを兼ねて定期的に呼び出していた。
曰く、さらにその後『ヨーリス』様が戻ってきた。男性が二人となったことで、人間の区別がつかないことがあると分かった。
曰く、曰く、曰く…。
当然、人間がいないところからきたのだからハルケギニアという地名も聴いたことはない。
もっともルイズたちも、獣人どころか猫そのものだけの社会なんて聞いたことはなかったが。
元いた世界では希少にして神同然だという人間に仕えるならと、使い魔の契約も承諾してくれ
『コンクラクト・サーヴァント』も無事交わされた。
猫の額のしましまがルーンに変化した。ような気がする。
猫の使い魔は有能だった。少なくとも普通の猫の使い魔以上には。
感覚共有こそできなかったものの、喋れるどころか文字もあっという間に覚え、平民でもできない読み書き計算をこなし、さらには地図・図面のような図形も描き起こし、本の2・3冊は平気で運ぶ。
ということで校内のお使いくらいはこなし、ハルケギニアの地理を学び始めてからは触媒の探索もできるようになった。
また、『ユリコ』様なる人物が来た際のお世話役だったというだけあって、猫なのにマナーは一通り心得ているし、人間サイズのポットでも器用にお茶を入れて見せる。
ただ、お茶はちょっとぬるいし、受け取るときはしゃがむか床に座る必要があるけど。
さらに「ベンゴシ」という職業と、「人間社会の再現」という活動からなのか、学問、民族学、雑学の知識はかなりあった。
魔法をほとんど知らなかったり、争いごとに鈍かったりと何かがずれてはいるけど。
当初心配した「人間の区別がつかない」のも、日を追うごとになんとかなっていったようだ。
そういえば「カガク」って何なんだろう。説明されるたびに「そういうことが起きている」っていうのは分かるのだけど。
そんなある日、猫の使い魔がルイズに尋ねた。
「ところでルイズ様、この世界には『こたつ』はないんですか?」
「何よコタツって?」
「4本足のテーブルの裏に熱源を固定して布団をかぶせたものです。あったかいんですよ。」
「そんなもの聞いたこともないわ」
「そ、そんな。私達は人間の方の使わないものを作ってしまったんでしょうか??
発掘もしたし百合子様はそういうものだとおっしゃっていたし、ブリタニカにも載っていたのに!!」
「……え、えーと『ユリコ』様の世界にはあったのかも知れないわ。」
…この話は「火は破壊しか司らない」という悩みを抱えていたコルベールに伝わり、後日コルベール協力の下、火石を用いて『コタツ』は再現された。
そしてこの『コタツ』は暖房器具として、トリステインはもちろん北方であるゲルマニアをも席巻した。
猫の使い魔が一時的に野生化(曰く「先祖がえり」)して、ルイズの顔に引っかき傷をつけてしまうといオチもついて。
また別の日、猫の使い魔はこうも尋ねた。
「ルイズ様、この学校には『修学旅行』はないんですか?」
「シュウガク…旅行?」
「学校のみんなと一緒に遠くへ出かけていくんです。それで旅館では枕の投げ合いをして、お土産を買って帰るんです」
「お土産はともかく…枕投げて何が楽しいの?」
「ええっと、百合子様のお話ではそれでお互いの理解と友情を深めるんだそうです」
「よくわかんないけど、決闘の一種かしら?」
この誤解から、後日ギーシュと猫の使い魔の間に発生した決闘にてルイズはこの「枕投げ」を提案、猫の使い魔が勝ってしまい、以降トリステインにおける決闘が枕の投げ合いで決着をつけるという平和的(?)な争いになったとか。
ルイズが寝込んでしまったある日、猫の使い魔は学院のコック長であるマルトーにお願いした。
「マルトー様、ルイズ様のために桃缶をゆずっていただけませんか」
「何でぇ、その『モモカン』ってぇのは」
「桃のシロップ漬けを金属缶に詰めたものです。病気の人が食べると元気が出るんですよ。」
「『モモカン』はわからねぇが、桃のシロップ漬けを作ればいいんだな。」
「いいえ、桃缶じゃなきゃだめなんです!」
この言い争いは、偶然通りかかったミセス・シュヴルーズに缶と缶きりを『錬金』してもらうことで治まり、猫の使い魔はこれを持ち帰って自身の主人に与えた。
このおかげで元気になった…かどうかはさておき、数ヶ月後、食べ切れなかったらしい桃缶の中身が一切腐敗していなかったことを知った教師陣は驚愕し、しばらくの研究の後、トリステインにて『モモカン』が実用化されることとなる。
……中身が桃でなくても『モモカン』と呼ぶようになってしまったが。
アンリエッタ王女が魔法学院を訪れた日、猫の使い魔は思い出したように聞いた。
「ルイズ様、そういえばこの世界には『レディースデー』はないんでしょうか?」
「……は?」
「レディが一番偉いことを称える日なんですよ、その日レディは映画を見るんです。」
「この国の一番偉い方は大后様だけど……そんなものは……」
「そ、そんな。私達は人間の方の……」
「そこから先は言わなくていいから。それより、『エイガ』って何?」
結局、ハルケギニアの技術では映画の再現は無理があったため、演劇においてレディースデーは制定された。
大后、王女も「レディ代表」として交代で参観することとなり、特にアンリエッタにとってはよい息抜きになったとか。
他にもボンサイ、ブリタニカ、ハナビ、列車、自動車、チーズ転がし、チューリップ市、オリンピックと、猫の使い魔が語った文化は多種にわたり、トリステイン(ラ・ヴァリエール領)を中心に貴族・平民を問わない知識・技術を伝えていった。
不思議なことに伝えられた知識の中に「軍事・武器・兵器」にまつわるものは一切なかった。
『戦争』の説明を受けた猫の使い魔曰く「マイヤー様たちが教えてくれなかったし、人間の方が残した記録にもなかった」そうだ。
学院卒業後、ルイズは争いを知らない猫の使い魔のため、軍人ではなく文官としての道を選んだ。
使い魔の知識を元に優秀な文官として働いた彼女は、トリステインに大きな益をもたらした事で
主従とも王女(のちに女王)に重用され、ヴァリエール家の名をそう貶めることなく幸せに暮らしたという。
さらに後、猫の使い魔の話を伝え聞いた人々が、この二人にあやかろうと「富をもたらす『マネキネコ』」という置物も作られた。
この猫の模様はトラジマであったという。
ただ、某虚無の使い手に異世界より召喚された某人間の使い魔はこうのたまったとか。
「……なんかこの世界の人たち勘違いしてねぇか!?」
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