「使い魔さま」(2009/04/01 (水) 16:00:20) の最新版変更点
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「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!」
ルイズが呪文を唱え召喚したのは……。何というか、変な生き物だった。
二頭身で巫女服を着た猫耳の女の子?
そんな姿の生き物である。
「あんた誰? っていうか、何?」
「誰と言われましても、猫神さまですとしか言いようがないわけですが」
「猫……神……? 神様? あんたが?」
「いえいえ、そう呼ばれているだけで、別に神様ってわけじゃないんですけどね」
何なのよそれは? と頭を捻って考えていると、監督責任者の教師コルベールが声をかけてきた。
「ミス・ヴァリエール。きみは一人で何をブツブツ言っているのかね?」
「一人で? ってミスタ・コルベール。これが目に入らないって言うんですか!」
憤慨して、猫神さまを指差して見せるが、コルベールは何もいないですよと言わんばかりにキョロキョロと視線を迷わせ、メガネをハンカチで拭いてみたりもするが、やっぱり猫神さまを視界にいれない。
「どういうこと?」
「どうもこうも、私の姿は見える人と見えない人がいるってだけですよ。というか、大抵の人は見えないんですけどね」
大抵の人は見えない? と、周りを見回すと、なるほど確かに他の人間には見えてないらしく、他の生徒たちがこちらを指差して、「ゼロのルイズが、魔法の失敗のし過ぎで、ついに頭がおかしくなったらしいぞ」なんて言っている。失礼な!
「なんなのよ、あんた! なんでわたしにしか見えないのよ! オバケだとでも言うつもり!」
感情に任せて叫んだ瞬間、小さな悲鳴が上がり、何かが倒れる音がする。
へ? と、そちらを振り返ると、そこには気を失ったらしい青い髪の少女と、それを介抱しようとしているらしい赤毛の少女。
「自分がサモン・サーヴァントに失敗したからって、一番凄い使い魔を召喚したタバサにオバケがどうのと言って嫌がらせをするなんて。ルイズ、恐ろしい子」
何のこと? と思うが、赤毛の少女、キュルケはタバサを連れてさっさと学院に戻っていってしまう。
「おやおや、人を妬んで嫌がらせとは、心の貧しい人ですね」
やれやれと肩をすくめ、ため息をつくそいつを、ルイズは力任せに投げつけた。ただひたすら遠くへ。
「ははあ。つまり、私はルイズさんの使い魔として召喚されたと?」
寮に戻ってきて、猫神さまに春の使い魔召喚の儀式についての説明をして返ってきた言葉がこれであった。
「そ。これには、進級がかかってるんだけど……。あんたが、わたしにしか見えないせいで、落第決定だわ」
「おやおや。そんな風に失敗を人のせいにしていては、立派な大人になれませんよ」
「あんたのせいよ!」
ガシャンッ、と音を立てて割れる窓ガラス。
わざわざ、こちらの神経を逆撫でするような物言いばかりの使い魔に、ついにぶち切れたルイズが猫神さまを投げ捨てたのであった。
「もう寝るわ」
「それを人は現実逃避というのですよ」
「ほっといて」
そうして彼女は布団に潜り込む。そして、うなされた。
「って、何なのよ!」
と眼を向けた先には、恨めしそうな顔を向けてくる半透明の人たち。そして彼女は悲鳴を上げる。そりゃもう盛大に。
「ちょっと、ルイズ。あんた、なにこんな時間に大声上げてんのよ」
そう言って入ってきた隣室の住人であるキュルケに、半透明の人たちを指差して指摘してみるが、「何もないじゃない。寝ぼけるて大声だすのとか止めてよね。迷惑だから」と言い捨てて出て行ってしまう。
「どういうことなのよ」
呆然と呟いた言葉に、答える声があった。
「なるほど。ルイズさんは見える人だったから私が見えたんじゃなく、私を召喚したから見えるようになったんですね」
「どういうことよ?」
「いや、よくあることなんですよ。それまで見えなかった人が、何かのきっかけで急に視えるようになるって事が」
「それじゃあ何? 今までは見えなかっただけで、この部屋には最初から半透明の人たちが住んでたってこと?」
「いえ、この幽霊たちは、私と一緒に召喚されてきた人たちですね」
ぱりーん!
「話の途中で窓に投げるのはどうかと思いますよ」
「どうでもいいわよ。それより、あんたと一緒に来たってどういうことよ?」
「いえね。私が前にいたところには、幽霊をひきつけやすい人が住んでたんですが、幽霊を追い払おうって話になりまして。
それで、どこに追い払おうかって話をしていた時に変な鏡と言うか空間の穴と言うかがあるのを見つけまして、ちょうどいいからそこに捨てていたら私もそこに落ち込んでしまいまして……」
ガシャーンッ!
「……気が付いたら、ここにって、おおうっ! 何か凄い飛距離を投げられてますよ私」
それが、ゼロのルイズの人生をそれまでとは大きく変えていく使い魔との出会いであった。
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