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「ときめきメモリアル0-1」(2007/07/30 (月) 19:29:05) の最新版変更点
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春の穏やかな日差しも、夕暮れになると目を指すような激しい光りに変わる。
しかし、夕焼けに染まる校舎を見つめていると、一種の侘しさと懐かしさに包まれてしまうのは何故なんだろうか。
美術部員のぼくは、校庭の隅に生える大きな一本の樹木を描いた風景画をキリの良いところまで仕上げると、帰り支度を始めた。
それが終われば、真っ直ぐに校門に向かう。ぼくと同じ様に、部活を終えた生徒達がぞろぞろと帰路に着き始めていた。
「小波(こなみ)くん」
自分の名前が背後から飛んで来たのに気付いたぼくは、校外に向けて歩く足を止めて後ろを振り返った。
そこには、桃色をした髪をヘアバンドで纏めた少女の姿があった。
水気を多く含んだ瞳に、何も塗っていないのに、きらきらとした照りのある唇。
みずみずしい肌に、つんと整った鼻。
ぼくの幼なじみである、--藤崎詩織だった。
「詩織…」
「今、帰り?」
「うん、まあね」
「じゃあ、一緒に帰ろうよ、いいよね?」
詩織の整った顔に微笑みが浮かぶ。
そんな顔で頼まれたら、断れるわけがない。ぼくは、詩織に密かな想いを寄せているのだから…。
「もちろん」
ぼくと詩織は肩を並べて歩き出した。
彼女の髪が春の風に揺れ、ぼくの首筋をさする。
胸がとくんと波打った。
「ねえ。小波くんは今日の進路希望の紙になんて書いたの?」
「え、普通に大学進学希望ってだけど。詩織は?」
「私も同じ。まだ、やりたいことがはっきりしてないしね。私にはもう少し時間が必要なんだと思う。いくらあっても足りないね、時間って」
詩織の言葉は、まるで老齢した魔女のそれに思えた。
「そうかもな」
「小波くんは、夢ってある?」
唐突な質問に、しばし、逡巡した後、ぼくは言った。
「特にはないかな…、まぁ、おいおい決めるよ」
もちろん、この言葉は嘘だ。
詩織と将来を共にしたい、そんな夢を語れるわけがなかった。
「小波くんらしいね」
詩織が笑う。
ぼくはこの言葉の真意を計りかねた。皮肉ではないんだろうが、よく分からなかったのだ。
ぼくが黙したままでいると、詩織が口を開いた
「でも、まだ、二年生になったばかりなのに、進路希望とかって、早すぎじゃないかな?」
「どうかな。一年なんてあっと言う間に過ぎたし、卒業もあっと言う間に訪れるかもな」
「淋しいよ、そんなの…」
詩織が沈んだ声で言う。
「…だけど、一年の時の思い出なんて、あまり、ないしなぁ。気付いたら二年になってたって感じだし」
「だったらこれから、思い出を作ればいいじゃない」
「そう簡単に作れるかな」
「作れるよ、きっと」
詩織は足を早めると、ぼくの前に立ち塞がった。
「後、二年もあるんだよ。素敵な思い出…、絶対、作れるよ」
よくもまあ、こんな気恥ずかしい台詞を…。
だけど、夕日の後光を浴びた詩織はいつも以上に美しく見えた。
「うん、そうかもね」
詩織の言う通り、この後のぼくは、一生、忘れる事のできない思い出を、際限なく積み上げていくことになる。
残念なことに、この世界での思い出ではなかったのだけど。
詩織の家の前に着き、ぼくらは別れた。
ぼくの家は詩織の家のすぐそばにある。
だけど、詩織と下校を共に出来た為、普段よりも気分の高ぶっていたぼくは、しばらく散歩をすることに決めた。
それが、全ての始まりだったのだ。
近所の空き地に、光る鏡のようなものを見つけたぼくは、それをまじまじと見つめた。
無意識に左手が伸びる。
その瞬間、ぼくは激しい電流の様な衝撃に襲われた。
ぼくは、簡単に気絶した。
そして、目を覚ますと…。
そこはファンタジーだったのである。
三択で始まる恋物語幕が…。
今、幕を上げる。
春の穏やかな日差しも、夕暮れになると目を指すような激しい光りに変わる。
しかし、夕焼けに染まる校舎を見つめていると、一種の侘しさと懐かしさに包まれてしまうのは何故なんだろうか。
美術部員のぼくは、校庭の隅に生える大きな一本の樹木を描いた風景画をキリの良いところまで仕上げると、帰り支度を始めた。
それが終われば、真っ直ぐに校門に向かう。ぼくと同じ様に、部活を終えた生徒達がぞろぞろと帰路に着き始めていた。
「小波(こなみ)くん」
自分の名前が背後から飛んで来たのに気付いたぼくは、校外に向けて歩く足を止めて後ろを振り返った。
そこには、桃色をした髪をヘアバンドで纏めた少女の姿があった。
水気を多く含んだ瞳に、何も塗っていないのに、きらきらとした照りのある唇。
みずみずしい肌に、つんと整った鼻。
ぼくの幼なじみである、--藤崎詩織だった。
「詩織…」
「今、帰り?」
「うん、まあね」
「じゃあ、一緒に帰ろうよ、いいよね?」
詩織の整った顔に微笑みが浮かぶ。
そんな顔で頼まれたら、断れるわけがない。ぼくは、詩織に密かな想いを寄せているのだから…。
「もちろん」
ぼくと詩織は肩を並べて歩き出した。
彼女の髪が春の風に揺れ、ぼくの首筋をさする。
胸がとくんと波打った。
「ねえ。小波くんは今日の進路希望の紙になんて書いたの?」
「え、普通に大学進学希望ってだけど。詩織は?」
「私も同じ。まだ、やりたいことがはっきりしてないしね。私にはもう少し時間が必要なんだと思う。いくらあっても足りないね、時間って」
詩織の言葉は、まるで老齢した魔女のそれに思えた。
「そうかもな」
「小波くんは、夢ってある?」
唐突な質問に、しばし、逡巡した後、ぼくは言った。
「特にはないかな…、まぁ、おいおい決めるよ」
もちろん、この言葉は嘘だ。
詩織と将来を共にしたい、そんな夢を語れるわけがなかった。
「小波くんらしいね」
詩織が笑う。
ぼくはこの言葉の真意を計りかねた。皮肉ではないんだろうが、よく分からなかったのだ。
ぼくが黙したままでいると、詩織が口を開いた
「でも、まだ、二年生になったばかりなのに、進路希望とかって、早すぎじゃないかな?」
「どうかな。一年なんてあっと言う間に過ぎたし、卒業もあっと言う間に訪れるかもな」
「淋しいよ、そんなの…」
詩織が沈んだ声で言う。
「…だけど、一年の時の思い出なんて、あまり、ないしなぁ。気付いたら二年になってたって感じだし」
「だったらこれから、思い出を作ればいいじゃない」
「そう簡単に作れるかな」
「作れるよ、きっと」
詩織は足を早めると、ぼくの前に立ち塞がった。
「後、二年もあるんだよ。素敵な思い出…、絶対、作れるよ」
よくもまあ、こんな気恥ずかしい台詞を…。
だけど、夕日の後光を浴びた詩織はいつも以上に美しく見えた。
「うん、そうかもね」
詩織の言う通り、この後のぼくは、一生、忘れる事のできない思い出を、際限なく積み上げていくことになる。
残念なことに、この世界での思い出ではなかったのだけど。
詩織の家の前に着き、ぼくらは別れた。
ぼくの家は詩織の家のすぐそばにある。
だけど、詩織と下校を共に出来た為、普段よりも気分の高ぶっていたぼくは、しばらく散歩をすることに決めた。
それが、全ての始まりだったのだ。
近所の空き地に、光る鏡のようなものを見つけたぼくは、それをまじまじと見つめた。
無意識に左手が伸びる。
その瞬間、激しい電流の様な衝撃に襲われたぼくは、簡単に気絶した。
そして、目を覚ますと…。
そこはファンタジーだったのである。
三択で始まる恋物語が…。
今、幕を上げる。
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