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「ゼロの黒魔道士-06」(2008/12/02 (火) 22:36:04) の最新版変更点
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#navi(ゼロの黒魔道士)
…痛い…痛い…体中が痛むんだ…
「ギーシュ!いい加減にしてっ!!もうやめてっ!!」
「いいや、やめないね、ゼロのルイズ…それとも、君が僕に土下座をするかい?」
…体も痛むけど…心が…もっと痛かった…
―ゼロの黒魔道士―
~第六幕~Vamo' alla flamenco!
「諸君!さぁ決闘のはじまりだ!」
「わたたた!?」ドサッ
…引きずられて…投げられて…たどり着いたのは、ヴェストリの広場ってところだったんだ…
既にひとだかりができて…野次馬ができてた…ボクらの…その…
「うぅ…あ、あの…決闘って…」
ボクは、決闘をするつもりは無かったんだ…
「ふんっ!この僕を侮辱しておいて今さら命乞いかい?そうは問屋がおろさないよっ!ワルキューレッ!」
…ギーシュがバラを振ったんだ
…ズンッと音がして、金属の甲冑がギーシュの目の前に現れる…しかも、剣を持って…
…こっちの魔法って、こんなこともできるんだ…
「僕はメイジだから、当然魔法を使わせてもらうっ!さぁ、始めよう!」
…周りからは「口上が長いぞー!」とか「はじめろー!」とか「血を見せろぉぉぉ!」なんて声が聞こえる…
「ま、まってよ、ぼ、ボクは決闘なんて…」
「ワルキューレ…やれ!!!」
ガシャンッという音がして、甲冑がボクに向かってくる…
と、とりあえず食い止めなくっちゃ…
「時を知る精霊よ、因果司る神の手から…」
…何度となく戦闘で唱えた呪文…食い止めるなら、この呪文だよね…
でも、この呪文は外すことも多いから、集中して、集中して…
「ブツブツとつぶやいて、ブリミルへの祈りかいっ?覚悟したまえっ!!」
…ガッと音がして剣が目の前に突き刺さる…なんとか、寸前で避けれた…そして、詠唱が完成する…
「…我を隠したまえ… ストップ!」ピルルルルル…カシッ!
…どうやら成功したみたいだ…甲冑は剣を引き抜こうとした体勢のまま時の流れを止められて固まる…
でも、変だなぁ…いつもより…そう、杖も無いのに…魔力の流れがはっきり分かるや…?
「おいおい、どーしたギーシュー!」
「さっさと殺せーっ!」
「くっ…ワルキューレっ!?動かないだとっ!?」
…ギーシュが必死にバラを振っている…今のうちに説得しなくちゃ…
「あの…ギーシュ…さん…?ボクは決闘なんて…」
「ふんっ!だがまだ決闘が終わったわけではないっ!!」
ズンッと音がして、今度は斧をもった甲冑が出現する…
…うぅ話を聞いてくれない…
「ぎ、ギーシュさんっ!話を聞いてくだs」
「平民の戯言ならば、あとでじっくり聞いてやろうっ!土下座でもしてもらってな!いけっ!ワルキューレっ!!」
…どうしよう…別の食い止め方で止まってもらうしかないかなぁ…
「肉体の棺に宿りし病める魂を 永劫の闇へ還したまえ…」
「そこだぁっ!!」
「ブレイクッ!!!」ピシィッ
…甲冑が、斧が、目前まで迫った状態で石像みたいにピッシリと固まる…
…やっぱりだ…魔力の流れがはっきり分かって…当てやすい…これも結構外しやすい魔法なのに…
「なっ…鎌金だとっ!?」
「お、おい…あの平民、鎌金を使ったぞ…」
「しかも動いてるゴーレム相手に…マジかよ?」
「お、おい、あいつ、杖とか持ってたか!?」
…周りの野次馬がどよめくのが分かる…うーん?…みんな魔法を使ってるのに、なんでそんな不思議そうなんだろう…?
「そうか…君はメイジだったのか…」
「え、あ、あの、ギーシュ…さん?」
「よくもこの僕をたばかってくれたなぁぁっ!!」
…うぅぅぅ…ま、ますます怒ってる…どうしよう…
「そこまでよ、ギーシュッ!」
「…ゼロのルイズ…」
「ルイズおねえちゃんっ!?」
…慌てて走ってきたのか、息を切らせながらルイズおねえちゃんがボクの前に立ったんだ…
「やめなさいっ!!恥ずかしくないの!?こんなちっちゃい子相手にっ!!!」
「ルイズおねえちゃん…」
「なんだね、ルイズ、やはり君が代わりに決闘でも?」
ルイズおねえちゃんのズンズンズンズンッ…さらに5体の甲冑が現れる…
「君がメイジというならば、最早手加減は無用っ!!」
「め、メイジなら決闘は禁止でしょうっ!やめなさいっ!ギーシュッ!!」
「確かに、メイジならば決闘は禁止だがね…」
…ゴゴッと背後で音がした…そう思ったときにはもう遅かったんだ…
ゴッッ「うわぁぁっ!?」
「ビビィッ!?」
「『貴族相手』以外の決闘は禁止されてないんだよ、ゼロのルイズ!」
…油断したんだ…まさか、「石化」状態から「錬金」ってできるなんて…
2体目の甲冑が復活して…ボクは思いっきり殴られた…
…痛い…痛い…体中が痛むんだ…
「ギーシュ!いい加減にしてっ!!もうやめてっ!!」
…ボクは6体の甲冑に取り囲まれて…詠唱の時間も無かった…
…じわじわと…ボクはなぶりものに…剣でちょっとずつ切られて、盾で殴られて…体中が痛いんだ…でも…
「いいや、やめないね、ゼロのルイズ…それとも、君が僕に土下座をするかい?」
…体も痛むけど…心が…もっと痛かった…
「魔法が使えると思ったが、所詮この程度…そうか、大方そのとんがり帽子がマジックアイテムなんだな?」
…どうして…こんなに痛いんだろう…
「ふんっ!どうやら、ゼロのルイズ共々、使えない…使い魔を見ればメイジの実力が分かる、と言うが納得だな!!」
…そうか…悔しいんだ…
ボクはぐっと握りこぶしを作る
「ふん、まだ立ち上がろうと言うのかね?」
「もうやめてぇっ!!」
…ルイズおねえちゃんが、素直になれないけど、頑張り屋のルイズおねえちゃんが…
ボクはフラフラになりながら立ち上がる
「一体、どうしようと言うのかね、平民の、ゼロの使い魔君!もしや、靴でも舐めて許しを乞う気かね?」
…ルイズおねえちゃんが、バカにされるのが許せないんだ…
ボクはフラフラになりながら固まった甲冑の持っていた剣にしがみつく
「ビビッ、もういいのっ!もう立たなくていいのっ!!ギーシュ、お願い、やめてぇっ!!」
…ボクは…そうボクは…
ボクはゆっくりと息を吸う。左手が仄かに光った気がするけど気にしない
「謝るなら許してやらないでもない…『ゼロの使い魔のくせに貴族様に逆らってどうもすいませんでした』とでも土下座するならばな!」
…ルイズおねえちゃんの…
ボクはゆっくりと前を向く、ギーシュの方を、そして唱えるのは勇気をくれたあの呪文
「いいかげんにしろよなコノヤローッ!!」
…ルイズおねえちゃんの使い魔なんだ!!
ボクの体に力が満ちる。ボクの左手が輝きを増す
「なっ…フンッ!いいだろう!ならば一思いに殺してやるっ!!囲め!ワルキューレ部隊っ!!」
ガシャガシャと甲冑達がボクを取り囲み距離を整える…まだだ…まだ早い…
「…かかれぇっ!!!」
ガシャッと音がして剣が、斧が、盾が…ボクの「いたところ」に襲いかかる…
「なぁっ!?」
「と、跳んだっ!?」
「しかもあんなに高くっ!?」
「おい、やっぱりあいつメイジじゃ…」
…左手にぐっと力を入れて、剣を基点にして、ボクは跳んだ…
考えた戦略なんかじゃない…剣をにぎったときに、頭の中に何故か流れ込んできたんだ…どうすれば「敵を倒せるか」って…
「くっ…だが空では動きが取りにくかろう!」
…確かに、空飛ぶ魔法を知らないボクじゃ、回避行動はこのまま取れない…
…でも、想像以上の高さに跳べた…だから、時間が稼げたんだ…
「落ちてきたところをやれっ!ワルキューレッ!!」
「天空を満たす光…」
そう、詠唱をする時間が…
「ビビぃぃぃぃぃぃ!!!」
「…一条に集いて…」
ルイズおねえちゃんを、バカにさせないための…
「死ねぇぇぇっ!!」
「…神の裁きとなれ!」
使い魔として…おねえちゃんを守るための…
「サンダガ!!!!」
魔法を唱える時間が!
ビシャァァァァァァンッ!!!…ガシャ…ガシャガシャンッ
一か所に集まっていた甲冑達は、「サンダガ」の威力に耐えられなかったのか、あっけなく崩れ去った…
「お、おい、まさか…」
「あの『ゼロ』の平民が…」
「勝ちやがったぁぁぁっ!?!?!?」
ドッという歓声が、驚きが、広がるのが分かった…
…ルイズおねえちゃん…ボク…これでいいんだよね…?
ドサッ「あたっ!?」
…着地のことは考えてなかったなぁ…いてて…頭から落ちちゃった…
ピコン
~おまけ~
ATE ―遠見の鏡―
二人の男が、造りのしっかりした部屋からその決闘を眺めていた
「…さて、勝ちよったのぅ…あの少年…」
片方は髭の老人、片方は頭寂しき男
「…えぇ…なんですか、あの雷は!?風のスクウェアクラスでもあそこまでは…!」
…「遠見の鏡」というマジックアイテムを用いて、である
遠く離れた位置にあるこの学院長室から色々と見渡せるアイテムだ
「ふむ…しかも、じゃ、剣を握った左手が光よったのぅ…」
「え、えぇ!やはりあれは『ガンダールヴ』のっ!!」
机の上には、スケッチと古ぼけた本が一冊、そこに描かれた絵は酷似している
「…じゃが、グラモン家のバカ息子に止めを刺したのは、剣ではなく魔法じゃぞい?」
「えぇ、えぇ!!しかも、いやはやあんな雷は…」
「うむ、しかも使いよった魔法は雷だけじゃないのぅ…」
「えぇ!まさか動いているゴーレムを石にするとは…」
「それだけではない、と気づいておるかおぬし?」
「え…それでは…最初のはまさかミスタ・グラモンの操作ミスでなく…」
「うむ…あの少年が止めたように見受けられるのう…呪文を詠唱しておるようじゃったし…」
「な、なんと…!風の障壁ですか!?しかしそれにしては痕跡が…」
「うむ…あれは…『時を止めた』かのように見えるのぅ…」
「ま、まさかそのような魔法はどの系統にも…」
「…急ぎ、話を聞かねばならぬな…」
コンコンコンと軽くノックの音がする
「ふむ、どなたじゃな?」
「ロングビルです、『眠りの鐘』使用を差し止めに向かいましたが、その前に決闘が終わったようでして…」
緑髪の妙齢の女性が学院長部屋に入ってくる。眼鏡が理知的な印象を周囲に与える
「ふむ…ミス・ロングビル、御足労じゃが、今度はミス・ヴァリエールとその使い魔の少年をここへ呼んでくれぬかのぅ?大至急じゃぞ?」
「あら、はいはい…人使いが激しいことですわ…ねっ!!」
ガンッ!と音がして床が踏みつけられるそのすぐ脇からチョロチョロとネズミが1匹逃げてくる
「おぅおぅ…もっとお手やわらに頼むぞぃ…何、見えなかった?残念じゃのぅ…」
「…何を見ようとしたんですか、あんたは…」
先ほどまでの考察の鋭さを打ち消すかのような老人の行動に、気苦労からか禿頭よりまた1本離脱者が出た
#navi(ゼロの黒魔道士)
#navi(ゼロの黒魔道士)
…痛い…痛い…体中が痛むんだ…
「ギーシュ!いい加減にしてっ!!もうやめてっ!!」
「いいや、やめないね、ゼロのルイズ…それとも、君が僕に土下座をするかい?」
…体も痛むけど…心が…もっと痛かった…
―ゼロの黒魔道士―
~第六幕~Vamo' alla flamenco!
「諸君!さぁ決闘のはじまりだ!」
「わたたた!?」ドサッ
…引きずられて…投げられて…たどり着いたのは、ヴェストリの広場ってところだったんだ…
既にひとだかりができて…野次馬ができてた…ボクらの…その…
「うぅ…あ、あの…決闘って…」
ボクは、決闘をするつもりは無かったんだ…
「ふんっ!この僕を侮辱しておいて今さら命乞いかい?そうは問屋がおろさないよっ!ワルキューレッ!」
…ギーシュがバラを振ったんだ
…ズンッと音がして、金属の甲冑がギーシュの目の前に現れる…しかも、剣を持って…
…こっちの魔法って、こんなこともできるんだ…
「僕はメイジだから、当然魔法を使わせてもらうっ!さぁ、始めよう!」
…周りからは「口上が長いぞー!」とか「はじめろー!」とか「血を見せろぉぉぉ!」なんて声が聞こえる…
「ま、まってよ、ぼ、ボクは決闘なんて…」
「ワルキューレ…やれ!!!」
ガシャンッという音がして、甲冑がボクに向かってくる…
と、とりあえず食い止めなくっちゃ…
「時を知る精霊よ、因果司る神の手から…」
…何度となく戦闘で唱えた呪文…食い止めるなら、この呪文だよね…
でも、この呪文は外すことも多いから、集中して、集中して…
「ブツブツとつぶやいて、ブリミルへの祈りかいっ?覚悟したまえっ!!」
…ガッと音がして剣が目の前に突き刺さる…なんとか、寸前で避けれた…そして、詠唱が完成する…
「…我を隠したまえ… ストップ!」ピルルルルル…カシッ!
…どうやら成功したみたいだ…甲冑は剣を引き抜こうとした体勢のまま時の流れを止められて固まる…
でも、変だなぁ…いつもより…そう、杖も無いのに…魔力の流れがはっきり分かるや…?
「おいおい、どーしたギーシュー!」
「さっさと殺せーっ!」
「くっ…ワルキューレっ!?動かないだとっ!?」
…ギーシュが必死にバラを振っている…今のうちに説得しなくちゃ…
「あの…ギーシュ…さん…?ボクは決闘なんて…」
「ふんっ!だがまだ決闘が終わったわけではないっ!!」
ズンッと音がして、今度は斧をもった甲冑が出現する…
…うぅ話を聞いてくれない…
「ぎ、ギーシュさんっ!話を聞いてくだs」
「平民の戯言ならば、あとでじっくり聞いてやろうっ!土下座でもしてもらってな!いけっ!ワルキューレっ!!」
…どうしよう…別の食い止め方で止まってもらうしかないかなぁ…
「肉体の棺に宿りし病める魂を 永劫の闇へ還したまえ…」
「そこだぁっ!!」
「ブレイクッ!!!」ピシィッ
…甲冑が、斧が、目前まで迫った状態で石像みたいにピッシリと固まる…
…やっぱりだ…魔力の流れがはっきり分かって…当てやすい…これも結構外しやすい魔法なのに…
「なっ…錬金だとっ!?」
「お、おい…あの平民、錬金を使ったぞ…」
「しかも動いてるゴーレム相手に…マジかよ?」
「お、おい、あいつ、杖とか持ってたか!?」
…周りの野次馬がどよめくのが分かる…うーん?…みんな魔法を使ってるのに、なんでそんな不思議そうなんだろう…?
「そうか…君はメイジだったのか…」
「え、あ、あの、ギーシュ…さん?」
「よくもこの僕をたばかってくれたなぁぁっ!!」
…うぅぅぅ…ま、ますます怒ってる…どうしよう…
「そこまでよ、ギーシュッ!」
「…ゼロのルイズ…」
「ルイズおねえちゃんっ!?」
…慌てて走ってきたのか、息を切らせながらルイズおねえちゃんがボクの前に立ったんだ…
「やめなさいっ!!恥ずかしくないの!?こんなちっちゃい子相手にっ!!!」
「ルイズおねえちゃん…」
「なんだね、ルイズ、やはり君が代わりに決闘でも?」
ルイズおねえちゃんのズンズンズンズンッ…さらに5体の甲冑が現れる…
「君がメイジというならば、最早手加減は無用っ!!」
「め、メイジなら決闘は禁止でしょうっ!やめなさいっ!ギーシュッ!!」
「確かに、メイジならば決闘は禁止だがね…」
…ゴゴッと背後で音がした…そう思ったときにはもう遅かったんだ…
ゴッッ「うわぁぁっ!?」
「ビビィッ!?」
「『貴族相手』以外の決闘は禁止されてないんだよ、ゼロのルイズ!」
…油断したんだ…まさか、「石化」状態から「錬金」ってできるなんて…
2体目の甲冑が復活して…ボクは思いっきり殴られた…
…痛い…痛い…体中が痛むんだ…
「ギーシュ!いい加減にしてっ!!もうやめてっ!!」
…ボクは6体の甲冑に取り囲まれて…詠唱の時間も無かった…
…じわじわと…ボクはなぶりものに…剣でちょっとずつ切られて、盾で殴られて…体中が痛いんだ…でも…
「いいや、やめないね、ゼロのルイズ…それとも、君が僕に土下座をするかい?」
…体も痛むけど…心が…もっと痛かった…
「魔法が使えると思ったが、所詮この程度…そうか、大方そのとんがり帽子がマジックアイテムなんだな?」
…どうして…こんなに痛いんだろう…
「ふんっ!どうやら、ゼロのルイズ共々、使えない…使い魔を見ればメイジの実力が分かる、と言うが納得だな!!」
…そうか…悔しいんだ…
ボクはぐっと握りこぶしを作る
「ふん、まだ立ち上がろうと言うのかね?」
「もうやめてぇっ!!」
…ルイズおねえちゃんが、素直になれないけど、頑張り屋のルイズおねえちゃんが…
ボクはフラフラになりながら立ち上がる
「一体、どうしようと言うのかね、平民の、ゼロの使い魔君!もしや、靴でも舐めて許しを乞う気かね?」
…ルイズおねえちゃんが、バカにされるのが許せないんだ…
ボクはフラフラになりながら固まった甲冑の持っていた剣にしがみつく
「ビビッ、もういいのっ!もう立たなくていいのっ!!ギーシュ、お願い、やめてぇっ!!」
…ボクは…そうボクは…
ボクはゆっくりと息を吸う。左手が仄かに光った気がするけど気にしない
「謝るなら許してやらないでもない…『ゼロの使い魔のくせに貴族様に逆らってどうもすいませんでした』とでも土下座するならばな!」
…ルイズおねえちゃんの…
ボクはゆっくりと前を向く、ギーシュの方を、そして唱えるのは勇気をくれたあの呪文
「いいかげんにしろよなコノヤローッ!!」
…ルイズおねえちゃんの使い魔なんだ!!
ボクの体に力が満ちる。ボクの左手が輝きを増す
「なっ…フンッ!いいだろう!ならば一思いに殺してやるっ!!囲め!ワルキューレ部隊っ!!」
ガシャガシャと甲冑達がボクを取り囲み距離を整える…まだだ…まだ早い…
「…かかれぇっ!!!」
ガシャッと音がして剣が、斧が、盾が…ボクの「いたところ」に襲いかかる…
「なぁっ!?」
「と、跳んだっ!?」
「しかもあんなに高くっ!?」
「おい、やっぱりあいつメイジじゃ…」
…左手にぐっと力を入れて、剣を基点にして、ボクは跳んだ…
考えた戦略なんかじゃない…剣をにぎったときに、頭の中に何故か流れ込んできたんだ…どうすれば「敵を倒せるか」って…
「くっ…だが空では動きが取りにくかろう!」
…確かに、空飛ぶ魔法を知らないボクじゃ、回避行動はこのまま取れない…
…でも、想像以上の高さに跳べた…だから、時間が稼げたんだ…
「落ちてきたところをやれっ!ワルキューレッ!!」
「天空を満たす光…」
そう、詠唱をする時間が…
「ビビぃぃぃぃぃぃ!!!」
「…一条に集いて…」
ルイズおねえちゃんを、バカにさせないための…
「死ねぇぇぇっ!!」
「…神の裁きとなれ!」
使い魔として…おねえちゃんを守るための…
「サンダガ!!!!」
魔法を唱える時間が!
ビシャァァァァァァンッ!!!…ガシャ…ガシャガシャンッ
一か所に集まっていた甲冑達は、「サンダガ」の威力に耐えられなかったのか、あっけなく崩れ去った…
「お、おい、まさか…」
「あの『ゼロ』の平民が…」
「勝ちやがったぁぁぁっ!?!?!?」
ドッという歓声が、驚きが、広がるのが分かった…
…ルイズおねえちゃん…ボク…これでいいんだよね…?
ドサッ「あたっ!?」
…着地のことは考えてなかったなぁ…いてて…頭から落ちちゃった…
ピコン
~おまけ~
ATE ―遠見の鏡―
二人の男が、造りのしっかりした部屋からその決闘を眺めていた
「…さて、勝ちよったのぅ…あの少年…」
片方は髭の老人、片方は頭寂しき男
「…えぇ…なんですか、あの雷は!?風のスクウェアクラスでもあそこまでは…!」
…「遠見の鏡」というマジックアイテムを用いて、である
遠く離れた位置にあるこの学院長室から色々と見渡せるアイテムだ
「ふむ…しかも、じゃ、剣を握った左手が光よったのぅ…」
「え、えぇ!やはりあれは『ガンダールヴ』のっ!!」
机の上には、スケッチと古ぼけた本が一冊、そこに描かれた絵は酷似している
「…じゃが、グラモン家のバカ息子に止めを刺したのは、剣ではなく魔法じゃぞい?」
「えぇ、えぇ!!しかも、いやはやあんな雷は…」
「うむ、しかも使いよった魔法は雷だけじゃないのぅ…」
「えぇ!まさか動いているゴーレムを石にするとは…」
「それだけではない、と気づいておるかおぬし?」
「え…それでは…最初のはまさかミスタ・グラモンの操作ミスでなく…」
「うむ…あの少年が止めたように見受けられるのう…呪文を詠唱しておるようじゃったし…」
「な、なんと…!風の障壁ですか!?しかしそれにしては痕跡が…」
「うむ…あれは…『時を止めた』かのように見えるのぅ…」
「ま、まさかそのような魔法はどの系統にも…」
「…急ぎ、話を聞かねばならぬな…」
コンコンコンと軽くノックの音がする
「ふむ、どなたじゃな?」
「ロングビルです、『眠りの鐘』使用を差し止めに向かいましたが、その前に決闘が終わったようでして…」
緑髪の妙齢の女性が学院長部屋に入ってくる。眼鏡が理知的な印象を周囲に与える
「ふむ…ミス・ロングビル、御足労じゃが、今度はミス・ヴァリエールとその使い魔の少年をここへ呼んでくれぬかのぅ?大至急じゃぞ?」
「あら、はいはい…人使いが激しいことですわ…ねっ!!」
ガンッ!と音がして床が踏みつけられるそのすぐ脇からチョロチョロとネズミが1匹逃げてくる
「おぅおぅ…もっとお手やわらに頼むぞぃ…何、見えなかった?残念じゃのぅ…」
「…何を見ようとしたんですか、あんたは…」
先ほどまでの考察の鋭さを打ち消すかのような老人の行動に、気苦労からか禿頭よりまた1本離脱者が出た
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