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「蒼炎の使い魔-09」(2011/03/08 (火) 14:38:23) の最新版変更点
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#navi(蒼炎の使い魔)
夜
厨房を出たときはすっかり日も沈んでいた。
カイトは上機嫌で廊下を進んでいる。
もちろん主人の部屋に戻るためだ。
彼はご飯を食べただけですっかり厨房が好きになっていた。
シエスタも笑顔で、「また来てくださいね」と言ってくれた。
餌付けに近い行為だったが。
廊下を進み部屋に近づいたときにふとあるものを見つけた。
以前見たサラマンダーだ。
相変わらずこちらを見て震えている。
サラマンダー、フレイムはとあるクエストを受けている。
依頼者『主人』
クエスト名『ある人物をつれて来い』
対象レベル『(本人にとって)∞』
報酬『無し』
※ちなみに拒否権も無し。
強制されていた。
また主人が病気にかかったらしい。
そしてターゲットも彼(?)にとっては最悪の相手である。
命令されたらやらなければならないのが、使い魔の辛いところだ。
フレイムは覚悟を決めてこちらに向かってくるカイトの前に立つ。
そして、
「キュル…」
「…ハアアアアアア」
「キュルル」
「…ハアアアアアア」
「キュル?」
「ハアアアアアア」
本人達にしか分からない会話を繰り広げる。
やがて会話が通じたのだろうか。
部屋に戻るフレイムの後をカイトがついて行く。
中は薄暗くカイトは辺りを見回した。
突然ドアが独りでに閉まると、前方に薄暗い明かりがつく。
そこにいたのは、ベッドの上で男が見たら羨ましがる格好をしたキュルケの姿だった。
「ようこそ、そんなとこに立ってないでこちらにいらして?」
彼女は色っぽい声でカイトを誘惑する。
言われたとおりカイトは彼女の元へ近づいていく。
それを見てキュルケは続ける。
「私をはしたない女と…
…私は病…あなたの…
微熱…だから…」
黙る彼にキュルケはどんどん話していく。
これが彼女の病気である。
ようは惚れっぽいのだ。恋愛をゲームのように楽しんでいる。
だがカイトとしては意味が分からない。
今日食事を知ったばかりなのだ。
異性間のやり取りなど知るはずもない。
女好きの銃戦士なら喜んで誘いに乗るだろうが。
寒くないのか。
これがキュルケに対して思ったカイトの気持ちだった。
彼女の気分が最高潮に達したのだろうか立ち上がりカイトを抱きしめようとする…が。
突然来た窓からの来訪者に中断される。
どうやら彼女に用事があるようだ。
「キュルケ!その男は誰だ!」
「ペリッソン、えっと後2時間後に」
「話がちが…うわあああ!!」
最後まで話せずに彼は落ちていく。
キュルケが魔法を使ったのだ。
続けてまた一人の男が来る。
「キュルケ!s…!!」
問答無用で彼女は魔法を使いその男を落とした。
ちなみにここは3階だ。
落ちたときの怪我が心配だ。
まだまだ来訪者はどんどん来る。
もうカイトは置いてけぼりだ。
結局用事はなんだったのだろうか。
あまり遅すぎてもルイズに怒られるだろう。
忙しそうに問答無用で窓から男達を落していく彼女を見て静かに退室する。
「はあ、はあ。これで終わったわ…。あれ?」
キュルケは来た男を全員叩き落すと不思議そうに周りを見る。
先ほどまでいた愛しの彼が見当たらないのだ。
「フレイム、彼は?」
キュルと一声なく。フレイムもいつ居なくなったのか分からないようだ。
慌てて上着を着て廊下に出る。
それと同時に隣の部屋のドアが閉まる音がした。
「あら、お帰りカイト。遅かったわね」
「…ハアアアアアア」
中でルイズとカイトの声が聞こえる。
どうやら邪魔者を退治していたときに部屋に戻ってしまったようだ。
キュルケは無言で部屋に戻り、突然叫んだ。
「ふ、ふふふ…。見てなさい「微熱」の称号は伊達じゃないわ!!」
相手にされなかったのがよほど悔しかったのだろう。
ルイズの部屋
『伊達じゃないわ!!』
隣でキュルケが叫んでいるのが聞こえる。
「まったく、うるさいわね」
彼女は勉強の途中だったのだろう、顔をしかめていた。
「ところでカイト。部屋に戻るときはノックをして返事が来たら開けなさい」
「…ハアアアアア」
カイトはコクリと頷いた。
それに満足そうな顔をしてから勉強を続ける。
今日の復習をしているらしい。
カイトは邪魔にならないように後ろに立って黙っている。
誰かの邪魔をすることはやってはいけないとカイトは知っていた。
以前、緑の服を着た斬刀士と一緒に行動していたとき、
突然性質の悪いPCに付きまとわれたことがある。
ダンジョンで探索をしているときも話しかけてきた。
それを見て彼は一言笑顔で、
「人の嫌がることはやめなよ…」
と言って耳元で何かをボソボソ話しかけたのだ。
すると、まるで別人のように血相を変えて逃げてしまったのだ。
ルイズは知らない。
厨房でメイドに必要以上に気に入られてしまったこと。
ついさっきまでキュルケに誘惑されていたこと。
何も知らないほうが幸せなこともある。
彼女にとって今日はとても平和な1日だったそうな…
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