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#navi(KNIGHT-ZERO)
来華助戦 洋人(美國) 軍民一體救護
日中戦争時に国民党軍を支援したアメリカ合衆国義勇軍フライング・タイガースの証票より
指揮に用いていた水晶の杖で素早く攻撃の構えを取ったアンリエッタは、ルイズの姿を認めて杖を下げた
KITTに向かって押し寄せてくる騎兵や歩兵に、アルビオン兵への応戦に戻るように鋭く指示する
最前線での指揮で精神が昂ぶっていたアンリエッタは、突然やってきた幼馴染の女官に鋭い声を浴びせる
「ルイズ、ここは戦場よ!あなたは一体なんの積もりで・・・大体このオバケみたいな馬車は何なの?」
サイドウィンドを下ろしたルイズはドアの上に横座りしながら爪先でオートクルーズのスイッチを入れる
「ご紹介します、わたしの使い魔KITT、風竜より速く駆け、決して壊れぬ、異世界のガラクタです」
「しかし私の精密な制御システムを土足で操作されては、温厚な私とてヘソを曲げるかもしれませんよ」
「あんた姫様の御前よ、口を慎みなさい!てか頭が高い!車高思いっきり落としなさい!シャコタンよ!」
アンリエッタは目の前で繰り広げられるメイジと馬車の口喧嘩を唖然として眺めていたが、威厳ある声で
「あなたの参戦には感謝します、戦地の状況を確めたら学院にお帰りなさい、それで義務は果たされます」
ルイズはアンリエッタからの観戦文官扱いに動じず、今までアンが見たことのない山猫のような目で笑う
何か未知の力を得たルイズの瞳にアンの背筋が震えた、KITTはハコ乗りルイズの重いお尻に抗議した
「姫様、アルビオンの竜騎兵はわたしが引き付けます、彼らが低空に集まったところで仕留めてください」
ルイズは自信と自負、覚悟を窺わせる表情で王女に告げる、蛮勇や自信過剰とは違う確信に満ちた瞳
「何考えてるのルイズ?そんな事出来るわけないでしょ!相手はアルビオン最強の騎兵、本職の軍人よ」
「わたしとKITTならそれが出来ます、それはたった今、目の前で証明して差し上げました」
アンリエッタはルイズの瞳を見つめ、そしてKITTの赤いフロント・インジケーターを暫く見ていた
「・・・いいでしょう、しかし全軍の将として、貴女が危険になったとしても助けてはあげられませんよ」
ルイズはただニヤっと笑うと、手首からコミュニケーター・リンクを外してアンリエッタに放った
「わたしに御用の向きある時は、その小さな使い魔が承ります、では姫、吉報をお待ちください」
ルイズはシートに再び尻を落とすと、オートクルーズのKITTをパースートクルーズに切り替えた
そのまま姫の目の前でターンし、アルビオン竜騎兵が地上のトリスティン軍と衝突する方角へ疾走した
アンリエッタはその圧倒的な力がもたらす加速を見た時、なぜかこの戦の勝機を掴んだような気がした
上空から攻撃を加えていたアルビオンの竜騎兵、その先鋒部隊は奇妙な物を見た
高速で移動する黒い物体、召喚獣のようであり、馬でなく魔法で動く変り種の馬車のようでもある
ルイズは250km近い速度を火竜と同一の速度、120km程度に絞りながら、騎兵の下を走り回る
騎兵のうちの2体、火竜を駆る二人の騎兵が合図を交わしあいながらその物体の付近へと降下していく
当時の戦場には、自分のマジックアイテムや発明品を戦線に持ち込んで名を売ろうとする奇人が時々居て
そういう手合いは戦場に混乱を引き起こす前に撃退、破壊するのが前線指揮官にとっての常識だった
「ルイズ、上空に竜騎兵二騎接近、間もなく火炎放射兵器の射程圏内に入ります」
ルイズは戦闘機パイロットのように空を仰ぎ見た、半透明なルーフを通して2体の火竜が見える
次の瞬間、上空から激しい炎が滝のように降り注いだ、KITTの室内が一瞬、炎の光に照らされる
KITTは数十秒に渡って炎に焼かれた、閃光に反応して自動的に濃度を調整するクリアルーフの下で
ルイズは冷静にモニターを見て、KITTに攻撃を加える騎兵とその本隊との位置関係を確める
KITTは炎の中から、焼け焦げひとつ無い姿を現した、ルイズはアクセルをそのまま維持する
300km超の高速走行より困難な、他の移動物と同一速度の走行、両足を掌の様に使う敏感な操作
それらは草原でのKITTとの走行で特に念入りに教えられた、足が攣るような面倒な特訓だったが
タバサの使い魔である風竜の協力を得て、ルイズは背後を飛ぶ竜を一瞥もしないまま同調走行が出来た
それらの技術を習得した副産物として、ルイズが時々、足でスイッチや操縦桿を操るようになったのは
KITTにとって複雑な気持ちだったが、さっきは何やらそれが役立ったようなので、まぁ善しとした
男の一部が女に足で蹴られたり踏まれたり、刺激を受けたりする事を嗜好する気持ちが少しだけわかった
まるで竜騎兵を挑発するかのように悠然と走るKITT、風竜2騎が加わり、4騎の竜騎兵が取り囲む
今度は前方上空から、鋭く尖った無数の氷の破片が、KITTのボディとフロンドウィンドを叩いた
4人のメイジから氷魔法の直撃を受けたKITTは、掠り傷ひとつ負わずそのままの速度で走り続ける
続いて3騎がその黒い物体の攻撃に加わる、KITTとほぼ同じ大きさの鋼の槍を後ろから撃ちこんだ
1時間もせぬ内に、上空に展開していた騎兵のほとんどが群れを成しKITTを追いかけ回すようになった
ルイズはKITTを草原から潅木の広がる一帯に乗り入れた、防火用に切り開いた狭い通路を駆け抜ける
火竜での追従は可能だが前方に回りこむのは困難なKITTの速度、竜騎兵はKITTの後方に固まった
その時、疾走していたKITTが減速し始めた、馬が足を折ったか心臓を壊したかで、力尽きたように
ガクガクと不安定な走行を続けていたKITTは、潅木帯の真中で停止した、余力を振り絞るように震える
騎兵達は互いに合図を交し合った、このいかなる攻撃にも壊れない馬車状の召喚獣がついに倒されつつある
KITTの攻撃に当たっていたアルビオン騎兵の多くは亜人や竜、その他の大型獣との戦いを経験していた
それらを倒すのは強力な武器ではなく、水滴で穴を穿つかのような執拗な攻撃の積み重ねだと知っていた
それは生きるためマンモスやナウマンゾウに挑み、幾人もの犠牲を出しながら数十の槍や弓矢を突き立て
少しづつ力を削ぎ、勇敢な者々が放つ止めの一撃で巨大獣を倒していた頃からの普遍的な記憶だった
メイジ達は一致協力し、手負いの召喚獣に致命的な攻撃を食らわすべく集結し、KITTに接近した
彼らは気づかなかった。KITTが全くの無傷だった事に、あえて不安定な機動を行ったルイズの意図に
ルイズは絶妙のアクセル操作でKITTの断末魔を装って操縦した、この場所、このタイミングを選んで
背の高い潅木が広がる一体、その上空をアルビオン竜騎兵が通過する瞬間、暗色の潅木が一斉に動いた
潅木の中に隠れていたトリスティン兵、竜や馬を下りたメイジと、銃を手にした平民兵達が立ち上がった
魔法による攻撃、地上から4色の光が立ち昇る、そして攻撃の主であるマスケット銃の連続射撃
黒色火薬の発する大量の硝煙と土、水、火、風の魔法攻撃の余韻が引いた後、竜の鳴き声が響いた
翼を傷つけられたアルビオン竜騎兵が一斉に失速し地に落ちていく、上空に逃れ無事だった数騎の騎兵は
急上昇の準備を終えて待機していたトリスティン竜騎兵に追いつかれ、その火竜の攻撃で翼を焼かれた
アンリエッタはルイズから預かったコミュニケーター・リンクを通して彼女から通信を受けていた
「竜の羽根を撃って不時着させてください、もしも我が軍が騎兵や竜に対して致死的な攻撃を与えた場合
その時点で私とKITTは姫を『犯罪者』と認識し、トリスティン全軍を敵に回してでも逮捕いたします」
タルブへの道中でKITTと交わした約束、不殺は夢物語だけど、そうするための努力は最後までやめない
マイケルが病に冒され引退するまで、祖国アメリカの法と秩序のために戦っていたKITTの数奇な運命
ナイト4000計画の頓挫と財団の縮小化、博物館で余命を過ごしていたKITTはある日、光に包まれた
解析不能な現象を経てルイズと出会い、それによって得た新しい使命、それが何なのかはまだわからないが
守るべきは人命であることはKITTがナイト財団の研究所から生まれ出た時からの基本プログラムだった
不時着の衝撃で動けないアルビオンの騎兵はその場で重傷を負うことなくトリスティン兵に捕縛された
アンリエッタは水晶の杖に替わりその手に握り締めたコミュニケーター・リンクに「成功」と囁いた
コミュニケーター・リンクから不思議な声、KITTはアンリエッタ姫にただ一言「感謝いたします」
早くもコミュニケーター・リンクを無線機として使いこなすアンリエッタの目に、上空の巨大戦艦が映る
竜騎兵の全滅で一瞬輝いたアンリエッタの顔が、戦艦から突き出た百を超える砲身を見て暗い影を落とす
コミュニケーター・リンクから聞こえてきたルイズの「森に隠れて下さい」の声に従い、兵を後退させた
ルイズはKITTの機能を存分に使っていた、その中で最も活用されているKITTのサウンドシステムは
ケニー・ロギンスの「Danger Zone」に続き、ローリング・ストーンズの「黒く塗れ!」を流し終えた
Appleの音楽ソフトに似た再生デバイスは、ルイズの好みの曲を集めたジュークボックスを検索する
「とびっきりハードなのをお願い、『のーみゅーじっくのーらいふ』よ!生き残るためには音楽が必要なの」
KITTは求めに応じ、再生回数と演奏時にルイズが漏らした感想を集積したデータから最適の選曲をした
小倉生まれで 玄海育ち 口も荒いが 気も荒い
無法一代 涙を捨てて 度胸千両で 生きる身の 男一代 無法松
ルイズは『無法松の一生』を響かせながら、KITTと共にアルビオン軍旗艦レキシントンに挑んでいく
#navi(KNIGHT-ZERO)
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