「BLAME!の霧亥がルイズに召喚されたら? log_04」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「BLAME!の霧亥がルイズに召喚されたら? log_04」(2007/10/28 (日) 06:11:18) の最新版変更点
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「歩いていかないのか」
「城下町は遠いのよ。歩いていったら今日中には帰ってこれないわ。馬に乗るのよ」
「なんだこれは」
「だから、馬よ……まさか乗ったことが無いとか?」
「生きている」
「当たり前じゃない。死んでたら乗れないでしょ。私みたいに、そのまま跨ればいいのよ」
「……」
霧亥は始めて見る馬という生物に乗れ、と言われ冷や汗をかいていた。
そもそも制御できない意思を持った生命体に移動を依存するということが危険に思えてならなかった。
だが他に代替手段も無いと理解すると仕方なしに乗ることにした。時間を考えれば、手段は選べない。
「これが街か」
「そ、大きいでしょ!」
結局、馬に慣れるには幾らかの時間を要したが、何とか辿り着くまでには乗りこなせるようになっていた。
城下町も霧亥から見れば、狭く、うるさい。学院ですら雑多な環境に圧倒されていたが、ここは更に強烈な場所だった。
物売りが声を上げ、道端に食物が放置され、人々がそれを眺めたり取引を成立させたりしている。
急いでる人、のんびり歩いている人、老若男女、様々な人種がそこにひしめいていた。
「ブルドンネ街。この国で一番大きな通りよ。この先にトリスティンの宮殿があるわ」
「中央政府か」
「そういうことになるわね」
「そんなものがあるんだな」
「馬鹿ね。無ければどうやって国の事を決めていくのよ」
「企業が支配している場所があった」
「企業?わけわかんないわ……」
そのまま路地裏に向かって歩く。路地裏は更に不衛生で狭かった。
うずくまる人間、破砕された壁。悪臭の立ち込める溝。中ではゴミが腐敗している。
どうみても普通の人間――ましてやルイズが好き好んで寄り付くような場所ではなかった。
「おい」
「何よ」
「どこに行くつもりだ」
「武器屋よ。『守れ』っていうなら、それなりの道具は与えておかないといけないじゃない?」
「……」
「あ、ここよ。あったわ」
石段をあがり、羽扉を開け、店内に入る。中はランプが主な光源だからか、薄暗い。
そこには所狭しと武器や防具が並んで、奥には店主と思しき男がいた。
胡散臭げに、しかし値踏みするようにこちらを見つめる。
「旦那。何をしたかは聞きませんが、ウチは貴族のガキを売りに来る場所じゃありませんぜ。
そういうのを売りたけりゃ3軒隣の薬売りの婆さんに相談してみてくだせぇ。厄介ごとは御免ですよ」
「客よ」
ルイズがそう答えると武器屋の親父は2人を交互に見つめて首をかしげ、のそりと立ち上がった。
「こちらの旦那が剣を?失礼ですが、金は持ってるんでしょうね」
「これだけあれば足りる?」
懐から袋を取り出して何度か振ってみせる。中には少なからず金属の詰まっているような音が聞こえた。
親父は面倒くさそうにパイプを卓上に置いてと店の奥に入っていくと、小ぶりな剣を持って戻ってきた。
「こういうのを御所望で?」
「あら、綺麗な剣ね」
「昨今は宮廷貴族が下僕に武器を持たせるのが流行っているようでしてね。そういうとき選ぶのがこういうのですよ」
「下僕に剣を?どうして?」
「何でも貴族ばかりを狙った盗賊がいるようでしてね。『土くれ』のフーケというそうですよ」
盗賊には興味が無かったのか、ルイズが剣をじろじろと眺めている。
長さ1メートル。細身。手元を狙われにくくするためか、ハンドガードもついている。
「これでいいんじゃない?」
「すぐに折れる」
「そうなの?」
霧亥は周囲の武器に含まれる材質をいくつかスキャンしていた。
その結果、この剣では役不足だと判断したのだ。
「別のはあるかしら?」
「少々お待ちを」
今度は布で拭きながら、大きな剣を持ってくる。
柄は長く、随所に宝石が散りばめられ、刀身は光り輝いていた。
「すごい…」
「この店一番の業物、ゲルマニアの錬金術師、シュペー卿の作でさぁ。
なんでも魔法がかかってるらしく、鉄でも切れるんじゃないかって言われてますぜ」
「おいくら?」
ルイズは気に入ったようだった。1番、という言葉のもたらす魔力なのかもしれない。
一方、霧亥の視線は違った。魔法がどうかは計測できないが、材質だけ見れば単なる銅と錫の合金である。
「新金貨なら3000、エキューなら2000」
「立派な家と森付の庭が買えるじゃない」
「良い剣は城に匹敵することもありますぜ」
「ルイズ」
「だからって……何よ、霧亥」
「これは駄目だ。宝石は本物だが、刀身はさっきの剣のほうが硬い」
「わかるの?」
「ああ」
ルイズが驚いた表情で霧亥を見つめている。一方の店主も、面倒くさそうな表情とパイプの火を消した
腰を伸ばして霧亥をまっすぐ見つめると、ハッキリとした声でこう言ってきた。
「……たまげたね。モノを知らない貴族だと思って馬鹿にしていたが、旦那は大した目をお持ちだ。
確かにこいつは飾るほうの武器で、戦う為のモンじゃありやせん。いますぐ真っ当なモン持ってきやす」
「だはははは!おめぇの負けだな親父。素直に本物のシュペー卿の作品でも持ってくるしかねえなあ、こりゃ!」
「うるせぇデル公!目の節穴な貴族ばっかり相手にしてりゃ嫌気もさすってもんだ!ああ、そうだよ!俺の負け、大負けよ!」
「ここいらが年貢の納め時だな、親父よう!」
店の奥ではなくカウンターの下から箱を取り出したかと思うと、1本の長い剣と鞘を出してきた。
霧亥とルイズは声の主を探しているが、じきに霧亥が堆積した剣の奥から剣を引きずり出す。
錆の浮いた刀身は、その剣が長きに渡って使われずに放置されていることを示していた。
ガチガチと鍔のあたりが動き、そこから声を発しているように見えた。
「お、おお?なんだテメー、俺をどうするつもりだ?」
「お客さんすいません!そいつはデルフリンガーってインテリジェンスソードでさぁ。
口は悪いわ客に喧嘩は売るわで手を焼いてるんです。ウチが売るのは装備だけで十分だってのに」
「ケッ、何も知らずに武器について偉そうにしている連中が悪いのよう」
大剣と呼ぶには刀身が細いが、長さは遜色が無い。そのまま霧亥はデルフリンガーを片手で手にとって眺める。
「自我を持っているのか?素材も他のとは随分違う。さっきの2つよりも硬い」
「…おでれーた。こりゃ親父を笑えんね。しかも、てめ『使い手』か」
「『使い手』って何だ」
「フン、何だ。おめ、自分の実力もしらねーのか」
「……スロットついているか?」
「あン?なんだそりゃ」
「これは理解できるか?」
「ちょっと霧亥!なにやってるのよ!」
ルイズの言葉は耳に入らないかのように、店主やルイズに聞きなれない言語――音と言ってもいい――を口にする。
0100101011010101110――
『ッハァ!?何だテメーは!なんで俺ッチの始祖の言語を知ってやがる!60世紀ぶりに聞いたぜ!』
『お前はどこから来た。』
『ワリーが今すぐには思い出せねえ。てめ、マジで何モンだ?始祖ブリミルだってこの言葉は知らないはずだぜ』
『情報が欲しい。』
『いいぜ。だが俺の記憶は上代みたくはいかねえ。素材の魔力的侵食と精神構造からか、もう随分と欠落しちまって治せないんだ。
人間たちの言葉なら「忘れた」っていえばわかってもらえるか?それと、俺はこの世界で作られたから細かいことは…』
『お前を買うように伝える。思い出したら言え』
「キリ、イ?」
「お、おい、デル公?ブッ壊れちまったのか?」
不安そうに見つめる2人に、霧亥は平然と答えた。
机の上にある『本物』のシュペー卿の剣が輝いている。
「これを買う」
「買ってもらうぜ」
「へ、へえ、そう言うなら勿論お売りいたしやすが…こっちはどうしやす?紛れも無い本物ですが」
「どうなの?霧亥。私にもこれはさっきの2本より良いってわかるわ……」
明らかに魔力が付与された剣だった。素材、形状は申し分がない。
「買えるのか?」
「そうだ、お値段…」
「新金貨なら600、エキューなら400ですよ。随分と良心的な値段だとは思いますがね」
「んー…これなら納得できるんだけど…生憎と200しかないのよ。諦めるわ」
「んじゃデル公をお買い上げで?あいよ。ついでに、この鞘と短剣もお付けしまっさ」
「短剣?」
「へい、何でも旅の職人が愛用してた『三得包丁』って品でして。武器には物騒ですが、1本あると便利ですぜ」
「貰えるなら貰っておくわ」
ルイズが袋の中身を何枚か出している間に、霧亥は店長に尋ねる。
「他にこういうのは無いのか?」
「このデル公は黒衣の商人から買ったんですがね、来歴はサッパリわからねーんでさぁ。
それに元々、インテリジェンスソードってのは数が少ないんで、もうウチにはありやせんね」
「わかった」
「こら!ご主人様を置いていくな!」
外に出ると見慣れた2人が物陰に隠れているのを霧亥は探知した。片方はキュルケ、片方はタバサである。
「ツェルプストー!なんでこんな場所にいるのよ!」
「あら、私のことはよくご存知でなくて?」
「あ、アンタまさか…!」
「プレゼントで先手を打ったつもりでしょうけど……」
「「……」」
2人が喧嘩を始めるのを、霧亥は剣を2本、タバサは本を1冊抱えて、黙って眺めていた。
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