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「2000の技を持つ使い魔 EPISODE01 召喚」(2007/09/20 (木) 13:06:40) の最新版変更点
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この作品を
故 石ノ森正太郎先生
ヤマグチノボル先生に捧ぐ
いや、ダメって言っても投下するけど。(マテ
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少女は焦っていた。
もう自分以外は、既に自分の使い魔となるものを召喚し終わっていた。
なのに、彼女一人だけ、未だに召喚出来ていなかった。
何度となく召喚の呪文を詠唱すれども、起こるのは爆発、爆発、これまた爆発の連続。
何度か召喚できない事を囃し立てた奴を、爆発に巻き込ませたりして、やり場のない怒りの溜飲を下げたりもしたが、どんな人間であれ、おのずと限界はある。
召喚呪文の詠唱のせいで、極度の精神的な疲労から桃色がかったブロンドの髪の毛先まで汗だくとなっているのにも気がつかず、少女は召喚呪文を成功したいが一心に、詠唱を続けるところに、頭髪がやや寂しいメガネを掛けた中年の男性が声を掛ける。
「……ミス・ヴァリエール、もうすぐ日が暮れる。一先ず切り上げ明日にしてはどうだろう? 何も今日呼び出さなければ駄目、というわけでもないのだから」
どうやら、彼女を指導する師なのであろう。その中年の男性が声を掛けるも。
「ミスタ・コルベール、あと一回! あと一回だけお願いします!」
少女は呪文の詠唱を一旦中断し、懇願するように中年の男性に言った。
「いや、しかしだね……」
中年の男性……コルベールは彼女がこれ以上召喚を行ったとしても無理だと判断していたが、少女がこれまでもなく必死であるか判っているだけに、止めるに忍びなかったのだろう。
しかし、物事にはなんでも終わりがある。一人の生徒にだけかまけていられるわけでもない。
コルベールはしかたないと首を振ると、少女にその終わりを告げた。
「分かりました。しかし、次が本当の最後。これ以上は次の授業に差し支えかねない」
コルベールの言葉に、嬉しいような、そしてがっかりしたような表情を浮かべつつも、少女は詠唱を再会する。
(もう、失敗できない。今度こそ!)
少女、ルイズは心の中で強く誓い詠唱の一言一句、すべてに持てる精神力を注ぎ込む。
「来なさい! 私だけの、神聖で、美しく、強力な使い魔よ!!」
召喚の呪文の最後の句が終わり、ルイズは叫ぶ。
瞬間、魔力がルイズの前に凝縮したかと思った瞬間、今度は今までにない規模で爆発が
あたり一面に広がった。
それはまさに、新しい伝説の始まりだった。
それはまさに、すべてゼロからの始まりだった。
「伝説」は塗り替えられる。
いま、その伝説のアクセルは解き放たれた!
一様にむせ返る粉塵に咳き込むつつ、煙をはらう中で、生徒の誰かが爆発の中心に何かが蠢くのを見た。
「おい、何かいるぞ!」
「ゼロのルイズが成功した!?」
「この世の終わりだー!」
爆発で巻き上がった粉塵が晴れ、何かが召喚されたと気付いた生徒たちは、パニックに陥った。
「成功した、本当に、成功し……た……?」
召喚した本人ですら、最後の爆発に呆然としながら目の前で蠢くものを唖然としてみていた。そう、文字どおり「唖然」として。
煙の中から姿を現したのは一人の男だ。
黒い髪のやさしそうな雰囲気を持つ青年。二つの輪を持つ銀色の馬のようなものに跨り、黒い兜をかぶっている。
背丈はルイズよりもおそらく上、どんな素材かはよく判らないが、滑らかそうな黒い上着に埃にまみれた淡い青のズボンを穿いている。足元は、これまた固そうで素材のよく判らないブーツ。
その青年もむせ返りながら両手でパタパタと仰ぎながら何事かを喋っているようだが、爆発の中心にいたルイズには爆発の残響が耳を劈いていて、ききとれなかった。
ルイズは、しばらく呆然としていたが、やがて目の前の男を認識するに至り、ようやくのことで言葉を搾り出した。
「……あんた、誰?」
A New Hero.A New Legend.
2000の技を持つ使い魔
A New Hero.A New Legend.
EPISODE01 召喚
五代雄介は呆然としていた。
ついさっきまで、大切な仲間からもらったビートチェイサーに跨って、南米の荒れ果てた大地を疾走していたはずだった。
それが突然、霧に巻かれて速度を落としたところに、銀色の鏡のようなものが目の前に出現し、避けるまもなくその中に飛び込んでしまった。
気がつけば、落下の衝撃と共に煙の中にいた。
そして煙が晴れたかと思えば、周りの風景が違った。
さっきまでの南米の荒涼とした大地はなくなり。中欧のあたりのような風景に、雄介よりもまだ若い少年少女がこれまた唖然としながらこちらを見ている。
さらに、目の前には桃色がかった長い金髪の少女が、これまた雄介のほうを見て唖然として立っていた。
さすがに様子がおかしいと思った雄介は、ビートチェイサーから降りてヘルメットを脱ぐ。
改めて深呼吸して空気の匂いがさっきまでとは違っている事や、足元の感触がごつごつとした砂と岩ではなく草原である事を確めていると、ようやく目の前の少女の口が開いて、雄介に尋ねてきた。
「……あんた、誰?」
と日本語で少女から問われた。それも完璧な現代日本語の標準語でだ。雄介は聞いていて目をぱちくりさせていた。
「あれ? 日本語?」
「なによそれ? 呆けてんの? 私はあんたが誰かって聞いてるの。まったく、どこの平民よ?」
とりあえず言葉が通じそうだし、制服姿の生徒がいっぱいいる事から、霧に巻かれて移動するうちに、どこかの寄宿舎の庭に転がり込んだかと軽く思い込み、深い事は後で聞くとかにして、とにかく質問には答えようと、自作の名刺を取り出して、目の前の少女に渡しながら言う。
「俺、五代雄介。冒険家で『2000の技を持つ男』。本当はもうちょっと技を持ってるんだけど、語呂が良いからとりあえず」
名刺を手渡されたルイズはというと…… もちろん日本語はおろか、世界数カ国の言語で書かれた雄介の名刺を見ても、なんの文字だかさっぱり判らず、眉根を寄せていた。
「技って…… 魔法?」
目の前の少女が、多少難しそうな顔をしてか、勤めて雄介は明るく笑いながら言う。
「魔法って…… こう、呪文を唱えて火の玉を出したりするのとか? 残念だけど、そう言うやつじゃなくって、こう………」
と、懐にしまってあったボールをいくつか取り出して、ジャグリングをはじめる雄介。
そんな彼を見た生徒達が、大爆笑の後一斉にルイズの召喚を揶揄する声を上げ始めた。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を、しかも奇術師なんか呼び出してどうするの?」
「さすがはゼロのルイズ、ゼロは愚者に相当するから奇術師か」
「やっぱり失敗じゃない」
そんなみんなの爆笑に拳を震わせながら、目の前の少女(どうやらルイズと呼ばれているらしいと雄介は理解した)は、この中で雄介以外の唯一の大人である人物に向かって懇願するかのように叫ぶ。
「ミスタ・コルベール! 召喚のやり直しを要求します!」
「それは駄目だ、ミス・ヴァリエール。これは決まりだよ。二年生に進級する際、君達は使い魔を召喚する意味はわかるね?」
コルベールと呼ばれた男性は、ちらりと雄介を見ながら、ルイズに向かってそう告げる。
「それによって呼び出した使い魔によって今後の属性を固定し、それにより専門課程へと進むんだ。一度呼び出した使い魔は変更することは出来ない。何故なら使い魔の召喚は神聖な儀式だからだ好む好まざるに関わらず、彼を使い魔にするしかあるまい」
コルベールの口からは、雄介の知らない言葉がっぽんぽん出てくる。
召喚? 使い魔? 神聖な儀式? 雄介には何か嫌な予感を覚えるのだった。
「さぁ、コントラクト・サーヴァントを」
と、コルベールに言われてしまっては、取り付くしまもないルイズ。意を決してルイズはビートチェイサーの脇で立つ雄介に歩み寄った。
「感謝しなさいよ。貴族にこんなことされるなんて、普通一生無いんだから」
といったルイズは、雄介が逃げ出さないようにわっしとその左手を掴む。
「はい?」
一方の雄介は、事態が自分の予想外のところで進行中であることに、ようやく気がついた。しかし、すでに逃げ出せない。左手はルイズにつかまれてしまっていた。
だが、不思議と腰に備わっている筈のあるものは、そんなルイズの行為になんら反応すらしなかった。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
詠唱を終え、きょとんとしている雄介の額に杖をちょん、と当てたあと、顔を引き寄せその唇に自らの唇を押し当てる。
「!? わあっ!?」
突然ルイズからキスされた雄介は混乱のあまりに顔が真っ赤になった。心臓がばっくんばっくんと音を立てている。
「って、いきなり何を…… 熱っ!」
唇が離され、まだパニックに陥っていた雄介の左手の甲に、紋章が浮かび上がる。
使い魔のルーン、コントラクト・サーヴァントによって刻まれる使い魔の証。
雄介は左手を押さえ、顔を苦痛に歪ませる。やがてその痛みが消えると、雄介の左手には非常に見慣れていたものが証として浮かび上がっていた。
「!? これ、クウガのマークだ」
ツツ ヅツ クク
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