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「使い魔のカービィ 03」(2007/08/21 (火) 00:28:32) の最新版変更点
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トリステイン魔法学院に召喚された使い魔達の初めての朝は早い。
主人と一緒に起床し、朝の散歩と洒落込む者。
逆に主人と一緒に眠りこける者。
主人よりも早く起き、主人を起こす者。
使い魔達は、それぞれがそれぞれの『召喚されてから初めての朝』という時間を過ごしている。
そしてルイズの使い魔として召喚されたカービィも、そんな時間を過ごす使い魔達の1匹だった。
「ぽょ~……」
ムクリと起き上がると、目をうっすらと開ける。
しかし、未だに夢と現実の間で船を漕いでるカービィの目に映ったのは、自分が見慣れている自宅の白い天井だった。
横を見ると、これまた見慣れた鳥の同居人が眠っていたいる。
羽の色がピンクになっているが、カービィには些細なことだ。
寝ぼけ眼のままベッドから下り、まずは家の窓を開けようとフラフラ歩く。
窓の前まで来ると、取っ手を引いて窓を開けた。
目の前に外の風景ではなく服が現れたが、カービィには些細なことだ。
次に、外に出て朝日を浴びるためにドアの前へ。
いつもよりドアが透けているが、気にせず開けて外に出た。
一歩踏み出しても地面の感触が感じられないが、カービィには些細なことだ。
「…………ぽよ?」
ここで漸くカービィは異変に気が付いた。
キョロキョロともう一度よく自分の周りを見る。
すると、先程のピンクの鳥はルイズ、窓はクローゼットの扉、そしてドアは本物の窓だということが分かった。
と、いうことは……
カービィは足元を見る、目も眩む高さだ。
「ぽよおぉ~~~!」
気付いた時には既に遅し、哀れカービィは地上へと落下していった。
さて、カービィが身投げをするほんの少し前。
女子寮の下を1人のメイドが洗濯籠を抱えて歩いていた。
彼女の名はシエスタ、トリステイン魔法学院に仕えているメイド達の1人だ。
彼女は毎朝の仕事である洗濯をするため、水場へと向かっている途中だった。
気持ちのよい朝の日差しを浴びながら、1歩1歩歩みを進める。
ふと、そんな彼女の顔に当たっていた日の光が遮られた。
「?」
何だろうと思い空を見上げると同時に、ピンク色の物体が洗濯籠の中へ落ちてきた。
「きゃっ!?」
突然の出来事に驚き、抱えていた洗濯籠を手放すシエスタ。
落ちてきた何かは大量の洗濯物の中で何やらもがいている。
「な、何……?」
洗濯籠に近付き、シエスタは恐る恐るピンク色の物体に掛かったタオルを避けてみた。
「ぷぃー」
苦しかった!と言わんばかりにピンク色の生物ーーカービィが飛び出してきた。
実際、洗濯物に埋もれて苦しかったのかもしれない。
突然現れたカービィを見ながら、シエスタはあることを思い出した。
それはメイド仲間達が話していた、『ミス・ヴァリエールがぬいぐるみの使い魔を召喚した』という噂話だった。
何でも、ピンクで真ん丸な体は本当にぬいぐるみのようで、一見しただけでは見間違えてしまうほどだと聞いている。
ひょっとしたらと思い、シエスタはしゃがみ込んで、洗濯籠の中のカービィにルイズの事を尋ねてみることにした。
「もしかして、あなたが噂のミス・ヴァリエールの使い魔さん?」
「つかいま……?」
「そう、使い魔。あなたはミス・ヴァリエールの使い魔さん?」
「ぽよ! ルイズ、使い魔♪」
何故かカービィは嬉しそうに答えた。
何やら昨日ルイズが言っていた使い魔という響きが気に入ってしまったらしい。
「やっぱり。初めまして、私はシエスタと申します。分かりますか? シエスタ」
「シエ、スタ?」
「はい♪」
「シエスタ♪」
カービィはシエスタの笑顔に気を良くしたのか、あっさりと懐いた。
シエスタの方もカービィが名前を復唱するのを見て、自然と頬を綻ばせる。
(可愛い使い魔さん)
と、カービィを見ながら微笑んでいたシエスタだったが、急に辺りを気にし始めたカービィに気が付いた。
「どうしました?」
「…………ルイズ~?」
その一言で、シエスタはカービィが何をしたいのか何となく分かった。
「ん~……よく寝た」
一方、ルイズは人生で一番スッキリした目覚めを迎えていた。
カービィを抱きしめていたお陰か、心地良い眠りにつくことが出来たのだ。
覚えてはいないが、夢見もとても良かった気がする。
これはもう寝るときカービィを手放せないかもしれない。
そう思いながら横にいるはずのカービィに目を遣ると、そこに彼の姿はなかった。
「? カービィ……?」
名を呼んでみるが返事はない。
どこに行ったのかと首を傾げていると、部屋の扉がノックされていることに気が付いた。
(こんな朝早くに?)
ベッドから下りて簡単に着替えを済ませ、ルイズは扉を開けた。
すると扉の向こうから何かが勢いよくルイズの胸に飛び込んできた。
このピンクのボディと感触、間違えるはずがない。
「カービィ! どこ行ってたのよ、もう……」
「ぽよぽよぉ!」
カービィの元気な姿にホッと胸を撫で下ろすルイズだったが、扉の向こうにもう1人誰かがいるのに気が付いた。
「あなた、えぇっと……」
「シエスタです、ミス・ヴァリエール。ミスの使い魔がお部屋の方に帰れなくなっていたようなので、ここにお連れしてきました」
「そうなの、わざわざありがとうね」
「いえ、それでは」
そう言うとシエスタはカービィに手を振り、仕事に戻っていった。
カービィもそれに答え、視界からシエスタが消えるまで手を振っていた。
「カービィ、あのメイド……シエスタに良くしてもらったの?」
「ぽよ!」
「そっか……今度また、お礼をしなくちゃいけないわね」
自分の使い魔をここまで送ってもらったのだ。
貴族として、また会ったときにお礼を言わなければ。
ルイズはそう思いながら扉を閉めた。
否、閉めようとした。
「おはよう、ルイズ」
扉を閉めかけたルイズの手が止まる。
再び扉の外に視線を向けると、そこには彼女が一番嫌う腐れ縁の相手がいた。
「……おはよう、キュルケ」
露骨に嫌そうな顔をしながら、ルイズは生返事をした。
先程までの柔らかな空気が少しだけ重くなる。
「ぽよ?」
カービィだけが空気を読まず、にらみ合う2人に向けてとぼけた声を出した。
#navi(使い魔のカービィ)
トリステイン魔法学院に召喚された使い魔達の初めての朝は早い。
主人と一緒に起床し、朝の散歩と洒落込む者。
逆に主人と一緒に眠りこける者。
主人よりも早く起き、主人を起こす者。
使い魔達は、それぞれがそれぞれの『召喚されてから初めての朝』という時間を過ごしている。
そしてルイズの使い魔として召喚されたカービィも、そんな時間を過ごす使い魔達の1匹だった。
「ぽょ~……」
ムクリと起き上がると、目をうっすらと開ける。
しかし、未だに夢と現実の間で船を漕いでるカービィの目に映ったのは、自分が見慣れている自宅の白い天井だった。
横を見ると、これまた見慣れた鳥の同居人が眠っていたいる。
羽の色がピンクになっているが、カービィには些細なことだ。
寝ぼけ眼のままベッドから下り、まずは家の窓を開けようとフラフラ歩く。
窓の前まで来ると、取っ手を引いて窓を開けた。
目の前に外の風景ではなく服が現れたが、カービィには些細なことだ。
次に、外に出て朝日を浴びるためにドアの前へ。
いつもよりドアが透けているが、気にせず開けて外に出た。
一歩踏み出しても地面の感触が感じられないが、カービィには些細なことだ。
「…………ぽよ?」
ここで漸くカービィは異変に気が付いた。
キョロキョロともう一度よく自分の周りを見る。
すると、先程のピンクの鳥はルイズ、窓はクローゼットの扉、そしてドアは本物の窓だということが分かった。
と、いうことは……
カービィは足元を見る、目も眩む高さだ。
「ぽよおぉ~~~!」
気付いた時には既に遅し、哀れカービィは地上へと落下していった。
さて、カービィが身投げをするほんの少し前。
女子寮の下を1人のメイドが洗濯籠を抱えて歩いていた。
彼女の名はシエスタ、トリステイン魔法学院に仕えているメイド達の1人だ。
彼女は毎朝の仕事である洗濯をするため、水場へと向かっている途中だった。
気持ちのよい朝の日差しを浴びながら、1歩1歩歩みを進める。
ふと、そんな彼女の顔に当たっていた日の光が遮られた。
「?」
何だろうと思い空を見上げると同時に、ピンク色の物体が洗濯籠の中へ落ちてきた。
「きゃっ!?」
突然の出来事に驚き、抱えていた洗濯籠を手放すシエスタ。
落ちてきた何かは大量の洗濯物の中で何やらもがいている。
「な、何……?」
洗濯籠に近付き、シエスタは恐る恐るピンク色の物体に掛かったタオルを避けてみた。
「ぷぃー」
苦しかった!と言わんばかりにピンク色の生物ーーカービィが飛び出してきた。
実際、洗濯物に埋もれて苦しかったのかもしれない。
突然現れたカービィを見ながら、シエスタはあることを思い出した。
それはメイド仲間達が話していた、『ミス・ヴァリエールがぬいぐるみの使い魔を召喚した』という噂話だった。
何でも、ピンクで真ん丸な体は本当にぬいぐるみのようで、一見しただけでは見間違えてしまうほどだと聞いている。
ひょっとしたらと思い、シエスタはしゃがみ込んで、洗濯籠の中のカービィにルイズの事を尋ねてみることにした。
「もしかして、あなたが噂のミス・ヴァリエールの使い魔さん?」
「つかいま……?」
「そう、使い魔。あなたはミス・ヴァリエールの使い魔さん?」
「ぽよ! ルイズ、使い魔♪」
何故かカービィは嬉しそうに答えた。
何やら昨日ルイズが言っていた使い魔という響きが気に入ってしまったらしい。
「やっぱり。初めまして、私はシエスタと申します。分かりますか? シエスタ」
「シエ、スタ?」
「はい♪」
「シエスタ♪」
カービィはシエスタの笑顔に気を良くしたのか、あっさりと懐いた。
シエスタの方もカービィが名前を復唱するのを見て、自然と頬を綻ばせる。
(可愛い使い魔さん)
と、カービィを見ながら微笑んでいたシエスタだったが、急に辺りを気にし始めたカービィに気が付いた。
「どうしました?」
「…………ルイズ~?」
その一言で、シエスタはカービィが何をしたいのか何となく分かった。
「ん~……よく寝た」
一方、ルイズは人生で一番スッキリした目覚めを迎えていた。
カービィを抱きしめていたお陰か、心地良い眠りにつくことが出来たのだ。
覚えてはいないが、夢見もとても良かった気がする。
これはもう寝るときカービィを手放せないかもしれない。
そう思いながら横にいるはずのカービィに目を遣ると、そこに彼の姿はなかった。
「? カービィ……?」
名を呼んでみるが返事はない。
どこに行ったのかと首を傾げていると、部屋の扉がノックされていることに気が付いた。
(こんな朝早くに?)
ベッドから下りて簡単に着替えを済ませ、ルイズは扉を開けた。
すると扉の向こうから何かが勢いよくルイズの胸に飛び込んできた。
このピンクのボディと感触、間違えるはずがない。
「カービィ! どこ行ってたのよ、もう……」
「ぽよぽよぉ!」
カービィの元気な姿にホッと胸を撫で下ろすルイズだったが、扉の向こうにもう1人誰かがいるのに気が付いた。
「あなた、えぇっと……」
「シエスタです、ミス・ヴァリエール。ミスの使い魔がお部屋の方に帰れなくなっていたようなので、ここにお連れしてきました」
「そうなの、わざわざありがとうね」
「いえ、それでは」
そう言うとシエスタはカービィに手を振り、仕事に戻っていった。
カービィもそれに答え、視界からシエスタが消えるまで手を振っていた。
「カービィ、あのメイド……シエスタに良くしてもらったの?」
「ぽよ!」
「そっか……今度また、お礼をしなくちゃいけないわね」
自分の使い魔をここまで送ってもらったのだ。
貴族として、また会ったときにお礼を言わなければ。
ルイズはそう思いながら扉を閉めた。
否、閉めようとした。
「おはよう、ルイズ」
扉を閉めかけたルイズの手が止まる。
再び扉の外に視線を向けると、そこには彼女が一番嫌う腐れ縁の相手がいた。
「……おはよう、キュルケ」
露骨に嫌そうな顔をしながら、ルイズは生返事をした。
先程までの柔らかな空気が少しだけ重くなる。
「ぽよ?」
カービィだけが空気を読まず、にらみ合う2人に向けてとぼけた声を出した。
#navi(使い魔のカービィ)
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