「GTA-0_4」(2007/11/05 (月) 06:44:37) の最新版変更点
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目の前に現れた風竜。青髪の眼鏡の子の使い魔。その羽ばたく姿を見て、改めて凄いと思った。
はっきり言って、私の呼び出した使い魔などとは比べ物にならない。
私はその姿を、憧れと……「 私もこんな使い魔が欲しかった 」という妬みを心に抱きながら見つめていた。
っ! そうだった、先生は!?
一瞬、頭に浮かぶ最悪の光景を無理やり消しながら、急いでそちらへと視線を向ける。
そこには、こちらに背を向けた先生と風竜に驚いた様子の使い魔の姿。
はああぁぁ~~。よかったぁ、無事で……。
先生に怪我が無かった事、私の使い魔が傷害沙汰を起こさなかった事に心から安堵した。
…でも、契約後でこれなんだから、契約していなかったら……ああ、考えたくもないわ。
……? 何か、忘れているような。そう、何か大事な…。
忘れた何かを思い出そうと頭を働かせていると、使い魔が手に持ったナイフを地面に投げ捨て
それに続いて先生が
「皆さん! この通り、既に彼は戦意を失っております! 慌てる事はありませんぞ!」
と、私達に呼びかけてきた。
武器を捨てたからと言って、そう簡単に信用しても良いのかしら……って
ああぁっ!!! そうだったあぁーーっ!!
「こ、この、大バカ使い魔ぁーーっ!! よくもこんな騒ぎを起こしてくれたわねっ!! ご主人様の顔によくも…!」
「ミス・ヴァリエール、落ち着きなさい!」
「先せ…ミスタ・コルベール!! 私は主人としてこの大バカ使い魔に事の重大さを教え込まないと…!」
「私はこの通り怪我も無い。だから気にしなくても良いのだよ」
「でも…!」
「とにかく今は私の指示に従ってくれないかね? 皆が混乱してしまう」
「……分かり、ました…」
ああっ、もう…! あのバカ使い魔を叱る所を見せつけて、主人としての威厳と体裁を保つ計画が…。
ただでさえ、ご主人様の命令を無視して先生に襲い掛かるなんて真似をされてるのに
ここままじゃ『 使い魔を手懐ける事すらできない駄目ルイズ 』なんて陰口を叩かれるに決まってるわ…っ!
「あー、おほん。少々予定外の出来事が起こりはしましたが、無事に使い魔召喚の儀は終了いたしました。
私は少し用事がありますので、皆さんは先に帰っていて下さい」
! 用事…。
「ミス・ヴァリエール。話しがあるので、まだ帰らないように…」
やっぱり責任を問われるのね……。
空を飛んで帰っていく皆を見つめながら、私は溜息をついた。
使い魔を『 通常通り 』召喚し、問題なく『 魔法 』で帰っていく皆。
召喚した使い魔に振り回され、今から言い渡されるであろう罰に震える私。
はっきり言って、惨め過ぎる……。涙が出てきそうよ。
「さて…」
あぁ…いよいよなのね。
「ミス・ヴァリエールの使い魔君、では呼びにくいので君の名前を教えてはくれないかね」
えっ、罰を告げるんじゃないの……? まあ、遅かれ早かれってやつね。結果は変わらない…。
……そういえばこいつの名前、聞いてなかったわね。
「…クロード・スピード」
クロード・スピード。クロード・スピードね、こいつの名前は。よーーく覚えたわ。
「ではミスタ・スピード、と呼べばいいかな?」
こんなならず者みたいな平民に「ミスタ」をつけるなんて、先生は何を考えてるのかしら。
「…何とでも」
「うむ。ではミスタ・スピード、早速この鉄の塊について知っている事を教えてくれたまえ!」
……え、何よこれ。
てっきり罰を言い渡されると思ってたのに…。一体どういう事なの。
「あの……ミスタ・コルベール?」
「ん、何かね? ミス・ヴァリエール」
「私が呼ばれた訳は一体…?」
「ああ、使い魔であるミスタ・スピードとミス・ヴァリエールの出会い方が余りにも悪かったので
ここは一つ仲を取り持とうと思ったのだよ」
「え、そ、それでは今回の事で何か罰は…?」
「ちょっとした誤解からあんな事になったんだ、罰を与えようなどとは思ってはいないよ」
笑顔で答える先生。
その瞬間、今までギチギチに張り詰めていた緊張の糸がプッツンと千切れ、脚の力が抜けてしまった。
「ミ、ミス・ヴァリエール!?」
先生の言葉が遠く聞こえる。
内側に凹んだ鉄板を外側に押し出す作業が終わり、二人が息を吐く。
私はか弱い乙女なので、もちろんそんな肉体作業には参加などしない。
「ではミスタ・スピード、いよいよこれを動かせる訳ですな!」
「少し待ってくれ。動かせるかどうか調べる」
先生は待ちきれないといった様子でクロードを見つめる。まあ、私も何だかんだ言ってこれに興味はある。
と、例の変な音が発生し、鉄の塊――「クルマ」が振動し始めた。
「どうやら動かせるようだ」
「おおっ! これは凄い!! ここまで自在に動かすことが出来るとは!!」
最初はすっとろい動きしか出来ないだろうと思ってたけど……悪くないわね。
それなりに小回りが効くし、馬と比べて乗り心地も悪くない。なにより一度に多くの人数を運べる。
正直に凄いと思えるわ。まあ、竜と比べたら見劣りするけど。
「どこかに車を停める場所は無いか?」
「それならば是非私の研究室の隣に!目の前にある小屋ですぞ!」
興奮冷めやらぬ先生の指差す先には、ボロ小屋としか例えようのない小屋が建っていた。
クロードはどうやら疑い深く、用心深い性格らしい。
「本当に大丈夫なんだろうな」
「大丈夫、このトリステイン魔法学院に入ろうとする賊なんて、余程の馬鹿か命知らずだけよ」
何度も説明したけどコイツは簡単に信用しようとしない。
ホント、どれだけ田舎で治安の悪い所から来たのかしら、コイツは。
「…分かった。コルベール、頼むぞ」
「ああ、任せておきたまえ! こんな貴重なマジックアイテム、易々と盗ませはしないよ!」
そんな心配しなくても何も起きないのに…。
「それと……固定化だったか。本当に安全なんだな?」
「ああ、何の問題もないよ。むしろより安全になるから安心してくれ!」
「クロード」
「…何だ」
「今回はコルベール先生が許してくれたから私も強くは言わなかったけど……
今度あんな真似をしたら絶対に許さないからね!」
「…分かった」
「あと、その喋り方をどうにかしなさい! 私の事はご主人様と呼ぶのよ! いいわねっ!」
急にクロードが押し黙る。
「ちょっと! 話を聞いてるの!?」
クロードは何も答えない。
……後でたっぷりと『 躾 』を施してやる必要があるわね。
クロードが入ってきたのを確認した後、しっかりと鍵を閉める。
さーて、どうやって躾けてやろうかしら……。まずはさっきの態度を叱るべきね。
そう思いクロードの方を向いた、その瞬間
「むぐぅっ!!?」
クロードの手が私の口を塞いだ。
反射的に杖を向けたけど簡単に取り上げられ、部屋の隅へと投げ捨てられてしまった。
口を塞いだ手を外そうにも全く動かせない。
「んーっ! んーーっ!」
「黙れ」
っ! 何なの、こいつの目。それにこの声……。今まで体験した事のない物だった。
はっきり言って『 怖い 』。それこそ比喩表現でなく『 漏らしそう 』な程に。
「俺はお前の言う使い魔とやらになった覚えは無い」
! な、何ですって…。
「もしも今後、『ご主人様と呼べ』とか『喋り方をどうにかしろ』とか俺に言えば……」
い、言えば何だってのよ。
内心そんな風に強がってはいたが、脚が震えているのが分かる。体は正直だった。
「この……学院だったか。ここからウェーブのかかったピンク色の髪の、背の小さい女子が居なくなるかもな」
え、何……。
最初、クロードが何を言おうとしているのか分からなかった。
理解した瞬間、背筋が凍り、思考が停止した。ついでに漏れそうだった。
部屋から出て行くクロードを、私は咳き込みながら見つめる事しかできなかった。
怖かった。何もできなかった。そしてそんな自分が憎たらしくて、とても悔しかった。
自分の使い魔に脅されて、簡単に屈するなんて情けなさ過ぎる。
ああ、ほんと、泣きそう。と言うか、止められ、ないかも……。
嗚咽を部屋に響かせながら私は一つの決心をし、それを言葉にして誓いを立てた。
「クロード・スピード……。絶対…絶対にあいつを従わせてやるっ!!」
目の前に現れた風竜。青髪の眼鏡の子の使い魔。その羽ばたく姿を見て、改めて凄いと思った。
はっきり言って、私の呼び出した使い魔などとは比べ物にならない。
私はその姿を、憧れと……「 私もこんな使い魔が欲しかった 」という妬みを心に抱きながら見つめていた。
っ! そうだった、先生は!?
一瞬、頭に浮かぶ最悪の光景を無理やり消しながら、急いでそちらへと視線を向ける。
はああぁぁ~~。よかったぁ、無事で……。
先生に怪我が無かった事、私の使い魔が傷害沙汰を起こさなかった事に心から安堵した。
…でも、契約後でこれなんだから、契約していなかったら……ああ、考えたくもないわ。
……? 何か、忘れているような。そう、何か大事な…。
忘れた何かを思い出そうと頭を働かせていると、使い魔が手に持ったナイフを地面に投げ捨て
それに続いて先生が
「皆さん! この通り、既に彼は戦意を失っております! 慌てる事はありませんぞ!」
と、私達に呼びかけてきた。
武器を捨てたからと言って、そう簡単に信用しても良いのかしら……って
ああぁっ!!! そうだったあぁーーっ!!
「こ、この、大バカ使い魔ぁーーっ!! よくもこんな騒ぎを起こしてくれたわねっ!! ご主人様の顔によくも…!」
「ミス・ヴァリエール、落ち着きなさい!」
「先せ…ミスタ・コルベール!! 私は主人としてこの大バカ使い魔に事の重大さを教え込まないと…!」
「私はこの通り怪我も無い。だから気にしなくても良いのだよ」
「でも…!」
「とにかく今は私の指示に従ってくれないかね? 皆が混乱してしまう」
「……分かり、ました…」
ああっ、もう…! あのバカ使い魔を叱る所を見せつけて、主人としての威厳と体裁を保つ計画が…。
ただでさえ、ご主人様の命令を無視して先生に襲い掛かるなんて真似をされてるのに
ここままじゃ『 使い魔を手懐ける事すらできない駄目ルイズ 』なんて陰口を叩かれるに決まってるわ…っ!
「あー、おほん。少々予定外の出来事が起こりはしましたが、無事に使い魔召喚の儀は終了いたしました。
私は少し用事がありますので、皆さんは先に帰っていて下さい」
! 用事…。
「ミス・ヴァリエール。話しがあるので、まだ帰らないように…」
やっぱり責任を問われるのね……。
空を飛んで帰っていく皆を見つめながら、私は溜息をついた。
使い魔を『 通常通り 』召喚し、問題なく『 魔法 』で帰っていく皆。
召喚した使い魔に振り回され、今から言い渡されるであろう罰に震える私。
はっきり言って、惨め過ぎる……。涙が出てきそうよ。
「さて…」
あぁ…いよいよなのね。
「ミス・ヴァリエールの使い魔君、では呼びにくいので君の名前を教えてはくれないかね」
えっ、罰を告げるんじゃないの……? まあ、遅かれ早かれってやつね。結果は変わらない…。
……そういえばこいつの名前、聞いてなかったわね。
「…クロード・スピード」
クロード・スピード。クロード・スピードね、こいつの名前は。よーーく覚えたわ。
「ではミスタ・スピード、と呼べばいいかな?」
こんなならず者みたいな平民に「ミスタ」をつけるなんて、先生は何を考えてるのかしら。
「…何とでも」
「うむ。ではミスタ・スピード、早速この鉄の塊について知っている事を教えてくれたまえ!」
……え、何よこれ。
てっきり罰を言い渡されると思ってたのに…。一体どういう事なの。
「あの……ミスタ・コルベール?」
「ん、何かね? ミス・ヴァリエール」
「私が呼ばれた訳は一体…?」
「ああ、使い魔であるミスタ・スピードとミス・ヴァリエールの出会い方が余りにも悪かったので
ここは一つ仲を取り持とうと思ったのだよ」
「え、そ、それでは今回の事で何か罰は…?」
「ちょっとした誤解からあんな事になったんだ、罰を与えようなどとは思ってはいないよ」
笑顔で答える先生。
その瞬間、今までギチギチに張り詰めていた緊張の糸がプッツンと千切れ、脚の力が抜けてしまった。
「ミ、ミス・ヴァリエール!?」
先生の言葉が遠く聞こえる。
内側に凹んだ鉄板を外側に押し出す作業が終わり、先生とクロードが息を吐く。
私はか弱い乙女なので、勿論そんな肉体作業には参加しない。
「ではミスタ・スピード、いよいよこれを動かせる訳ですな!」
「少し待ってくれ。動かせるかどうか調べる」
先生は待ちきれないといった様子でクロードを見つめる。まあ、私も何だかんだ言ってこれに興味はある。
と、例の変な音が発生し、鉄の塊――「クルマ」が振動し始めた。
「どうやら動かせるようだ」
「おおっ! これは凄い!! ここまで自在に動かすことが出来るとは!!」
最初はすっとろい動きしか出来ないだろうと思ってたけど……悪くないわね。
それなりに小回りが効くし、馬と比べて乗り心地も悪くない。なにより一度に多くの人数を運べる。
正直に凄いと思えるわ。まあ、竜と比べたら見劣りするけど。
「どこかに車を停める場所は無いか?」
「それならば是非私の研究室の隣に!目の前にある小屋ですぞ!」
あんなボロ小屋が研究室? 出来れば近づきたくないわね。
クロードはどうやら疑い深く、用心深い性格らしい。
「本当に大丈夫なんだろうな」
「大丈夫、このトリステイン魔法学院に入ろうとする賊なんて、余程の馬鹿か命知らずだけよ」
何度も説明したけどコイツは簡単に信用しようとしない。
ホント、どれだけ田舎で治安の悪い所から来たのかしら、コイツは。
「…分かった。コルベール、頼むぞ」
「ああ、任せておきたまえ! こんな貴重なマジックアイテム、易々と盗ませはしないよ!」
そんな心配しなくても何も起きないのに…。
「それと……固定化だったか。本当に安全なんだな?」
「ああ、何の問題もないよ。むしろより安全になるから安心してくれ!」
「クロード」
「…何だ」
「今回はコルベール先生が許してくれたから私も強くは言わなかったけど……
今度あんな真似をしたら絶対に許さないからね!」
「…分かった」
「あと、その喋り方をどうにかしなさい! 私の事はご主人様と呼ぶのよ! いいわねっ!」
急にクロードが押し黙る。
「ちょっと! 話を聞いてるの!?」
クロードは何も答えない。
……後でたっぷりと『 躾 』を施してやる必要があるわね。
クロードが入ってきたのを確認した後、しっかりと鍵を閉める。
さーて、どうやって躾けてやろうかしら……。まずはさっきの態度を叱るべきね。
そう思いクロードの方を向いた、その瞬間
「むぐぅっ!!?」
クロードの手が私の口を塞いだ。
反射的に杖を向けたけど簡単に取り上げられ、部屋の隅へと投げ捨てられてしまった。
口を塞いだ手を外そうにも全く動かせない。
「んーっ! んーーっ!」
「黙れ」
っ! 何なの、こいつの目。それにこの声……。今まで体験した事のない物だった。
はっきり言って『 怖い 』。それこそ比喩表現でなく『 漏らしそう 』な程に。
「俺はお前の言う使い魔とやらになった覚えは無い」
! な、何ですって…。
「もしも今後、『ご主人様と呼べ』とか『喋り方をどうにかしろ』とか俺に言えば……」
い、言えば何だってのよ。
内心そんな風に強がってはいたけど、脚が震えているのが分かる。体は正直だった。
「この……学院だったか。ここからウェーブのかかったピンク色の髪の、背の小さい女子が居なくなるかもな」
え、何……。
最初、クロードが何を言おうとしているのか分からなかった。
理解した瞬間、背筋が凍り、思考が停止した。ついでに漏れそうだった。
部屋から出て行くクロードを、私は咳き込みながら見つめる事しかできなかった。
怖かった。何もできなかった。そしてそんな自分が憎たらしくて、とても悔しかった。
自分の使い魔に脅されて、簡単に屈するなんて情けなさ過ぎる。
ああ、ほんと、泣きそう。と言うか、止められ、ないかも……。
嗚咽を部屋に響かせながら私は一つの決心をし、それを言葉にして誓いを立てた。
「クロード・スピード……。絶対…絶対にあいつを従わせてやるっ!!」
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