「ボツSS提出:クレール」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ボツSS提出:クレール」(2007/07/27 (金) 19:18:27) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

**ボツSS1:TAGAMIの戦闘SS #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ 永遠の時間を渡ってきても,なすことはいつも同じ。 愛する夫たる完全なる青を追うこと,そして戦うこと。 これからの一瞬もそう,慣れ親しむ世界,息をするもひとしいこと。 彼女は,心で静かに絶技を詠唱する。 (…橙の橙 誕生と接続を司る婚姻のアラダにお願いもうしあげる。) (愛しき青を追いかける我は,これより絶技を使用する。) その前には,見比べるだけでは余りにも婦人が立ち向かうには多い敵。 だが彼女にはその愛を追うための助けたる,全てを貫く聖銃がその腕にあった。 (完成せよ,水蛇零式) 銃口が青く輝き,そこから迸る光は無数の細長い光となって敵に突撃する。その軌跡には粉雪が舞い,上下左右に揺れ動く様はあたかも蛇のよう。 無数の凍てつく蛇が敵の装甲に牙を立てるが,その小さな突起で食い破ることは適わない。 もちろん,それでいいのだ。 次々と凍てつく蛇が装甲に牙を立てようとし,失敗して悔しそうに敵の体の表面を這い回る。 水蛇の軌跡には粉雪が舞う。その零下の軌跡が敵を凍てつかせるのだ。 突然の寒波にこごえいてつく敵。その動きが鈍ったその瞬間をついて,Tagamiは敵陣に突撃した。 (完成せよ,雷虎零式) 銃口が紫に輝く。いくつもの雷球が鮮やかな二重螺旋を描きながら吐き出され,そしてそのそれぞれが意思を持って敵を狙う。 蛇の牙より巨大な虎の牙が敵の装甲を打ち破り,凍てつく身体を砕き,抉り,焦がす。 その破壊力は進撃するTagamiを中心に不可侵領域が生まれたかのようで,周囲の敵は次々と雷虎に食い破られその動きを止めていく。 二重螺旋を描いて射出される雷球は今やTagamiを護る結界のようにその周囲を舞っていた。 しかし,水蛇の凍結を逃れ,雷虎の破壊を免れた敵が同胞の復讐をせんと一瞬の隙を突いてTagamiにその刃を突きつける。 微動だにせぬTagami,差し迫るその攻撃。命中するかと思われた次の刹那。 Tagamiは敵に貫かれた場所より掻き消え,瞬く間に別の場所から自らを狙う敵に銃口を向けていた。 もちろん,その身に微塵の傷も刻まれていない。 (完成せよ,炎鳳零式) まるで命の危機がなかったかのように落ち着いた様子で聖銃を切り替える。銃口が赤く輝き,蛇よりも虎よりも大きい鳳凰が生まれる。 翼を広げたその炎は,周囲に火の粉を撒き散らしながら空を舞い,Tagamiを狙った不幸な敵に着弾。周囲を巻き込むように炎の竜巻が敵を貫く。 その内に巻き起こる爆発が敵を砕き,その欠片を焼き払い,浄化された黒い炭を撒き散らしていく。 切り替えぬままにTagamiは銃弾を放つ。地上より水平に飛ぶ鳳は残された敵を貫くべく直進し,切り裂いていく。 僅かに届かぬ敵には,後から来る熱波がそれを焼き尽くした。 炎鳳の熱量のせいかゆらめく空気。そのなかに静かに佇むTagami。 口を開かぬその女は無表情にその陽炎の先にある情景を認識し,少し息を吐き出す。 (さぁ,次はどなたですか?)} -筆者コメント 戦闘用に書こうと思って始めた最初のSSです。 式神と精霊機動弾の聖銃のモードを参考に書いてみました。 (水蛇だけ散弾状に変更してみましたが,できるのでしょうか(汗) 黄金戦争中はもう戦闘にTAGAMIは出そうにないので,提出します。 **ボツSS2:マジックアイテムを探そう用SS群 ***詠唱SS1 【東風吹かば】 クレール@るしにゃん王国 #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ ノックする音。 進入を許す声。 静かに入る女。 そこは,帰還した青にして正義の書斎であった。 桃色に染めた一部の前髪を愛しく撫でながら,女が来訪の理由を語る。 「梅を,植えませんか? 季節外れではありますが。」 机に手を組む男が,答えた。 「逸話にご執心のようですね。」 「一つ,思うところがありまして。」 「……どうぞ。」 女は自らの考えを語った。 なぜ,詠唱絶技の名に飛び梅と雷の名があるのか? (彼らの主観から見れば)千年以上前に生きていた一人の貴族にその両方の由来を見つけられることはけして偶然ではないはず。 きっと,その者には青にして正義の名と非常に深く関わっていたに違いない。 アイドレスの知を司る星見司の者が「青にして正義」として選ばれたことからも,今見れば彼との縁を見ることができる。 大胆ではあるけれど… 「朝廷から九州に送られたあの人が,私の前世である,と?」 男の質問に,女はそれが私の仮説です。と答え,それに…と続けた。 「私,帰還のお祝いを,していなかったから。遅くなりましたけど,何かプレゼントしたくって。」 途切れ途切れに答えた声に,男が微笑む。 「プレゼントだったら,普通こういう形で私に聞かないのでは?」 「・・・・・・あっ。」 時が,止まった。 次の日,梅の木が植えられた。青にして正義の書斎の近く,窓から見えるところである。 もともとは苗木にしようという話であったが,男はあえて成木を植えてくれと言った。 何か,思うところができたらしい。 その真意は,やがて分かることだった。} ***詠唱SS2 【特別レッスン】 #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ 静かな湖畔の森の影から……いや,その辺りは全く静かではなかった。 「いくアルよ,中華四千年大極的大熊猫ビーームっ!」 白と黒の閃光が辺りを包む。 「はぁぁっ! デッドリィ・ニードル・レイン!」 紫の光が広がる。 元の色に森が戻った後には,白黒のまだら模様になった木に,指先ほどの大きさの針が一本だけ刺さり,しなだれていた。 その光景を見て唖然とする二人。近づいて木をぺちぺち叩くが,なんともない。あ,手に白黒模様が移った。 「なんでアルかー! ワタシの魔法は木を一刀両断するはずなのにー!」 「針が…一本だけ…。 がーん・・・。」 少し離れたところで,岩に腰かけた青い衣装に身を包む男が二人の様子を見ている。 「二人とも,こっちにおいで。」 とたとたと男に近づく二人。どことなく彼の持つ杖を気にしている。 「魔法とは,無闇やたらに使うものではないんだよ。」 「「でも,練習見てくれるって!」」 「いや,そうじゃなくてだね。その力を手に入れて何をしたいのか,何をなすべきかを考えなさいと言っているんだ。」 「…。」 静かに諭される二人。なんとなくしょげて,彼の次の言葉を待つ。 「いいかい。魔法とは,世の理を捻じ曲げる大変な力なんだ。  いつも使っていたら世界が壊れてしまう。  だから,世界を壊そうとするものに対して,使うべきものなんだよ。  もしくは…」 「もしくは?」 「一度だけだ。どうしてもしなくてはいけないとき。誰かに手を差し伸べるとき,  どうしても,なさねばならないことがあるときに,一度だけ,使いなさい。  そしてその一度に,全てを注ぎ込むんだ。」 その言葉には,魔法を使う者としての心得だけではなく,敵の攻撃を受ければひとたまりもない彼らに無事にこの戦いを生き延びて欲しいという願いが込められていた。 それを知ってかしらずか,一字一句間違えずに暗記しようと真面目な面持ちで聞く二人。それを見て微笑む男。 「よし,それじゃぁ一つとっておきを教えてあげよう。君達にも仕える魔法だ。  …もう少し開けた場所がいいな。ついてきなさい,スゥ,南無。」 「「はい,正義!」」} ***詠唱SS3 【儀式魔術】 #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ それは,旅立ちの前のこと。 「この,梅の枝をお持ちください。」 S43―青にして正義の名を持つ男―はそういって,6振りの枝をFEGに行こうとする一行に差し出した。 「どうしてアルか?」 スゥ・アンコが口を挟む。 「あなた方とは共にいけないから,せめて私の代わりにその枝を持っていってほしいのですよ。」 「…菅原公とは,まったく反対ですね。」 南無が,そう感想を述べると,S43は笑った。 「ははは,そうですね。 でもきっと,思いは届きますよ。」 今がそのときだ! 次々と梅の枝が地面に刺さる。その数は5つ。それを軸に描かれる複雑な魔法陣。 4人がその陣の4方を護るように立ち,きっと討つべき敵を睨む。 そして,4色の音で祝詞が上がる。一糸の乱れも無く,その声は調和していた。 「青よ青 偉大なるアラダたる 青にして正義に冀う  あなたの友にして仲間 彼方駆ける風を追う者 あなたを愛する者たる我ら地べたする幼き青の我らは  僭越ながら貴方様の助力を 万古の契約の履行をお願いもうしあげる。」 同じ頃,S43はFEGより遠き森の国の中で,天に手を差し伸べ,詩を読んだ。何かを待つように,そして祈るように。 「おもへども みをしわけねば めにみえぬ こころをきみに たぐへてぞやる」 そして目を閉じ,地下をゆく彼らに心を飛ばした。 陣から,光が沸く。青い,青い光が。何かを守るように。 Chessは,その輝きに故郷の日差しを見た。 「ここにあるは梅の枝 あなたを思う梅の枝 匂い起こし東風にて空舞う一振りの飛び梅!」 風が吹く。何か優しい気持ちを思い起こすように柔らかく,鼻をくすぐるような香りを乗せて。 ぷーとらは,その風に何故かるしにゃん王国の春を思い浮かべた。 「それは 夜が暗ければ暗いほど 闇が深ければ深いほど 燦然と輝く一条の光  心が痛めば痛むほど 悲しみが深ければ深きほど 煌々と照らす一筋の灯  そう それは 冬が寒ければ寒いほどに 暖かに吹き抜ける春の兆 目覚めよと告げる神々の声  この世が冬であるのなら 我ら春に咲く野の花となりて ここにひとときの春風を呼ばん!」 青い光が陣の中央に集まる。今や梅の枝の姿は見えず,その光はあたかも梅の木のようにたちのぼり,綺麗な花を咲かせていた。 光の花に,魔法使い達の杖に,更なる光が集まる。正義を為し,不義を憎む光が。そう,それは敵を滅ぼす光! 「完成せよ! 飛び梅の雷戟!」} ***防御SS 【雷鳴の陣】 #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ 魔法使いにも,医師にも,世界忍者にも装甲はない。 でも,生き延びなくては。生きて,もう一度あの人に会うのだ。 勝ち目などなくても,6人の目には生きる意志がたぎっていた。 Chessは敵の威力を殺そうと,手持ちの手裏剣を全て飛ばし,刀を抜き払い受け流す体勢を整える。 手裏剣は数多に散り,お互いにぶつかり,また壁,床,天井に弾かれ八方から敵に迫り威嚇する。 ぷーとらは何も武器はないけれどせめてもとS43より託された梅の枝の一振りを取り出し,迫り来る敵に向かって投げつける。 梅の枝から,送り主が込めた青い加護の光が溢れる。 その二人の行動にテルが合わせた。 「鉄は徹に通じ撤に通ず。梅は埋めに通ず。 ことのはのことわりよ,敵の刃を塞げ!」 その詠唱に呼応して,手裏剣の軌跡に沿って四方がせりあがり道を塞ぎ,梅の枝はその四肢を伸ばして網目の木壁を作り出した。 その後ろでクレールは,魔法で杖を弓に変えていた。 「? なんで弓アルか?」 「弦打という守護の術があるんですよ。」 「中華四千年の歴史アルね!」 「まぁ,そうですね。」 そう答え,表情を消して,渦巻く思いをひとところに集める。 敵に弓を向け,弦を手にとった。しかし矢はつがえていない。元から矢は持ってきていなかった。 「…この音は,異を封ず。」 ひどく重苦しい何かを吐き出すかのようにそっと言葉をつむぎ,弦をはじく。 殺しても足りないほど憎いリンオーマの技だけど,その祝詞を唱えたところで絶技が使えるわけではないけれど,魔術にできるから。 生きて帰りたいという必死の思いが言霊を信じ,自然と口からその言葉がつむがせる。 「この音は路を封ず この音は破を封ず この音は二を封ず この音は歩を封ず この音は経を封ず」 幾度も幾度も弾かれる弦。いろはの弓のように矢は飛ばないが,音の壁が魔術の力を得て敵をふさぐように立ちはだかる。 もともとが戦向きでないるしにゃん王国の,彼らの,運命に抗おうとする,必死の姿であった。} -筆者コメント EV90マジックアイテム探し用に用意したSSです。 るしにゃん王国は基本的に足止めて殴りあいになったらおしまいのアイドレスしか持たないので, 先手必勝ということで詠唱を厚くしようと連作として用意しました。 万が一のとき詠唱で防御もできるよう,雷戟にかけて雷鳴の陣とタイトルした防御SSも書きましたが, これはちょっと特殊すぎたために提出以前にボツになりました。 菅原公のアイディアを形にしはじめたのはこれを書き上げた少し前くらいからですね。 …結局使う機会がなかったのは,喜ぶべきか,喜ばないべきか,今でも悩んでいます(笑) **ボツSS3:更夜さんの詠唱SS #openclose(show=これをクリックすると本分が出ます){ 海法よけ藩国の生み出したNW初の魔道兵器である未婚号。 数えるほどしか存在しないその決戦兵器のうち二台が,ここにある。 「いきましょう,S43さん。青が最強である,その証を示しに。」 「そうだね。はじめようか。」  二機のうちの一機が音を立てて稼動を始めた。 未婚号には本来即時攻撃の機能が備えられているが,それは確かに詠唱戦の準備行動だった。 未婚号とシンクロするように詠唱の準備に入る更夜はつぶやく。 「無名世界観では直接効力はないが,木は木気,雷は木気,そして春もまた木気の盛える時だ。  そして,術の寄り代に春に咲く花を使うとなれば。さぞ類似魔術の力は強いだろうな。くっくっく,さすがですね,青にして正義。」 「余裕言ってる暇はないんだけどね。俺一人で始めていいの?」 隣の機体に筒抜けだった。照れ隠しのように笑う更夜。 「ははは,ひどいなぁ正義。もう少し待ってください。」 「はいはい。急いでね。」 副腕と主腕の軌跡で魔法陣を描き終えた更夜は,一度目を瞑り,開いた。 ここからが本当の自分だと語るまなざしを携えて。 「青よ青 偉大なるアラダたる 青にして正義に冀う  あなたの友にして仲間 彼方駆ける風を追う者 あなたを愛する者たる我ら 地べたする幼き青の我は  僭越ながら貴方様の助力を いにしえの契約の履行をお願いもうしあげる。」 オーマのような詠唱を歌っても,彼はまだオーマではないし,青に助力を借りるこもできないだろう。 でも,らしく振舞うことこそが魔術の第一歩である。 いついかなるときもらしく振舞えば,たとえ自分が偽者であっても,いつか本物はあらわれる。だからやることはいつも同じ。 そう教えたのは,青ではなかったか。 「それは悲しみが深ければ深いほど 絶望が濃ければ濃いほど 燦然と輝く一条の光  それは夜が深ければ深いほど 闇が濃ければ濃いほど 天を見上げよと言うときの声」 未婚号にどくどくと注ぎ込まれる力を感じ取りながら,更夜は朗々と詠う。 どこからともなく,梅の枝を取り出した。FEGに旅立つ者へと青にして正義が渡した6本のうちの一枝であった。 そのガンプ・オーマを纏いし武具が,詠唱に応えるように淡く輝く。 「ここにあるは梅の枝 あなたを思う梅の枝 匂い起こし東風にて空舞う一振りの飛び梅」  そう これは冬が凍てつけば凍てつくほど 寒さに凍えれば凍えるほど 暖かに吹き抜ける春の兆 目覚めよと囁く世界の声!」 8つの魔道ユニットが声なき声をあげてフル稼働を始める。更夜の力が青い花びらのように周囲へと放出され,発動を補佐する魔法陣を重ねて編み上げる。 「この世が冬であるならば 我は春に咲く野の花となりて ここにひとときの春風を呼ばん!」 術式が込められた即時攻撃可能なクリスタルが稼動を始め,さらに力が膨らむ。 コクピットには,高い山に登ったかのようにあえぐ更夜。 無理もない。本来は5人で発動させる技を一人で,さらに未婚号の拡張機能を自らの力を注いでフル稼働させているのだ。 (これが…S43さんの見る世界…。なんて酷い世界だ…。) 魂が抜けるような感覚を覚えながら,隣の未婚号が動くのを感じ取った更夜は最後の言葉をつむぐ。 「完成せよっ! 飛び梅の雷撃!!」} -筆者コメント 九州会戦用に用意したSSです。 更夜さん&S43さんのダブル詠唱を想定した編成だったので, 青にして正義になったS43さんに追いつくために頑張る更夜さんをイメージして書きました。 たぶんもう更夜さんとS43さんが揃って詠唱戦をする機会はないので,ボツとして提出します。
以下,クレールのボツSSになります。 **ボツSS1:TAGAMIの戦闘SS #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ 永遠の時間を渡ってきても,なすことはいつも同じ。 愛する夫たる完全なる青を追うこと,そして戦うこと。 これからの一瞬もそう,慣れ親しむ世界,息をするもひとしいこと。 彼女は,心で静かに絶技を詠唱する。 (…橙の橙 誕生と接続を司る婚姻のアラダにお願いもうしあげる。) (愛しき青を追いかける我は,これより絶技を使用する。) その前には,見比べるだけでは余りにも婦人が立ち向かうには多い敵。 だが彼女にはその愛を追うための助けたる,全てを貫く聖銃がその腕にあった。 (完成せよ,水蛇零式) 銃口が青く輝き,そこから迸る光は無数の細長い光となって敵に突撃する。その軌跡には粉雪が舞い,上下左右に揺れ動く様はあたかも蛇のよう。 無数の凍てつく蛇が敵の装甲に牙を立てるが,その小さな突起で食い破ることは適わない。 もちろん,それでいいのだ。 次々と凍てつく蛇が装甲に牙を立てようとし,失敗して悔しそうに敵の体の表面を這い回る。 水蛇の軌跡には粉雪が舞う。その零下の軌跡が敵を凍てつかせるのだ。 突然の寒波にこごえいてつく敵。その動きが鈍ったその瞬間をついて,Tagamiは敵陣に突撃した。 (完成せよ,雷虎零式) 銃口が紫に輝く。いくつもの雷球が鮮やかな二重螺旋を描きながら吐き出され,そしてそのそれぞれが意思を持って敵を狙う。 蛇の牙より巨大な虎の牙が敵の装甲を打ち破り,凍てつく身体を砕き,抉り,焦がす。 その破壊力は進撃するTagamiを中心に不可侵領域が生まれたかのようで,周囲の敵は次々と雷虎に食い破られその動きを止めていく。 二重螺旋を描いて射出される雷球は今やTagamiを護る結界のようにその周囲を舞っていた。 しかし,水蛇の凍結を逃れ,雷虎の破壊を免れた敵が同胞の復讐をせんと一瞬の隙を突いてTagamiにその刃を突きつける。 微動だにせぬTagami,差し迫るその攻撃。命中するかと思われた次の刹那。 Tagamiは敵に貫かれた場所より掻き消え,瞬く間に別の場所から自らを狙う敵に銃口を向けていた。 もちろん,その身に微塵の傷も刻まれていない。 (完成せよ,炎鳳零式) まるで命の危機がなかったかのように落ち着いた様子で聖銃を切り替える。銃口が赤く輝き,蛇よりも虎よりも大きい鳳凰が生まれる。 翼を広げたその炎は,周囲に火の粉を撒き散らしながら空を舞い,Tagamiを狙った不幸な敵に着弾。周囲を巻き込むように炎の竜巻が敵を貫く。 その内に巻き起こる爆発が敵を砕き,その欠片を焼き払い,浄化された黒い炭を撒き散らしていく。 切り替えぬままにTagamiは銃弾を放つ。地上より水平に飛ぶ鳳は残された敵を貫くべく直進し,切り裂いていく。 僅かに届かぬ敵には,後から来る熱波がそれを焼き尽くした。 炎鳳の熱量のせいかゆらめく空気。そのなかに静かに佇むTagami。 口を開かぬその女は無表情にその陽炎の先にある情景を認識し,少し息を吐き出す。 (さぁ,次はどなたですか?)} -筆者コメント 戦闘用に書こうと思って始めた最初のSSです。 式神と精霊機動弾の聖銃のモードを参考に書いてみました。 (水蛇だけ散弾状に変更してみましたが,できるのでしょうか(汗) 黄金戦争中はもう戦闘にTAGAMIは出そうにないので,提出します。 **ボツSS2:マジックアイテムを探そう用SS群 ***詠唱SS1 【東風吹かば】 クレール@るしにゃん王国 #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ ノックする音。 進入を許す声。 静かに入る女。 そこは,帰還した青にして正義の書斎であった。 桃色に染めた一部の前髪を愛しく撫でながら,女が来訪の理由を語る。 「梅を,植えませんか? 季節外れではありますが。」 机に手を組む男が,答えた。 「逸話にご執心のようですね。」 「一つ,思うところがありまして。」 「……どうぞ。」 女は自らの考えを語った。 なぜ,詠唱絶技の名に飛び梅と雷の名があるのか? (彼らの主観から見れば)千年以上前に生きていた一人の貴族にその両方の由来を見つけられることはけして偶然ではないはず。 きっと,その者には青にして正義の名と非常に深く関わっていたに違いない。 アイドレスの知を司る星見司の者が「青にして正義」として選ばれたことからも,今見れば彼との縁を見ることができる。 大胆ではあるけれど… 「朝廷から九州に送られたあの人が,私の前世である,と?」 男の質問に,女はそれが私の仮説です。と答え,それに…と続けた。 「私,帰還のお祝いを,していなかったから。遅くなりましたけど,何かプレゼントしたくって。」 途切れ途切れに答えた声に,男が微笑む。 「プレゼントだったら,普通こういう形で私に聞かないのでは?」 「・・・・・・あっ。」 時が,止まった。 次の日,梅の木が植えられた。青にして正義の書斎の近く,窓から見えるところである。 もともとは苗木にしようという話であったが,男はあえて成木を植えてくれと言った。 何か,思うところができたらしい。 その真意は,やがて分かることだった。} ***詠唱SS2 【特別レッスン】 #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ 静かな湖畔の森の影から……いや,その辺りは全く静かではなかった。 「いくアルよ,中華四千年大極的大熊猫ビーームっ!」 白と黒の閃光が辺りを包む。 「はぁぁっ! デッドリィ・ニードル・レイン!」 紫の光が広がる。 元の色に森が戻った後には,白黒のまだら模様になった木に,指先ほどの大きさの針が一本だけ刺さり,しなだれていた。 その光景を見て唖然とする二人。近づいて木をぺちぺち叩くが,なんともない。あ,手に白黒模様が移った。 「なんでアルかー! ワタシの魔法は木を一刀両断するはずなのにー!」 「針が…一本だけ…。 がーん・・・。」 少し離れたところで,岩に腰かけた青い衣装に身を包む男が二人の様子を見ている。 「二人とも,こっちにおいで。」 とたとたと男に近づく二人。どことなく彼の持つ杖を気にしている。 「魔法とは,無闇やたらに使うものではないんだよ。」 「「でも,練習見てくれるって!」」 「いや,そうじゃなくてだね。その力を手に入れて何をしたいのか,何をなすべきかを考えなさいと言っているんだ。」 「…。」 静かに諭される二人。なんとなくしょげて,彼の次の言葉を待つ。 「いいかい。魔法とは,世の理を捻じ曲げる大変な力なんだ。  いつも使っていたら世界が壊れてしまう。  だから,世界を壊そうとするものに対して,使うべきものなんだよ。  もしくは…」 「もしくは?」 「一度だけだ。どうしてもしなくてはいけないとき。誰かに手を差し伸べるとき,  どうしても,なさねばならないことがあるときに,一度だけ,使いなさい。  そしてその一度に,全てを注ぎ込むんだ。」 その言葉には,魔法を使う者としての心得だけではなく,敵の攻撃を受ければひとたまりもない彼らに無事にこの戦いを生き延びて欲しいという願いが込められていた。 それを知ってかしらずか,一字一句間違えずに暗記しようと真面目な面持ちで聞く二人。それを見て微笑む男。 「よし,それじゃぁ一つとっておきを教えてあげよう。君達にも仕える魔法だ。  …もう少し開けた場所がいいな。ついてきなさい,スゥ,南無。」 「「はい,正義!」」} ***詠唱SS3 【儀式魔術】 #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ それは,旅立ちの前のこと。 「この,梅の枝をお持ちください。」 S43―青にして正義の名を持つ男―はそういって,6振りの枝をFEGに行こうとする一行に差し出した。 「どうしてアルか?」 スゥ・アンコが口を挟む。 「あなた方とは共にいけないから,せめて私の代わりにその枝を持っていってほしいのですよ。」 「…菅原公とは,まったく反対ですね。」 南無が,そう感想を述べると,S43は笑った。 「ははは,そうですね。 でもきっと,思いは届きますよ。」 今がそのときだ! 次々と梅の枝が地面に刺さる。その数は5つ。それを軸に描かれる複雑な魔法陣。 4人がその陣の4方を護るように立ち,きっと討つべき敵を睨む。 そして,4色の音で祝詞が上がる。一糸の乱れも無く,その声は調和していた。 「青よ青 偉大なるアラダたる 青にして正義に冀う  あなたの友にして仲間 彼方駆ける風を追う者 あなたを愛する者たる我ら地べたする幼き青の我らは  僭越ながら貴方様の助力を 万古の契約の履行をお願いもうしあげる。」 同じ頃,S43はFEGより遠き森の国の中で,天に手を差し伸べ,詩を読んだ。何かを待つように,そして祈るように。 「おもへども みをしわけねば めにみえぬ こころをきみに たぐへてぞやる」 そして目を閉じ,地下をゆく彼らに心を飛ばした。 陣から,光が沸く。青い,青い光が。何かを守るように。 Chessは,その輝きに故郷の日差しを見た。 「ここにあるは梅の枝 あなたを思う梅の枝 匂い起こし東風にて空舞う一振りの飛び梅!」 風が吹く。何か優しい気持ちを思い起こすように柔らかく,鼻をくすぐるような香りを乗せて。 ぷーとらは,その風に何故かるしにゃん王国の春を思い浮かべた。 「それは 夜が暗ければ暗いほど 闇が深ければ深いほど 燦然と輝く一条の光  心が痛めば痛むほど 悲しみが深ければ深きほど 煌々と照らす一筋の灯  そう それは 冬が寒ければ寒いほどに 暖かに吹き抜ける春の兆 目覚めよと告げる神々の声  この世が冬であるのなら 我ら春に咲く野の花となりて ここにひとときの春風を呼ばん!」 青い光が陣の中央に集まる。今や梅の枝の姿は見えず,その光はあたかも梅の木のようにたちのぼり,綺麗な花を咲かせていた。 光の花に,魔法使い達の杖に,更なる光が集まる。正義を為し,不義を憎む光が。そう,それは敵を滅ぼす光! 「完成せよ! 飛び梅の雷戟!」} ***防御SS 【雷鳴の陣】 #openclose(show=これをクリックすると本文が出ます){ 魔法使いにも,医師にも,世界忍者にも装甲はない。 でも,生き延びなくては。生きて,もう一度あの人に会うのだ。 勝ち目などなくても,6人の目には生きる意志がたぎっていた。 Chessは敵の威力を殺そうと,手持ちの手裏剣を全て飛ばし,刀を抜き払い受け流す体勢を整える。 手裏剣は数多に散り,お互いにぶつかり,また壁,床,天井に弾かれ八方から敵に迫り威嚇する。 ぷーとらは何も武器はないけれどせめてもとS43より託された梅の枝の一振りを取り出し,迫り来る敵に向かって投げつける。 梅の枝から,送り主が込めた青い加護の光が溢れる。 その二人の行動にテルが合わせた。 「鉄は徹に通じ撤に通ず。梅は埋めに通ず。 ことのはのことわりよ,敵の刃を塞げ!」 その詠唱に呼応して,手裏剣の軌跡に沿って四方がせりあがり道を塞ぎ,梅の枝はその四肢を伸ばして網目の木壁を作り出した。 その後ろでクレールは,魔法で杖を弓に変えていた。 「? なんで弓アルか?」 「弦打という守護の術があるんですよ。」 「中華四千年の歴史アルね!」 「まぁ,そうですね。」 そう答え,表情を消して,渦巻く思いをひとところに集める。 敵に弓を向け,弦を手にとった。しかし矢はつがえていない。元から矢は持ってきていなかった。 「…この音は,異を封ず。」 ひどく重苦しい何かを吐き出すかのようにそっと言葉をつむぎ,弦をはじく。 殺しても足りないほど憎いリンオーマの技だけど,その祝詞を唱えたところで絶技が使えるわけではないけれど,魔術にできるから。 生きて帰りたいという必死の思いが言霊を信じ,自然と口からその言葉がつむがせる。 「この音は路を封ず この音は破を封ず この音は二を封ず この音は歩を封ず この音は経を封ず」 幾度も幾度も弾かれる弦。いろはの弓のように矢は飛ばないが,音の壁が魔術の力を得て敵をふさぐように立ちはだかる。 もともとが戦向きでないるしにゃん王国の,彼らの,運命に抗おうとする,必死の姿であった。} -筆者コメント EV90マジックアイテム探し用に用意したSSです。 るしにゃん王国は基本的に足止めて殴りあいになったらおしまいのアイドレスしか持たないので, 先手必勝ということで詠唱を厚くしようと連作として用意しました。 万が一のとき詠唱で防御もできるよう,雷戟にかけて雷鳴の陣とタイトルした防御SSも書きましたが, これはちょっと特殊すぎたために提出以前にボツになりました。 菅原公のアイディアを形にしはじめたのはこれを書き上げた少し前くらいからですね。 …結局使う機会がなかったのは,喜ぶべきか,喜ばないべきか,今でも悩んでいます(笑) **ボツSS3:更夜さんの詠唱SS #openclose(show=これをクリックすると本分が出ます){ 海法よけ藩国の生み出したNW初の魔道兵器である未婚号。 数えるほどしか存在しないその決戦兵器のうち二台が,ここにある。 「いきましょう,S43さん。青が最強である,その証を示しに。」 「そうだね。はじめようか。」  二機のうちの一機が音を立てて稼動を始めた。 未婚号には本来即時攻撃の機能が備えられているが,それは確かに詠唱戦の準備行動だった。 未婚号とシンクロするように詠唱の準備に入る更夜はつぶやく。 「無名世界観では直接効力はないが,木は木気,雷は木気,そして春もまた木気の盛える時だ。  そして,術の寄り代に春に咲く花を使うとなれば。さぞ類似魔術の力は強いだろうな。くっくっく,さすがですね,青にして正義。」 「余裕言ってる暇はないんだけどね。俺一人で始めていいの?」 隣の機体に筒抜けだった。照れ隠しのように笑う更夜。 「ははは,ひどいなぁ正義。もう少し待ってください。」 「はいはい。急いでね。」 副腕と主腕の軌跡で魔法陣を描き終えた更夜は,一度目を瞑り,開いた。 ここからが本当の自分だと語るまなざしを携えて。 「青よ青 偉大なるアラダたる 青にして正義に冀う  あなたの友にして仲間 彼方駆ける風を追う者 あなたを愛する者たる我ら 地べたする幼き青の我は  僭越ながら貴方様の助力を いにしえの契約の履行をお願いもうしあげる。」 オーマのような詠唱を歌っても,彼はまだオーマではないし,青に助力を借りるこもできないだろう。 でも,らしく振舞うことこそが魔術の第一歩である。 いついかなるときもらしく振舞えば,たとえ自分が偽者であっても,いつか本物はあらわれる。だからやることはいつも同じ。 そう教えたのは,青ではなかったか。 「それは悲しみが深ければ深いほど 絶望が濃ければ濃いほど 燦然と輝く一条の光  それは夜が深ければ深いほど 闇が濃ければ濃いほど 天を見上げよと言うときの声」 未婚号にどくどくと注ぎ込まれる力を感じ取りながら,更夜は朗々と詠う。 どこからともなく,梅の枝を取り出した。FEGに旅立つ者へと青にして正義が渡した6本のうちの一枝であった。 そのガンプ・オーマを纏いし武具が,詠唱に応えるように淡く輝く。 「ここにあるは梅の枝 あなたを思う梅の枝 匂い起こし東風にて空舞う一振りの飛び梅」  そう これは冬が凍てつけば凍てつくほど 寒さに凍えれば凍えるほど 暖かに吹き抜ける春の兆 目覚めよと囁く世界の声!」 8つの魔道ユニットが声なき声をあげてフル稼働を始める。更夜の力が青い花びらのように周囲へと放出され,発動を補佐する魔法陣を重ねて編み上げる。 「この世が冬であるならば 我は春に咲く野の花となりて ここにひとときの春風を呼ばん!」 術式が込められた即時攻撃可能なクリスタルが稼動を始め,さらに力が膨らむ。 コクピットには,高い山に登ったかのようにあえぐ更夜。 無理もない。本来は5人で発動させる技を一人で,さらに未婚号の拡張機能を自らの力を注いでフル稼働させているのだ。 (これが…S43さんの見る世界…。なんて酷い世界だ…。) 魂が抜けるような感覚を覚えながら,隣の未婚号が動くのを感じ取った更夜は最後の言葉をつむぐ。 「完成せよっ! 飛び梅の雷撃!!」} -筆者コメント 九州会戦用に用意したSSです。 更夜さん&S43さんのダブル詠唱を想定した編成だったので, 青にして正義になったS43さんに追いつくために頑張る更夜さんをイメージして書きました。 たぶんもう更夜さんとS43さんが揃って詠唱戦をする機会はないので,ボツとして提出します。 以上になります。ちなみに,トホホの最大のポイントは私が書いた戦闘用SSがこれで全てということです。 つまり,戦闘用のはずが,全然戦闘に出ていないという……(あ,書いてて涙が(汗)

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
記事メニュー
目安箱バナー