《6》



  ねこがやってきました。
かぼちゃのランタンは、ごしゅじんさまをまっています。

 そのひは、ねこのようすがいつもとちがいました。
いつもよりずっとながく、かぼちゃのランタンとごしゅじんさまのいえにいます。
 かぼちゃのランタンは、ねこはなにをしているのだろうとおもいながら、ごしゅじんさまをまっていました。
ねこはそのひ、かえっていきませんでした。

 つぎのひ、かぼちゃのランタンとごしゅじんさまのいえに、たくさんのひとがやってきました。
みんな、ふだんとちがうふくをきています。
 かぼちゃのランタンは、きょうはまだハロウィンじゃないのに、どうしてだろう。とおもいました。
 かぼちゃのランタンは、ふたりのいえからかえっていくたくさんのひとたちが、どうしてかなしそうなかおをしているのか、よくわかりませんでした。

 かぼちゃのランタンはそとをみつめています。
すると、ねこがでてきました。
 ねこは、ほかのひとたちとちがって、かなしそうなかおをしていません。
かぼちゃのランタンは、どうしてだろうとおもいました。
 するとねこは、とつぜんなきはじめました。

 かぼちゃのランタンはそとをみつめています。
ねこは、ないています。
 かぼちゃのランタンはそとをみつめています。
ねこは、ないています。
 かぼちゃのランタンは、ねこがないているりゆうが、なぜかわかりました。

 つぎのひ、かぼちゃのランタンはなにもしていませんでした。
ねこは、やってきませんでした。
ごしゅじんさまは、そとにでて、なでて、まちへつれていってくれませんでした。

 つぎのひ、かぼちゃのランタンはなにもしていませんでした。
ねこは、やってきませんでした。
ごしゅじんさまは、そとにでて、なでてくれませんでした。

 つぎのひ、かぼちゃのランタンはなにもしていませんでした。
ねこは、やってきませんでした。
ごしゅじんさまは、そとにでてきませんでした。

 かぼちゃのランタンはわかってしまいました。
きっと、もう、ごしゅじんさまにはあえないのです。
 つぎのひも、そのつぎのひも、かぼちゃのランタンはなにもしていませんでした。


 そのひ、まちはハロウィンのおまつりでおおさわぎでした。
かぼちゃのランタンは、なにもしていません。

 かぼちゃのランタンは、まえのとしのハロウィンをおもいだしていました。
ごしゅじんさまがかぼちゃのランタンをつれてねりあるいてくれたときのことをおもいだしていました。
 ともてとても、うれしいおもいででした。
そして、それはもうかえってこないのだとわかりました。

 かぼちゃのランタンは、とてもとても、かなしくなりました。もう、なにもしたくありませんでした。
まちはハロウィンでにぎやかですが、かぼちゃのランタンとごしゅじんさまのいえは、とてもしずかでした。

 かぼちゃのランタンは、なにもしたくありません。
いまもむかしも、かぼちゃのランタンにとっては、ごしゅじんさまはすべてです。
ごしゅじんさまがいなくなってしまったなら、かぼちゃのランタンはもうなにもすることがなくなるはずです。

 まちのほうから、ねこがなきながらはしってくるのをみたときも、なにもしたくありませんでした。
かぼちゃのランタンは、なにもしたくありません。なにもできないのです。。

 それでも、ねこは、なきながらはしってきます。
ねこは、なきながら、かぼちゃのランタンめがけてはしってきます。
「ハロウィンにいこう!」
 ねこはいいました。

 かぼちゃのランタンは、ごしゅじんさまいがいのひととハロウィンにいきたくなんてありません。
ねこのことばも、きにしませんでした。
「ハロウィンにいこう!」
 でも、ねこはつづけていいました。なきながらいいました。
かぼちゃのランタンはなみだをながすことができませんが、ねこがないているのが、かなしいからなのはわかりました。
なら、どうしてねこはハロウィンにいきたいというのでしょう。
 かぼちゃのランタンにはわかりません。ふしぎそうなかおで、ねこをみました。

「それでも、おれたちはまちへいくんだ。
きみのごしゅじんさまは、さいごまできみとハロウィンにいきたいといっていたんだ
だから、ハロウィンにいこう!」
 ねこは、あいかわらずなきながらいいました。
かぼちゃのランタンは、ねこのことばをきいておどろきました。

 それは、ごしゅじんさまからかぼちゃのランタンへのさいごのことばです。ねこはごしゅじんさまから、そのことばのことづてをたのまれたのでしょうか。
 かぼちゃのランタンは、ねこをみました。
ねこは、ずっとないたまま、かぼちゃのランタンをじっとみています。

 かぼちゃのランタンはおもいました。
いまもむかしも、かぼちゃのランタンにとっては、ごしゅじんさまはすべてです。
 ごしゅじんさまがいなくなってしまったなら、かぼちゃのランタンはもうなにもすることがなくなるはずでした。
でも、まだです。まだ、さいごのことばがのこっていると、ねこはいいます。

 かぼちゃのランタンはおもいました。
ごしゅじんさまはもう、そとにでてくてくれません。
ごしゅじんさまはもう、やさしくなでてくれません。
ごしゅじんさまはもう、まちへつれていってはくれません。
 それでも、まだぜんぶおわったわけではないのかもしれません。

 かぼちゃのランタンは、ねこのめをみました。
ねこはないていましたが、めはないていませんでした。なにかをしようという、このままではおわりたくないというめでした。
 かぼちゃのランタンは、そのめをつよくみつめました。
そのまなざしはまるで、ねこにちからをあたえるように、あかるくひかっていました。


 かぼちゃのランタンは、くらいよみちをてらします。
ねこにつれられて、ハロウィンでもりあがるまちへといそぎます。

 かぼちゃのランタンは、くらいよみちをてらします。
これからもてらしつづけるかもしれませんし、てらすのをやめるかもしれませんが、
きょうだけはぜったいにてらしつづけようとおもいました。

 ここでみちをてらさないと、ごしゅじんさまがかなしんでしまうきがしたのです。
たとえもうあえないとしても、かぼちゃのランタンは、ごしゅじんさまがかなしむのだけはいやでした。
 かぼちゃのランタンは、あかるいえがおで、くらいよみちをてらしました。


 そのひ、まちのハロウィンのおまつりでは
「とりっくおあとりーと!」
 ないているような、なのにわらっているような、そんなふしぎなかおをした、ねことかぼちゃのランタンがあらわれて、
たくさんのひとをえがおにかえていったそうです。




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