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「Hurting Heart」(2010/09/09 (木) 19:10:39) の最新版変更点
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**Hurting Heart ◆C8THitgZTg
林を抜けると、数件の民家が並ぶ開けた土地が広がっていた。
なだらかな丘陵地の裾野に当たるその場所に、人の気配はない。
夜道を照らす申し訳程度の街路灯。
深い闇に閉ざされ、十メートル先も見えない広場。
家々の窓に明かりはなく、大きな模型の中を歩いているような錯覚すら覚えてしまう。
「すずかちゃん、ここで休憩しようか」
そう言って、武藤カズキは一軒の家を示した。
西側の市街地北部、家々がまばらに並ぶ通りの更に北端。
青々とした生垣に囲まれた、和風の趣を湛えた民家である。
それなりに立派な門を備えているが、門の扉そのものは開きっぱなしになっている。
「はい……」
月村すずかの返事には、どことなく怯えの色が浮かんでいた。
あの白い怪人のような理外の存在を恐れているのか。
未知の場所に踏み込むことに気後れしているのか。
それとも。
「よっと」
小洒落た庭に面した縁側に腰を下ろす。
誰も居ない割には手入れの行き届いた中庭だ。
植木は綺麗に刈り揃えられ、雑草も目立つほどには生えていない。
錦鯉の一匹でも住んでいそうな池まで設けられている。
もしかしたら無人だというのは勘違いで、誰かが住んでいる家なのかもしれない。
カズキは視線を上げた。
背丈ほどの生垣が障壁になっていて、通りの様子を伺うことはできない。
しかしそれは、通りの側からこちらの様子を悟られないということでもある。
少なくとも、開けた場所を歩き回るよりは安全だ。
不意に、カズキの頬に冷たいものが触れた。
「————?」
「あ、ほっぺた冷やしたほうがいいかなって……」
目線を向けると、すずかが濡れたハンカチをカズキの頬に当てていた。
きっと彼女が持ち歩いていたものなのだろう。
薄手の可愛らしいデザインをしている。
「ありがとう。……どこかに水道でもあったのかな」
「えっと、バッグにお水が入っていたから……それを」
カズキはすずかからハンカチを受け取って、自分の頬を冷やした。
頬から熱が引いていくにつれて、思考も冷静になっていく気がした。
膝の上で名簿を広げる。
“あれ”は“究極の闇”と名乗っていた。
だが、この名簿にはそのような名前は記載されていない。
もしかしたら、究極の闇とは異名に過ぎず、本当の名は別にあるのかもしれない。
何せあのパピヨンも、人間だったころの名前『蝶野攻爵』として書かれているのだから。
しかし、目簿にはどう考えても本名とは思えないものも存在していた。
例えば『L』や『V』や『DIO』といったアルファベットだけの名前。
『ヴァンプ将軍』と『悪魔将軍』のように階級が添えられた名前。
極めつけは『イカ娘』なんていう、どのように解釈すべきか分からない名前まである。
「……」
列挙された六十の名前。
その中の一つを見たとき、カズキはぎゅっと奥歯を噛み締めた。
「あの、武藤さん……」
カズキが名簿を睨んでいると、すずかが言いにくそうに口を開いた。
その素振りを見て、カズキは彼女の意図に気がついた。
後で必ず説明するといったことを、まだ伝えていなかった。
「そうだった、ちゃんと説明しないとな。すずかちゃんは『錬金術』って知ってる?」
————錬金術。
近代より前、全ヨーロッパを風靡した原始的な総合科学技術。
鉛などから金への変換や不老不死の薬の製出などを試みた。
これらは成功はしなかったが、種々の技術の発達を促し、近代〜現代科学の基礎となった。
それが『常識』として知られる錬金術の姿。
しかし、錬金術は二つだけ『常識』を超えた成果を残した。
人造生命の研究の産物——ホムンクルス。
戦術兵器の開発の成果——武装錬金。
世に解き放たれたホムンクルスを、武装錬金を以って倒す者……それが錬金の戦士。
かつて『斗貴子さん』から教わったことを、自分なりに噛み砕いてすずかに伝えていく。
二つだけ、隠し事をしながら。
「ホムンクルス……武装錬金……」
すずかはカズキの言葉を反芻しながら、超常の世界を理解しようと努めているようだった。
その無邪気な様を目の当たりにして、カズキは隠し事をしたことが間違っていなかったと確信した。
あんなこと教えられるわけがない。
教えたところで余計に怖がらせてしまうだけだ。
自分が一度殺され、核鉄の力で蘇ったこと。
そして、ホムンクルスが人間を犠牲に製造される存在で、その上、生きた人間を捕食する習性があるということなんて。
「それじゃあ、さっきのも」
「多分ホムンクルスだと思う」
口ではそう言ったが、内心は少し戸惑っていた。
確かに動植物型ホムンクルスは、人間の姿から何かしらの生物を模した形状へと変身する。
しかし、そのときの姿はベースとなった動植物の形状を大きく反映している。
“究極の闇”のように、人間と別の生物を融合させたような姿ではない。
一方、人間型ホムンクルスは人の姿を保ったまま怪物的な力を手に入れる。
また“究極の闇”の体に章印は見られなかったが、それは蝶野攻爵も同じこと。
動物型ホムンクルスのように変身するが、その姿は人間とそう変わらない存在————
「————」
カズキは頬を冷やしていたハンカチを、オーバーヒートしそうな額に移し変えた。
考えれば考えるほど訳が分からなくなりそうだ。
元よりカズキは考えるより先に身体が動く性格だ。
情報を考察して相手の正体を推理するなど、得意な分野ではない。
こういうことは『斗貴子さん』の方が得意そうなのだが……
「武藤さん……?」
すずかが不安そうにカズキの顔を覗き込んだ。
内心の戸惑いが表情に出てしまっていたようだ。
カズキは大きく一息ついて、すずかの目をまっすぐ見据えた。
「大丈夫、オレがみんなを守るから」
ひょっとしたら説得力のない言葉だったのかもしれない。
けれど武藤カズキという人間にとっては、これこそが嘘偽りのない一言なのだ。
すずかは僅かに退いて、小さな手をきゅっと握り締めた。
小刻みに震えるその拳を見て、カズキは彼女が怒っているのだと思った。
無理もないだろう。
助けると言って助けられず。
倒すと言って倒されて。
自分の不甲斐なさに苦痛すら覚えてしまう。
けれど、それは覚悟していたことだ。
錬金の戦士になると決めたとき、すべて耐えると決意した。
偽善者だと罵られることも、己の無力さに辛くなるのも。
守りたい人から忌み嫌われたとしても。
自分がどれほどの傷を負わされるとしても。
みんなが苦しむ代わりだと思えば耐えられる。
みんなを守るためなら耐えられる。
それが武藤カズキの信念だった。
しかし責めの言葉を待つカズキに掛けられたのは、存外に優しい声であった。
「私も、一緒に頑張ります」
仄かな月明かりを背にすずかは庭に立ち、白い手を胸元で握っている。
カズキは一瞬だけ目を丸くした。
そして肯定の代わりに笑顔を見せて、すっと手を差し出した。
「ああ、よろしく」
「……はい」
折れそうなほどに細く白い指先が、カズキの手にそっと重ねられる。
容易く手折れる花の茎のような指を握り、改めて固く誓う。
どんなに強い敵が相手でも、絶対に諦めないことを。
そして、みんなを守り抜いてみせると。
ドクン———
左の胸が、鈍く鳴り響いた。
◇ ◇ ◇
———大丈夫、オレがみんなを守るから。
彼は迷うことなく、そう言い切った。
すずかは片手を後ろ手に握り締めたまま、口を噤んだ。
薄い影が足元から伸びて、彼の足元に触れている。
彼が口にした言葉には偽りも誤魔化しもないはずだ。
武藤カズキという人は、本当にみんなを守りたいと思っている。
そうでなければ、見ず知らずの自分を命懸けで助けようとしてくれるはずがない。
けれど、一つだけどうしても気になることがある。
武藤まひろ。
彼と同じ苗字を持つ人。
名前の響きからして、きっと女の人だ。
彼が名簿を読んでいるところを、すずかは後ろから眺めていた。
そして、武藤まひろという名前を見たときの辛そうな表情も。
武藤まひろと彼の関係は見当もつかない。
姉妹かもしれないし、お母さんだったりするかもしれない。
見当もつかないけれど、彼にとって大切な人だということは想像できる。
そんな人がいるのに、辛そうな顔をしていたのに、彼はみんなを守ると言ったのだ。
聞きたかった。
この人を助けに行かなくていいのかと。
他人の心を汲むことが上手な少女は、それ故に、彼の苦悩を理解する。
だけど、手をぎゅっと握り締めて我慢してしまった。
大切な人を失うことは辛くて怖いに決まっている。
さきほどの白い怪人のような恐ろしいモノが居ると分かれば尚更だ。
それでも守ると言ってくれる人————
守られる立場の自分が、彼にどんな言葉を掛けられるというのだろうか。
心の奥底では、彼が大切な人を優先して置き去りにされてしまうのを恐れているというのに。
すずかはしばらくの躊躇いを挟み、心に浮かんだ言葉を口にした。
「……私も、一緒に———」
なんて我侭で、なんてずるい言葉なんだろう。
大切な人よりも優先して欲しいと正直に頼めばいいのに。
恐ろしいモノから自分達を守って欲しいと縋ればいいのに。
拒絶されることが怖くて、聞こえのいい言葉を紡いでしまった。
幼い自責の念がすずかの優しい心を締め付ける。
少しだけ、胸の奥が痛かった。
【D-2 /市街地最北の民家 縁側:深夜】
【武藤カズキ@武装錬金】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:右頬に腫れ
[装備]:すずかのハンカチ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3(本人未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:救える命は一つでも拾う
1:すずかを守る
2:ダグバを倒す
3:まひろのことが心配
[備考]
※参戦時期は原作五巻、私立銀成学園高校突入直後。
【月村すずか@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康
[装備]:
[持物]:基本支給品一式、不明支給品1〜3(本人未確認)
[方針/目的]
基本方針:アリサとなのはと会う
1:カズキについていく
2:置いていかれるのが怖い
[備考]
※参戦時期は未定。
*時系列順で読む
Back:[[幕間劇『パルティータ』]] Next:[[甘楽ちゃんのドキ☆ドキ身体&精神検査!?]]
*投下順で読む
Back:[[正義の業]] Next:[[]]
|[[究極の闇]]|武藤カズキ|[[]]|
|~|月村すずか|[[]]|
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**Hurting Heart ◆C8THitgZTg
林を抜けると、数件の民家が並ぶ開けた土地が広がっていた。
なだらかな丘陵地の裾野に当たるその場所に、人の気配はない。
夜道を照らす申し訳程度の街路灯。
深い闇に閉ざされ、十メートル先も見えない広場。
家々の窓に明かりはなく、大きな模型の中を歩いているような錯覚すら覚えてしまう。
「すずかちゃん、ここで休憩しようか」
そう言って、武藤カズキは一軒の家を示した。
西側の市街地北部、家々がまばらに並ぶ通りの更に北端。
青々とした生垣に囲まれた、和風の趣を湛えた民家である。
それなりに立派な門を備えているが、門の扉そのものは開きっぱなしになっている。
「はい……」
月村すずかの返事には、どことなく怯えの色が浮かんでいた。
あの白い怪人のような理外の存在を恐れているのか。
未知の場所に踏み込むことに気後れしているのか。
それとも。
「よっと」
小洒落た庭に面した縁側に腰を下ろす。
誰も居ない割には手入れの行き届いた中庭だ。
植木は綺麗に刈り揃えられ、雑草も目立つほどには生えていない。
錦鯉の一匹でも住んでいそうな池まで設けられている。
もしかしたら無人だというのは勘違いで、誰かが住んでいる家なのかもしれない。
カズキは視線を上げた。
背丈ほどの生垣が障壁になっていて、通りの様子を伺うことはできない。
しかしそれは、通りの側からこちらの様子を悟られないということでもある。
少なくとも、開けた場所を歩き回るよりは安全だ。
不意に、カズキの頬に冷たいものが触れた。
「————?」
「あ、ほっぺた冷やしたほうがいいかなって……」
目線を向けると、すずかが濡れたハンカチをカズキの頬に当てていた。
きっと彼女が持ち歩いていたものなのだろう。
薄手の可愛らしいデザインをしている。
「ありがとう。……どこかに水道でもあったのかな」
「えっと、バッグにお水が入っていたから……それを」
カズキはすずかからハンカチを受け取って、自分の頬を冷やした。
頬から熱が引いていくにつれて、思考も冷静になっていく気がした。
膝の上で名簿を広げる。
“あれ”は“究極の闇”と名乗っていた。
だが、この名簿にはそのような名前は記載されていない。
もしかしたら、究極の闇とは異名に過ぎず、本当の名は別にあるのかもしれない。
何せあのパピヨンも、人間だったころの名前『蝶野攻爵』として書かれているのだから。
しかし、目簿にはどう考えても本名とは思えないものも存在していた。
例えば『L』や『V』や『DIO』といったアルファベットだけの名前。
『ヴァンプ将軍』と『悪魔将軍』のように階級が添えられた名前。
極めつけは『イカ娘』なんていう、どのように解釈すべきか分からない名前まである。
「……」
列挙された六十の名前。
その中の一つを見たとき、カズキはぎゅっと奥歯を噛み締めた。
「あの、武藤さん……」
カズキが名簿を睨んでいると、すずかが言いにくそうに口を開いた。
その素振りを見て、カズキは彼女の意図に気がついた。
後で必ず説明するといったことを、まだ伝えていなかった。
「そうだった、ちゃんと説明しないとな。すずかちゃんは『錬金術』って知ってる?」
————錬金術。
近代より前、全ヨーロッパを風靡した原始的な総合科学技術。
鉛などから金への変換や不老不死の薬の製出などを試みた。
これらは成功はしなかったが、種々の技術の発達を促し、近代〜現代科学の基礎となった。
それが『常識』として知られる錬金術の姿。
しかし、錬金術は二つだけ『常識』を超えた成果を残した。
人造生命の研究の産物——ホムンクルス。
戦術兵器の開発の成果——武装錬金。
世に解き放たれたホムンクルスを、武装錬金を以って倒す者……それが錬金の戦士。
かつて『斗貴子さん』から教わったことを、自分なりに噛み砕いてすずかに伝えていく。
二つだけ、隠し事をしながら。
「ホムンクルス……武装錬金……」
すずかはカズキの言葉を反芻しながら、超常の世界を理解しようと努めているようだった。
その無邪気な様を目の当たりにして、カズキは隠し事をしたことが間違っていなかったと確信した。
あんなこと教えられるわけがない。
教えたところで余計に怖がらせてしまうだけだ。
自分が一度殺され、核鉄の力で蘇ったこと。
そして、ホムンクルスが人間を犠牲に製造される存在で、その上、生きた人間を捕食する習性があるということなんて。
「それじゃあ、さっきのも」
「多分ホムンクルスだと思う」
口ではそう言ったが、内心は少し戸惑っていた。
確かに動植物型ホムンクルスは、人間の姿から何かしらの生物を模した形状へと変身する。
しかし、そのときの姿はベースとなった動植物の形状を大きく反映している。
“究極の闇”のように、人間と別の生物を融合させたような姿ではない。
一方、人間型ホムンクルスは人の姿を保ったまま怪物的な力を手に入れる。
また“究極の闇”の体に章印は見られなかったが、それは蝶野攻爵も同じこと。
動物型ホムンクルスのように変身するが、その姿は人間とそう変わらない存在————
「————」
カズキは頬を冷やしていたハンカチを、オーバーヒートしそうな額に移し変えた。
考えれば考えるほど訳が分からなくなりそうだ。
元よりカズキは考えるより先に身体が動く性格だ。
情報を考察して相手の正体を推理するなど、得意な分野ではない。
こういうことは『斗貴子さん』の方が得意そうなのだが……
「武藤さん……?」
すずかが不安そうにカズキの顔を覗き込んだ。
内心の戸惑いが表情に出てしまっていたようだ。
カズキは大きく一息ついて、すずかの目をまっすぐ見据えた。
「大丈夫、オレがみんなを守るから」
ひょっとしたら説得力のない言葉だったのかもしれない。
けれど武藤カズキという人間にとっては、これこそが嘘偽りのない一言なのだ。
すずかは僅かに退いて、小さな手をきゅっと握り締めた。
小刻みに震えるその拳を見て、カズキは彼女が怒っているのだと思った。
無理もないだろう。
助けると言って助けられず。
倒すと言って倒されて。
自分の不甲斐なさに苦痛すら覚えてしまう。
けれど、それは覚悟していたことだ。
錬金の戦士になると決めたとき、すべて耐えると決意した。
偽善者だと罵られることも、己の無力さに辛くなるのも。
守りたい人から忌み嫌われたとしても。
自分がどれほどの傷を負わされるとしても。
みんなが苦しむ代わりだと思えば耐えられる。
みんなを守るためなら耐えられる。
それが武藤カズキの信念だった。
しかし責めの言葉を待つカズキに掛けられたのは、存外に優しい声であった。
「私も、一緒に頑張ります」
仄かな月明かりを背にすずかは庭に立ち、白い手を胸元で握っている。
カズキは一瞬だけ目を丸くした。
そして肯定の代わりに笑顔を見せて、すっと手を差し出した。
「ああ、よろしく」
「……はい」
折れそうなほどに細く白い指先が、カズキの手にそっと重ねられる。
容易く手折れる花の茎のような指を握り、改めて固く誓う。
どんなに強い敵が相手でも、絶対に諦めないことを。
そして、みんなを守り抜いてみせると。
ドクン———
左の胸が、鈍く鳴り響いた。
◇ ◇ ◇
———大丈夫、オレがみんなを守るから。
彼は迷うことなく、そう言い切った。
すずかは片手を後ろ手に握り締めたまま、口を噤んだ。
薄い影が足元から伸びて、彼の足元に触れている。
彼が口にした言葉には偽りも誤魔化しもないはずだ。
武藤カズキという人は、本当にみんなを守りたいと思っている。
そうでなければ、見ず知らずの自分を命懸けで助けようとしてくれるはずがない。
けれど、一つだけどうしても気になることがある。
武藤まひろ。
彼と同じ苗字を持つ人。
名前の響きからして、きっと女の人だ。
彼が名簿を読んでいるところを、すずかは後ろから眺めていた。
そして、武藤まひろという名前を見たときの辛そうな表情も。
武藤まひろと彼の関係は見当もつかない。
姉妹かもしれないし、お母さんだったりするかもしれない。
見当もつかないけれど、彼にとって大切な人だということは想像できる。
そんな人がいるのに、辛そうな顔をしていたのに、彼はみんなを守ると言ったのだ。
聞きたかった。
この人を助けに行かなくていいのかと。
他人の心を汲むことが上手な少女は、それ故に、彼の苦悩を理解する。
だけど、手をぎゅっと握り締めて我慢してしまった。
大切な人を失うことは辛くて怖いに決まっている。
さきほどの白い怪人のような恐ろしいモノが居ると分かれば尚更だ。
それでも守ると言ってくれる人————
守られる立場の自分が、彼にどんな言葉を掛けられるというのだろうか。
心の奥底では、彼が大切な人を優先して置き去りにされてしまうのを恐れているというのに。
すずかはしばらくの躊躇いを挟み、心に浮かんだ言葉を口にした。
「……私も、一緒に———」
なんて我侭で、なんてずるい言葉なんだろう。
大切な人よりも優先して欲しいと正直に頼めばいいのに。
恐ろしいモノから自分達を守って欲しいと縋ればいいのに。
拒絶されることが怖くて、聞こえのいい言葉を紡いでしまった。
幼い自責の念がすずかの優しい心を締め付ける。
少しだけ、胸の奥が痛かった。
【D-2 /市街地最北の民家 縁側:深夜】
【武藤カズキ@武装錬金】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:右頬に腫れ
[装備]:すずかのハンカチ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3(本人未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:救える命は一つでも拾う
1:すずかを守る
2:ダグバを倒す
3:まひろのことが心配
[備考]
※参戦時期は原作五巻、私立銀成学園高校突入直後。
【月村すずか@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康
[装備]:
[持物]:基本支給品一式、不明支給品1〜3(本人未確認)
[方針/目的]
基本方針:アリサとなのはと会う
1:カズキについていく
2:置いていかれるのが怖い
[備考]
※参戦時期は未定。
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