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「The Phantoms of the Opera」(2010/09/21 (火) 00:50:29) の最新版変更点
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**The Phantoms of the Opera◆yCCMqGf/Qs
Remember, remember, the 5th of November.
――思い出せ、思い出せ、11月5日を――
The gunpowder treason and plot.
――火薬陰謀事件を、一人の男の叛逆を――
I know of no reason why the gunpowder treason, should ever be forgot…
――嗚呼、どうして忘れてしまって良い物か…――
◆
一人の天才が如何なる意図によってか催したこの奇怪な殺し合いの会場には、
地図上ではH-4、I-4にまたがって存在する『劇場』が一つある。
それは単なる劇場では無く、6階建て、地下にもホールを一つ備えており、
その間取りは、まるで迷路の様にぐねぐね曲がり、分岐し、交差した廊下と、
幾つもの意味不明な小部屋の為に、一見ではその全容を理解できない程に複雑怪奇な様相を呈している。
一体全体、如何なる意図を以て、建築家がこの劇場の構造をこれ程までに複雑にしたのか、
その理由は不明だが、そんな事は兎も角、この奇怪な迷路に迷い込んだ、
不幸な二人の参加者の影が見える。
少し、この両名に追ってみる事としよう。
――『劇場』の地下一階。
少なく、しかも明かりの弱い照明の為に、ひどく仄暗い、
赤い絨毯の引かれた廊下を、一人の少女がひた走っている。
額や頬に汗を浮かばせ、ハァハァと息を上げながら、ただ只管に廊下を走り続けている。
額と頬には汗が伝い、息は上気し、明らかに疲労の表情を少女は浮かべている。
少女には聞こえる。自身の動悸が、常に無いバクンバクンと恐ろしい音を立てているのを。
それでも少女は走るのを止めない。ただただ、先の見えない奇怪な廊下を走り続ける。
少女『高町なのは』は、お世辞にも体力がある、とは言え無い肉体的にはひ弱な少女だ。
その反面精神は非常にタフであり、余人には無い“ある才能”を持っているのだが、
体力的には同年代の少女達、彼女はさる私立小学校の3学年だから年齢は9つになるが、
同年齢の例えば同級生達などと比べても明らかに劣ると言わざるを得ない。
では、そんな彼女が、なぜここまで必死に走り続けているかと言えば、理由は一つ。
彼女のパタパタと可愛らしい足音は別に聞こえてくる、もう一つの足音…
コツコツと攻撃的な音を鳴らす、恐らくは靴底の堅いブーツか何かの足音…
それは、彼女が走る理由、彼女を追う、一人の追跡者の存在を示している。
なのはは知っている。認識している。
今、恐ろしい足音を立てて自身を追跡しているあの黒い男は、
確かに自分に害意を持っていると言う事を。
そして今の自分の手には、相棒にして今や半身とも言える『レイジングハート』は無く、
故に今の自分に出来る事は、ただ只管に逃げ続ける事だけだと言う事を…
――コツコツコツコツ…
足音は未だ止まない。
◆
真っ暗闇の中、微かに蠢く影がある。
白い何かが微かに視界をかすめたかと思えば、
暗中より、朗々たる一節の詩が響く。
『And did those feet in ancient time』
――嗚呼、古の時に、かの御御足が
『Walk upon England's mountains green?』
――ブリトンの青なす山々を歩きしか…
『And was the Holy Lamb of God』
――嗚呼、かの神々しき油注がれたる御子が
『On England's pleasant pastures seen?』
――ブリトンの見目麗しき牧場(まきば)を見霽かしか…
『And did the countenance divine』
――嗚呼、かの聖なる主の貌(かんばせ)が
『Shine forth upon our clouded hills?』
――我らが雲湧ける丘の御前に栄え渡りしか…
『And was Jerusalem builded here
Among these dark satanic mills?』
――嗚呼、千年王国(エルサレム)ぞ築かれしか
――かのごとき邪悪の巷に…
◆
男が襲ってきたのは突然だった。
突如のあの奇怪な白と映像の暴力の空間に呼び出され、
訳も解らぬままにこの迷路へと放り込まれた高町なのはだったが、
支給された名簿を見て驚愕していた。
「すずかちゃんに…アリサちゃん…!」
――月村すずか
――アリサ・バニングス
彼女にとっては掛け替えのない親友である二人の少女の名前がそこにはある。
彼女は瞬時に決意した。彼女達といち早く合流し、この奇怪なる状況から火急的速やかに脱出せねばならぬと。
この時彼女には、自身の半身たるレイジングハートが傍らに無い事も、
フェイト、クロノ、ユーノと言った頼れる親友と『仲間達』がここにはいないと言う事実も眼中にない。
彼女は体力こそないかもしれないが、それを補って余りあるガッツと根性と勇気がある。
最初の部屋で見た数々の『死』の映像は、彼女の心に確かに死の連想を引き起こしたが、
その年に似合わぬ強靭な精神は決してその恐怖に屈する事は無い。
「はやく…探しに行かないと…!」
デイパックの中に、身を守るのに役立ちそうな物が入ってはいなかった事を知っても、
恐怖の連想に彼女が怯える事は無い。
デイパックを背負い、何処とも知れぬ赤一色の気味の悪い小部屋の、
彼女の前後に設けられた二つのドアの内、前方のドアへと足を進めようとして…
――その足が止まる。
彼女の視線の先のドアに、
ビャッと絹を裂く様な音と共に一筋の直線が入り、
二つの分割されながらドシャリと地面に倒れる。
後ずさりながらなのはは見る。
切り裂かれ倒れたドアの向こう、闇の廊下より出でたる一つの人影…
黒い服に身を包んだその男が、明かりの下にその相貌を曝した時、
なのはは背後のドアへと向けて既に走り出していた。
聡明な彼女は瞬時に理解したのだ。
この男の視線の内の、なのはへの悪意と害意と獣欲にッ!
かくして鬼ごっこは始まった。
◆
暗闇浮かぶ白い相貌。
豊かな口髭を湛えた唇は、何故か奇怪な笑みを浮かべたまま、
一切の動きを見せぬまま詩は続けて紡がれる。
『Bring me my bow of burning gold!』
――持てよ、我が金に燃えたる弓を!
『Bring me my arrows of desire!』
――持てよ、我が希望の宿りし弓を!
『Bring me my spear! O clouds unfold!』
――持てよ、我が槍を!雲よ晴れよ!
『Bring me my chariot of fire!』
――手綱をば執れよ、我が炎をば燃えたる戦車の!
『I will not cease from mental fight』
――我が信念の闘いは止まじ…
『Nor shall my sword sleep in my hand』
――我が剣は鞘に収まらじ…
――シャラリと、金属同士の擦れる音が響く。
闇の中に、引き抜かれた一振りのレイピアの刀身に写った紫電が閃く。
男は剣を掲げ、尚も詩を謳う!
『Till we have built Jerusalem
In England's green and pleasant land.』
――我らが千年王国(エルサレム)をば築くまでは、
――緑なす見目麗しきブリトンの大地に!
◆
目の前のドアを開け、その中に駆けこむ。
運がいい。このドアには鍵がある。
素早く、それを内側から掛ける。
分厚く頑丈な扉だ。先程の様に、二つに割り切られてしまうかもしれないが、
何もしないよりかは遥かにマシだろう。
ここで背を曲げ、各々の膝がしらに各々の手を乗せて、
なのはは一息つき、乱れた呼吸を整える。
自分を追ってくるあの男。
最初にあの顔を、あの目を見ただけで彼女には理解できた。
その視線の内に確かにあった、彼女に向けられた恐ろしい害意を。
敵意を、害意を向けられた事は決して初めてではない。
いや、経験によりある程度そういうモノには彼女も耐性は出来ている。
しかしあの男の視線にこもっていたソレは…
その気味悪さと生理的恐怖を思い出して、なのはは思わず自身の肩を抱く。
しかし彼女は強い少女だ。恐怖を押さえ、周囲に視線を巡らす。
そこは小劇場であった。
階段状の客席があり、小高い張り出し舞台があって、今は赤い幕が下りている。
それなりに大きく、100人ぐらいは収容できそうであった。
(隠れる場所が一杯ありそう…)
劇場なら舞台袖や、楽屋、物置きなど、暫く身を隠せそうな所が幾つか思い当たる。
レイジングハートの無い状態では、基本的に彼女は年相応の少女でしか無い。
少しの間、どこかに身を隠して…
嗚呼、しかし、彼女の予想以上に――
――ビシィツ!
――ドゴォ!
「!!!!」
追跡者は鼻が効く様だ――
分厚い扉が紙工作のオモチャの様に蹴り破られ、
黒服の男が小劇場内部に侵入してくる。
なのは急いで逃げ、隠れようとして、
「きゃっ!?」
客席の間を走る階段を駆け上る途中で躓いて転んでしまう。
その間にも男がズンズンなのはに迫ってくる!
「アハハハ!ちょこまかと逃げやがって!ようやく追いついたぞぉ…」
男は黒い軍靴を履き、黒を基調とした装飾の多い軍服、
かつてナチス武装親衛隊の将校が身につけていた軍服に身を包んでいる。
頭に被った軍帽にはドクロの徽章が輝いていおり、
「その体で試させてもらうとするよ…僕が手に入れた…」
その下にはある種の海産物を思わせる青黒いウェーブのかかった独特の頭髪がある。
「この新しい力を!」
この男、名を間桐慎二と言う。
◆
間桐慎二はその帽子を被った瞬間、
自身の肉体が確かに別の生き物に、
すなわち「超人」に変質していくのを確かに感じていた。
ドイツのブロッケン一族に代々伝わるドクロの徽章は、
被った帽子にそれを付けた者を「超人」に変える力を有する。
間桐慎二はこの帽子を被っている限りにおいては「唯の人間」ではなく「超人」なのである。
「超人」と化した瞬間、間桐慎二の体を突き抜けた感情は、筆舌にし難い歓喜の奔流であった。
間桐慎二という人間の在り様は、非常に螺子くれて歪(いびつ)である。
一見彼は、金持ちで、旧家の生まれで、周囲に女と幇間(たいこもち)を侍らせ、
成績優秀、眉目秀麗、家にあって義理の妹を精神的かつ肉体的に蹂躙・陵辱・制圧しているなど、
持てる側の人間、喰らう側の人間、支配する側の人間、蔑む側の人間、
奪う側の人間であるかのように余人の目には映る。
しかし、慎二本人の認識は――本人は決して認めたがらないが――、
全くその逆なのである。
彼は魔術師では無い。
彼は代々続く魔道の家系に生まれながら、只の一つも魔術回路を持たない。
それは、魔術師の家に生まれた彼にとっては、落伍者、
いやそもそもスタートラインにすら立てなかった片輪者である事を意味する。
即ち、間桐慎二は、持たざる側の人間であり、喰われる側の人間であり、
支配される側の人間である、蔑まれる側の人間であり、奪われる側の人間である、
という事なのである。
表向き恵まれた現状と、
決して満たされる事の無い魔術師になりたいという欲望…
相反する二つの状況に、彼自身の捻くれた性格が加わって、
彼の心のありようは一層複雑怪奇で醜悪な物になり果てているのだ。
そんな人間が、
心の中に「力」「才能」への凄まじい渇望を抱えた男が、
ある日突然「超人」になってしまったら一体どうなってしまうのか。
果たして、得意絶頂の境地に遊び、
支給されたナチの軍服に意気揚々と身を包み、
「超人」とかした自身の能力の『練習台』を求めて、
迷路の如き劇場地下を徘徊していた。
元来、間桐慎二は臆病な少年である。
自分が圧倒的に優位である事を確信しなければ、
あからさまな暴力に走る事は、本来ないような性格である。
実際、普段の彼ならば、他人に対する攻撃はあくまで口に留めるか、
直接攻勢に出る時も、人を使ったり、陰湿で遠回しな方法をとったりと、
自分が相手の真っ正面に立つような事は、よほどの激昂でもしてない限りにおいてはまず無いと言っていい。
そんな彼が斯くも直接的な行動を執っているのは、
胸に溜めこんだ憤懣が、超人化を契機により直接的な暴力衝動として結実した事、
他人を直接的に蹂躙・殺戮することで自身が「超人」であるというより強い実感が得たいと言う事、
超人化の高揚感が、彼が元来持っていた嗜虐性を強化増幅したと言う事…
以上の様な種々の要素に、衛宮士郎、遠坂凛に同盟を拒絶された結果の、
湧きあがる嫉妬、士郎への歪んだ友情の裏返しの憎悪、それに伴う行き場の無い悪意が結びついた時、
時残虐超人『マキリシンジ』は生まれたのだ。
そして運悪く、高町なのはは、
この残虐超人に目を付けられてしまったのである。
◆
「ハハハ!何だ…もう逃げないのかよ!」
膝の痛みをこらえながら、必死に立ち上がって逃げようとするなのはの背に、
せせら笑うマキリシンジの声が掛り。
――ドカッ!
「アグッ!」
鬼畜マキリシンジはなのはの腹を超人の力で蹴りあげる。
体重の軽いなのはの体は毬の様に宙を飛び、階段の踊り場に背中から叩きつけられる。
(……ッ!)
踊り場の高さと、宙を飛んだ高度が上手く重なったのか、
幸いにも酷い怪我こそ見えないが、背中から伝わった衝撃に息は一瞬止まり、
腹を蹴りつけられた為か、強烈な吐き気がなのはを襲うが、
痛みと吐き気を必死に押さえながら、その場から逃げんと立ち上がらんとする。
「…なんだぁ…面白く無い…」
派手な悲鳴や、恐怖の表情や、無き顔や命乞いを期待していたのに、
痛みを堪え、その瞳から確かな意思の力を消し去らないなのはの様子に、慎二は苛立ちを覚える。
恐れはあっても、恐慌は感じさせないなのはの瞳は、彼の求める「超人の力の実感」を与えてくれない。
それ以外にも、ひょっとすると、その意思の強い瞳に無意識のうちに、
自分に媚びない遠坂凛の事などを連想していたのかも知れない。
いずれにせよ確かな事は、
慎二がなのはの機然とした様子に苛立ちを覚えている事であり、
そんななのはの表情をぐちゃぐちゃに乱して、泣き叫ばせたいと思っていると言う事である。
「ふーん…年は10かそこらって所か…穴があるならヤれない訳じゃないよな…」
如何なる言い訳を重ねようと、
間桐慎二が義理の妹、間桐桜を陵辱する事を楽しんでいたのは事実であり、
性欲の旺盛なこの男の性向と、強化された嗜虐性が結びついた時、
それはなのはへと向けられた淫靡な視線となる。
「イ…イヤ…ッ!」
ここで、なのはは初めて明らかな恐怖の表情を浮かべる。
悪意や害意に慣れていない訳ではないなのはでも、
このようなあからさまな獣欲を向けられるのは初めての経験である。
それは生理的な恐怖となってなのはの体を襲う。
体の痛みに耐えて、何とか慎二から逃げようとするが、遅々として足は進まない。
「アハハハ!逃げようたってそうはいかないよ、ホラアッ!」
「キャアッ!」
這ってでも逃げんとするなのはの背を、慎二は軍靴の踵で踏み付ける。
何度がグリグリと踵を摺りつけると、うつ伏せ上のなのはを、
無理矢理仰向けにさせるや、こんどはその胸板を踏み付ける。
「!」
苦しそうに顔を歪めるなのはの様子に、
慎二の心は決して満たされる事の無かった心地よい自尊心が駆け巡る。
(そうだよ…これが本来の、あるべき僕の姿だ…)
(殺し合いが何だ!今の僕はサーヴァントにだって勝てる!)
(この力を衛宮にだって見せつけてやる)
(遠坂だってそうさ…この力で真っ正面から蹂躙してやる!)
「さーて、それじゃそろそろお楽しみと…」
踵をなのはの胸からどかすと、
その服を裂くべく右手を伸ばす。
「身も心も犯し尽くして、賽の目カットに切り刻んで、血をデルモンテにしてやるよ!」
その言葉になのはは顔を蒼褪めさせ、
ギュッと祈る様に目を瞑る。
(イヤだよ…こんなのイヤだよ…)
(ユーノ君…クロノ君…フェイトちゃん…誰か…誰か…)
「ははは、祈ったって無駄さ!誰も助けになんて来や…」
――ザクッ
「……え…あ…ギャァァァァッ!?」
一体どこから飛来したのか――
伸ばされた慎二の右の掌には、蝙蝠の様な形状をした、
黒い手裏剣が深々と突き刺さっている。
「ちくしょうイタイィッ!誰だよ、邪魔しやがって!出て来いよぶっ殺してやるよ!」
手裏剣を引き抜きながら、慎二は辺りを見渡し、
口角泡飛ばし叫ぶ。
その言葉に呼応するかのように、
降ろされていた舞台の幕が、ビッーという音と共に上がり始める。
上がり切った幕の向こうの舞台は未だ闇に包まれていたが、
――バシャッ!
という音とともに何処かでスポットライトが点灯し、
暗中、舞台に立っていたと思われる一人の『人物』を映し出す。
人物と表現したのは、その人物が外見からは年齢はおろか、
性別すら覗わせぬ奇怪な装束に身を包んでいたからである。
黒い鍔広の山高帽を被り、同色の、踝まであろう長さのマントに身を包んでいる。
顔を俯かせているため、その相貌は、帽子の鍔とそれの為す影で覗う事は出来ない。
「誰だよ!一体何者だよ!」
人物が顔を上げ、慎二の問いに応えた。
『俺は20世紀の王』
『ブギーマンにして悪党』
『嫌われ者の黒い羊』
『すなわち…』
その相貌は白い仮面に覆われてた。
それは豊かな口髭が描かれた、唇が不気味な笑みの弧を描く仮面、
慎二もなのはも知らないが、今より400近く前、
王権に対する叛逆を企てた、イギリス史上最も古く、
そして最も著名なテロリスト、ガイ・フォークスを象った仮面であった。
怪人――声から察するに男性だろう――の名乗りは続く。
『“The multiplying villainies of nature do swarm upon him.”』
――数々の悪事をまといし者なり
『“Disdaining fortune, with his brandish'd steel which smoked with bloody execution…”』
――血糊の付きし太刀を持ち、高々と振りかぶる…
怪人はマントを翻しながら、舞台よりフワリと降り立ち、
慎二の方へと階段を上り始める。
慎二は、「超人」と化した自分に不遜にも挑まんとすると思われる怪人に、
殺意の籠った視線を向けるが、
『“なれど…』
慎二が何かを成すよりか遥かに速く、
『不足なり! 武名高きマクベスの前では!“』
怪人が動く。
マントが蝙蝠の翼の如くバッと左右に広く広がったかと思えば、
六条の黒い軌跡が飛び出して、
相手を幻惑する陰湿かつ巧妙な軌跡と角度とスピードで各々弧を描きながら、
「グェェェェェッ!」
間桐慎二の体に突き刺さる。
先程慎二の掌を抉ったのと同じ蝙蝠型の手裏剣が、都合六つ突き刺さっている。
『“厳しき運命に向け、鋼の刃ぞ振りかざし…』
手裏剣を投げると同時に怪人は既に動いていた。
手裏剣の痛みに身を捩る慎二の懐に一足飛びに跳ぶや否や、
『血の嵐をば巻き起こし…』
水月への見事な当身の一撃!
慎二の体はキリモミ軌道を描きながら、
血をまき散らし宙を飛び、
「グェェッ!」
『武勇の化身の如く道を拓きて…』
『奴隷の前へといざ至らん……“』
階段状の客席の最上段に叩きつけられる。
怪人はなのはを背にし、彼女を庇うが如く立ちつくしている。
この間、僅か数秒の出来事である。
「ヂ、ヂクショウ!テメェぶっ殺して…」
超人故の頑丈さから、血を吐きながら立ち上がった慎二の目に飛び込んできたのは、
――ジャキン
腰間に落とし差しにしたレイピアを抜き放った怪人の姿。
(ヤ、ヤバイ…!)
慎二は直感的に悟った。
この怪人には勝てない。このままでは殺される。
サーヴァント以上の力を手に入れたと自負していた慎二に初めて、
本来の彼らしい恐怖の感情が蘇ってくる。
「ヒイッ!」
情けない悲鳴を挙げて、怪人に背を向け逃げ出そうとするが、
怪人は敵前逃亡を許す程慈悲深くは無かった。
空いた左手でもう一振り、腰間に差されたマインゴーシュを引き抜くや、
手裏剣の要領で慎二の背に目掛け投げつける。
マインゴーシュは流星の如き紫電となって、
「ゲェェェェェッ!?」
慎二の背に突き刺さる。
常人であれば確実に致命傷な一撃だが、超人と化して頑丈な今の慎二には致命傷足りえない。
しかし…
「畜生!覚えてろ!」
体は耐えられても心は既に挫けている。
いくら肉体が超人になろうとも、闘争における最後の最後で趨勢を決するのは、
互いの精神力の強度の差であり、
根が卑劣で臆病な間桐慎二にとっては宝の持ち腐れに過ぎない。
「残虐超人」マキリシンジは、
ほうほうの体でその場から脱兎のごとく逃げだした。
【I-4 劇場地下一階の何処か/一日目 深夜】
【間桐慎二@Fate/stay night】
[属性]:その他(Isi)
[状態]: 刺傷多数、背にマインゴーシュが刺さったまま、残虐超人状態
[装備]:ナチス武装親衛隊の将校服@現実、ドクロの徽章付き軍帽@キン肉マン
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:超人の戦闘能力を心行くまで試す。
1:一旦逃げて傷の手当てするor回復を待つ
2:仮面の男(V)にいずれ復讐する
【ドクロの徽章付き軍帽@キン肉マン】
ブロッケンJr.の被っていた軍帽。
被ると超人化し、脱げるorドクロの徽章が外れると唯の人に戻る。
常人にのみ効果があり、超人、改造人間、ホムンクルスが被っても超人化はしない。
超人化すれば、元の人間の資質・体力により度合いは変化するものの、
一様に肉体の耐久度の上昇、身体能力の向上が引き起こされる。
どういう原理か一度被ると簡単な衝撃では脱げないが、逆に何かの拍子にいきなり脱げる可能性がある。
◆
暫し怪人は仮面の内より慎二の逃げ出した方向を見詰めたいたが、
追えぬと思ったか、右手のレイピアを鞘に収め、
背後のなのはへと向き直った。
客席の手摺を支えに、ようやく立ち上がったなのはは、
不気味な白い仮面に見つめられて、ビクッと恐怖に体を振るわせる。
『“握手をする事も無く…』
『別れを告ぐる事も無く……”』
『大丈夫かな?見た所大きな怪我はないようだが』
冷静で落ち着いた声色の、気遣う言葉が仮面の内より発せられる。
「え?あ、だ、大丈夫です…その…」
「助けてくれてありがとうございます…」
なのはは伏せ目がちになりながらも、感謝の言葉を怪人に送り、
「それでその…貴方は…一体…誰ですか?」
続けて問いを投げかける。
怪人は答えて曰く。
『「誰」か、その問いは適当じゃあないな』
「?」
『重要なのは「誰か」ではなく、「何か」だ』
『見ての通り俺は仮面の男だ』
「?は、はい…」
『うん、別に君の認識能力を疑ってる訳じゃないんだよ、お嬢さん。ただね…』
『仮面の男に「お前は誰か」と問うても聞くだけ無駄だと言う事さ』
「…え…ええっ?…」
冗談めかしい口調の怪人の予期せぬ答えに、
なのはは些か面を喰らう。
『ああ…だがしかし…』
怪人はなのはの傍らより歩みいで、
舞台へと向けて階段を降りながら述べる。
『今日は些か興が乗った』
『だから今から君には特別に、この奇怪なペルソナの性格を紹介しよう…』
怪人は振り返り、
『Voila!』
――さあて!
「!?」
驚くなのはを余所に、
舞台役者の様に、声を高く朗々と張り上げ、
両手で大仰な仕草をとりながら、一つの口上を演じ始めたのである。
『In View, a humble Vaudevillian Veteran,
cast Vicariously as both Victim and Villain by the Vicissitudes of Fate. 』
――ご覧の姿は卑しき道化、
――運命の変転に伴い、他者に成り代り、時に弱き者を演じ、時には悪しき者もまた然り
右の掌を宙に翳し、白い仮面で天を仰ぐ。
『This Visage, no mere Veneer of Vanity, is it Vestige of the Vox populi, now Vacant, Vanished.』
――この仮面、単なる虚飾にあらず、民の声の痕跡である
――ああ、今や、かの自由の民の声、宙に空しく消え去りし…
『However, this Valorous Visitation of a by-gone Vexation, stands Vivified…』
――されど、雄々しくも厄介な、この過去の男が今や鮮烈に立ち上がったのは…
両の掌は堅く握られ、語気はどんどん強く、狂的な調子を帯び始める。
『…and has Vowed to Vanquish these Venal and Virulent Vermin Vanguarding Vice
and Vouchsafing the Violently Vicious and Voracious Violation of Volition!』
――犯罪を先導し、悪徳と誤謬を振り撒く腐りきった蛆虫共を鏖殺するが為であるッ!
最後に怒声の如く語気を挙げるや、
紫電の如く腰間のレイピアを抜き放ち、
劇場の壁に張られた一枚のポスター、恐らくはラムセス2世だと思われる、
一人のファラオの肖像の額目掛けて投げつける。
狙いは誤らず、その切っ先はファラオの眉間に確かに突き立った。
『The only Verdict is Vengeance; a Vendetta, held as a Votive, not in Vain,
for the Value and Veracity of such shall one day Vindicate the Vigilant and the Virtuous.』
――執るべき唯一の手はだだ復讐のみ
――そう これは“ヴェンデッタ (血の復讐)”だ
――悪を断ち切り自由をもたらすために、果たさねばならぬ復讐だ
感極まった様子で、再び宙を仰ぎ、右手を高々と掲げる。
あまりにも奇怪で突拍子もない怪人の様子に、
なのは目を白黒させて、口をあんぐりと開けるしかない。
『Hu-Hu-Hu、Hi-ha-ha-ha-ha…』
冗談めかしく怪人が笑い、口上が続く。
『Verily, this Vichyssoise of Verbiage Veers most Verbose so let me simply add that…』
――ああ、誠に多弁なるヴィシソワーズ(前菜のスープ)、あまりに冗長に相成ったゆえ…
――最後に、ただ一言で述べよう…
怪人は帽子を脱ぐや、それを自身を胸にあて、
軽く優雅な一礼をして口上の末尾の言葉をなのはに送る。
『…it is my Very good honor to meet you…』
――貴女にお会いできたこと、大変名誉に思います
『…and I have no name,so you may call me “V”.』
――俺に名は無い
――ただ『V』と呼んで頂ければ結構だ
そして、怪人『V』は帽子を被りなおした。
一方なのはは…
(え…えと…どんな反応すればいんだろう…?)
混乱していた。
【I-4 劇場地下一階「小劇場」/一日目 深夜】
【V@Vフォー・ヴェンデッタ】
[属性]:悪(set)
[状態]: 健康
[装備]:バッタラン@バットマン(残弾多数)、レイピア@現実
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:?????
1:目の前の少女と話す
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[属性]:正義(Hor)
[状態]: 足に軽傷
[装備]:聖祥大附属小学校制服
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3(武器になりそうな物は無い)
[思考・状況]
基本行動方針:アリサ、すすかとの合流と、この場所からの脱出
1:えっと…何なんだろうこの人…
【備考】
※「魔法少女リリカルなのはA's」、あるいはその前後の時期からの参戦
*時系列順で読む
Back:[[detective work]] Next:[[闇を斬り裂く一筋の光]]
*投下順で読む
Back:[[detective work]] Next:[[闇を斬り裂く一筋の光]]
|&color(cyan){実験開始}|間桐慎二|:[[仮面の下のバラッド]]|
|&color(cyan){実験開始}|高町なのは|:[[仮面の下のバラッド]]|
|&color(cyan){実験開始}|V|:[[仮面の下のバラッド]]|
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**The Phantoms of the Opera◆yCCMqGf/Qs
Remember, remember, the 5th of November.
――思い出せ、思い出せ、11月5日を――
The gunpowder treason and plot.
――火薬陰謀事件を、一人の男の叛逆を――
I know of no reason why the gunpowder treason, should ever be forgot…
――嗚呼、どうして忘れてしまって良い物か…――
◆
一人の天才が如何なる意図によってか催したこの奇怪な殺し合いの会場には、
地図上ではH-4、I-4にまたがって存在する『劇場』が一つある。
それは単なる劇場では無く、6階建て、地下にもホールを一つ備えており、
その間取りは、まるで迷路の様にぐねぐね曲がり、分岐し、交差した廊下と、
幾つもの意味不明な小部屋の為に、一見ではその全容を理解できない程に複雑怪奇な様相を呈している。
一体全体、如何なる意図を以て、建築家がこの劇場の構造をこれ程までに複雑にしたのか、
その理由は不明だが、そんな事は兎も角、この奇怪な迷路に迷い込んだ、
不幸な二人の参加者の影が見える。
少し、この両名に追ってみる事としよう。
――『劇場』の地下一階。
少なく、しかも明かりの弱い照明の為に、ひどく仄暗い、
赤い絨毯の引かれた廊下を、一人の少女がひた走っている。
額や頬に汗を浮かばせ、ハァハァと息を上げながら、ただ只管に廊下を走り続けている。
額と頬には汗が伝い、息は上気し、明らかに疲労の表情を少女は浮かべている。
少女には聞こえる。自身の動悸が、常に無いバクンバクンと恐ろしい音を立てているのを。
それでも少女は走るのを止めない。ただただ、先の見えない奇怪な廊下を走り続ける。
少女『高町なのは』は、お世辞にも体力がある、とは言え無い肉体的にはひ弱な少女だ。
その反面精神は非常にタフであり、余人には無い“ある才能”を持っているのだが、
体力的には同年代の少女達、彼女はさる私立小学校の3学年だから年齢は9つになるが、
同年齢の例えば同級生達などと比べても明らかに劣ると言わざるを得ない。
では、そんな彼女が、なぜここまで必死に走り続けているかと言えば、理由は一つ。
彼女のパタパタと可愛らしい足音は別に聞こえてくる、もう一つの足音…
コツコツと攻撃的な音を鳴らす、恐らくは靴底の堅いブーツか何かの足音…
それは、彼女が走る理由、彼女を追う、一人の追跡者の存在を示している。
なのはは知っている。認識している。
今、恐ろしい足音を立てて自身を追跡しているあの黒い男は、
確かに自分に害意を持っていると言う事を。
そして今の自分の手には、相棒にして今や半身とも言える『レイジングハート』は無く、
故に今の自分に出来る事は、ただ只管に逃げ続ける事だけだと言う事を…
――コツコツコツコツ…
足音は未だ止まない。
◆
真っ暗闇の中、微かに蠢く影がある。
白い何かが微かに視界をかすめたかと思えば、
暗中より、朗々たる一節の詩が響く。
『And did those feet in ancient time』
――嗚呼、古の時に、かの御御足が
『Walk upon England's mountains green?』
――ブリトンの青なす山々を歩きしか…
『And was the Holy Lamb of God』
――嗚呼、かの神々しき油注がれたる御子が
『On England's pleasant pastures seen?』
――ブリトンの見目麗しき牧場(まきば)を見霽かしか…
『And did the countenance divine』
――嗚呼、かの聖なる主の貌(かんばせ)が
『Shine forth upon our clouded hills?』
――我らが雲湧ける丘の御前に栄え渡りしか…
『And was Jerusalem builded here
Among these dark satanic mills?』
――嗚呼、千年王国(エルサレム)ぞ築かれしか
――かのごとき邪悪の巷に…
◆
男が襲ってきたのは突然だった。
突如のあの奇怪な白と映像の暴力の空間に呼び出され、
訳も解らぬままにこの迷路へと放り込まれた高町なのはだったが、
支給された名簿を見て驚愕していた。
「すずかちゃんに…アリサちゃん…!」
――月村すずか
――アリサ・バニングス
彼女にとっては掛け替えのない親友である二人の少女の名前がそこにはある。
彼女は瞬時に決意した。彼女達といち早く合流し、この奇怪なる状況から火急的速やかに脱出せねばならぬと。
この時彼女には、自身の半身たるレイジングハートが傍らに無い事も、
フェイト、クロノ、ユーノと言った頼れる親友と『仲間達』がここにはいないと言う事実も眼中にない。
彼女は体力こそないかもしれないが、それを補って余りあるガッツと根性と勇気がある。
最初の部屋で見た数々の『死』の映像は、彼女の心に確かに死の連想を引き起こしたが、
その年に似合わぬ強靭な精神は決してその恐怖に屈する事は無い。
「はやく…探しに行かないと…!」
デイパックの中に、身を守るのに役立ちそうな物が入ってはいなかった事を知っても、
恐怖の連想に彼女が怯える事は無い。
デイパックを背負い、何処とも知れぬ赤一色の気味の悪い小部屋の、
彼女の前後に設けられた二つのドアの内、前方のドアへと足を進めようとして…
――その足が止まる。
彼女の視線の先のドアに、
ビャッと絹を裂く様な音と共に一筋の直線が入り、
二つの分割されながらドシャリと地面に倒れる。
後ずさりながらなのはは見る。
切り裂かれ倒れたドアの向こう、闇の廊下より出でたる一つの人影…
黒い服に身を包んだその男が、明かりの下にその相貌を曝した時、
なのはは背後のドアへと向けて既に走り出していた。
聡明な彼女は瞬時に理解したのだ。
この男の視線の内の、なのはへの悪意と害意と獣欲にッ!
かくして鬼ごっこは始まった。
◆
暗闇浮かぶ白い相貌。
豊かな口髭を湛えた唇は、何故か奇怪な笑みを浮かべたまま、
一切の動きを見せぬまま詩は続けて紡がれる。
『Bring me my bow of burning gold!』
――持てよ、我が金に燃えたる弓を!
『Bring me my arrows of desire!』
――持てよ、我が希望の宿りし弓を!
『Bring me my spear! O clouds unfold!』
――持てよ、我が槍を!雲よ晴れよ!
『Bring me my chariot of fire!』
――手綱をば執れよ、我が炎をば燃えたる戦車の!
『I will not cease from mental fight』
――我が信念の闘いは止まじ…
『Nor shall my sword sleep in my hand』
――我が剣は鞘に収まらじ…
――シャラリと、金属同士の擦れる音が響く。
闇の中に、引き抜かれた一振りのレイピアの刀身に写った紫電が閃く。
男は剣を掲げ、尚も詩を謳う!
『Till we have built Jerusalem
In England's green and pleasant land.』
――我らが千年王国(エルサレム)をば築くまでは、
――緑なす見目麗しきブリトンの大地に!
◆
目の前のドアを開け、その中に駆けこむ。
運がいい。このドアには鍵がある。
素早く、それを内側から掛ける。
分厚く頑丈な扉だ。先程の様に、二つに割り切られてしまうかもしれないが、
何もしないよりかは遥かにマシだろう。
ここで背を曲げ、各々の膝がしらに各々の手を乗せて、
なのはは一息つき、乱れた呼吸を整える。
自分を追ってくるあの男。
最初にあの顔を、あの目を見ただけで彼女には理解できた。
その視線の内に確かにあった、彼女に向けられた恐ろしい害意を。
敵意を、害意を向けられた事は決して初めてではない。
いや、経験によりある程度そういうモノには彼女も耐性は出来ている。
しかしあの男の視線にこもっていたソレは…
その気味悪さと生理的恐怖を思い出して、なのはは思わず自身の肩を抱く。
しかし彼女は強い少女だ。恐怖を押さえ、周囲に視線を巡らす。
そこは小劇場であった。
階段状の客席があり、小高い張り出し舞台があって、今は赤い幕が下りている。
それなりに大きく、100人ぐらいは収容できそうであった。
(隠れる場所が一杯ありそう…)
劇場なら舞台袖や、楽屋、物置きなど、暫く身を隠せそうな所が幾つか思い当たる。
レイジングハートの無い状態では、基本的に彼女は年相応の少女でしか無い。
少しの間、どこかに身を隠して…
嗚呼、しかし、彼女の予想以上に――
――ビシィツ!
――ドゴォ!
「!!!!」
追跡者は鼻が効く様だ――
分厚い扉が紙工作のオモチャの様に蹴り破られ、
黒服の男が小劇場内部に侵入してくる。
なのは急いで逃げ、隠れようとして、
「きゃっ!?」
客席の間を走る階段を駆け上る途中で躓いて転んでしまう。
その間にも男がズンズンなのはに迫ってくる!
「アハハハ!ちょこまかと逃げやがって!ようやく追いついたぞぉ…」
男は黒い軍靴を履き、黒を基調とした装飾の多い軍服、
かつてナチス武装親衛隊の将校が身につけていた軍服に身を包んでいる。
頭に被った軍帽にはドクロの徽章が輝いていおり、
「その体で試させてもらうとするよ…僕が手に入れた…」
その下にはある種の海産物を思わせる青黒いウェーブのかかった独特の頭髪がある。
「この新しい力を!」
この男、名を間桐慎二と言う。
◆
間桐慎二はその帽子を被った瞬間、
自身の肉体が確かに別の生き物に、
すなわち「超人」に変質していくのを確かに感じていた。
ドイツのブロッケン一族に代々伝わるドクロの徽章は、
被った帽子にそれを付けた者を「超人」に変える力を有する。
間桐慎二はこの帽子を被っている限りにおいては「唯の人間」ではなく「超人」なのである。
「超人」と化した瞬間、間桐慎二の体を突き抜けた感情は、筆舌にし難い歓喜の奔流であった。
間桐慎二という人間の在り様は、非常に螺子くれて歪(いびつ)である。
一見彼は、金持ちで、旧家の生まれで、周囲に女と幇間(たいこもち)を侍らせ、
成績優秀、眉目秀麗、家にあって義理の妹を精神的かつ肉体的に蹂躙・陵辱・制圧しているなど、
持てる側の人間、喰らう側の人間、支配する側の人間、蔑む側の人間、
奪う側の人間であるかのように余人の目には映る。
しかし、慎二本人の認識は――本人は決して認めたがらないが――、
全くその逆なのである。
彼は魔術師では無い。
彼は代々続く魔道の家系に生まれながら、只の一つも魔術回路を持たない。
それは、魔術師の家に生まれた彼にとっては、落伍者、
いやそもそもスタートラインにすら立てなかった片輪者である事を意味する。
即ち、間桐慎二は、持たざる側の人間であり、喰われる側の人間であり、
支配される側の人間である、蔑まれる側の人間であり、奪われる側の人間である、
という事なのである。
表向き恵まれた現状と、
決して満たされる事の無い魔術師になりたいという欲望…
相反する二つの状況に、彼自身の捻くれた性格が加わって、
彼の心のありようは一層複雑怪奇で醜悪な物になり果てているのだ。
そんな人間が、
心の中に「力」「才能」への凄まじい渇望を抱えた男が、
ある日突然「超人」になってしまったら一体どうなってしまうのか。
果たして、得意絶頂の境地に遊び、
支給されたナチの軍服に意気揚々と身を包み、
「超人」とかした自身の能力の『練習台』を求めて、
迷路の如き劇場地下を徘徊していた。
元来、間桐慎二は臆病な少年である。
自分が圧倒的に優位である事を確信しなければ、
あからさまな暴力に走る事は、本来ないような性格である。
実際、普段の彼ならば、他人に対する攻撃はあくまで口に留めるか、
直接攻勢に出る時も、人を使ったり、陰湿で遠回しな方法をとったりと、
自分が相手の真っ正面に立つような事は、よほどの激昂でもしてない限りにおいてはまず無いと言っていい。
そんな彼が斯くも直接的な行動を執っているのは、
胸に溜めこんだ憤懣が、超人化を契機により直接的な暴力衝動として結実した事、
他人を直接的に蹂躙・殺戮することで自身が「超人」であるというより強い実感が得たいと言う事、
超人化の高揚感が、彼が元来持っていた嗜虐性を強化増幅したと言う事…
以上の様な種々の要素に、衛宮士郎、遠坂凛に同盟を拒絶された結果の、
湧きあがる嫉妬、士郎への歪んだ友情の裏返しの憎悪、それに伴う行き場の無い悪意が結びついた時、
時残虐超人『マキリシンジ』は生まれたのだ。
そして運悪く、高町なのはは、
この残虐超人に目を付けられてしまったのである。
◆
「ハハハ!何だ…もう逃げないのかよ!」
膝の痛みをこらえながら、必死に立ち上がって逃げようとするなのはの背に、
せせら笑うマキリシンジの声が掛り。
――ドカッ!
「アグッ!」
鬼畜マキリシンジはなのはの腹を超人の力で蹴りあげる。
体重の軽いなのはの体は毬の様に宙を飛び、階段の踊り場に背中から叩きつけられる。
(……ッ!)
踊り場の高さと、宙を飛んだ高度が上手く重なったのか、
幸いにも酷い怪我こそ見えないが、背中から伝わった衝撃に息は一瞬止まり、
腹を蹴りつけられた為か、強烈な吐き気がなのはを襲うが、
痛みと吐き気を必死に押さえながら、その場から逃げんと立ち上がらんとする。
「…なんだぁ…面白く無い…」
派手な悲鳴や、恐怖の表情や、無き顔や命乞いを期待していたのに、
痛みを堪え、その瞳から確かな意思の力を消し去らないなのはの様子に、慎二は苛立ちを覚える。
恐れはあっても、恐慌は感じさせないなのはの瞳は、彼の求める「超人の力の実感」を与えてくれない。
それ以外にも、ひょっとすると、その意思の強い瞳に無意識のうちに、
自分に媚びない遠坂凛の事などを連想していたのかも知れない。
いずれにせよ確かな事は、
慎二がなのはの機然とした様子に苛立ちを覚えている事であり、
そんななのはの表情をぐちゃぐちゃに乱して、泣き叫ばせたいと思っていると言う事である。
「ふーん…年は10かそこらって所か…穴があるならヤれない訳じゃないよな…」
如何なる言い訳を重ねようと、
間桐慎二が義理の妹、間桐桜を陵辱する事を楽しんでいたのは事実であり、
性欲の旺盛なこの男の性向と、強化された嗜虐性が結びついた時、
それはなのはへと向けられた淫靡な視線となる。
「イ…イヤ…ッ!」
ここで、なのはは初めて明らかな恐怖の表情を浮かべる。
悪意や害意に慣れていない訳ではないなのはでも、
このようなあからさまな獣欲を向けられるのは初めての経験である。
それは生理的な恐怖となってなのはの体を襲う。
体の痛みに耐えて、何とか慎二から逃げようとするが、遅々として足は進まない。
「アハハハ!逃げようたってそうはいかないよ、ホラアッ!」
「キャアッ!」
這ってでも逃げんとするなのはの背を、慎二は軍靴の踵で踏み付ける。
何度がグリグリと踵を摺りつけると、うつ伏せ上のなのはを、
無理矢理仰向けにさせるや、こんどはその胸板を踏み付ける。
「!」
苦しそうに顔を歪めるなのはの様子に、
慎二の心は決して満たされる事の無かった心地よい自尊心が駆け巡る。
(そうだよ…これが本来の、あるべき僕の姿だ…)
(殺し合いが何だ!今の僕はサーヴァントにだって勝てる!)
(この力を衛宮にだって見せつけてやる)
(遠坂だってそうさ…この力で真っ正面から蹂躙してやる!)
「さーて、それじゃそろそろお楽しみと…」
踵をなのはの胸からどかすと、
その服を裂くべく右手を伸ばす。
「身も心も犯し尽くして、賽の目カットに切り刻んで、血をデルモンテにしてやるよ!」
その言葉になのはは顔を蒼褪めさせ、
ギュッと祈る様に目を瞑る。
(イヤだよ…こんなのイヤだよ…)
(ユーノ君…クロノ君…フェイトちゃん…誰か…誰か…)
「ははは、祈ったって無駄さ!誰も助けになんて来や…」
――ザクッ
「……え…あ…ギャァァァァッ!?」
一体どこから飛来したのか――
伸ばされた慎二の右の掌には、蝙蝠の様な形状をした、
黒い手裏剣が深々と突き刺さっている。
「ちくしょうイタイィッ!誰だよ、邪魔しやがって!出て来いよぶっ殺してやるよ!」
手裏剣を引き抜きながら、慎二は辺りを見渡し、
口角泡飛ばし叫ぶ。
その言葉に呼応するかのように、
降ろされていた舞台の幕が、ビッーという音と共に上がり始める。
上がり切った幕の向こうの舞台は未だ闇に包まれていたが、
――バシャッ!
という音とともに何処かでスポットライトが点灯し、
暗中、舞台に立っていたと思われる一人の『人物』を映し出す。
人物と表現したのは、その人物が外見からは年齢はおろか、
性別すら覗わせぬ奇怪な装束に身を包んでいたからである。
黒い鍔広の山高帽を被り、同色の、踝まであろう長さのマントに身を包んでいる。
顔を俯かせているため、その相貌は、帽子の鍔とそれの為す影で覗う事は出来ない。
「誰だよ!一体何者だよ!」
人物が顔を上げ、慎二の問いに応えた。
『俺は20世紀の王』
『ブギーマンにして悪党』
『嫌われ者の黒い羊』
『すなわち…』
その相貌は白い仮面に覆われてた。
それは豊かな口髭が描かれた、唇が不気味な笑みの弧を描く仮面、
慎二もなのはも知らないが、今より400近く前、
王権に対する叛逆を企てた、イギリス史上最も古く、
そして最も著名なテロリスト、ガイ・フォークスを象った仮面であった。
怪人――声から察するに男性だろう――の名乗りは続く。
『“The multiplying villainies of nature do swarm upon him.”』
――数々の悪事をまといし者なり
『“Disdaining fortune, with his brandish'd steel which smoked with bloody execution…”』
――血糊の付きし太刀を持ち、高々と振りかぶる…
怪人はマントを翻しながら、舞台よりフワリと降り立ち、
慎二の方へと階段を上り始める。
慎二は、「超人」と化した自分に不遜にも挑まんとすると思われる怪人に、
殺意の籠った視線を向けるが、
『“なれど…』
慎二が何かを成すよりか遥かに速く、
『不足なり! 武名高きマクベスの前では!“』
怪人が動く。
マントが蝙蝠の翼の如くバッと左右に広く広がったかと思えば、
六条の黒い軌跡が飛び出して、
相手を幻惑する陰湿かつ巧妙な軌跡と角度とスピードで各々弧を描きながら、
「グェェェェェッ!」
間桐慎二の体に突き刺さる。
先程慎二の掌を抉ったのと同じ蝙蝠型の手裏剣が、都合六つ突き刺さっている。
『“厳しき運命に向け、鋼の刃ぞ振りかざし…』
手裏剣を投げると同時に怪人は既に動いていた。
手裏剣の痛みに身を捩る慎二の懐に一足飛びに跳ぶや否や、
『血の嵐をば巻き起こし…』
水月への見事な当身の一撃!
慎二の体はキリモミ軌道を描きながら、
血をまき散らし宙を飛び、
「グェェッ!」
『武勇の化身の如く道を拓きて…』
『奴隷の前へといざ至らん……“』
階段状の客席の最上段に叩きつけられる。
怪人はなのはを背にし、彼女を庇うが如く立ちつくしている。
この間、僅か数秒の出来事である。
「ヂ、ヂクショウ!テメェぶっ殺して…」
超人故の頑丈さから、血を吐きながら立ち上がった慎二の目に飛び込んできたのは、
――ジャキン
腰間に落とし差しにしたレイピアを抜き放った怪人の姿。
(ヤ、ヤバイ…!)
慎二は直感的に悟った。
この怪人には勝てない。このままでは殺される。
サーヴァント以上の力を手に入れたと自負していた慎二に初めて、
本来の彼らしい恐怖の感情が蘇ってくる。
「ヒイッ!」
情けない悲鳴を挙げて、怪人に背を向け逃げ出そうとするが、
怪人は敵前逃亡を許す程慈悲深くは無かった。
空いた左手でもう一振り、腰間に差されたマインゴーシュを引き抜くや、
手裏剣の要領で慎二の背に目掛け投げつける。
マインゴーシュは流星の如き紫電となって、
「ゲェェェェェッ!?」
慎二の背に突き刺さる。
常人であれば確実に致命傷な一撃だが、超人と化して頑丈な今の慎二には致命傷足りえない。
しかし…
「畜生!覚えてろ!」
体は耐えられても心は既に挫けている。
いくら肉体が超人になろうとも、闘争における最後の最後で趨勢を決するのは、
互いの精神力の強度の差であり、
根が卑劣で臆病な間桐慎二にとっては宝の持ち腐れに過ぎない。
「残虐超人」マキリシンジは、
ほうほうの体でその場から脱兎のごとく逃げだした。
【I-4 劇場地下一階の何処か/一日目 深夜】
【間桐慎二@Fate/stay night】
[属性]:その他(Isi)
[状態]: 刺傷多数、背にマインゴーシュが刺さったまま、残虐超人状態
[装備]:ナチス武装親衛隊の将校服@現実、ドクロの徽章付き軍帽@キン肉マン
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:超人の戦闘能力を心行くまで試す。
1:一旦逃げて傷の手当てするor回復を待つ
2:仮面の男(V)にいずれ復讐する
【ドクロの徽章付き軍帽@キン肉マン】
ブロッケンJr.の被っていた軍帽。
被ると超人化し、脱げるorドクロの徽章が外れると唯の人に戻る。
常人にのみ効果があり、超人、改造人間、ホムンクルスが被っても超人化はしない。
超人化すれば、元の人間の資質・体力により度合いは変化するものの、
一様に肉体の耐久度の上昇、身体能力の向上が引き起こされる。
どういう原理か一度被ると簡単な衝撃では脱げないが、逆に何かの拍子にいきなり脱げる可能性がある。
◆
暫し怪人は仮面の内より慎二の逃げ出した方向を見詰めたいたが、
追えぬと思ったか、右手のレイピアを鞘に収め、
背後のなのはへと向き直った。
客席の手摺を支えに、ようやく立ち上がったなのはは、
不気味な白い仮面に見つめられて、ビクッと恐怖に体を振るわせる。
『“握手をする事も無く…』
『別れを告ぐる事も無く……”』
『大丈夫かな?見た所大きな怪我はないようだが』
冷静で落ち着いた声色の、気遣う言葉が仮面の内より発せられる。
「え?あ、だ、大丈夫です…その…」
「助けてくれてありがとうございます…」
なのはは伏せ目がちになりながらも、感謝の言葉を怪人に送り、
「それでその…貴方は…一体…誰ですか?」
続けて問いを投げかける。
怪人は答えて曰く。
『「誰」か、その問いは適当じゃあないな』
「?」
『重要なのは「誰か」ではなく、「何か」だ』
『見ての通り俺は仮面の男だ』
「?は、はい…」
『うん、別に君の認識能力を疑ってる訳じゃないんだよ、お嬢さん。ただね…』
『仮面の男に「お前は誰か」と問うても聞くだけ無駄だと言う事さ』
「…え…ええっ?…」
冗談めかしい口調の怪人の予期せぬ答えに、
なのはは些か面を喰らう。
『ああ…だがしかし…』
怪人はなのはの傍らより歩みいで、
舞台へと向けて階段を降りながら述べる。
『今日は些か興が乗った』
『だから今から君には特別に、この奇怪なペルソナの性格を紹介しよう…』
怪人は振り返り、
『Voila!』
――さあて!
「!?」
驚くなのはを余所に、
舞台役者の様に、声を高く朗々と張り上げ、
両手で大仰な仕草をとりながら、一つの口上を演じ始めたのである。
『In View, a humble Vaudevillian Veteran,
cast Vicariously as both Victim and Villain by the Vicissitudes of Fate. 』
――ご覧の姿は卑しき道化、
――運命の変転に伴い、他者に成り代り、時に弱き者を演じ、時には悪しき者もまた然り
右の掌を宙に翳し、白い仮面で天を仰ぐ。
『This Visage, no mere Veneer of Vanity, is it Vestige of the Vox populi, now Vacant, Vanished.』
――この仮面、単なる虚飾にあらず、民の声の痕跡である
――ああ、今や、かの自由の民の声、宙に空しく消え去りし…
『However, this Valorous Visitation of a by-gone Vexation, stands Vivified…』
――されど、雄々しくも厄介な、この過去の男が今や鮮烈に立ち上がったのは…
両の掌は堅く握られ、語気はどんどん強く、狂的な調子を帯び始める。
『…and has Vowed to Vanquish these Venal and Virulent Vermin Vanguarding Vice
and Vouchsafing the Violently Vicious and Voracious Violation of Volition!』
――犯罪を先導し、悪徳と誤謬を振り撒く腐りきった蛆虫共を鏖殺するが為であるッ!
最後に怒声の如く語気を挙げるや、
紫電の如く腰間のレイピアを抜き放ち、
劇場の壁に張られた一枚のポスター、恐らくはラムセス2世だと思われる、
一人のファラオの肖像の額目掛けて投げつける。
狙いは誤らず、その切っ先はファラオの眉間に確かに突き立った。
『The only Verdict is Vengeance; a Vendetta, held as a Votive, not in Vain,
for the Value and Veracity of such shall one day Vindicate the Vigilant and the Virtuous.』
――執るべき唯一の手はだだ復讐のみ
――そう これは“ヴェンデッタ (血の復讐)”だ
――悪を断ち切り自由をもたらすために、果たさねばならぬ復讐だ
感極まった様子で、再び宙を仰ぎ、右手を高々と掲げる。
あまりにも奇怪で突拍子もない怪人の様子に、
なのは目を白黒させて、口をあんぐりと開けるしかない。
『Hu-Hu-Hu、Hi-ha-ha-ha-ha…』
冗談めかしく怪人が笑い、口上が続く。
『Verily, this Vichyssoise of Verbiage Veers most Verbose so let me simply add that…』
――ああ、誠に多弁なるヴィシソワーズ(前菜のスープ)、あまりに冗長に相成ったゆえ…
――最後に、ただ一言で述べよう…
怪人は帽子を脱ぐや、それを自身を胸にあて、
軽く優雅な一礼をして口上の末尾の言葉をなのはに送る。
『…it is my Very good honor to meet you…』
――貴女にお会いできたこと、大変名誉に思います
『…and I have no name,so you may call me “V”.』
――俺に名は無い
――ただ『V』と呼んで頂ければ結構だ
そして、怪人『V』は帽子を被りなおした。
一方なのはは…
(え…えと…どんな反応すればいんだろう…?)
混乱していた。
【I-4 劇場地下一階「小劇場」/一日目 深夜】
【V@Vフォー・ヴェンデッタ】
[属性]:悪(set)
[状態]: 健康
[装備]:バッタラン@バットマン(残弾多数)、レイピア@現実
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:?????
1:目の前の少女と話す
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[属性]:正義(Hor)
[状態]: 足に軽傷
[装備]:聖祥大附属小学校制服
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3(武器になりそうな物は無い)
[思考・状況]
基本行動方針:アリサ、すすかとの合流と、この場所からの脱出
1:えっと…何なんだろうこの人…
【備考】
※「魔法少女リリカルなのはA's」、あるいはその前後の時期からの参戦
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|&color(cyan){実験開始}|間桐慎二|:[[仮面の下のバラッド]]|
|&color(cyan){実験開始}|高町なのは|~|
|&color(cyan){実験開始}|V|~|
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