とある暗部の軽音少女(バンドガールズ) 1 結成!


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それから数年後。
科学と魔術が交差し、世界の運命が大きく動き始める、ほんの数年前。

学園都市のとある人気のない裏路地にて。
黒いスーツにサングラス、拳銃を持った「いかにも」な男たちが、建物と建物の間の細い道を、息を切らしながら駆け抜けていた。
男たちはある一人の少女から逃げていた。

「はあ、はあ……チッ、なんなんだあのガキは! 肉体強化系の能力者か?」 

「レベル4ぐらいか? 誤算だったな。まあ、ここまで逃げれば大丈夫だろう」

しかし、曲がり角に差し掛かった瞬間――

「おりゃーーーーーっ!!!」

逃げ切ったはずの少女が突如前から現れ、とてつもないスピードでドロップキックを放ってきた。
先頭を走っていた男はなすすべなく顔面に蹴りを食らい、そのまま壁に叩きつけられる。
頭蓋が砕ける鈍い音が響き、男はその場に崩れ落ちた。

「なっ……いつの間に回りこんだ!?」

「へっへーん……このあたしのスピードをなめんなよ」

「くそっ!」

二番目に立っていた男が銃を構えようとした瞬間、少女はすでに男の懐にいた。

「な、速――」

最後まで言い切る前に、少女の手刀が男の首をポンと軽く叩く。
しかし、その軽さに対して不自然に強い衝撃が男の首に伝わり、頚椎を砕いた。
ドサッ、と倒れた男を踏みつけて乗り越え、少女は残りの男たちのほうへと迫っていく。

「さーて、あと五人か……」

「く、くそっ、化け物め! 逃げるぞ!」

男たちは戦意を喪失し、元来た方へと逃げてゆく。

「逃がすかってーの!」

少女が常人の数倍はあろうかという速度で男たちに迫る。
しかし、後方を走っていた一人が突然振り向き、銃弾を発射した。
油断していた少女は避けることができず、額に命中する。

「痛ってぇーーーーーーーーーーーっ!!!」

しかし、銃弾は少女の脳天を貫くことなく、地面にポトリと落ちた。
銃弾を放った男は驚きのあまり立ち止まって唖然としている。

「う、嘘だろ……確かに命中したのに」

「……てっめええ、許さんっ!」

少女が瞬時に間合いを詰め、男の首めがけて回し蹴りを放つ。
全力の一撃を食らった男の首はもげ、鮮血が噴き出した。

「はあ、はあ……うーわ、やっちまった。きったねー……」

返り血を浴びた少女は本気を出したことを後悔する。

「さて……おーい澪! そっち行ったぞー!」

残りの逃げた男たちが狭い路地を抜け、ひらけた場所に出る。
そこには黒髪の少女が立っていた。

「チッ、こいつも仲間か!」

男が銃口を向けようとした瞬間、澪と呼ばれた少女は左手を前へ掲げ、パチッと指を鳴らした。そして――

――ドゴオォォォォォォォォォッッ!!!

あたりに轟音が響き、周囲の建物の窓ガラスが割れる。
少女の発した小さな音は増幅されて衝撃波となり、音速の空気の壁が男たちの骨を砕き、吹き飛ばす。
そのまま壁へと打ち付けられ、全員が絶命した。

「……ふう」

「澪、おつかれ~」

先ほどの少女が耳栓を外しながら登場する。

「ああ、お疲れ律。……って」

澪が律と呼ばれた少女の方を振り返ると、彼女は血まみれであった。

「――い、いやあぁぁぁぁぁぁ!!!」

「な、どうした澪!?
  ……ああ、この血か。返り血だよ、あたしのじゃないから安心しろって。ちょっと本気出しちゃってさ~」

「そ、そうか、びっくりした……」

「……ったく。こんだけ人殺しまくってるくせに、相変わらず自分自身とかあたしの血には慣れないよな~」

「しょうがないだろ! もともとこういうのは苦手なんだから……
 ……こいつらは、もう人間だと思わないようにしてる。そうじゃないと、やっていけないから。
 だけど、やっぱり自分とか律の血は……怖いよ」

彼女たちの言葉からは、人を殺していることへの罪の意識は感じられない。
非情な暗殺者として、学園都市の『闇』で長く生きてきたことがうかがえた。

「……悪かったな、澪。
 じゃ、これからは血出さないように、寸止め首折りキックの練習しとくからな!」

「そんな生々しく言うな! さあ、早く回収して帰るぞ。警備員(アンチスキル)が来る」

律が男たちの持っていた金属製のケースを回収し、二人は走り出す。

「うわ、ベコベコじゃん、このケース。相変わらず澪の能力は強いな~。
 けど音がでかいのが難点だよな、使ったら即退散しなきゃいけねーし」

「範囲を狭めるように努力はしてるんだけどな……」

「ま、ここんとこ無敗だし、いいってことよ!」

二人は路地裏を抜けて道路へと出る。
そこにはあらかじめ用意してあったバイクがあり、律が前、澪が後部座席にまたがり、去っていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ケースをしかるべきところへ届け、仕事が終了した律と澪は、二人が住む部屋へと戻っていた。

部屋の中には電子ドラムやアンプなど、音楽関係の機材が所狭しと並んでいる。
二人は数年前にバンドのライブ映像を見たことをきっかけに、楽器を始めた。
音波を操る能力を持つ澪はもともと音楽の才能があり、ベースの腕はかなりのもの。
一方の律は、能力により軽く叩くだけで大きな音が出せるという利点からドラムを始め、同じくその腕はかなりのものである。

「ふい~、疲れたぁっと! あたし風呂行ってくるよん」

返り血を浴びていた律はすぐさま服を捨て、浴室へと直行する。
すると、律の携帯電話が鳴った。

「ん?」

澪が確認すると、外側の小さなディスプレイに『電話の女』と表示されている。
この人物は、二人の仕事を電話で指示してくる上司のようなものだが、名前も姿も知らない。
おそらく今回の仕事のことに関する電話だろうと思い、澪は携帯をとった。

「もしもし」

『もしもし、りっちゃん?』

「いえ、澪です」

『澪ちゃん? まあどっちでもいいわ。さっき任務の完了を確認したわ、お疲れ様。報酬は振り込んでおいたから』

「ありがとうございます」

『相変わらず律儀ねえ……礼なんてする必要ないのに。この世界には珍しいタイプね。
 それはそうと、今日はあなたたちにもうひとつ良い知らせがあるの』

「なんですか?」

『あなたたち、最近調子いいじゃない。その能力が評価されて、正式に暗部組織として独立することになったわ』

澪と律は、これまでは別の暗部組織の下部組織として、主に実動部隊として仕事の依頼を受けていた。

「ほ、本当ですか!?」

『ええ。しかも機密度は最高レベルよ。報酬もばばーんとアップ! 私も鼻が高いわ~』

「報酬アップ……」

その言葉に澪の表情が緩む。澪の脳内には、新しい機材や楽器など、欲しいものが浮かんでは消えていく。

『それで、メンバーもあと二人増えて、四人のグループになってもらうから』

「え……?」

澪の顔から笑顔が消える。
暗部へと入って以来ずっと律と二人で組んできた澪は、他のメンバーとやっていけるかどうか不安だった。

『どうしたの? とにかく、あとの二人はもうそっちに向かってるから。あと一時間ぐらいで着くかしら。
 全員集まったら改めて仕事の説明をするわ。それじゃあ、また後でね』

電話が切れる。

「……律、早く上がってきてくれ……」

 

しばらくして、律が浴室から出てくる。

「律!」

「どーした澪、暗い顔して……なんかあったか?」

「さっき、『電話の女』から連絡がきて……私たち、昇進だってさ」

「マジ!? すげーじゃん! ってことは報酬もアップ!? いやっほーい!」

「で、でも律! 今度から、新しい人が二人加わるって……しかも、あと三十分ぐらいでここに来るって!」

澪は涙目になって律にしがみつく。

「え? あー澪、そんな心配してんのか……別に大丈夫だって! どーせ仕事だけの付き合いなんだからさ!」

「うう……」

「まったく……落ち着けって。別にあたしがいなくなるわけじゃないだろ」

「そうだけど……」

「そうだ、澪、久しぶりに合わせるか?」

「え?」

「ちょっとは気が紛れるだろ。あと三十分することないしな」

「……ああ」

二人はそれぞれの楽器の準備を始める。

「あたしたちの昇進記念ライブってとこだな! ま、リズム隊しかいないけど。
 それじゃ行くぞ~、1、2、3、4――」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「律、ありがとう。だいぶ落ち着いたよ」

「おう、よかったな! って、そろそろ来るころか?」

ちょうどそのとき、部屋の呼び鈴が鳴る。
澪の表情が再びこわばる。

「……来たな」

「ほーら、大丈夫だって! はいはーいどちらさまですか~?」

『ごめんください、ここは律さんと澪さんのお宅ですか?』

インターホン越しに、優しそうな女性の声が聞こえてくる。ガラの悪い男ではなかったことに澪は安堵した。

「そうでーす、そちらは私たちの仲間になってくれる方ですか~?」

『ええ、そうですよ』

「どうぞ、いらっしゃ~い!」

澪を置いて律が玄関に向かい、勢いよく扉を開けると、そこには気品漂う金髪の少女が立っていた。
ぽわ~んとした雰囲気の、いかにもお嬢様という感じのルックスである。
日々殺戮を繰り返す暗部組織には不釣合いな人物の登場に、律は面食らっていた。

「え~……っと、本当に私たちの仲間になって、一緒に仕事してくれるんです……よね?」

律が思わず確認する。

「ええ。……あ、私では何か問題がありましたか?」

「い、いやいやそうじゃないけど! ……仕事の内容、どんなんだか知ってんのか?」

「詳しくは聞いていませんが、問題行為をはたらいた組織を殲滅する、のでしょう?」

金髪の少女は笑顔でさらりと答えた。

「はは……なんか大丈夫そうだな。ま、これからヨロシク! そういや、名前は?」

「私は紬よ。ムギ、って呼んでね」

「ムギ、か。よろしく! ほら、澪も隠れてないで挨拶しろよ」

廊下の向こうからこっそり覗いていた澪がおそるおそる出てくる。

「えっと、よろしく……ムギ?」

「ええ♪よろしくね」

緊張しながらも安堵の表情を見せる澪を見て、律はにやつきながら紬のほうを向き、

「澪のヤツ、こわーい奴が来ると思ってさっきまでビビってたんだぜ~?」

と澪をからかう。澪はそれを聞いて顔を真っ赤にする。

「こ、こら、律! 勝手にバラすな!」

ゴチン! といい音を立てて律に鉄拳制裁が下された。

「いったーい! ぶつことねーじゃんかよぉ」

「うふふ……仲がいいのね~」

二人のやり取りをほほえみながら見ていた紬は、廊下の向こう、部屋の中にベースと電子ドラムを見つけた。

「あら……二人とも、音楽をやってるの?」

音楽の話題が出たことで、澪の表情から緊張の色が消える。

「ああ、私はベース、律はドラムなんだ。
 ……なあ、ムギが背負ってるそれ、もしかしてキーボードか?」

「ええ、そうよ。すごい偶然ね」

「おお、バンドできるじゃん! 一緒にやろーぜ、ムギ!」

「是非とも~♪」

偶然にもキーボード、ベース、ドラムが揃う。となれば、あとは一つ。
そんな都合のよいことは起こらないとわかりつつも、律は希望を述べる。

「これでもう一人がギターなら完璧なんだけどな~」

もう一人来ることをすっかり忘れていた澪は、「あ……」と呻き再び表情が曇ってしまう。

「まーた澪が固まっちゃったよ。ほらほら、大丈夫だって」

「あ、ああ。そういえば、遅いな。もう一人」

「もう一人も、指定時刻は私と同じのはずだけど…」

そのとき、ちょうど呼び鈴が鳴る。

「お、来た来た。はーい!」

三人は部屋に戻り、律がインターホンに出る。

『あ、え、えっと、律さんと澪さんのお宅ですか?』

たどたどしい感じの女性の声が聞こえ、再び澪は安堵した。

「そうでーす、私たちの仲間になってくれる人かな~?」

『はい! 遅れてごめんなさい、ちょっと道に迷っちゃって……』

「いいっていいって、開けますよ~」

律が扉を開けると、そこにはギターケースを背負った少女が立っていた。

「って、マジでギターかよ!?」

狙ったような展開に、思わず律が突っ込みを入れる。ギターの少女は何のことかわからず、きょとんとしている。
奥の部屋から澪と紬が駆けつけ、少女の背負っているギターを見て驚く。

「ほ、ほんとにギターが来た……!」

「奇跡、じゃないかしら……」

「え? え? ギー太がどうかしたんですか!?」

「あ~、えっと、あたしたちな――」

置いてけぼりになっているギターの少女に律が事情を説明する。

「えぇ~っ!? みんな楽器やってるの!? すごいよ!!」

「ああ、これでバンドの完成だぜっ!」

「なんか……夢みたいだ。暗部組織やってて、バンド組めるなんて……。一生、無理だと思ってたから……」

澪は涙ぐみながら感慨深く語る。
闇に生きる人間である以上、表の世界の人間とバンドを組めば、その者たちにも闇の影響が及びかねない。
他の組織に楽器経験者がいたとしても馴れ合うことはできない。一つの組織でバンドが組めることは奇跡に近かった。

「そういえば、あなたのお名前は?」

紬がたずねると、ギターの少女はVサインしながら元気よく答える。

「わたしは唯だよ! よろしくね、みんな!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

四人は音楽という共通の趣味があることから意気投合し、初対面とは思えないほど会話が弾む。
その姿はさながら普通の女子高生であり、人殺しの集団には見えない。

しばらく談笑していると、律の携帯が鳴った。ディスプレイにはまた『電話の女』と表示されている。

「お、仕事の話かな? もしもーし」

『みんな、揃ってる?』

「おうよっ、揃ってるぜい」

『じゃぁ、みんなに聞こえるようにしてくれるかしら?』

律が携帯の音量を上げ、机に置く。

『さて、早速だけどあなたたちの仕事の説明をするわ』

『あなたたちの組織の名前は「ユニゾン」。
 暗部組織の仕事の中でも、特に機密度の高いものや、難易度の高いものを専門にこなすために作られた、
 少数精鋭の高位能力者グループ、という肩書きよ』

『最近、学園都市の極秘実験が本格化し始めたらしくて、それに応じて情報漏洩や反抗組織に対する警戒が強まっているわ。
 その対策のひとつとして、少数精鋭の極秘部隊を試験的に導入することになったの。
 あなたたちがうまくやってくれるようなら、これから似たような部隊を増やして仕事を分担させるらしいわ』

『「ユニゾン」の機密度は最高レベル。他の下部組織はその存在すら知らないわ。
 仕事内容は今までとだいたい同じだけど、特に機密情報の漏洩に関わった者の処分、学園都市に反抗する組織の壊滅がメインね。
 場合によっては、他の暗部組織や、一般人がターゲットになりうるわ』

一般人、という言葉に澪は思わず声を上げる。

「一般人だって…!? 殺せって言うんですか!?」

今まで散々、裏社会の人間を殺してきたとはいえ、一般人に手を出したことはなかった。

『殺す殺さないは任せるわ。要は情報が漏れなければいいの。監禁するなりこっちに引き込むなり好きにしてちょうだい』

この先、罪のない一般人を手にかけるときが来るのか。それを想像し、重い空気が流れる。

『とにかく情報漏れに気をつける、それが今までと違うところよ。証拠隠滅は徹底してやること。
 仲間割れされて情報が漏れたりすると困るから、せいぜい仲良くやりなさい。そのために、楽器できる人材を集めたんだから』

その言葉に皆がはっとする。
ギター、ベース、キーボード、ドラムが揃ったのは偶然ではなく、『電話の女』の計らいによって集められたのだ。
皆が目を合わせ、微笑む。先ほどの重い空気はすでに消え去っていた。

「なるほどな~。どうりで都合よく揃ったわけだ……なんか、ありがとな」

『礼には及ばないわ。


 ……くぅぅぅ~~っ! これよ、これを待ってたのよ~~~!!!』

珍しく律から賞賛を受けた『電話の女』の喜びの声が聞こえてくる。小声で言っているようだが、まる聞こえだった。
興を削がれた一同が苦笑いする。

『ゴホン! まあとにかく、今日は仕事はないからあとは好きに過ごしてちょうだい。明日また連絡するわ。それじゃ、またね』

電話が切られる。
携帯電話をたたむと、律はさっそくある提案をする。

「ふふ~ん……さーて、せっかくだしみんなで合わせるか?
 って言いたいところだけど、この部屋じゃさすがに四人で演奏するのは狭いな……アンプも足りないし。
 面倒だけどスタジオ借りにいくか~」

律の発言を聞いて、澪があることを思いつく。

(ムギってお嬢様っぽいよな……もしかしたらスタジオ付きの高級マンションとかに住んでたりして)

澪は思い切って紬に尋ねてみる。

「なあムギ、スタジオ付きの部屋とか……」

「ありますよ♪」

「「あるんかい!!」」

「ちょっと待ってね、今用意するから」

(((今……?)))

紬は携帯を取り出し、電話を始めた。

「もしもし斉藤? ちょっと頼みがあるんだけど――」

 

紬の電話の相手は家の使用人なのだろうか、ときおり紬から命令形の言葉が飛び出す。
澪の予想通り、紬はお金持ちの家の娘のようだ。

紬が電話をしているのを見ながら律はふと疑問を口にする。

「なあ澪、ムギの親は娘が暗部だって知ってんのかな? 家族ぐるみで暗部ってことは……さすがにないか」

「わからないぞ。もし親が学園都市の大企業の社長とかだったら、暗部に関わってても不思議じゃない」

すると二人の話を聞いていた唯が突然立ち上がり、

「じゃあ聞いてみようよ~!」

と、紬のほうに向かおうとするが、澪があわてて唯を止める。

「よせ、唯! 暗部の人間の素性を探ろうとするな!」

「え~、ムギちゃん優しいし大丈夫だよ~」

暗部らしからぬ気の抜けた行動に律は呆れる。

「ったく、のんきだなあ唯は……お前本当に今まで暗部でやってきたのか~?」

「むっ、これでもわたしベテランだよりっちゃん!?」

二人が言い争っていると、紬の電話が終わり、こちらへ戻ってきた。

「お待たせ! スタジオ付きの部屋を五つ用意できたわ」

「「「五つ!?」」」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

第八学区のとある高級住宅街にて。
一同は紬の所有する一軒家を訪れていた。

「高級マンションどころか、一軒家だなんて……」

唖然としている澪を置いて、律と唯ははしゃぎ回っている。

「うおおおおおっ、超広ぇぇぇぇ!!」

「すごいよムギちゃん! ほんとにこんな部屋使っていいの!?」

「ええ、存分に使ってくださいな♪
 あと、スタジオは二階にあるわ」

紬に案内され、一同は二階のスタジオへと足を運ぶ。

「「「おおおお~っ!」」」

スタジオはかなり広く、高級な機材が並んでいた。
職業柄、今までろくな環境で演奏したことのなかった三人は歓喜する。

「すごい! こんな大きなアンプ初めてだ……」

「うっはー! ピッカピカのドラムだぜ~!」

「ねえ、さっそく演奏してみようよ!」

「ええ♪」

 

それからしばらく、四人は澪が適当に持ってきた譜面をかじりながら軽くセッションをして過ごした。
その後、冷蔵庫に入っていた豪華な食材を使ってみんなで夕食を作り、今は食べ終えて居間でくつろいでいるところである。

「いや~、極楽だねえ……わたしここに住みたいよ、ムギちゃん」

「ええ、どうぞ♪」

「「「えっ、いいの!?」」」

三人が目を見開いて紬を見る。

「もちろんよ。むしろ、『ユニゾン』のアジトとして使ってほしいの。
 他の四つの部屋も、同じぐらい広くとってあるから」

「やったあ~! 毎日おいしいものが食べられるよ~」

「ははっ、食い物のことばかりだな~唯は。
 いや~しかし助かるぜ、ありがとなムギ!」

「どういたしまして~♪ 荷物を持ってくるのは明日にして、今日はもうお風呂に入って寝ましょう?」

「「「さんせ~い!」」」


その夜、四人は修学旅行のようなやりとりを深夜まで続けた後、やっと寝静まった。

 

 

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