上条「誰を助けりゃいいんだよ……」 > 17


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自分が押しに弱い性格だとは思っていないが、
一方通行は流れに押される形でオルソラの目指していた女子寮へ招待されていた。

出されたコーヒーを飲みながらオルソラ保護の経緯について説明する。
相手をしたのは先程オルソラを迎えに来たシェリーという女性だ。
ゴスロリチックな服装に全方向へ広がるワイルドな長髪と、
なかなかにエキセントリックな見た目だが、これでも修道女らしい。

「ミルクはいかがでございますか?」
「いらねェ」

オルソラがにこやかに勧めてくれたが、一方通行は一言で辞退した。

「で、テメェは本当に私達の敵じゃないのね?」
「むしろこっちがそっちの身の潔白を証明してほしいンだがな」
「お互い疑ってちゃキリがねえな。オルソラは信用してるみたいだけれど」

ぽりぽりと頭を掻いて、シェリーは足を組み直した。

「学園都市の人間だそうだけど、こんな所まで何しに来たの?」
「そこの修道女を送りにだろォが」
「分かった分かった。質問を変えるわよ。英国に何しに来やがった?」

コロコロと男性口調と女性口調が入れ替わる。どうも統一感がない。
シェリーという女性も癖のある人物だった。

ただ、一方通行も自分が美しい言葉遣いをしているとは思っていないので、
口調に関しては特に文句はなかった。

「何しにねェ……俺がソレに答えてどォなる?」
「逆に答えないとどうなるか教えてやろうか?」
「ミルクはいかがでございますか?」
「おもしれェ。ミルクはいらねェ。手取り足取り教えてもらおォじゃねェか」
「エリスの手足はちょっとデケエぞ? 潰されても泣くなよ」
「ではカップを動かさないで下さいでございますよー」
「ハッ。サイズがでけェくれェでこの俺を潰せると……おい! ミルクいらねェっつってンだろ!」

勝手に注がれそうになったので、会話が一時中断した。


「……世界各国に監禁されてるガキ共がいるンだよ。当然英国にもな。
 そいつらを解放してンだ」

手でコーヒーカップに蓋をしながら、一方通行は白状した。
迫り来るミルクとの格闘に疲れて、情報の秘匿にまで頭が回らなくなってしまったのである。

この状態でも油断は出来ない。
手にミルクが降り注がれることもあり得るのだから。

「世界各国ですって? そんな大規模なことが出来る組織はそうそうねえぞ」
「ローマ正教っつったかな。少しずつだが情報は集めてる。奴らの目的も分かって来た」
「ローマ正教!」

シェリーは思わずオルソラを振り返る。
彼女は今でこそイギリス清教のシスターだが、かつてはローマ正教に属していたのだ。

「オルソラ、何か知ってる?」
「はい、お砂糖ならこちらに用意しているのでございますよ」
(入れさせねェ)
「砂糖はどうでも良いんだよ。ローマ正教が集団で人攫いやってるらしいけど、聞いたことはある?」
「人攫い、でございますか……? それは、多少後ろ暗いこともやっているとは存じておりますが……」

集団で世界中となると、オルソラも流石に心当たりがないらしい。
という情報を得るのに十五分掛かった。


「何か嘘臭い話だな」
「わざわざ無関係の奴に信じてもらいてェとは思ってねェよ。学園都市はそォでなくても忙しいンだ」
「忙しい?」

「とある学生がな、
 禁書目録が必要悪の教会の裏切り者の集団に連れ去られ、
 助けに向かった仲間二人も捕えられて、
 それを助けにいった仲間の集団がまとめて捕虜にされて、
 そいつらに恩のある修道女が犯人たちを説得に行って迷子になって行方不明、
 探しに行ったイギリス清教の部隊が罠にハマって捕獲され、
 一方その頃とある学校ではある教師の家に生徒が遊びに行ったら先生も同居人の女子高生も見当たらず、
 それを探しに行った女子生徒自身も帰って来ないし、
 それを心配して探しに行った男子生徒も帰って来ないし、
 立ち上がって捜索に当たった女子生徒も戻らないし、
 出発前に女子生徒ら相談を受けた女教師も行方不明になって、
 探しに行った同居人が全員消え、
 その内の二人の調査に当たった一万人がいきなり連絡不能になり、
 それを知った超電磁砲が探しに行って何者かに拉致され、
 追いかけて行った風紀委員の後輩とその友達が誘拐され、
 超電磁砲のファンの少年とその義妹がやはり彼女を探しに行って帰って来ず、
 所変わって暗部では新生アイテムの四人が軒並み行方不明、
 スクールの残党が音信不通、
 忍者が二人地味に消えて、
 ついでに最近科学の天使の目撃情報がめっきり減ってるらしいし、
 海を越えてイギリスでは女王と王女三人と騎士団長が正体不明の誰かに拘束され、
 魔術の小組織の四人が消息を絶ち、
 イタリアでは『神の右席』とかいうのの三人が縛りあげられて
 ローマ教皇が何者かに誘拐されて
 ロシアでも修道女が一人忽然と姿を消し、
 エリザリーナ独立国同盟では代表者が出かけたっきりいなくなり、
 あと飼い猫を何日か前から見かけなった
 とかで今も駆け回ってンだよ」


シェリーとオルソラは、ポカーンとしていた。


先に立ち直ったのはオルソラだ。
普段から割とぽかんとしているからだろう。


「それは何だか、上条様みたいな学生様でございますねえ」


彼女のその小さな一言で。

かちり、と、場の人間の関係が噛み合った。

「……言われてみればそうね」
「何だって、上条? オマエ知ってンのか」
「! あなた様はご存知なのでございますか?」

「……」

「……」

上条の知り合いだと名乗り合ったことで、一方通行とシェリーは取り敢えず相手を信用する気になった。


上条のお陰、ということになってしまうのだろうか。
オルソラ以外は納得いかない気分だったものの、緊張の解けた雰囲気で対話が再開された。

コーヒーはミルクと砂糖の六度の襲撃から見事守られたが、冷めた。

「つまりあの坊や、オルソラやアニェーゼ達まで助けようとしてるってことなのね」

シェリーが確認するように呟き、口を閉じる。
会話が途切れた隙に、オルソラが頬笑みながら一方通行に声を掛けた。

「一方通行さん、レモンはいかがでございますか?」
「あの野郎には関わりたくはねェンだがな。レモンはいらねェ。(レモン?)
 俺に因縁のあるガキ共までアイツの守る対象に加えられそォになってたから、手を引かせたンだよ」
「それを言うなら、イギリス清教の奴らだって……」

シェリーはしばし黙りこみ、口元に手を当てて何か考えていた。

そして、何事が決心したように頷く。
オルソラの方を見て、唇を開いた。

「上条当麻に連絡は取れる?」
「あ、私番号を教えてもらったのでございますよ」
「これ以上借りを作りたくねえからな。
 イギリス清教に関係する人間はイギリス清教が片を付ける。
 だから手を出すなって伝えて頂戴」
「といっても、今動けるのはシェリーさんと私くらいなのでございますが……」
「テメェはここから一歩も動くな」

最大主教は健康そのものだが、どうにも当てにならない。
よってここでまともに活動できるのはシェリーのみである。

だが臆さない。彼女は常に一人ではない。
頼もしいパートナーがいるのだ。


そのあたりの事情をよく知らない一方通行は、彼女たちの様子を黙って眺めていた。
コーヒーを啜る。


「すっぺェ!!!」


いつの間にか、彼のカップに薄切りのレモンが浮いていた。


二分ほどして。

通話を終えたオルソラが、にこにこ微笑みながら二人のもとへ帰って来た。

「お留守番の女性の方に事情を説明して来たのでございますよ」
「そりゃ留守番電話サービスだ。ちゃンと録音できてりゃ伝わるだろ」

かなり不安だが、そこまで一方通行が面倒を見る義理はない。

「じゃァ……」

やっと妹達の解放作業に戻ろうと席を立つ一方通行に、シェリーが声を掛けて来た。

「行くの?」
「ざっと四千件ほど野暮用が残ってンだよ。のンびりコーヒー飲ンでる場合じゃねェ」

向きを変え、歩き出す。
挨拶もせず出口へ向かう彼に、シェリーは最後に一言、伝言を頼んだ。

「今度あいつに会ったらさ、言っておいて。どうもありがとう、死ねって」
「……おォ」

どうも、統一感のない女である。


そこで、

「あ!!」

突然叫び声を上げたのはオルソラだ。
珍しく驚いた顔をして、周囲をきょろきょろ見回している。

「どうした?」

シェリーが警戒心を顕にした表情で、おっとりシスターさんの驚愕の顔を見つめて尋ねた。

オルソラは応えて言った。


「私、いつの間に寮へ帰って来たのでございましょう?」
「!?」
「!?」

!?


■■■■救助リスト(抜粋)■■■■

===イギリス清教===
必要悪の教会
   禁書目録         【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   ステイル=マグヌス     【救助立候補:シェリー=クロムウェル】

ロンドン女子寮
   神裂火織         【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   オルソラ=アクィナス    【解決済】

天草式十字凄教
   建宮斎字         【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   浦上           【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   五和           【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   牛深           【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   香焼           【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   諫早           【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   野母崎          【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   対馬           【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   他44名          【救助立候補:シェリー=クロムウェル】

アニェーゼ部隊
   アニェーゼ=サンクティス  【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   シスタールチア      【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   シスターアンジェレネ   【救助立候補:シェリー=クロムウェル】
   他約200名         【救助立候補:シェリー=クロムウェル】


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