上条「誰を助けりゃいいんだよ……」 > 12


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「不幸だぁぁあああああ!!」


上条当麻は叫んでいた。

統括理事長との直接交渉権を得たと言われてやって来て、
それが結局無駄足だったと知った麦野に本気で攻撃されているからだ。

可憐な乙女から放出される極太ビームを避けたり消したりしながら、
彼は窓のないビルの近所を走り回る。

それを、浜面は気の毒そうに、絹旗はやや楽しそうに見ている。

結標はこれといって感慨もなさそうに眺めている。


そんな午後。


「ここで落ち込むのは超早いですよ!!」

仲間たちに気合を入れるように、絹旗はしっかりとした口調で言った。

「ま、私は落ち込んでなんかいないけどねー」

いい具合にストレス発散した麦野が、晴れやかに応じる。

「よし、じゃあ行くか!」

浜面は先頭に立って歩き出す。
また、滝壺を助け出す手掛かりを見つけるために。

へこたれない。

これが、アイテムだ。


彼らの後姿を見つめて、ぜえぜえと息を吐く上条は文句を言いたくても声が出せなかった。

『アイテム』に気合が入ったのは結構だが、上条の方は振り出しになってしまった。

そもそも統括理事長が学園都市を放り出して失踪とは何事か。
魔術師が入り込んでいるというのに対応が遅れ気味に感じられるのはそのせいかもしれない。

そこへ、ふと思いついたように結標が近寄って来た。

「学園都市と交渉をしたいのよね?
 理事長ほどの権限があるわけではないけど、もう一人心当たりがあるわよ」
「何だって? 誰?」
「親船最中。学園都市統括理事会の一人だけど、あの中じゃまともな方ね。
 ある事件を通じて知り合ったのだけど、それ以来縁があって」
「親船って……もしかして」

上条の表情が曇る。
彼女はかつて、上条の目の前で拳銃で撃たれたのだ。
しかも、土御門に。

あの光景はなかなかショッキングだった。

「会ったことがあるの?」
「一度だけ。……あの人、体は大丈夫なのか?」
「いたって健康だと思うけれど」

結標の案内で、二人と一匹は親船邸へと向かうことになった。



親船の居住は、静かな学区にあった。

端整だが生活感が無い。
偉い人の住みかってのはこんなもんなんだろうな、と上条は適当に思う。

まず結標が一人で親船の家へ行って話を通すと、思っていたよりも簡単に招き入れられた。

「貴方の名前を出したらすぐに許可が下りたわよ。貴方一体何者なの?」

戻って来た結標にまじまじと見つめられ、上条はあいまいに返事をした。

「さあ……?」


お偉方にしては質素。

ただし、上条の住む学生寮などは比べるべくもない。
廊下がある時点で勝負にならない。
当たり前だが。

親船最中の自宅は、そんな印象の邸宅だった。

玄関を上がり、電灯(おしゃれ)の灯る廊下を歩き、応接室へ通される。

秘書らしき男の手で扉が開かれた。


そこには、




「よかった!! ちゃんといたよ!!」


「……はい?」


親船最中が、優雅にソファに腰かけていた。


「最近どいつもこいつも行方不明だの誘拐だのって目に遭ってるから、
 どうせあんたも謎の集団に拉致とかされてるんだろうと思ってたんだ」

年老いた理事の向かいに座り、上条が先程の叫びの理由を説明すると、
向かいの女性は苦笑した。

「確かに、ここ最近は学生や研究者が何人も学園都市から姿を消しています。
 ですが、私の身の上まで気に掛けて下さるとは思わなかったわ。どうもありがとう」

優しげな目つきで上条を眺める親船。
かわいい孫を見るような瞳だ。

そういう目で見られると、何となく、照れくさくなる。

「――って、ほのぼのしてる場合じゃない。
 単刀直入に聞きたい。滝壺って学生が学園都市に誘拐されたって話は本当か?
 本当ならどうして……ってのはとりあえずいい。今どこにいる? 無事なのか?」

室内に、ピンとした空気が張り詰める。

ただ穏やかだった親船の瞳に、真剣な光が宿った。

「誘拐……そう思われても仕方がありませんね」

彼女はひとつため息を吐き、続けた。

「本当はこんなことを一学生に聞かせていいものではないのですが、
 あなたには借りもあるし、あなたの性格もある程度分かっているつもりです。お答えしますよ」


使用人の女性が入って来て、三人の前にコーヒーを置いた。
ついでにミルクを与えられたスフィンクスは、お礼を言うように鳴いて、ぺろぺろ舐めはじめた。

コーヒーを一口飲んで、親船が話を再開する。

「あなたがどのくらい事態を把握しているのか分かりませんから、始めからお話しましょう。
 変化があったのはおよそ一か月前。学園都市に所属する研究者たちが謎の失踪を遂げ始めたのです。
 その数、現在まで合わせて百五十人」

「……それは初耳だ」


■■■■救助リスト(抜粋)■■■■

===学園都市===
その他
new! 研究者(約150人)     【失踪】



「……それで?」

「一人二人程度なら、今まででも無くはなかった。
 ご存じのとおり学園都市から逃げ出すのはそう簡単ではありませんけどね。
 しかし、二桁を越えるのは異常です」

「警備員に任せきりだった調査を理事会直下の組織にも命じて、
 本腰を入れて取り組んだのが最初の失踪から一週間後」

ここで、親船は一度言葉を切った。
そこへ結標が代わりに口を開く。

「百五十人消えるまで、一週間も足踏みしていたの?」
「その時は失踪者は二十人でした。後手に回ってしまったことには変わりありませんが」

結標の問いかけに、親船は苦しげに答える。
本当に自らの失態を恥じているようだ。

「そして、ぼんやりとですが事件の輪郭が浮かび上がってきました」

気を取り直すように背筋を伸ばし、老いた理事は続ける。

「研究者の失踪の原因は、外部の人間による誘拐だったようなのです。
 これには理事会もショックでした。学園都市の『壁』をかいくぐって何十人も攫われていたのですから」

「世界の科学の頂点を名乗っておきながらこの様。学園都市の威厳にも傷が付くでしょうからね」
「そんなことはどうだっていいだろ……」

結標が皮肉めいた調子で吐いた言葉に、上条は顔をしかめる。

「そのとおり。まずは攫われた人たちを助け出さなければなりません。
 調査は続けられ、外から来たと思われる一人の男を捕えることに成功しました」
「何か喋ったの?」

親船はこくりと肯き、

「正確には喋ったというより、喋らせたのでしょうね。彼はロシア成教の魔術師だと名乗りました。
 ある目的のために、学園都市の優れた研究者が必要なのだそうです」
「ロシアって……ついこの間まで戦争してた相手じゃない?」

結標は訝しげに顔をしかめた。
魔術と関わりのない生活をしていれば、その印象しかないだろう。
そこの宗教団体が絡んでくる理由は戦争がらみだと感じるかもしれない。


「それで、滝壺は結局どこに誰に攫われたんだ?」

上条が先を促す。

「彼が捕らわれた事で、向こうを正体を隠すのをやめました。
 ロシア成教を堂々と名乗って要求を突き付けて来たのです。
 ……滝壺理后を渡せと」

苦しげに語る親船。
そこへ結標が質問を重ねる。

「まさか言うとおりに渡したんじゃないでしょうね?」

なにせ、親船のこの表情である。
学園都市のプライドに掛けてもそんなことはしないと思うが、ついそういう心配をしてしまう。

しかし、わざわざロシア成教の機嫌を損ねないためだけに、
統括理事会が学生を引き渡すような真似はしないだろう。

浜面によれば滝壺はレベル4である。
そんな貴重な人材を、そう簡単に手放したりは

「渡しました。それが統括理事会の決断です」

おおりじかいよ、わたしてしまうとはなさけない!

「どういうことだよ!? 学園都市がロシア相手にそこまでする義理があるのか?」
「何か弱みでも?」
「順を追って話しましょう」

恥入りながらも、冷静にその場を取り仕切る親船。


「もちろん、最初は断りました。『これ以上暴慢な振る舞いをすればこちらも黙っていないぞ』という警告付きで。
 むしろ滝壺理后は絶対に向こうへ渡すまいとして、彼女を『保護』したのです。
 ……それが一週間前」

「浜面の目の前で滝壺が連れてかれたってのはその時か」
「そりゃ学園都市に攫われたと勘違いもするでしょうね」

「しかし、一昨日のことでした……彼らから『第一位を預かった』と通信が来たのです」

「「え!?」」

上条と結標が同時に素っ頓狂な声を上げる。

結標が叫んだのは第一位がそう簡単に他人に捕まる人物ではないと知っているからで、
上条の方は、ついさっきその第一位と携帯電話で連絡を取ったばかりだからだ。

「そんなわけないでしょう!?」
「事実、第一位とはずっと連絡が付きません」
「そういえば、ミサカネットワークが切れて倒れてたかも知れないけど……
 今なら電話に出られるはずだ。俺さっきしたし」
「何ですって?」

証明すべく、上条は一方通行の携帯電話へもう一度電話を掛ける。

コール十回。

毎回待たせる奴だな。



「……出ない……」

なんと、今回は本当に出なかった。

「でしょうね。今はロシア成教の手の内ですから」
「違うんだって。昨日も会ったし……」

どうやら、親船は信用してくれないらしい。
上条は歯がゆい思いをしたが、それくらいの不幸は日常茶飯事である。

「それで、第一位と引き換えに滝壺さんを渡せと言われたというわけ?」

これ以上の問答は無駄だと判断したようで、結標が話を先へ進める。

「はい。 第一位の超能力者と少し珍しい能力の大能力者。
 我々はそれを秤に掛けました」

「統括理事会は基本的には多数決制です。結果、滝壺さんを渡すことに決まりました。
 結局今日まで彼は学園都市に返されていませんが」

情けない、とふいにこぼす親船。

申し訳ないが、上条も同じ感想を抱いた。
隣の結標も同じようだった。

「つまり、一方通行を人質に取られて手も足も出ないのか」
「そりゃあ、彼の体には学園都市の能力開発技術の結晶が満載しているでしょうからね」

殺されるのはともかく、他の組織にいじり回されたら大変なことになる。
親船は事の顛末を語り終え、コーヒーを口へ運ぶ。

「もちろん私は反対でした。しかし統括理事会のルールでは……」
「ふざけんなよ……」
「え……」

しばらくのあいだ、上条さんの説教タイムとなった。


■■■■救助リスト(抜粋)■■■■

===学園都市===
御坂勢力
   御坂美琴         【誘拐】
   妹達(学園都市組)     【解決済】
   妹達(10033-14500)    【解決済:一方通行】
   妹達(14501-20000)    【委託:一方通行】
   白井黒子         【誘拐】
   初春飾利         【誘拐】
   佐天涙子         【誘拐】
   エツァリ         【行方不明】
    ショチトル       【行方不明】

黄泉川家
   黄泉川愛穂        【解決済】
   芳川桔梗         【行方不明】
   一方通行         【拉致:ロシア成教?】
   打ち止め         【解決済】
   番外個体         【解決済】

新生アイテム
   麦野沈利         【解決済】
   浜面仕上         【解決済】
   滝壺理后         【強奪:ロシア成教】
   絹旗最愛         【解決済】

その他
   風斬氷華         【現出不安定】
   スフィンクス       【解決済】
   冥土帰し         【解決済】
   研究者(約150人)     【失踪】


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