上条「誰を助けりゃいいんだよ……」 > 11


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目的の幼稚園はすぐに見つかった。

西洋のお城のような屋根の付いた、カラフルでかわいらしいデザインの建物だった。
裏に回ると廊下側の窓の中が外からでも窺える。

園内を囲むフェンスを辿って進む。

正門の真裏へ回り込むと、そこに人影があった。
ちょうど、お歌とおどりの練習中の教室が見えるあたりだ。


「うふふ……見える見える……」

「あらたかし君、右回りと左回り、間違えないようになったじゃない……」

「ひとし君てば、上手になって……」

「これのために一週間生きてるようなものだわ……」



何かいる。



「む……結標淡希?」
「!」

上条が恐る恐る声を掛けると、フェンスにへばりついていた女が振り返った。

年齢は上条と同じか少し上くらい。
赤みがかった髪を二つに縛っている。

ここまではまだ普通だが、服装は奇抜だった。

どこかの学校の制服に着こなしアレンジを加えまくっている印象だ。
上はピンクのサラシのようなものを胸に巻き、ブレザーを肩にかけただけ。
下はやたら短いスカート。
つまり露出が多い。

妙に扇情的だ。


(本当にミニスカートに縁があるな……ってそれどころじゃない)


上条が結標を観察している間、彼女の方でも上条をじろじろ見ていた。

「貴方誰? 見たところ学園都市の人間のようだけど、また私を狙った連中じゃないでしょうね?」
「俺は上条当麻。お前を助けに来た」
「私を? ……」

「……どっちかっていうと、今は黙って帰ってくれた方が助かるんだけど……」

結標は、踊る園児たちの方をちらりと見て言った。



「――成程。小萌の生徒さん」

事情を説明すると、結標はすんなり納得してくれた。

「小萌には確かに悪いことをしたわ」

「襲われた時に携帯を落としてしまって。
 そのまま逃げ続けていたから連絡が取れなかったの」
「何で襲われたのか分かるか?」

結標は、肩をすくめてふう、と息を吐いた。

「私が狙われたのは、『レムナント』を運び出そうとしていたかららしいわ。
 今じゃもう興味もないけど、彼らは欲しがっていたみたい」

レムナント。壊れた『樹形図の設計者』の破片。
それを使えばまた『樹形図の設計者』を作り上げることができるという代物だ。

しかし、そんなものを魔術師が欲しがるだろうか?

「あれはとっくにバラバラにされているから、私はお役に立てないと言ったんだけどね」
「今も逃げてる最中なのか?」

「ええ。どこへ逃げてもすぐに見つかってしまうの。
 彼ら、どんな能力者を味方につけているのかしら」

結標は首を傾げる。
まさか、魔術師が不思議な呪文で居場所を特定してきているなどとは考えないのだろう。
上条もこの件が魔術師の仕業かどうかは半信半疑だった。

「しかしそんな中でもお遊戯のお稽古は見逃さないとは……」
「悪漢のために生きがいを諦めるというの? 冗談じゃないわ」


上条は、「そうか」とだけ答えた。


「学園都市と交渉したいんだ。力を貸してくれないか?」

追手の影を警戒しつつも、結標に問いかける。
彼女と行動を共にする以上、何かあれば必ず守り抜くつもりだ。

滝壺の件はすでに彼女に話してあった。

結標自身、学園都市そのものにはいい感情を持っていないようで、
都市と対峙すること自体は抵抗がないようだった。

「『窓のないビル』に行きたい。そこで統括理事長と話をつける」
「……案内だけなら構わないけど。上手くいくとは思えないわね」

結標は学園都市の闇を知っている。

「やるだけやるさ」

上条は、少女の目を見て何故かそう思った。

「それじゃあ、ここから歩くよりは私の能力で移動した方が早いわね」
「能力ってどんなの?」
「空間移動系の高度なものよ。対象に触れなくても好きな場所へ移動できるの」

結標は、上条から一歩距離を置いて、言った。

「準備はいい? と言っても、貴方はただ立っていればいいのだけど」
「いや……多分ダメだと思う」
「? 何が?」

「俺の右手には『幻想殺し』ってのが宿ってて、異能の力は全て打ち消しちまうんだ」

それを聞いた結標は、しばらく無言で上条を見つめていた。

「……信じられない。本当に移動しない……」
「と、いうわけだからさ、悪いけどバス停に付き合ってもらえるか」
「それはいいけどね。一つ問題があるわ」
「何?」

結標は呆れたような顔で上条を眺める。

「私の『座標移動』が効かないと、あのビルの中へは入れないわよ」
「えっ」
「……当然でしょう? この能力があるから私が『案内人』に選ばれたのだから」
「……」

二人はしばし立ちつくしていた。




最近電話帳に登録した番号その二。

浜面へ電話を掛けると、当然のように『アイテム』のメンバー達が付いて来た。
仲がいいんだな、と上条は適当な感想を抱く。

もともと、学園都市と交渉したがっていたのは浜面だ。
それに、滝壺は上条よりも彼ら『アイテム』が助け出すべき少女である。
上条が手出しできない以上、ここは彼らに任せるのがいいと思ったのだ。


「案内人捕まえたって!?」
「捕まえたって言うか、助けたって言うか……いや、ただ会っただけだな」

特に追いかけてもいないし危機から救ったわけでもない。
それを思い出し、上条は自らの言葉を訂正した。

「とにかく、この子についていて貰えば、あのビルの中に入れるんだな」

浜面は露出の多い結標を前に目のやり場に困るようで、
どうにか彼女の耳当たりに視線を定めていた。



『窓のないビル』前。

すべての壁に何もないせいでどこがビルの正面なのか分からないが、
とにかく彼らはそのビルの前に集結した。


「統括理事長か……ついにここまで来たわね」
「超長かったです……」
「俺たちのラスボスだよな」

『アイテム』の面々がそれぞれの感慨を口にしている。
彼らの物語はここが最終章ということになるのだろう。

(こいつらもこいつらでドラマがあるんだろうな……俺の物語は半分も進んでないけど)

名前が増えるばかりの救助リストを思い出し、上条は胸のあたりにずしりと重たい物を感じた。



「それじゃあ、結標。頼む」

浜面の言葉に、結標は無言で肯いた。

一度に四人も運べるのか? と上条は思ったが、彼女は平気な顔をしている。

彼らは、『窓のないビル』へと乗り込んで行った。





そして二分で戻って来た。


「!? 早いな?」

思いがけず目の前に現れた四人を見て、上条は後ずさる。

「交渉はどうなったんだ? 滝壺は? ……統括理事長は?」

麦野が舌打ちした。

「いない。アレイスターのクソ野郎、どこかへ消えてやがった」



■■■■救助リスト(抜粋)■■■■

===学園都市===
理事会
new! アレイスター=クロウリー  【失踪】








「どうせこんなこったろうと思ってたよ!」



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