上条「誰を助けりゃいいんだよ……」 > 06


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『ええっ!? ってミサカはミサカは驚嘆の声を上げてみる!』
「うん、まあ……倒れてるというか、落ちてるというか……べちゃっと」
『べちゃ……』

電話の向こうの打ち止めは呻いていた。

『今どこなの? ってミサカはミサカは訊ねてみる』
「第一一学区。でかい倉庫の前だ」
『そんな所までヨシカワを探しに行ったのかな? ってミサカはミサカは疑問に思うんだけど』
「俺に聞かれてもなあ」


とにかく、転がしておくのも不憫である。
上条は一方通行のもとへ歩み寄り、一応生きていることを確認して、
倉庫の鉄扉へ寄りかかるように座らせてやった。

「こいつはミサカネットワークに助けられないと何もできないって聞いたけど、
 これがその状態か……」
『ねえ、番外個体が近くにいるんじゃないかなってミサカはミサカは確認を取ってみたり』
「番外固体って、御坂と同じ顔してるんだろ? それらしいのは見当たらないぞ」
『おかしいなあ……』
「?」
『ヨミカワを探しに行く時にね、ミサカ達は二チームに分かれたの。
 ミサカとヨシカワチーム、一方通行と番外個体チーム。結局ミサカとヨシカワははぐれちゃったんだけどね……。
 ネットワークを切る時に、あの人をお願いって番外個体には伝えておいたけど、やっぱり……』

打ち止めはここで言葉を切った。
そして、小さく呆れたような声を出した。

「やっぱり?」
『やっぱりあの子、放置プレイに目覚めちゃったんだねってミサカはミサカは嘆息してみたり』
「や、やっぱり?」
『あの人の世話を頼んだ時にちょっと危ないかなって思ってたの。
 動けないあの人と二人っきりになったら、もしかしたらそういう道に目覚めちゃうかもって』
「想定の範囲内なのかよ!? どんな奴だよ番外個体……」

予想外のドSの登場に戸惑った上条が大きな声を上げると、
倉庫の扉の向こうで、カタリと人の動く気配がした。


「ねえ……そこに誰かいるの?」

女の声だった。

「な、何だ? 誰だ?」
「ねえ、あなたさ、さっきの奴等じゃないならミサカをここから出してよ。イイコトしてあげるから」

扉の向こうの声が、挑発的に言った。

「え? ミサカって、もしかして……」
『どうしたの? ってミサカはミサカは電話の向こうでコントを繰り広げてる風のあなたに訊ねてみる』
「コントじゃねえよ。鉄の扉の向こうに誰か捕まってるんだ」
『むむ。ちょっとミサカにもよく声を聞かせてってミサカはミサカはねだってみたり』

上条は、携帯電話を扉の方へ向けて、声がよく聞こえるようにしてやった。
倉庫の中の女性は、上条に向けて話しかけ続けている。

「ねー? 開けてってばー」

『番外固体!』

打ち止めが叫んだ。

「最終信号? そこにいる奴、最終信号の知り合い?」

扉の向こうでも叫び声が上がった。

番外個体が、頑丈な倉庫に監禁されている。


上条は、扉を蹴ってみた。

「オラァッ!!」

返事がない。ただの鉄の扉のようだ。


上条は、近くにあった木の棒で扉を叩いてみた。

「オラァッ!!」

返事がない。ただの鉄の扉のようだ。


上条は、扉を揺すってみた。

「オラァッ!!」

返事がない。ただの鉄の扉のようだ。



「…………いいぜ、扉……」


「お前が、うら若い少女を閉じ込めたまま何も感じないって言うなら……」


「そのまま彼女を死なせてもいいっていうなら……」



「まずはそのふざけた蝶番をブチ壊す!!」



上条の、幻想殺しの宿った右手が、重い鉄の扉に突き刺さる。
扉を扉たらしめる、要。
蝶番に向かって。


「オラァ―――ッ!!」




へんじがない。ただのてつのとびらのようだ。





そこへ。
全力で放ったパンチを無視されて項垂れる上条の背後で、空を刺すような音が鳴った。
まるで、宙に向かって槍を振り回すような。

「!?」

上条は振り返り、咄嗟に身をよじった。
直後、上条の頭部があった辺りを、木の杭が貫いていた。

棕櫚のような素材の、長さ三メートルほどの杭が、地面から斜めにこちらへ向かって生えている。

「な、何だ……!?」
「どうかした?」

今の出来事では、大した音は発せられていない。
扉を隔てて向こう側にいる番外個体には、上条が咄嗟に動いた気配くらいしか分からないのだろう。

丁寧に解説してやっている余裕は無い。上条は注意深く辺りを見回した。

時刻は八時を回っている。倉庫街には街灯もなく、辺りは薄暗い。
にもかかわらず、やけに光るものがあった。
人影だ。
暗い景色を切り取るかのように、真っ白に光る人間のような形のものが、
上条の五メートルほど先に現れていた。

能力者か、とも思ったが、「光る」と「杭を生やす」はどう考えても一つの能力ではありえない。
そして、一人の能力者が二つ能力を持つことは無い。
ならば――


「まさか、魔術師!?」
「まじゅちゅしゅィ!? (かみまみた)」
『何があったの? ってミサカはミサカは――』

その瞬間。
上条の手から携帯電話が吹き飛ばされた。
すぐそばにあった木の杭の側面から、新たな杭が生まれ、彼の携帯電話を弾き飛ばしたのだ。

持っていた手にしびれが残る。

「邪魔するなって言いたいのか……?」

白い影は応えない。
上条は、右手で杭を掴んだ。
幻想殺しの力によって、杭は跡形も無く消え去る。

「悪いけど、それならこっちの台詞だ」

たじろぐ影の方へ、上条は一歩進み出る。
しかし、影へは近づけない。後ずさった様子も無いのに、勝手に一定の距離が保たれていた。
そして、杭は二本では無かった。

すぐ後ろの扉から。
地面から。
傍にあったコンテナの側面から。

無数の杭が突如として飛び出してきた。

右腕は一本しかない。一度に消せる杭は一方向にまとまった一束が限度。
上条は横へ跳び、何とか他の襲撃をやり過ごす。

「何だこりゃ!? 無限に生やせるのかよ!?」

異能の力なら何でも打ち消す彼だが、数による暴力は苦手としていた。

上条のこめかみを一筋の汗が滑り落ちた。
白い影は何も言わない。



「ねえゲコ太先生、19090号はまだ治らないの? ってミサカはミサカは訊いてみたり!」
「うん? もう少しだよ? 十秒数えてくれるかい?」
「はーい! ってミサカはミサカはいい返事をしてみる!」


10


「……ッッ!!」

再び、杭の集団が襲ってきた。
消しきれなかった一本が左の二の腕を掠り、浅い傷を付ける。
思わず右手で傷に触れようとしたが、すぐに次の杭が来た。

9

(あいつだ、あの白い影! 多分、あいつに近づければ……)
しかし、影は上条が動くたびに同じ距離だけ同じ方向に動いている。
そもそも、彼は今敵の攻撃を避けるのに精いっぱいで、なかなか思った場所へも移動できないでいた。

8

「一体どうしたの? 何かすごい音がしてるけど、よっぽど激しい[ピーーー]でもしてるわけ?」

番外個体が茶化してくる。事態の深刻さが分からないというよりは、場馴れのせいで平静でいられるようだった。

「番外個体! 扉から離れてろ!!」

離れていてどうなるとも思えないが、上条にできる警告はこれが関の山だった。

7

(くそっ、あいつには近寄れないのか)

避けながら、打ち消しながら、上条は必死で頭を回転させる。

(魔術の事はよく分からない。けど……)
(あんなに沢山でかい物を出し続けられるものなのか?)
(時間が経ったら消えるってわけでもなさそうだし……)

現れた杭は、上条が打ち消した物以外はその場に残り続けている。
辺りは杭だらけになっていた。

6

「うわっ!?」

倒れこもうとした先に、既に杭が生えていた。
右手を突き出し、杭が消えたスペースに体を滑り込ませる。

5

(消しても消してもキリがない!)
(でも、無限だの永遠だの、そんなことを魔術で出来るとは思えない)
(出来るとしても、こんな所でコソコソ監禁なんかやってる奴には無理だと思う)
(だったら、何か秘密があるはず――)

4

新たな杭の出現によって、思考は中断される。

「ぐっ――!?」

右足に。
杭が突き刺さった。

3

がくん、と膝が折れ、その場に崩れ落ちる。
深くはない。しかし立てない。
動き回り続けていた負担と、傷。
彼の右足は悲鳴を上げていた。

(立て! 早くしないと、次が……)

2

白い影が何か動く気配を見せた。
次の攻撃を繰り出すのだろう。
表情も見えないのに、その挙動には余裕が見て取れるようだ。
完全に相手を捕えた、という、優越感。

1

「くそっ! どうしたら――」



「なァーに遊ンでンのかなァ? ……俺も混ぜてくンねェ?」


ミサカネットワーク復旧。

上条が振り返ると、一方通行が起き上っていた。
今更ながらよく串刺しにならなかったものだと感心する。

その感心をよそに。
一方通行は左足を上げ、思い切り地面を踏みつけた。

その足元から爆風が巻き起こる。

風は、魔術の核となる七本の杭と、その他全ての杭と、白い影と、近くに隠れていた魔術師全員を、まとめて吹き飛ばした。
ついでに上条も。

「なんでえええええええぇぇぇ―――――ッ!!」

空の彼方へバイバイキンする上条当麻。


「あ、やっべェ。やっちまった(笑)」




一方通行が吹き飛んだ魔術師と上条を回収して戻って来ると、打ち止めがタクシーで急行してきたところだった。
彼の姿を見つけて駆け寄って来る。


「一方通行ー!! (アイタカッター アイタカッター アイタカッター イエスッ)」←※脳内BGM

「……打ち止め……! (タエーマーナクーソッソグゥアーイーノーナヲォーゥ)」←※脳内BGM

「よかった! 無事だったんだねってミサカはミサカはほっと胸をなでおろしてみる! (キミニィー)」
「当たり前だっつの。俺がそォ簡単にくたばるかよ。核を撃っても死ねェっつってンだろ(エイエーントォヨブコートガー)」

微笑ましい再開をする二人の足元から、上条が口を挟んだ。

「盛り上がってる所悪いんだけど」
「(コトーバーデハーツタエルコトガ)えっ? ンだよ」
「その倉庫の中に番外個体が閉じ込められてるんだ」
「あァ。それを助けるためにここへ来たらミサカネットワークが切断されたンだよ」
「どうやって助ける? この扉、どうしても開かないんだ」

上条の言葉を聞いて、一方通行は呆れたような顔になった。

「こンなモン、ブチ破りゃイイだろォが」


ベコン


上条を散々無視した鉄製の扉を、一方通行はいとも簡単にねじ破って見せた。

上条は、何だか切ない気持になった。




番外個体は考える。
ネットワークは元に戻ったようだが、彼女にとって事態はあまり好転していない。
最終信号の知り合いらしき男は急に音沙汰なくなってしまった。
襲撃者と派手にやり合っていた音がついさっきまで聞こえていたのに、
ひと際大きな轟音が鳴り響いたかと思うと、外は急に静かになってしまったのだ。

「死んだかな? けけっ」

だとすると、彼女を助け出してくれそうな人物の心当たりは、あと一人。
しかし、番外個体は考える。
助けを求めるなどばかげていると。
特に、あの男には。

「別に、あの人に助けてもらいたいなんて思ってないけどね。
 ここから出られるなら誰でも何でも使ってやるってだけだし」

ならばさっさと復旧したネットワークで上位個体にでも救援を求めればいいのだが、
彼女はまだそれをしていなかった。

「も、もうちょっと待ってみようかななんて……
 別にあの人のことはどうでもいいけど、妹達はネットワークが回復したばっかりで大変そうだし」


ベコン

「あ……――?」

奇妙な音を立て、鉄で出来ているはずの扉がぐにゃりと曲がる。
そして、その強引なやり方で道をこじ開けた張本人が、倒れた扉の前に立っていた。


――よォ、待たせたな、番外個体。


番外個体は、考える。
助けを求めるなどばかげていると。
特に、この男には。

しかし、彼は助けに来た。


「……一方通行……」



(ヤッパスッキャネェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン)




↑※脳内BGM




番外個体は無事救出された。
彼女に怪我が無いことを確かめた後、縛り上げた魔術師に問いかける。

「その服装、ローマ正教だよな? イタリアで見た事がある」
「……」

魔術師は何も答えなかった。
上条の問いを聞いた番外個体が怪訝そうな顔をする。

「宗教団体が科学の都市っていうか、ミサカに何の用なワケ?」
「……」

魔術師は五名ほど捕まえたが、誰一人として一言も発しようとしない。
そういう風に訓練されているのだろう。

「おい、番外個体」
「ん?」

一方通行は番外個体に呼びかけ、無言で物影の方を顎でしゃくった。
それで伝わったらしい。
番外個体は「はいよ」と応えて、魔術師二人の首根っこをつかまえて彼が示した方へ引きずって行った。
一方通行も残りを引きずって後へ続いていく。

「どこ行くんだよ?」
「多分、ミサカ達に見せたくないんだと思うってミサカはミサカは推測してみる」
「見せたくないって、何を?」
「ショッキングな拷問風景」

上条と打ち止めがしばらく待っていると、
魔術師たちが連れ去られた方向から、とても可哀想な悲鳴が聞こえて来た。



「お待たせ~。色々お喋りしてきたよ。あは☆」

数分後、非常に晴れやかな表情で戻って来た番外個体が言った。
対して、一方通行は苦い顔をしている。

「妹達が大変なことになってる。
 学園都市組以外はみんなろーませいきょう? っていうのに監禁されてるって」

明らかに楽しんでいる様子で報告する番外個体。

「ローマ正教が妹達を? 何で?」

上条が尋ねると、番外個体は肩をすくめた。

「詳しいことはあいつらにも分かんないみたい。下っ端っぽいしね。ぎゃは」
「あのー……って、ミサカもミサカも割り込んでみたり」
「ん?」

打ち止めが遠慮がちに小さな右手を上げる。

「あのね、番外個体の件が片付いてから相談しようと思ってたんだけど、
 ミサカネットワークが復旧してから、あちこちのミサカ達から緊急信号が来てるの
 ってミサカはミサカは現状報告してみる」
「その妹達は何て?」
「謎の黒服の男達に監禁されてるって」
「つまり、それがローマ正教ってわけか」

しばし話し込む四人。
番外個体たちは他にも、魔術師は19090号のウイルスの事に関しては何も知らなかったこと、
学園都市にはもう他の魔術師は潜入していないことなどを聞き出していた。




しばらくして、一方通行がため息交じりに言った。

「とにかく、世界中に散らばってる妹達が全員捕えられている。それだけ分かりゃ充分だ」
「この人、自分が全員助け出す気みたいだよ。何人いると思ってんだか」
「俺も手伝う」

上条が口を挟むと、一方通行は心底忌々しそうな顔をした。

「何言ってンだ? オマエ。他の心配してろよ」
「でも、」

「確かオマエは言ってたよな?
 禁書目録が必要悪の教会の裏切り者の集団に連れ去られ、
 助けに向かった仲間二人も捕えられて、
 それを助けにいった仲間の集団がまとめて捕虜にされて、
 そいつらに恩のある修道女が犯人たちを説得に行って迷子になって行方不明、
 探しに行ったイギリス清教の部隊が罠にハマって捕獲され、
 一方その頃とある学校ではある教師の家に生徒が遊びに行ったら先生も同居人の女子高生も見当たらず、
 それを探しに行った女子生徒自身も帰って来ないし、
 それを心配して探しに行った男子生徒も帰って来ないし、
 立ち上がって捜索に当たった女子生徒も戻らないし、
 出発前に女子生徒ら相談を受けた黄泉川先生も行方不明になって、
 探しに行った俺達同居人が全員消え、
 しかもその内の二人が妹達で、調査に当たった一万人がいきなり連絡不能になり、
 それを知った超電磁砲が探しに行って何者かに拉致され、
 追いかけて行った風紀委員の後輩とその友達が誘拐され、
 超電磁砲のファンの少年とその義妹がやはり彼女を探しに行って帰って来ず、
 所変わって暗部では新生アイテムの四人が軒並み行方不明、
 スクールの残党が音信不通、
 忍者が二人地味に消えて、
 ついでに最近科学の天使の目撃情報がめっきり減ってるらしいし、
 海を越えてイギリスでは女王と王女三人と騎士団長が正体不明の誰かに拘束され、
 魔術の小組織の四人が消息を絶ち、
 イタリアでは『神の右席』とかいうのの三人が縛りあげられて
 ローマ教皇が何者かに誘拐されて
 ロシアでも修道女が一人忽然と姿を消し、
 エリザリーナ独立国同盟では代表者が出かけたっきりいなくなり、
 あと飼い猫を何日か前から見かけなった
 ンだと」

「うわぁ……何で一発で覚えてんのこの人……」

「片手間に手助けされてもありがた迷惑だ」
「…………」
「ね、この人に任せてあげてってミサカからもお願いしてみる」

一方通行と妹達の間には、少なからぬ因縁がある。
何か思う所があるのだろうと、上条は推測した。

「そうか。頼む」
「オマエに頼まれる筋合いはねェよ」

一方通行は、面倒臭そうに吐き捨てた。



■■■■救助リスト(抜粋)■■■■

===ローマ正教===
   ローマ教皇        【誘拐:忘れてた】


===学園都市===
とある高校
   月詠小萌         【解決済】
    結標淡希        【行方不明】
   姫神秋沙         【行方不明】
   吹寄制理         【解決済】
   青髪ピアス        【行方不明】
   土御門元春        【拉致:謎のキャンピングカー(二回目)】

御坂勢力
   御坂美琴         【誘拐】
   妹達(学園都市組)     【解決済】
   妹達(10033-20000)    【委託:一方通行】
   白井黒子         【誘拐】
   初春飾利         【誘拐】
   佐天涙子         【誘拐】
   エツァリ         【行方不明】
    ショチトル       【行方不明】

黄泉川家
   黄泉川愛穂        【解決済】
   芳川桔梗         【行方不明】
   一方通行         【解決済】
   打ち止め         【解決済】
   番外個体         【解決済】

その他
   風斬氷華         【現出不安定】
   スフィンクス       【解決済】
   カエル顔の医者      【解決済】


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