とある夏雲の座標殺し(ブルーブラッド) > 05


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~第十八学区・結標淡希の部屋~

姫神「(迂闊。寝てしまった)」

6:40分。姫神秋沙は結標淡希のベッドで目を覚ました。

姫神「(小萌先生に似てきたのかも知れない。アラーム無しでも起きれるだなんて)」

むくりと身体を起こす。最終戦争が勃発するまで送っていた規則正しい学校生活は姫神の体内時計を正確に刻ませた。
はたと傍らを見やる。そこにはスウスウと小さな寝息を立て体を丸めて眠る結標淡希の寝姿があった。

姫神「(おへそが見えてる。やっぱり細い。本当にこの中に内臓が入っているのか。人体の不思議。女体の神秘)」

肩紐の外れた丈の短いキャミソール姿の結標の白く括れた細腰を見つめる。
もしかしたらウエストは五十台半ばかそれより僅かに細いか。
あまりの華奢さに同じ女として面白くないが、同時に興味が湧いた。

姫神「(恋人は。いるのかしら。抱き締めたら。壊れてしまいそう)」

何を食べればこんな硝子細工のような曲線の肢体が生まれるのか。
今の所結標から異性の存在を匂わせるものは何者も存在しない。
あのクローゼットの中の嗜好品の内容を鑑みれば無理からぬ話ではあるが。

姫神「(よし。今朝はサーモントーストサンド。略して。S・T・S)」

一瞬、結標の安らかな寝顔にキスしたくなって、止めた。
色気より食い気。石狩鍋に使った鮭の残りを使ったレシピが姫神の脳内を占めていた。



~結標淡希の部屋・寝室~

結標「んっ…姫神…さん?」

11:02分。結標淡希の意識は昼近くなってから覚醒へと向かった。
初夏の熱気が微かに寝汗に混じって汗を滲ませ、寝苦しくなって肌掛け布団を蹴飛ばす。

結標「…行っちゃったのかしら…」

姫神秋沙の姿はベッドから凝らした結標の目から見て影も形もなかった。
どこへ行ってしまったのだろうと僅かに訝り…そこでお酒を飲んだ翌日の寝ぼけた頭が働き始めた。

結標「そうだった…学校に手伝いに行ったんだったわ」

昨夜、眠る前に二人が交わした会話。それは姫神の側からの提案であった。
午前中の間に一切の家事を済ませておくから、家を空けたいと。
夕方には帰って来るから洗濯物も取り込まずにそのままでも構わないとも。

結標「…流石にそんな何でもかんでも押し付けられないわよ…馬鹿ねえ」

サアーッとカーテンを開け放ち窓辺より空を仰ぐ。天気は晴天そのものだ。
もう少ししたら蝉が鳴き出すかも知れない。今年の夏も熱くなりそうだと。
ただ、最終戦争で壊滅した第七学区では流石に常盤台中学の盛夏祭はないだろうし、第十五学区の織女星祭も開催は危ぶまれるかも知れないなとボンヤリ思う。

結標「みんな生きて行くのと自分の事で他の事になんて手が回らないわよ…ん?」

外れた肩紐を直しながらリビングに向かい冷蔵庫から飲み物を取り出そうとすると…ラップのかかったトーストと書き置きが置いてあった。

『お寝坊さんのあわきんへ。A・H』

結標「やだなにこの娘可愛い」

図太くズケズケ言う割に変な所で家庭的で細やかだ。
将来良いお嫁さんになるだろうな、などと思いながら結標はラップされたサーモントーストサンドを取り出し、かじった。

結標「イケる」

恐らく残り物だろうに良くここまで作れる物だと驚嘆に値する。
野菜炒めすら満足に作れない結標からすればまるでお抱えのシェフのようだ。

結標「喉渇いたわね…あった、ジンジャーエール」

昨日の鍋パーティーの最中、買って来た最初のアンカースティームは駄目になってしまったため、買い直したコロナと一緒にしたジンジャーエール。
すると姫神はビールとジンジャーエールを割って飲んでいた。
なんでもシャンディー・ガフというらしい。月詠小萌がそうしていたのを見たと。

結標「ん~…ジカジカする」

一気に呷り、寝起きの渇いた身体を潤す。寝覚めには持ってこいだった。
見やった窓辺の向こうには入道雲と、青空と、瓦礫の王国となった第七学区が遠くに霞んで見えた。

結標「そう言えばコレ飲む猫が出てくる小説なんて言ったっけ」

スタンダールの『赤と黒』の話を振っても理解した姫神なら知っているだろうかと…
結標は吹き込んでくる涼風にはためくカーテンから見上げる景色に思う。
今年はどんな夏になるのだろうと。

結標「そうだ、夏への扉」

ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』だとふと思い出した。
壊れかけた街、変わらぬ夏、自分達は今夏休みの子供のようだと詮無い考えが胸をよぎった。

結標「今日も…暑くなりそうね」

結標淡希と姫神秋沙の奇妙な同居生活、三日目の事である。




~第七学区・旧学舎の園大通り~

姫神「暑い」

マンションを出た姫神秋沙はモノレールで一度第八学区に降り立ち、そこから徒歩で自ら通う高校を目指していた。
学園都市の中心部に当たる第七学区は今や交通網の全てがズタズタであり、重機はおろか道によってはタクシーすら走れないほど破壊的な様相を晒しているからだ。

姫神「えっと。確かこっち。本当に困った。地図が当てにならない。何度来ても真っ直ぐ行けない」

捲れ上がりひび割れたアスファルトが歩みを阻み、倒壊寸前のビルディング群を避けて通り、至る所で光る剥き出しの鉄骨に制服を引っ掛けないようにする。
破れた水道管からスプリンクラーのように赤錆の水が吹き出している。
目印となる建物や施設が軒並み崩壊し、一日経てば廃墟と残骸の墓標が崩落して昨日通れたルートが塞がっている事など珍しくも何ともないのだ。

姫神「私にも。結標さんみたいな能力が。あったら良かったのに」

迂回を続け、人っ子一人いない旧学舎の園の大通りを行く。
何せ柵川中学と風紀委員第一七七支部、常盤台中学と警備員第七三活動支部も全壊しているのだ。
並んでいたお嬢様向けの店のほとんどから用品は姿を消していた。
生きて行くには仕方ないとは言え、さながらスラム街のようだ。

姫神「とりあえず。向こうに着いたら。避難所の手伝い」

第七学区のほとんどの学校が壊滅しており、今や姫神の通う高校は避難所の中核を為している。
当然生徒達も他の学区に移る者、保護者が迎えに来る者、いずれでもなく残る者と混迷を極めている。

姫神「吹寄さん。どうしているだろう。あれから。顔を合わせてない」

姫神の属するクラスでは上条当麻が行方不明に、土御門元春はイギリスに渡ったと小萌から聞いた。昨日だか一昨日、いきなりだったようだ。
青髪ピアスは何やら学園都市側の迎えの者が来たようでそちらにかかりっきりであると。
その事情は避難所で姫神のクラスを束ねている吹寄制理から聞いた。
結標に淹れたルイボスティーは健康志向の彼女が分けてくれた物だ。

姫神「着いた」

そしてあちこちで増え始めた声音を頼りに着いた先…そこは姫神達の通う高校である。
正面から見て校舎の右側が爆撃でも受けたように抉れて消失し、左側は今にも倒壊しそうに傾いでいる。
これが、今の学園都市の現実であり、現状であり。現在である。




~とある高校・警備員・風紀委員仮本営~

黄泉川「わかったじゃんよ。じゃあ2クラス72名そっちの受け入れ体制が整い次第連れて行くじゃん」

小萌「はい、はい、ではこちらにいらっしゃる前にもう一度御一報下さい。今各地で倒壊の危機がありますので、ご家族の方々は一度第八学区まで…」

初春「し、白井さん!またA―32ブロックの炊事場で乱闘騒ぎが!」

白井「またですの!?ああ衣食住足りて礼を知るとはこの事ですの!」

固法「次から次へと舞い込んでくるわね…白井さん、初春さん、次は私が」

喧々囂々の有り様である。教職員は軒並み疲労困憊、風紀委員は過労死寸前である。
残された生徒達に親元が迎えに来るまで、他の学区に受け入れ体制が整うまでとは言え交代要員すら慢性的に不足している。
『ナンバーセブン』ことレベル5第七位削板軍覇率いる全学連のボランティアがいなければ衣食住すら回らない状態である。

白井「申し訳ありません固法先輩お願いいたしますの!初春!今の内に食べてしまいますわよ!」

初春「は、はい!じゃあ私はオニギリを!白井さんはバナナを!」

白井「(先輩が、お姉様が、あの第五位が、初春の懸想する殿方まで奔走しておりますの。腹が減っては戦がなんとやらですの)」

固法美偉は自分達の昼食を取る僅かな時間を作るために自分達以上に疲れているにも関わらず飛び出していった。
レベル5第三位御坂美琴は第七学区の電力全てをほとんど不眠不休で回している。
レベル5第五位『心理掌握』は持てる全ての力を注ぎながら暴発寸前の学生達を押さえ、宥め、空かし、束ねている。
レベル5第二位垣根帝督はその持ち得る能力を用いて各地の倒壊を最小限に防ぎ、流通のパイプラインとライフラインの開拓に最大限勤めているのだから。

白井「(啖呵を切った以上、わたくしに半端はございませんの)」

結標に切った啖呵、それはそのまま白井黒子自身への啖呵でもある。
共に歩む御坂美琴に、渡り合った結標淡希に、そして何より自分自身に――白井黒子は負けたくなかった。





~とある高校・体育館兼避難所~

生徒A「すいませーん!姫神さん来てませんか!?向こうで割れたガラスで腕切っちゃった奴が…医者の先生みんな埋まっちゃっててー!」

姫神「待ってほしい。今。行く」

吹寄「助かるわ姫神さん。ありがとう、本当に戻って来てくれて」

姫神「私こそ。ありがとう。吹寄さん。吹寄さんが。口を利いてくれたから。私にも出来る事が見つかった」

そして、この少女…姫神秋沙も大勢の中の一人である。
『吸血殺し』の副産物である応急処置の手練手管は医者や医療機関、医療物資の不足の中にあって非常に有為であった。

結標淡希の部屋に転がり込むまで避難所からあぶれ各地を転々として腰を据えられずにいたが、腹を決めた姫神の行動は素早かった。
何せ学生達の数が数である。一回の食事、一回の洗濯、需要は莫大であり供給は膨大である。
一人でも多くの手が必要であった。物的資源もさる事ながら人的資源も同様に。

姫神「(みんな。頑張ってる。私も。頑張りたい。一緒に。頑張る)」

大きな能力が使える訳でも、特別な権限がある訳でもない。
でも何もせずにはいられなかった。近い言葉ならそれは衝動であった。
もうハンバーガーをやけ食いしている訳には行かないのだ。

生徒B「ツバつけてりゃ治るってこんな傷…痛たたた!?」

姫神「治らない。ちゃんと。腕を出して欲しい」

生徒C「はいはーい!次オレ!オレ!」

吹寄「並びなさい!それにあなたは擦り傷でしょう!これは遊びでも文化祭でもないのよ!」

姫神秋沙の戦いを始めるために




~第七学区・三九号線木の葉通り~

結標「結局来ちゃったわ…」

一方、結標淡希も朝昼を兼ねた食事を済ませると第七学区まで来てしまった。
座標移動を持つ彼女は遅く起きたにも関わらず、ほとんど姫神が高校に着いたのと同じ時間には辿り着いていた。

結標「馬鹿ね…私に何が出来るって言うの」

昨夜の能力者狩りの現場を目の当たりにし姫神の安否が気になった事、白井の言葉、小萌の笑顔を、姫神の決心に引きずられるように来てしまったが…

結標「私に…何か出来るだなんて思えないわ」

大通りの行く手を阻む横倒しになったビルの瓦礫に腰掛ける。
こんな戦災と天災が一度に暴虐の猛威を振るったかのような場所に…
陽の当たる場所に、暗部にいた自分に何が出来るのかと…

キキィィィー…

「オーライオーライ…はいストップストップー!もうこっからは無理だー!」

「マジかよ…昨日は通れたじゃねえかよ…おーいこの荷物どうすんだー?」

結標「(トレーラー?)」

するとそこへ…瓦礫の山を前にして立ち往生しかけている超大型トレーラーが停車した。
どうやらコンテナを見る限り戦災復興支援の物資のようだ。

「回り道ねえぞ!退かそうにも重機も入らねえ!八方塞がりだ!」

「どうすんだよこれ…このルート以外はタクシーも入らねえのに!ちくしょーあとちょっとなのに」

何棟ものビルがドミノ倒しのように大通りを塞いでいるのだ。
未だに日本国政府からの救援活動を拒否している学園都市にあっては空路すら選べない。
それを結標は見やり…嘆息した。無理だ。

結標「こんなの無理よ…私の力だけじゃどうにもならない…ねえ!そこの作業員の人!」

ボランティアA「ん?なんだお嬢ちゃん。道なら聞かないでくれよ今それどころじゃないんだ」

こんな瓦礫の山をちまちま座標移動させてもきりがないし、何より20トン越えのコンテナもトレーラーも飛ばせない。しかし。

結標「貴方達は能力者じゃないの?私はレベル4なんだけど…なんとかコレ、ならないかしら?」

ボランティアA「悪い…オレ風力系のレベル2なんだ。コイツはレベル0」

作業員B「クソーこんな時まで役立たずか…くそったれ」

結標「…力を合わせて…って無理よね」

三人して瓦礫の山の前で立ち往生する。照りつける初夏の陽射しが、割れたアスファルトを溶かすように降り注ぐ…するとそこへ…

?「為せば成る!為さねば成らぬ何事も!ようは根性だ!!まだ諦める所じゃない!」

結標「!!?」

瓦礫の街に立ち上る逃げ水の向こうから…腹の底から響くような声音でのっしのし歩いて来る…

?「そこで見てろ!オレの根性見せてやる!!」

純白を基調とした学ランを特攻服のように改造し、日章旗をアクセントに仕立てたハチマキ姿の男…

?「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…!」

結標「まさか…コイツ…!」

恐らく、今や学園都市広告塔たる御坂美琴と互角の知名度を誇る超能力者(レベル5)
その無軌道かつ非常識が服を歩いているような力の全てを戦災復興支援に費やしていると言われる男…その名は

削板「念  動  砲  弾  (  す  ご  い  パ  ー  ン  チ  )!  !  !」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

ボランティアA「削板さぁぁぁぁぁぁん!!!」

ボランティアB「軍覇さぁぁぁぁぁぁん!!!」

結標「なにこの空気」

ミサイルでも叩き込んだような爆発と威力に極彩色の爆煙と共に、行く手を阻む瓦礫の山と廃ビルの林を木っ端微塵に粉砕したその男の名は

削板「諦めは“言”の“帝”だ!!なら言葉より行動と根性だ!!そうだろう!?」

愛と根性をこよなく愛する嵐を呼ぶ漢…レベル5第七位『ナンバーセブン』…削板軍覇であった。
ボランティアA「ありがとうございます削板さん!ご苦労様ッス!」

ボランティアB「ごっつぁんでした軍覇さん!お疲れ様ッス!」

削板「よし行けお前ら!物資を頼んだぞ!!気合い入れてけ!根性出せ!」

結標「(…何よこのノリ…)」

削板がコンクリートとアスファルトを豆腐をハンマーど横殴りするように切り開いた道を、トレーラーが走って行く。呆然とする結標と、フンフンと三三七拍子で見送る削板を残して。

結標「ねえ貴方…さっきのアレなに?」

削板「?なにを言ってるんだ。根性に決まってるだろう」

結標「根性でどうにかなるレベルじゃないわよ!?」

削板「一応レベル5だからな!後は根性と根性と根性だ」

結標「貴方根性って入れないと話せないの!?何回根性って言ってるのよ?!」

削板「8回だ。撤去作業にかかる費用と人員を学園都市が外部の人間を借り入れてまですると思うか?国庫からの支援すら拒否するに違いないぞ。時間も機材も足らんのらなら根性しかないだろう。自分達でどうにかせにゃならん!」

結標「意外に理知的!?」

姫神といい削板というある種『原石』とは皆天然なのかと結標は突っ込みが追いつかない相手に溜め息をついた。
馬鹿ではない。しかし利口ではない。今まで会って来た男達のどれとも違う。

削板「自己紹介がまだだったな!俺は軍覇、削板軍覇だ!握手!」

結標「あ、淡希…結標淡希よ…よっ、よろしく」

意外に求められた握手は普通だった。あれだけの破壊をやってのけながら。そんな感想を結標が抱いた時、削板はまた違った印象を抱いたようで。

削板「そうか!ところでお前はこんな所で何をしてるんだ?避難民の学生か?それともボランティアのメンバーか?」

結標「わ、私は…」

なんと伝えれば良いのだ。焼け出された学生でもなければボランティアにもなれない。それどころか何をして良いかすらわからない元暗部…そんな結標の迷いを

削板「お前、能力とレベルは?」

結標「空間移動…レベル4」

削板「そうか!ならちょうどいい!手伝って欲しい事があるんだが聞いてくれ!」

結標「えっ!?ちょっ、ちょっと!」

削板「時間ばかりは根性じゃどうにもならんから歩きながら話す!うおおおー!」

削板軍覇は見抜いていた。そして握手した手をそのままに結標を引っ張って行った。




~とある高校・ボランティア詰め所~

削板「という訳だ!!今日からお前には“案内人”になってもらいたい!!」

姫神「これは。どういう事」

結標「私に聞かないで…この人、人の話聞かないのよ」

小萌「結標ちゃん…先生からもお願いしたいのですよー…ボランティア(自主性)の主旨から少し離れてしまうのですけど」

結標は引っ張って行かれた先であるボランティア詰め所で打ち合わせしていた小萌と姫神と再会した。
そこで紹介がてら任命されたのは…未だ各所で崩落の危険性のある第七学区から、学生達を安全な第八学区へと誘導する『案内人』である。

削板「いや。コイツはここ(第七学区)まで自分の足で来た。誰に言われた訳でもなく!迷いながらも自分の出来る事を探して迷っていた目だ!!それにコイツは――根性が、ありそうだ」

結標「………………」

削板の眼力は正しかった。結標自身迷いの最中にあり、悩みながらも第七学区まで来た。
そして…ある意味ではレベル5として、学園都市の闇を見てきた。そして結標からその匂いを感じ取った上で…連れて来たのだ。

白井『“この後”どうするかではありませんの。“この先”どうするかですの』

結標は反芻する。白井黒子の言葉を。

白井『あと数メートル長く飛べ駆けつけられたなら、あと数キロ重く人を抱えられたならと…』

結標は想起する。白井黒子の表情を。

結標「(ふー…)」

小萌は大人として戦い、姫神は子供として闘い、削板はレベル5として。

結標「(もう疲れたわ…ウジウジウジウジウジウジ悩むのに)」

ならば――結標淡希は何を為すべきか。その力で。レベル4座標移動の能力で。

結標「(もうウンザリなのよ…あなた達みたいに眩しい人達の中にいるのが)」

瓦礫の山はもう見飽きた。闇の底はもう見飽きた。


――歩き出そう。座標移動ではない自分の足で――


結標「私は―――」

答えはもう、決まっていた。
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