佐天「時を止める能力……」 > 13


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──十月九日──

死角というものがある。
この学園都市には沢山の死角と呼ばれるものが存在する。

例えば路地裏。
そんな路地裏を走る少女が一人と仮面を被った黒いスーツの男が一人。


佐天「ぜぇ……はぁはぁ……」ダッ

佐天「(一体どうしてこんな事に──)」

佐天「くっ……、振り切れない──」


男「止まっていただけませんか?佐天涙子。私は貴女に危害を加えるつもりはありません」

男「話をしましょう」キィン


かすかに聞こえたキィン、という音はあの男の武器である学園都市製の銃声だろうか
佐天涙子の足元でコンクリートが弾ける音がした。


佐天「そんなモノ使っておいて信じられるわけないです!!」

佐天「(逃げなきゃ……、とりあえず路地裏から出ないと──)」

タッタッタ、と一定のリズムを刻みながら路地裏を抜けようと走る。
しかし中学生の足の長さでは男の、それも成人してるであろう男との距離を離す事が出来ない。


男「別に取って食おうって訳じゃないんだからさ」

男「なぁ?【無能力者】の佐天涙子ちゃん」

佐天「くっ……」


この男の目的は一体なんだ?
恐らく学園都市の人間だろうが、捕まったらマズイという予感だけはする。

あたしを無能力者という、この男に能力を使ってもいいものなのか……。


佐天「(くっ……、使えない──少なくともこの状況じゃ!!)」

佐天「(確かこの先にコンサート前広場があるはず!)」

佐天「(人が沢山いれば──!)」ダッ

 

 

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コンサート前広場は予想以上の人の多さだった。
どうやら統括理事会の野外講演をしているようだが
ざっと見渡しても2~300人は居る。


佐天「……、ここならあの男もあたしを見失うだろうし」

佐天「この人の多さであたしに危害はくわえないで──」


ガチリ
背中に冷たい鉄の硬い感触。


男「この人の多さなら貴方を撃ち殺しても楽々逃げられますよ」

男「さぁ、そのままゆっくり歩きなさい」


人が多く居るこの場所なら仮面を被った男は目立つと思ったのだが
背後の声がクリアに聞こえる為、どうやら仮面ははずしているようだ。


佐天「…………」

佐天「……楽々逃げ切れる、ですか」

男「?早く歩きなさ────」


ドォ────z____ン!!



佐天「暫く止まっててください」ピト


念のために振り返りスーツの男の手に触れ、男の時間を少し静止させてからその場を離れる。
スーツの男の顔は逆光でよく見えなかった。

男「!? 何!?目の前に居た筈──」

男「何処にも居ないだと?……」

男「クッ……逃げたとしたならば、もうここには居ないでしょう」タッ




佐天「行ったかぁ……つっかれた……」

佐天「どうして、こんなことになったのよ!」



それは今朝まで遡る。

病院で目覚めた佐天涙子は帰りの支度をし、妹達に挨拶をしてそのまま帰る筈だった。
だが、見かけてしまった。

──ビルからビルへ飛んでいく真っ白な悪魔を。

佐天「あれは……!?一方通行?」

佐天「どうしてこんな所に──」ダッ

佐天「悲劇が起こる前に……!追いかけないと──」タッタッタ



一方通行を追いかけてビルとビルの隙間である路地裏へと足を運ぶ。
なぜかそこに現れた黒いスーツの男。

そして現在に至るという訳である。

──以上回想終わり──


佐天「これで諦めてくれると良いんだけど……」

佐天「でも、そんな上手くいくかなぁ……?」

人ごみにまぎれている佐天涙子であったが、内心不安でいっぱいである。
いくら時を静止、遅く出来るからといっても銃等でいきなり撃たれたらどうしようもない。
わぁ、という拍手や歓声が辺りを包んでいる。


その音に紛れて、ベコッ、ベコッという何かがへこむような音がするのを聞き逃さなかった。


佐天「!?何……?今のは────」


辺りを見回していると、ゴバッ!!という音と共にコンサートホール前広場の一角が爆発した。
天高く上る黒い煙と、火の手があがる。
その爆発に壇上で演説をしていた初老の女性は身をかがめ、護衛の人間に囲まれながら壇上を降りていく。


そして、黒い煙の中に──

 

──真っ白な悪魔が居た

 

 

佐天「一方通行!!今度は一体何を企んですか!!」

一方通行「……、はァ?関係ねェんだよテメェには」

佐天「こんな所で爆発を起こして関係ないですって!?」

佐天「また悲劇を起こそうってのなら、あたしが止めてやります!」

一方通行「──ハッ、面白ェ冗談だな。まァ相手してやってもいいンだがよォ」

一方通行「生憎こっちは忙しいンだ、失せろ三下」

佐天「……断ります」

一方通行「──。これはテメェら表の人間がしゃしゃり出る問題じゃねェンだよ」ヒュッ


佐天涙子を目掛けて
否わざと佐天涙子を避けるように一方通行は小石をベクトル変換し、蹴飛ばす。
しかし、佐天涙子はその自身を避けるように飛ぶ小石を左手で────

ガギン、と小石は一方通行の足元へ。


一方通行「!?(弾き飛ばした?いや、これは──)」

佐天「【反射】が貴方だけのモノだと思ったら大違いですよ」キッ

一方通行「…………」

佐天「…………」


睨みあう両者の思考は──ある者によって吹き飛ばされた。



打ち止め「あー!!『あの人』だっ!ってミサカはミサカは駆け寄ってみたり」


佐天&一方通行「「打ち止め(ちゃん)?」」

 

佐天「ん?……どうして貴方が打ち止めちゃんの事を──」

一方通行「チィ!!おいそこの三下ァ!!そのガキを頼むぞ」ヒュン


脚力のベクトルを操作したのか
高く飛び上がった一方通行はどこかへ消える。


打ち止め「行っちゃった……ってミサカはミサカは久しぶりに会えたあの人を見失って落ち込んでみたり」

初春「アホ毛ちゃーん!!いきなり走り出して──って」

佐天「初春!?」

初春「佐天さん!?」
 

 

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佐天「……、打ち止めちゃん──どういう事か説明お願いできるかな?」

打ち止め「あ、えっと……、その──隠していた訳じゃないんだけどってミサカはミサカは──」

佐天「あーっと……説明頼んでおいてあれなんだけど、今度でいいかな?」


爆発の影響だろう、コンサート広場にいた人々が散り散りに逃げていく。
その逃げていく人々の群れの中に、一人の男が立っている。
先ほどの爆破で勘付かれたのか、佐天涙子を追っていたスーツの男。


打ち止め「え?ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

佐天「うん、ごめんね。初春も打ち止めちゃんの事頼むね」

初春「さ、佐天さん?少し前から何か変ですよ……?また怪我するような──」

佐天「──ごめん。いってくる」タッタッタ

初春「あ……」



『いってらっしゃい佐天さん……』
 

スーツの男は、佐天涙子が一人で向かってくるのを確認した後
スタスタと人気の無い所へ歩いていく。
付いて来い、という事だろう そのくらい佐天涙子でも分かった。

ただ──


佐天「許せない事が一つあるんですよね」スタスタ


許せないこと。
銃を持ちあたしを追いかけたことは別にいい。
人ごみに紛れあたしに銃を押し付けた事も、まだいい。

人々が逃げていく中【初春と打ち止め】に銃口が向けられていた事
友達に向けて、銃口を向けた事が何より許せなかった。

ズカズカと、多少の怒りを晴らすように歩く佐天涙子であった。
前を歩いていた男が人気の無いところ、人気の無いところへと誘い、そして

寂れた広場、のような場所だった。
広場の中央にあるベンチに仮面を被ったスーツの男が座っている。

男「話をしましょう?佐天涙子さん」

佐天「……、人の友達に銃向けておいて、まず言うことがあるんじゃないんですか!」

男「はて?これからお話しすること以外に貴女に言うべきことは──」

男「冗談ですよ冗談。ですからそんな怖い顔をしないでください」

佐天「──……。」

佐天「それで、話ってなんですか?」

男「なに、単純なお話ですよ佐天涙子さん」




男「学園都市の暗部組織である『スクール』に入りませんか?」




佐天「へ?あんぶそしき……?スクール……?」

男「そうです、貴女にはそこで働いてもらおうかと思いまして」

男「活動内容はですね、まぁ学園都市に仇なす者や組織を殺したり壊したりですかね」


この男は何を、言っている。
学園都市に仇なす者や組織を殺す?

確かに学園都市について最近不信感を抱くようになった。
だけど、そんな……。

佐天「そ、そんな組織に入るわけが──」

男「『打ち止め』『ミサカ検体番号一三〇七二号』『初春飾利』」

佐天「!!──あ、な……」

男「別に彼女らを取って食おうって訳じゃありませんので、そんな顔をしないでください」ニコニコ

男「佐天涙子さん貴女が働いてくれれば、ね」

男「それに、知りたくはありませんか?この学園都市の事を」
 

 

 

 

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       例えば、『絶対能力進化』について

       例えば、こないだ現出した『ヒューズ=カザキリ』について

       例えば、『これから起こる出来事』について、とか。

       例えば──そう、『ドラゴン』とかね

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佐天「あ……、う……。」


男「さぁ、私の手を取って『スクール』の一員になりましょう」


佐天「い……、嫌っ!!」

男「!!」

佐天「あたしは!!自分が正しいと思ったことを信じるって決めてるの!」

男「あなたのお友達の『初春飾利』さんがどうなっても?」

佐天「そんなもの!!」

 

 

 

 

 


 『守るに決まってるじゃないですか!!』


 

 

 

 

男「そうですか、残念です」ピ


仮面の男が懐から取り出したスイッチを押した。
寂れた広場に、1機の無人攻撃ヘリが到着する。

最新鋭のHsAFH-11、通称『六枚羽』

その六枚羽は佐天涙子を敵性と判断し即座に自動攻撃に入る。
六枚羽の機銃が唸りを上げた。

掃射というより爆破といったほうが正しいのかもしれない。
寂れた公園がオレンジ色の輝きに侵食された。



男「……、まぁ私はホログラムなんで熱くも寒くも痛くも痒くもありませんけどね」

男「しかし良かったのでしょうか?『佐天涙子が組織に所属しなければ殺害してもよい』なんて」

男「統括理事長の考えは私では理解できませんね」

男「さて、残ってればの話ですが……死体を確認しますか」

「死体なんて、ありませんよ」


男「なっ!?そんな馬鹿な────」


今なおオレンジ色の炎に包まれた寂れた広場に
傷一つも無い佐天涙子が立っている。

ゆっくりと、待機させてあった六枚羽に近づいた彼女は左手で六枚羽をつかみ──
六枚羽は止まった。


「ねぇ、その統括理事長にさ……」

「あたしの大切な人達を傷つけることは許さないって伝えてくれない?」
 

 

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男「くっ、何なんですかあの化物は──ッ!!」

男「まさか六枚羽を壊されるとはッ!!」

男「──、幸いにも機能が停止しているだけなので修理は出来るでしょうが……」

   PiPiPiPi

男「は、はいっ!!此方スクールの【 】ですが」

  『ふ、その様子では任務失敗といったところか?』

男「統括理事長!?あ、その……す、すぐに部隊を向かわせ──」

  『必要ない。たった今“ドラゴン”が向かった』ブッ

男「は、はは……」


終わった。
ドラゴンが動いた、もうそれだけで十二分だろう。

 

 

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佐天「ぜっ……、はぁはぁ……時間遅延しながら走るのは体力が……」

佐天「(早く初春と打ち止めちゃんの所へ)」ダッ

佐天「学園都市は、信用できない──!!」


『──ふむ。何の面白味も無いhg黒shytだな』



佐天涙子は走るのを中断せざるを得なかった。
突如目の前に現れたモノによって。


金色の長い髪
光り輝くような長身と、その肢体を包むゆったりとした白い布の装束
正確な性別など判別できないが、外見の見た目だけなら女性に見える。

喜怒哀楽の全てがあり
それでいて人の持つ感情とは明らかに異質なものを根幹に秘めた極めてフラットな顔つき

佐天「──!!うっ……」

  『自己紹介をしようドラゴンなどと呼ぶものが居るが、より一層私を表現するなら以下のような単語を選ぶべきか』


  「エイワス、と」


佐天「エイ、ワス──」

エイワス「君のアビニョンでの発現に一定の価値を認めて、ちょっと興味が沸いたのでね」

佐天「なぜそれを──」


苦しい。
目の前の本物の化物に胸を圧迫されるようなそんな感覚。
左腕が、ざわざわする。


エイワス「それは私の力にお前のhg黒shytが反応しているからだ」

佐天「──!!」ピキ

エイワス「やはりアレイスター……。発現させるにはこの個体では未熟すぎだな」

佐天「────────」サァ

先ほどまで【人間】だった佐天涙子が【化物】へと変化していく。
アビニョンの時と同じ、真っ赤な瞳、流れる涙、透明な輪、鈍色の羽根に包まれた左腕。


エイワス「その程度ではダメだ。まだまだhjyt足khfgない」

エイワス「それでは中途半端だ。中途半端にオシリスとホルスのrsg力nopheだ」

佐天「────────」


ギシ、ギシと、どこか機械めいた音を立てる佐天涙子の
“左肩から小さくて真っ白な羽が一つ生えた”
小さな羽は、左腕を覆っていた羽根を吸収するかのように取り込み大きく成長していく。

ある程度の大きさまで成長すると、突然その羽はエイワスへ向けて振り下ろされた。


佐天「────────ァ!!」


音は、無かった。
ただ光だけが爆発的に生まれたように思えた。

光で真っ白だった世界が、学園都市の世界へと戻っていく。

 

  「まぁまぁ、ってところかな」





佐天「うっ……」

エイワス「私の力に反応したとはいえ、まぁまぁだったぞ若きhg黒shytよ」

佐天「あ、ああ……」

エイワス「ふむ、やはりhg黒shytの力に個体の方が耐えられないか」

エイワス「この成熟度では到底アレイスターの計画には使えまい、が」

佐天「…………」

エイワス「hg黒shytの発現はアレイスターにとってもイレギュラーの筈」

エイワス「幻想殺しや一方通行と違い、あの計画を壊すことが出来るのは、もしかしたら君なのかもな」

エイワス「では一先ずお別れだな、佐天涙子」






     「──汝の欲する所を為せ。それが汝の法とならん、か」

 

 

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あたしは一体何をしているのだろうか。
ああ、判らない。

ただ全身の皮膚が少しずつ剥がされていくような痛みがある。
痛い、と声を上げることすら出来ないほどの痛みの中であたしは這っていた。

友達のもとへ。


不思議と彼女の場所は判る。
あぁ……、友達が怪我をしている。


佐天「う……いはる……」

初春「!?……佐……天さ……」





   『おかえりなさい、佐天さん』





折り重なるように倒れた二人の少女は病院へ運ばれた。

 

 

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レッサー「『新たなる光』が4人というのは少々情報が古いですよー」

上条「あぁ?何を言って──」

レッサー「ついこないだ、新入りが入ったんですよ」




レッサー「ね?佐天涙子ちゃん」


ゆらり、と今まで何処に隠れていたのか判らないが
黒髪の少女が一人現れた。


佐天「久しぶりですね、当麻さんとお姉さん」





佐天「当麻さんがイギリスを救おうだなんて、幻想を抱いているなら」

佐天「このあたしが止めてみせましょう」

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