佐天「…アイテム?」6


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あらすじ
仕事に慣れてきた佐天は今日も雑務のマネーカード拾い。
一緒にカードを拾っていた美琴は帰り際にスキルアウトに絡まれている少女(布束)を見つける。

彼女から聞かされた話によると美琴のクローンが作られているとか。

数日後、実際美琴はクローン(9982号)を目撃する。
そしてそのクローンは夜、学園都市第一位の男、一方通行との戦闘に赴く。

美琴はそれを目撃する…?





そんな一方通行がジャリ、ジャリ…と線路の石の上を歩いて9982号に向かってくる。


「(目的地への誘導に成功しました)」


かすれるような小さな声で9982号がつぶやく。
そのつぶやきがまだ良い終わらぬうちに付近の地面が爆発する。


切り札の対戦車地雷だ。


(吹き飛べ、第一位)



ベアリングを混入した高性能火薬を用いたかなりの破壊力を秘めた地雷だ。
米軍の正式採用タンク、エイブラムスクラスなら軽くふき飛ばす程の大型地雷が炸裂する。





ドゴォォォン…!





爆煙が巻き上がる。


(終わった…?)


9982号が爆煙を見つめる。


9982号が爆煙を見つめる。
「目標…沈黙…?」


じっと爆煙を見つめる。もう動ける体力など殆ど残っていない。
体の至る所が痛い。


(早く治療しなければ…ミサカはかなりヤバい…状況ですね…そーいえば、救急車なんてきてくれるんですかね…?)

怪我の治療の事をふと考えたその時。



ボヒュ…


煙の中から一方通行が飛び出してきた。
電光石火の勢いで9982号の脚を鷲づかみにすると軽く引っ張る。


ぶちブチ ボギャ


「あは…ぎゃっは…脆れェなァ…!」


「――――――――――!!」


声にならない叫びが木霊する。
9982号の脚が太ももの上の部分から引きちぎられた。


一方通行は引きちぎった脚からしたたり落ちる血をぺろりとなめる。


「まじィ…クローンの血はまじィなァ…腹の足しにもなンねェ…」


「…クッ!」


9982号は最後の力を振り絞った電撃を浴びせるが、それも反射して自分に当たる。
即座に勝てないと判断した彼女はとぼとぼと残された一本の足を引きずってイモムシの様に前進する。


「…く…は…ひ…ぐぐ…」


彼女は喋れるような精神状態ではない。
自分の体液が目の前の得体のしれない人物にのまれ、理不尽にその綺麗な脚を引きちぎられることは犯される事と同じ位に屈辱にまみれることだろう。
彼女は一本の脚と二本の手で逃げようとするが…落し物をした事に気付く。

美琴からもらった缶バッチだ。



「オイオイ…そっちは行き止まりだぜェ?逃げねェのかァ?」
(ったく逃げる奴をなぶる方がおもれェのになァ…この手の相手は…クカカ、それともこの状態のコイツを犯すか…ヒャハ…悪くねェ…)


「ハァはぁ…ハァ…」


9982号はいつの間にか外れていた缶バッチを拾おうと思い、行き止まりの方へと歩をすすめる。


「ふーンそのバッチ、大事なもンなのか?」


「アナタに答える義理はありません」


「あー、そォ。なンか同じ女何回犯してるかわかンねェケド…オマエはやっぱ良いや、なんか脚ねェし…クカカ」
(犯す話はなし。もういーや)


「…そうですか。では早く殺して下さい」


「いわれなくとも」


ぽいっとまるで何かを投げ捨てるような感じで一方通行は線路の測定調整車を投擲する。
その車輌はゆうに一トンを越える。


ドゴンという炸裂音の中に僅かながらプチっと生ものがつぶれるような音が聞こえる。



「本日の実験、終了ォー☆」


白い悪魔は口元だけ不気味に歪ませ、数十分の戦いを締めくくる一言をはいた。




一方通行の実験を近くの高架鉄橋で見ていた美琴。

(な…ちょ…え?)


目の前で繰り広げられる凄惨な光景を直視していた彼女はしかし次の瞬間、一方通行が9982号の血を舐める光景を目にする。


「う…お…オエ…」


美琴は高架におう吐する。
だが、ここで座していてはいたずらに自分のクローンが死ぬだけだ。




自分とうり二つな人が死にかけている。
そんな光景を目の前で見た事がある人はいるだろうか。恐らく居ないだろう。
世界にただ一人、御坂美琴を覗いて。



ドガァアアアアアアアアアン


爆音が響き渡る。
一方通行の投擲した車列が片足をもがれ、真っ白な骨をむき出しにした美琴のクローンに投擲されたのだ。


最後に見えた光景――それはクローンが大切そうに、本当に大切そうに缶バッチを握りしめた光景だった。




「―――――――――!」


自分でも何を言ったかよく覚えていない。
9982号は車両の下敷きになった。おそらく生きてはいないだろう。



(…なん…てことを…!)


美琴は雄々しく、勇敢に一方通行に立ち向かっていった。


彼女の目に狂いがなければ、9982号は確かに缶バッチを大切に握りしめながら死んでいった。
彼女はその光景をまざまざと見た。理性を保てるはずがなかった。


胸の内に沸く憎しみ、憎悪、混乱…。
あらゆる感情を内包した彼女は一方通行に全身全霊の攻撃を仕掛けた…。



砂鉄の嵐、線路の枕木を外した鉄による殴打、そして最強を誇る…と信じていた超電磁砲を放つ。



「クカカ…足りねェ足りねェ…小さすぎるぜェ…第三位…」


「…はぁ…はぁ…化け…もの…め!」


「最後の…コインぶっ放すヤツ…あれが切り札っぽい感じだったが…ひゃひゃひゃ…全く効いてませェン」


美琴の攻撃を全て立ちつくすだけで、受け流した、否、反射した男。
その男は禍々しく美琴を嗤う。


彼はすたすたと美琴に歩いて来た。


「いっつもいっつもお世話になってンぜ?お前のクローンにはよ」


はぁはぁ、と肩で呼吸する美琴の隣にゆっくりと一方通行が歩いてくる。


「オレの名は…」


「一方通行だ…」



「よろしくゥ」


美琴はすとん、と腰を抜かしてしまった。
そして戦場となった操車場の事後処理をする妹達が現れる。




――八月十六日

美琴は多摩センターの駅前で座っていた。
目からは全く生気が感じられない。


それもそのはず。
彼女は昨夜二十一時から始まった、第九九八二回目の実験を目撃し、介入し、敗北したから。


「ベンチで夜明かししている少女がいると思ったらあなただったのね」


目の下に大きなくまを作った美琴はおもむろに顔を上げる。
そこには数日前に雑居ビルで遭遇したギョロ目の女。布束砥信がいた。


「その様子だと…計画を知ってしまった様ね…」


「あなたには止めるすべがないから関わらない方が良と言ったのに…」


「…何であなたはこの実験に加担して居たのにマネーカードをばらまいていたの?」


布束が妹達の量産計画に加担していた事はPDA端末ファイルで入手した情報で美琴は既に知っている。
しかし、そんな彼女が何故、量産計画の延長に当たるこのレベル6シフト計画を妨害しているか美琴には分からなかった。


「世界とは…こんなにもまぶしいものだったのですね」


「は?」


「以前ラボの屋上から外の景色を見せた時、あの子が言った言葉よ」


「…そう」



布束が以前妹達量産計画が凍結して一度研究チームから外れた際、布束と妹達の一人は施設の屋上から街の風景を見た。
その時に妹達の一人が発した言葉。その一言が布束の心を揺さぶった。


「あの時から私は彼女達を作り物とは思えなくなったわ」


「あなたは彼女(クローン)達の事をどう思ってるの?」


布束は美琴に問いかける。
彼女は体育座りをしたまま黙っていたが、やがて顔を上げる。


「私は…クローンを人間としてなんてみれない…」


「でも…人のDNAマップをくだらない実験に使っている奴らを見過ごすことは出来ないわ」


「私が撒いた種だもの。自分の手で片をつけるわ」


美琴はそう言うと重い腰を上げる。
目の下に出来たくまと、この狂った学園都市の闇に対する負の感情が彼女を起き上がらせる。


「研究関連施設は20をくだらないわよ?一人でやるつもり?」


「私を誰だと思ってるの?」


美琴は後ろから聞こえる布束の声に振り向き、答える。




「常盤台のレベル5、最強のエレクトロマスターよ」





美琴はそう言うとふらふらした足取りでその場を後にした。
一方通行に勝てない事は昨夜の戦いであっけなく証明されてしまった。


ならば研究に関連している施設を吹き飛ばすしかない。
施設を吹き飛ばしてこれ以上の犠牲者が出なければそれで良い。




美琴は街の雑踏に消えていった。
その後姿は彼女を知る人が見たならば、まるで他人に見えるだろう。
幽鬼の乗り移ったような彼女のうつろな表情はどこか妖艶な、しかし、妖刀の様な雰囲気をはらんでいた。




――佐天の学生寮 八月十九日(美琴が一方通行の事件を目撃してから四日後)

「じゃ、また明日ね、初春、白井さん」


「はい、また明日ー佐天さん、白井さん」




佐天は夏休みまっさかりと言うことで初春や白井と第二十二学区の地下街で遊んでいた。


当初は美琴がいないのがいやだ、なんだ、と言っていた白井は結局来た。
だったが遊び始めるとわいわいと騒いでいたので、一応楽しんでいたのだろう。


美琴はなんだか最近とりつく島がない、との白井談。なにやら緊急事態だろうか?
白井に聞くところによれば、何でもここ最近寮の方にも戻っていない、との事。



(御坂さん、最近どうしたんだろう?)



佐天は美琴の事をぼんやりと考えながら日焼け対策の水スプレーを肌に振りかける。


(何かあったのかな…?)


ういーん…ういーん…


(お、きたきた)



電話の女。


アイテムのメンバーからはそう呼ばれる様になった。
興味本位でやり始めたこの電話をする仕事に彼女は最近慣れはじめていた。


いや、“慣れている”…少し語弊があるかもしれない。
八月の第一週に人材派遣の勧誘で始めたこの仕事。


初めて死者が出た―フレンダが射殺した―品雨大学の一件。
そこから何件かの依頼が佐天の携帯電話に入ってきた。


送信者はすべて学園都市治安維持機関とかいう所から。
仕事の依頼を出し、報告が来るときに記載される任務の詳細。


死傷者の数や捕獲した兵器やサンプル資料。
佐天が必ず目を通すのは死傷者の項目だった。


事後処理として下部組織が詳細をまとめた報告書を送ってきたり、アイテム自身が報告書を送ってくる事もある(こちらはかなり大雑把な感じだが)。
これらの報告書を佐天は学園都市治安維持機関に転送するのだ。
かなり大雑把な報告書でもいいので、おそらく治安維持機関は任務させ完遂すればいいのだろう。


ここ最近は二日に一回、佐天の携帯に仕事が舞い込んで来る。
それを彼女はアイテムに伝達する。


佐天は任務が終了して送られてくる報告書を軽く流し読みすると治安維持機関に報告する。
彼女自体、その機関がなんなのかよく把握していないが、恐らく風紀委員や警備員とはまた別の組織なのだろうと勝手に推察する。


(ふーん…昨日の仕事…あ、二人死んだんだ)


フレンダの中距離射撃で一名死亡、絹旗の投擲した車に押しつぶされて一名死亡


初めて品雨大学の教授が死んだ報告書を受け取ったとき、佐天は謝罪の念に駆られた。
人の人生を奪ってしまったから。


しかし、今ではその死傷者の報告はただの数字と化し、彼女の興味をそそるまでには到らなくなっていた。
一人殺せば殺人者だが、百人を殺せば英雄である、というチャップリンの言葉はまさしく的を得ていた。


人を殺すことはもちろん重罪だ。
しかし、その人が何かしらに違反しているのだ、佐天はそういう人物を斃していると、自分に言い聞かせてこの仕事をこなしていた。
いや、もはやそれすら辞めて、ただ任務を通達しているだけなのかもしれない。



『えー続いてニュースです』


佐天がテレビをポチッとつける。


『品雨大学の研究棟で火災が発生しました』


(品雨大学…ってあの教授が抜けたとか…この全く人騒がせな大学ねー)


日焼けした肌にしっとりしめったタオルをあてがいながらニュースを見る佐天。
ニュースの内容からすれば死傷者は居ないものの、研究棟で行われてい研究は暫く凍結するとの事だ。


(ふーん…なんか物騒な世の中ねー)


佐天は他人事の様にテレビの内容をぼんやりと見ながら思った。


『続いて新たに入った情報です…!磁気異常研ラボにも火の手があがった様です…』


『なお…侵入の形跡はなく…いきなり電子機器がショートした模様で、学園都市に電力を供給している会社の技術者達が緊急招集され…』


『あ…あらたに入った…情報ですと…バイオ…』



テレビのキャスターは刻一刻と入る情報にてんてこ舞い状態だった。
ニュース内容よりも動揺してあたふたしているキャスターを見ている方が佐天は面白かった。



(電子機器のショートとか…ってか破壊されすぎじゃない?)


(外部からの接続だけでこんな事出来るの?テロって言うからにはもっと直接侵入する様なイメージがあるけど)


(電子セキュリティを破壊するだけで目的は達成されてるのかしら?)


ここ最近で得た知識で佐天は考える。
ニュースをみる限りだと何故か生物学的分野で頭角を現している方面の施設ばかりが攻撃を受けている。


(電子セキュリティを外部から解除出来てなおかつ施設のパソコンに侵入するってまさか初春?)


彼女の親友である初春飾利は確かに高度な演算能力を買われて風紀委員のハッキングを未然に防ぐ防衛ラインを構築した実績がある。
しかし、初春がこの施設を破壊する理由が全く思い浮かばない。


(ははは…いくら初春が演算できるからってこんな事はしないよ)


(誰なんだろ?こんな事するの?)


(…もしかして…御坂さん?…ってアホか私は)


ここ最近遊びに誘っても来ない美琴。白井は言っていた。「とりつく島がない」と。


(…あ…はははは…まさかまさかぁ…だって…ねぇ?御坂さんも研究所を吹っ飛ばす理由なんてないに決まってるじゃない)


(学園都市には二五〇万も人がいるんだし…まさかね)


佐天は再びニュースを見る。
今度は逆にキャスターのあたふたする素振りが妙にうざったく見える。


『蘭学医療研究所でも新たに火災が発声したと…!』


(…なによ…これ…!)


聞けば学園都市の複数施設が既に電子セキュリティが解除され、通信回線からの攻撃を受けているとの事だった。


『サイバーテロが行われている様です…!引き続き情報が入るまでお待ち下さい…!』


初春は学園都市の治安を守る風紀委員に所属している。
学園都市の施設を破壊する様には見えない。理由もない。


しかし、御坂美琴は…?
サイバーテロを起こさないと断言できる理由が思い浮かばない。



(考えすぎ…よね?)


佐天はニュースを見ながら次の情報が入ってきたその時だった。


ういーん…ういーん…


仕事用の携帯電話が鳴る。
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