【第十八話・驚愕! 全てを支配する者!!】


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 「おい。ちょっと待てよアンタ」


 声に、男が振り向く。
 振り向いた先にいたのは、ツンツン頭の幸薄そうな少年だった。

 訝しげな表情で、少年は男に問いかける。


 「なぁ……ひょっとして、アンタ、魔術サイドの人間じゃないか?」

 「……どうとも言えんな」

 「どうともって、つまり魔術のことを知ってるってことだよな!?」

 「……何か用か?」


 少年が声をかけたのは、ちょっとした勘のようなものだった。

 いや。極めて勘の悪いこの少年が、それだけで答えを出すことなどありえない。
 少年が男を怪しんだのは、ひとえに男の服装が異常だったからだ。
 この学園都市で「蒼いローブ」など着ていれば、いかに少年といえども気付くはずである。


 「ここんところさ……この街で、ブラッククロスなんてのが暴れてるだろ?」

 「それがどうした」

 「あれってさ。やっぱり、裏で何かでかいことでも起こってて、魔術サイドも動き出してんじゃないかと……」

 「お前の知ることじゃあ無い」

 「ああ!? ちょ、ちょっと待てよ!!」


 少年の右手が触れる前に、男は姿を消した。
 まるで初めから何も無かったかのように。音も無く。


 「……何なんだよ。これから何が起きるってんだ!?」


 【第十八話・驚愕! 全てを支配する者!!】




 そして――コインは男の頭を吹き飛ばした。

 頭部を失った機械仕掛けの男が、ヒザから崩れ落ち、ピクピクと痙攣する。


美琴「ハァ、ハァ……終わった……?」


 時間は、わずかに遡る。

 佐天涙子が、基地中枢部にて黒い戦士と死闘を繰り広げている頃。
 隔離された空間で、美琴たち五人とブラッククロス首領による決戦が行われていた。

 怪人の性能を三倍に引き上げる特殊な術式によって、首領は強化されている。
 とはいえ、美琴たちにとって、あの程度の敵が三倍に強化されようと話にならない。

 それ程の戦力差がハッキリと存在していた。

 それゆえに、油断を招いた。

 この『不思議空間』は、彼女達の常識の外にあるというのに……


 気付けば、暗闇に浮かぶ眼球は一つではなかった。
 十数個の視線が、美琴たちに降り注いでいた。

 一斉に放たれた美琴たちの攻撃を掻い潜り、首領は常識外れの動きで距離を詰めてくる。
 あきらかに、「三倍」どころの強化ではない。

 いつかのトワイライトゾーンとは違う。
 おそらくは、“禁じ手”の類。
 目玉の数が一つにつき三倍だとすると、その数は三十倍以上になる。

 ただでさえ、肉体に対する負担が半端でないこの術を、限界を超えて使えばその結末は……


 “絶体絶命”――


 そんな無謀を、本人の意思に関わらず、彼は使った。

 いや、“あの男”に、使わされた。


美琴「Drクライン……!」


 ギリッ……と、美琴は歯を食いしばる。
 御坂美琴がこれほど人を憎んだことが、未だかつてあっただろうか。

 今後彼女は、いくつもの戦いを乗り越えることになる。
 感情に囚われ、自ら死地に赴くこともあるだろう。

 だが、今は――


黒子「お姉さま。今は、怒りに身を任せるときではありませんの」

美琴「……ええ」


 今は、その無茶を止めてくれる者がすぐ傍にいる。
 だから彼女はまだ、「お姉さま」であり、「憧れの先輩」でいることが出来る。

 彼女が一個人、「御坂美琴」として戦いに挑むのは、もう少しだけ先の話になる……


初春「……! 景色が!!」


 術者が倒れ、トワイライトゾーンが晴れていく。
 暗闇は蜃気楼のように溶け、無限に広がっていた景色が狭い室内に変わる。
 大きなモニターのある、四方を壁に囲まれた研究ラボ。


黒子「やれやれですの。もう術だのなんだのと、オカルトチックなのはゴメンですの……」

美琴「まったくね。みんな無事?」

アルカール「問題ない」

初春「た、盾が無ければ即死でした……」

コットン「キュー!」


 誰一人欠けていないことに胸を撫で下ろし、周囲を見回す。

 そして気付いた――


初春「佐天さんが居ない……!?」


美琴「どこ!? 佐天さん!!」

黒子「お姉さま! あれを!!」

美琴「……!? 何よこれ!!?」


 壁に空いた大穴に気付く。

 基地の奥深くまで延々と続く、何かによって熔かされブチ抜かれた痕。
 力まかせに造りだされたその通路の先は、暗くて見通せない。

 だが、間違いなく、佐天涙子はその先にいる……


美琴「行きましょう……」


 おそらくは、基地の中枢部。
 敵の本丸に、佐天はただ一人挑んでいるのだ。

 美琴が先陣を切って、通路の先に進む。
 黒子たちも後に続き、全員が大穴の奥に広がる暗闇を見つめている。



 だから、誰も気付かなかった。



 頭を吹き飛ばされた彼の腕が、チェーンソーから大きなハサミに付け替えられていることに。

 その彼が、音も無く立ち上がり後ろに立っていることに。


初春「――――あ」

アルカール「下がれ!!!」


 無防備だった初春を突き飛ばし、アルカールが立ちはだかる。

 そして広げたその腕が、血しぶきを撒き散らして、宙に飛んだ。

 紅い紅い、生ぬるい鮮血が、呆然とへたり込む初春の顔に、かかった。



初春「いやあぁああああああああああああ!!!???」


 絹を裂くような悲鳴。

 それを掻き消す轟音。

 戻ってきた美琴によって、全身金属の塊である首領の体は『超電磁砲』となって吹き飛んだ。
 壁を何枚も破り、やがて粉々になって、今度こそ機能を停止した。


黒子「アルカールさん!!」

コットン「キュ~~!!!」

アルカール「ぐっ……! う、腕を、拾ってくれ……!!」


 流石のヒーローも、肩から先を切断されては堪らない。
 出血を止めようともう一方の手で断面を抑え、苦しそうにうずくまっている。


初春「あ、ああぁ……あの。これ」

アルカール「……すまないっ」


 初春が、怯えながらも腕を拾って手渡した。
 アルカールはそれを受け取り、断面を合わせる。


アルカール『……克己(こっき)!!』


 合わせた切断面から光が漏れ出し、それが収まる頃には――

美琴「……うっそぉ……」

 斬り飛ばされた腕は、元の場所に戻っていた。

美琴「本当に何でもアリね……」

アルカール「そうでもない。力には代償が付き物だ」

美琴「そう? 佐天さんもそうだったけど、ヒーローの体って、殆ど不死身なんじゃないの?」

アルカール「……私が今使ったのは、ヒーローとしての能力ではない。『心術』という術の一種だ」


 アルカールは、くっ付いた腕の調子を確かめるようにグルグルと肩を回しながら、語り出す。
 その口調はどこか、いつにも増して真剣味を滲ませている。


アルカール「私は極力、ヒーローとしての力は使わないようにしている」

初春「どうしてですか?」

アルカール「……術は、使用するのに『魔力』を使う。我々の時代の人間なら、誰もが持つ力だ」

美琴「ん~と……ゲームとか漫画なんかでよくある、“オーラ”みたいな感じ?」

アルカール「そう、人間の精神的な力だ。それを利用して、変換して体を癒した」


 燃料を消費して現象を起こす。
 分かりやすい、当たり前の構図。

 術の場合、発動する代償は魔力。


アルカール「だが、誰でもそれが出来るわけではない。術を使うには、専門家からの指導が必要だ」

美琴「まぁ、そりゃそうね……」

アルカール「だから……“彼女”にはそれを教えることは出来なかった……」


 彼女――

 その一言だけで、美琴には、彼の言いたいことが伝わった。



美琴「――ヒーローの力の、代償って何……?」




 不死鳥が闇を討ち払い、自分の体を貫いた。

 そう、思っていた。


メタルA「……何故、生きている……?」


 メタルアルカイザーは、まだ意識を失ってはいなかった。
 ただ、全身の至る所を破損して、動くことが出来ないだけ。

 それもそのはずだ、彼は機械なのだから。
 痛みで意識を失うことも、疲労で眠ることもない。

 彼の電子頭脳と動力部、そして循環系が無傷であれば、活動は続けられる。


アルカイザー「メタルアルカイザー……」

メタルA「涙子。何故、トドメを刺さなかった?」


 アルカイザー・佐天涙子は、彼の肩を抱きかかえ介抱していた。
 両手足をだらりと投げ出したメタルアルカイザーは、力なく、彼女の体にもたれかかっている。


アルカイザー「私は貴方を倒しに来たんじゃなくって、助けに来たんだよ……」

メタルA「……そうか。私は、お前に助けられたのか」

アルカイザー「……ねぇ。Drクライン……お父さんのこと――」

メタルA「世迷言だ」


 堪らずに漏らした本心を、世迷言と斬り捨てた。

 彼は、冷静さを取り戻している。


メタルA「しかし……大したものだな。お前のその“能力”は……」

アルカイザー「そんなことないよ。危なかった」

メタルA「謙遜するな。我々はお前に負けたのだ。なら、我々が無様じゃないか」

アルカイザー「ごめん……そうだね」

メタルA「そうだ。勝者は勝ち誇れ。胸を張れ」

アルカイザー「……慣れないなぁ、それは」


 きっと、彼に感情表現の機能があれば、ここで笑っているだろう。

 全部終わった。
 妄執も、因縁も、頑なな強がりも。

 すっきりして、その全部を笑い飛ばそうと、声を上げているだろう。


 すっきり――

 いや、一方の佐天は、すっきりなどしていなかった。
 さっきの彼の言葉が引っかかっている。

 それは、以前から胸の奥で燻っていた疑問。


アルカイザー「ねぇ……メタルアルカイザー。聞いてもいい?」

メタルA「私に答えられることならな」

アルカイザー「……どうして、ブラッククロスは『能力』を欲しがったの?」

メタルA「……? どうして、だと? それは、『最強』を目指して――」

アルカイザー「でも……最強を目指して作られたはずの貴方には、『能力』の力がないじゃない?」

メタルA「なんだと……? だが、その“アルカイザーの力”は……?」



アルカイザー「これは――学園都市の『能力』じゃないよ……?」



メタルA「――――!!?」


 考えても見なかった。

 最強の力を求め、そのために必要だと言われたから「それ」を探っていた。

 「それ」とは、つまり学園都市に存在する『能力』のこと。

 ならば、最強を目指して作られた体にも、「それ」が使われているに決まっている。


 『メタルアルカイザー』のモデルが『アルカイザー』なら、『アルカイザー』は『能力』のはずなのに……


 それが……違った――――?


アルカイザー「私は無能力者だって、言ったよ?」

メタルA「たしかに……聞いた」


 だが、それはデータベース上のことで、実際には能力を持ち、それを“隠している”のだと……


メタルA「だ、だが……Drもまた、私と同じ間違いを……」

アルカイザー「……『AIM拡散力場』って、知ってる?」

メタルA「――――能力者が、無意識に放つフィールド……」

アルカイザー「多分だけど……ブラッククロスの技術力なら、それを判別できてると思う……」


 何より、IQ1300とかいう馬鹿げた大天才が、それに気付かないだろうか?

 気付くはずだ。
 彼らは、すでに何十人もの能力者を攫っている。
 人体実験もしただろう。データベースへのハッキングも行っている。

 なら、知っているはずだ。

 では、何故使わなかったのか?

 超電磁砲・御坂美琴との一件でも分かる。
 アルカイザーの力は、能力と比べてもそこまで優秀なものではない。

 たしかに『万能』といえば『万能』。
 傷を癒し、炎を従え、純粋な身体能力のみでも相当なものだ。
 四天王全てを相手取り、勝利を収めてきた。


 だが、それがどうした?


 そんなことが、能力を使わないことの理由にはならない。
 むしろ、能力者がヒーローの力を使えば、鬼に金棒じゃないか。

 ましてや、学園都市には超電磁砲を上回る能力者が二人も存在するのだ――

 なら、考えられる可能性はあと一つ。


アルカイザー「使わなかったんじゃなくて、使えなかった?」


 メカである彼に、人間の脳や心理を利用して奇跡を起こす『能力』は流用できなかった……?

 いや、それこそ意味不明だ。
 それなら、何のために『能力』を求める?

 ベルヴァのパーツのように、『能力』を応用した部品が欲しかった?
 ただそれだけ?


 ……考えても分からない。
 仕方が無い……このことは一旦置いておこう。


 それよりも、今は――“もう一つの疑問”を先に晴らそう。



アルカイザー「……で、さっきからこっちを見てる。“アレ”は何……?」


クライン「馬鹿な……馬鹿な……」


 薄暗い室内に、Drクラインの姿があった。

 中枢部のすぐ近く。
 二人のアルカイザーの戦いをモニターに映し出し、彼はその結末を見物していた。

 しかし、彼の思惑は外れる。
 メタルアルカイザーは破れ、彼の妄執の果てにたどり着いた「最強」への答えは否定された。

 所詮。彼一人でそこに届くはずなど無かった。
 それに、仮にアルカイザーを破ったところで、それが「最強」を示すはずが無い。
 彼女は万能でも何でもない。
 ただの一人のヒーローでしかない。
 それが何故、「最強」と呼べるだろう?

 この世には、思いも至らない「神」に辿りつこうとする者が、存在しているというのに。


 「ここまでだな。クライン」

クライン「……アルカール」


 分厚い扉をぶち破り、黒いヒーローが現れた。

 ここに、Drクラインの人生を賭けた戦いが決着する。

 だが、それは“敗北”ではない。
 “間違い”だった。


 いやむしろ。
 初めから。
 全て丸ごと。


 “勘違い”だった――――




 地の底から、何かの声がする……

 古の扉が開き、そこから、何者かが這い出してくる……

 それは人知を超えたもの……

 人の法を超えたもの……



 『超古代文明の遺産』――――



 遥か昔。
 人の手によって生み出され、人の手によって封じられたモノ。
 人の手に余る奇跡の所業。

 なれば仕方ない。

 あの哀れな、首領を名乗った男が飲み込まれようと仕方が無い。
 あの哀れな、天才を気取った男が、手のひらの上で転がされようと仕方が無い。

 誰も彼も、それに気付かなくても仕方が無い。


 この戦いのその奥に、そんなモノの影が潜んでいることに。


 知っていても、接していても、それが例え今現在明らかに目の前に存在していても――


 誰も、その存在を気にかけることなど出来はしなかった。





 ただ一人、“彼女”以外は――――


アルカイザー「……で、さっきからこっちを見てる。“アレ”は何……?」


 アルカイザーのみが、その存在を前にして“正気”を保っていた。


メタルA「アレ……?」


 メタルアルカイザーには知覚出来ない。
 メカである彼は、それから発せられるジャミングを防げない。
 彼をここに送り込んだDrクラインも、ここにそれがあることを“知っていた”はずなのに“知らなかった”。


アルカイザー「アレだよ! ほら、あの天井にある――」

メタルA「どれだ? 私には何も……」

アルカイザー「……どうして?」


 どうして?

 それを知りたいのは、おそらく“それ”の方だろう。
 本来知られるはずのない自分の存在を、“目の前”の紅い少女が知覚しているのだ。

 自分の体をあの天才科学者に“整備”させたときでさえ、自分の存在は心理の外にあったのに。


 その『支配』が、少女には通用していない。


アルカイザー「何なの……? “アナタ”は、なんなの!?」


 アルカイザーの目には、赤い照明の奥に、ギョロリとした「黒目」がハッキリと見えていた。

 これだけハッキリと、それもこの部屋の中心にあるというのに。
 自分以外誰もソレに気付いていない……!?



アルカイザー「答えろ! お前は――何なんだ!!?」


アルカール「何だ……?」


 別室でモニターを見ていたアルカールが、その異変に気付いた。

 さっきまで、倒れた敵に手を差し伸べていたアルカイザーが、天に向かって咆えた。


美琴「佐天さん、どうしたの……?」

黒子「あそこに何かが……まさか他に敵が!?」


 皆の目が、一斉にクラインに向いた。

 クラインは抵抗を諦め、後ろ手に手錠をかけられて地面に座り込んでいる。
 その表情は、その場の皆と同じ。
 何が起こっているのか分かっていない。


クライン「何だ……? そこに何がいる?」

アルカール「貴様も知らないというのか」

クライン「知らん。少なくとも、あそこはただメインコンピューターが……ん?」

初春「メイン……コンピューター……?」


 おかしい。


クライン「何故だ……? 何故私はそんな所で戦わせた……?」

初春「おかしいですよ! そんな大事な場所を戦場に選ぶなんて!!」

美琴「……なんだっていうの?」

アルカール「クライン! ブラッククロスに他に誰が――」

クライン「居ない!! 私が首領を改造し、全てを掌握した!!!」

美琴「だったら! 佐天さんは誰と話してるのよ!!?」


アルカイザー「答えろぉおおおおおおお!!!」


 胸がざわつく。

 まだ終わってない。

 まだ、脅威が残っている。


アルカイザー「ッ!!?」


 基地が揺れ出した。

 地震?
 いや、ここは混沌の中だ。


 “何か”が動き出したのだ。

 巨大で途轍もない、“何か”が。



 そして、地の底から声が響く。



 『I am…』


 おそらく、声は基地全体に届いている。

 声は、ゆっくりと、高々と宣言する――――


 『I am the real Master of BlackCross』(私は、ブラッククロスの真の首領)


 『I contorol everything』(全ては私の思うがままに)


 『I rule everyreagion』(私は、あらゆる世界を支配する)


 自分こそ――『ブラッククロスの真の首領』だと……!!!


アルカイザー「ブラッククロスの……」

メタルA「真の……首領だと……?」


アルカール「そんなものが……」

美琴「つまり、黒幕ってわけ?」

黒子「こうしてはいられませんの!」

初春「すぐに佐天さんの所へ!!」

コットン「キュキュキュキュー!!!」


クライン「……くくく……はははははは……!!」


 クラインが、心底可笑しそうに笑い出した。


クライン「そうか……私はお前のために、動いていたというわけか……」

アルカール「クライン……!」

クライン「メタルアルカイザーが敗れるはずだ……そうか、私の持てる技術は全て……」



クライン「お前を治すために使われていたのか!! 真の首領よ!!!」

クライン「学園都市の能力は!!! 『能力者』であるお前を治す為に!!!!!」



美琴「ブラッククロスの真の首領が……『能力者』!!!??」


アルカイザー「おぉおおおおおお!!!」


 ヒーローとしての勘が告げる。
 アレは倒さなければならないものだ。

 アルカイザーは跳躍し、赤い照明へと拳を向ける。


 だが――



 『You shall die!!!』



 天井が崩壊し、赤と青の二重螺旋が迫る。

 『反重力クラッシャー』

 アルカイザーはとっさに身をかわし、光のドリルは爆発と共に地面を抉り取った。


 それが呼び水となったのか、基地全体の崩壊が始まる……!


アルカイザー「メタルアルカイザー!!!」

メタルA「ぬぉお!!?」


 地面が裂け、動けなくなったメタルアルカイザーが落ちていく。

 天井が崩れ、瓦礫の山が降り注ぐ。


 真の首領が暴れ出した。


 もう、この破壊は止まらない……!!


美琴「きゃあぁああああああああああああ!!!??」

黒子「お姉さま……! 手を――」


 もはや、脱出どころではない。
 基地そのものが崩壊していく。


アルカール「リージョンを包むフィールドが……破れたのか!!?」

初春「どうなるんですかぁぁあ!!!???」

コットン「ミュ~~~~!!???」


 敵も味方もない。
 混沌に沈んだものは、混沌へと帰る。

 壁に空いた穴から、崩れ落ちた天井から、割れた床から、混沌の渦が押し寄せる。

 宇宙船に穴が開けば、空気は真空へと流れ出す。
 それと同じく、フィールドが破れたリージョンは、崩れて流れ出す……!


 上下左右の区別も付かない無重力空間。

 体が浮かび上がり、瓦礫と一緒に流されていく。


クライン「くはははははは……滅びる……いや、支配されるのか……」

クライン「ブラッククロスとは、元々貴様のためにのみ存在したものだったのか……」

クライン「学園都市に攻め入ったのも……貴様の体を私に治させるためか……」

クライン「誰も彼も……皆貴様に操られていたのだ」

クライン「……おお、そうか……学園都市に帰るのか?」

クライン「行け行け。行ってしまえ。清々する……」



クライン「過去も未来も全部……支配してしまえ!! 真の『万能』よぉ!!!」




 …………

 ……


美琴「――――」


 体が痛い。

 ……重力がある?

 どこかに落ちたのか……


 良かった。

 あのまま、混沌の中を永遠に彷徨うのかと……


 「――リ?」


美琴「ん……んん……」


 「おい! ……ビリ!!」


 「起きろ!! ビ……ビリ!!!」


美琴「誰がビリビリじゃぁああああああああ!!!!!」


 怒りに任せて電撃を放った。
 それが、彼の右手に触れた瞬間消えうせる。


美琴「あんた……」

 「よ、よう……大丈夫か?」


 目の前に、あのツンツン頭の少年・上条当麻が立っていた。


美琴「学園都市……!!」


 気付くと、学園都市の、それも第七学区に居た。
 見覚えのあるビルの群れ。
 ゆっくりと回る風車。

 何がどうなっているのか……


美琴「と、とにかく! 黒子たちを探さないと!!」


 全員無事なのか?
 敵に一人で立ち向かっていった佐天はどうなったのか?

 疑問が山積みだ。


上条「ま、待てよ御坂! 前! 前!!」

美琴「――――え!?」


 ビルの陰から、一メートルを越す大きな花が現れた。
 茎をくねくねと踊らせ、蒼い花びらをこちらに向けている。


美琴「……! また学園都市に怪人が!?」


 良く周囲を見回せば、そこら中を怪人や戦闘員が跋扈している。
 金色のロボットが、巨大蟷螂が、青い巨人が。
 四天王を倒し、全て追い出せたと思ったのに……

 真の首領。
 おそらく奴が、自分と同じようにあの混沌から送り込んだのだ――!


上条「御坂、俺も……!!」

美琴「アンタは下がってなさい!!」


 体を帯電させ、美琴は駆け出した。


美琴「これ以上、好き放題やらせるかっつーのよぉ!!!」


 その頃別の場所で、初春飾利が目を覚ました。


初春「――――」


 この二ヶ月ほどの戦いを経て、初春の身には数多くの苦難があった。

 だから、彼女の精神は強くなり、しかし、同時に衰弱していた。


初春「――――さ」


 それこそ、何か一つでも、心の支えを失ったら……


初春「佐天さん……?」


 彼女の心は、きっともう持たない。


初春「佐天さん……佐天さん……」


 学園都市で目を覚ました初春飾利。
 その目の前で――――



 アルカイザーが、四肢を失い、腹を破られ、血だまりに沈んでいた。



 息は――――無い。





 落ちこぼれのヒーローは、紅く紅く染まった。




 【次回予告】

 正真正銘の最後の決戦!!

 学園都市に巨体が下り立つ!

 まるで終末の地獄絵図!!

 この学園都市最大の危機に、ヒーローの拳が立ち向かう!!!


 次回! 第十九話!! 【終幕! 落ちこぼれ英雄譚!! (前編)】!!

 ご期待下さい!!


 【補足】

 ・首領について。
  原作ではラスボス戦どころかメタルアルカイザー戦と復活した四天王戦の前座でした。
  三十倍トワイライトゾーンも使えません。
  ていうかセリフも一言しかありません。合掌。

 ・Drクラインについて。
  原作ではメタルアルカイザー戦が終わった時点で出番が終了します。
  なので真の首領の存在を知っていたのか知らなかったのか……

 ・克己。
  心術の一つ。効果は自分の体力を全回復。
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