【第十一話・激震! シュウザー城の戦い!!】


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初春「こ、こないで……!」

 初春は地面に落ちた銃を拾い上げた。
 佐天涙子が残していった、アグニSSPという小さな拳銃だ。

 それを、眼前に迫る黒い影に向けて構える。

 そんな豆鉄砲がこの相手に通じるだろうか?
 おそらく、あの黒い装甲には傷一つ付かないだろう。

 それでも、そのくらいしか初春にできることはない。

 御坂美琴に電話をかけたがつながらなかった。

 人通りなどまったくない廃墟群の真ん中だ。
 他の助けには期待できない。


 重い金属音を鳴らし、影が迫る。


初春「……っ!」

 意を決し、拳銃の引き金を引いた。
 一発目、ニ発目を外し、三発目は装甲に弾かれてどこかへ跳ね返った。

 恐怖に固まる初春へ、影がその厳つい手を伸ばした。


メタルブラック『好きなだけ恨め。お前にはその権利がある……涙子』


 メタルブラックはもはや鋼の侍では無い。
 巨大な黒いボディは、まさしく「破壊兵器」と呼ばれるものだった。


 【第十一話・激震! シュウザー城の戦い!!】




黄泉川「探せ探せー! どっかその辺にアルカイザーの奴が転がってるはずじゃん!!」

鉄装「よ、黄泉川先生!? まだそうと決まったワケじゃないですよぉ!!?」


 警備員たちによるアルカイザー捜索は続いていた。

 アラクーネは言った。
 「アルカイザーを倒すための計画が進んでいる」

 その言葉が事実なら、今こうしている間にも、彼女の身に危険が迫っているかもしれない。


美琴「あいつめ……勝手に死んだりしたら許さないわよ」

 美琴は警備員の車両の中で休んでいた。
 雨で濡れた髪と体をタオルで拭い、水を吸って重たくなったセーターを脱いだ。

 黒子や婚后たちは先に帰した。
 黒子はまだ傷が癒えきっていないし、婚后たちの体力は限界だっただろう。


美琴「絶対もう一度会ってやるって決めてるんだから……!」

 地下基地での戦いを思い出す。

 崩れ落ちる基地の中、美琴たちを逃がし一人残されたアルカイザー。
 そんな窮地でもあっさりと生き残った彼女を倒す……?

 一体どんな手を……?


鉄装「黄泉川先生! あれ……!!」


 鉄装が指差した先から、トボトボと赤い人影が歩いてくる。
 背を丸め、雨に打たれながら歩くそのみすぼらしい姿に、鉄装は息を飲んだ。

 ともあれ、アルカイザーは無事発見された。



 車両に乗せられ、アルカイザーを含めた一行は警備員の詰め所へ向かう。

 治療を受けろと勧められたが、アルカイザーは「もう殆ど治ってるから」と断った。
 その右手が何かを握り締めている。


美琴「久しぶりね?」

アルカイザー「……そうですね」

美琴「私が入院してた間も活躍してたみたいじゃん?」

アルカイザー「……そうでも、ないですよ」

美琴「ふーん。随分殊勝になったじゃない?」


 仮面に隠れて素顔は伺えないが、きっと酷い表情をしているのだろう。

 ……今本題を切り出しても大丈夫だろうか?


アルカイザー「……」


 ……やめておこう。

 いまは、ともかく彼女の無事を喜ぼう。
 そして――

美琴「しっかし頑丈ねぇ、あんた。体鍛えてる?」

アルカイザー「……ヒーローですから」

 軽口でも叩いて安心させてあげよう。
 いつも、友人の「佐天さん」がそうしてくれるように……



 車が到着し、美琴たちは詰め所内にある取調室に入っていった。

 アルカイザーに何かの容疑がかかっているわけではない。
 まずは美琴たちにだけ話したいと、アルカイザーに頼まれたからだ。


 狭い、中心に机が一つ置かれているだけの簡素な部屋。

 机に対面して座るのはアルカイザーと黄泉川。
 美琴はアルカイザーのすぐ隣に立ち、鉄装が入り口の前で待機している。

 安物の机とパイプイスに、全身コスプレの真っ赤な少女が座っているというシュールな光景だが、それを気にするような空気ではない。


黄泉川「さて、色々聞きたいことはあるけど……まずは現状を把握するじゃん」

 黄泉川が口火を切る。


黄泉川「まず、お前のその惨状はどういうことじゃん?」

アルカイザー「……怪我は平気です」

黄泉川「それは聞いた。今日何があったのか話せってこと」

アルカイザー「……その前に、一ついいですか?」

黄泉川「何?」

アルカイザー「もし、私が協力して欲しいといったら……警備員は力を貸してくれますか?」


 その質問に、黄泉川は大きな溜息をついた。
 そして、アルカイザーをキッと睨みつける。


黄泉川「……舐めてるのか?」

アルカイザー「ははは……やっぱり、駄目ですか……」


 アルカイザーは自嘲して、背を丸め俯いた。

 やっぱり、こんな素性の知れない怪しい人間に心を許してくれるはずが――


 そして、ポコン、と頭を叩かれた。


アルカイザー「……?」

黄泉川「アホかお前は? わざわざ聞かなきゃそんなことも分からないんじゃん!?」

アルカイザー「え……」


黄泉川「協力するに決まってるじゃん! 大人は子供を助けるものだろ!!」


 そう言いきって、黄泉川はニカッと笑う。
 無邪気な笑顔。

 ああ……この人は信用できる……


アルカイザー「……分かりました。私の知っていることは、すべてお話します」

黄泉川「おう。こっちも助かるじゃん」

アルカイザー「まず……今一番、急いで取り掛からないといけない問題から……」


 黄泉川も美琴も、真剣な表情で話に聞き入る。
 入り口前の鉄装も聞き耳を立てている。

 少し間をおいて、辛そうに、アルカイザーは話し始めた。


アルカイザー「私の友人……初春飾利が、拉致されました……」


美琴「――――え?」


 どうしてその名前が?

 予想だにしなかった展開に、美琴は困惑した。

 友人……と、アルカイザーはそう言った。
 それは、つまり――――


アルカイザー「たぶん、私が身動きを取れないように……」

黄泉川「つまり人質……わっかりやすい悪役じゃん……!」

アルカイザー「これに、連中のアジトの場所が入っているはずです……」

 アルカイザーは、右手に大切そうに握っていた物を机の上に置いた。
 それは小さなデータチップ。

 黄泉川が手にとり、鉄装に調査するよう指示を出した。

アルカイザー「ブラッククロス四天王の、シュウザーという男が残していった物です」

黄泉川「四天王……ていうのは?」

アルカイザー「ブラッククロスの幹部のことです。シュウザーは、そのトップに立ったと……」

黄泉川「ふ……ん。まぁ、間違いなく罠じゃんよ」


 しかし――

黄泉川「行かないワケには行かないじゃん」

 当然。

 生徒が拉致され人質になっているのだ。


 すっかり雨の上がった夜空に、反撃の狼煙が上がる……!



 学園都市の深夜。
 それは彼らスキルアウトの時間だ。

 今日も今日とて、あれだけの騒ぎがあったというのに、雨が上がったとたん街に繰り出してはいつもの溜まり場へ。

 「よう。浜面の馬鹿が何かやらかしたって?」

 「ああその話か? たしか――」

 最近ではブラッククロスの所為で物騒になり、優等生の能力者たちは家から出てこない。
 集団で能力者を襲うなどして憂さ晴らししていた彼らは、クスリを流して資金集めをしていたが、それもすっかり下火だ。
 けっきょく、こうして暇をもてあまして駄弁るくらいしか、やることは残っていなかった。


 「お、おい!! 誰がヘマしやがった!?」

 そこへ、一人の少年がドタバタと駆け込んできた。


 「あん? どうかしたのか?」

 「警備員がこっちに向かって来てるんだよ!」

 「ちっ、何かばれたか? それで数は?」

 「十……い、いや! 二十だ! それよりもっと多いかも……」

 「はぁ!? 二十人だぁ!?」

 「何だそりゃ!? 俺達そこまでのことはしてねぇだろ!!?」

 「ち、違う……」

 「あ?」

 「『台』……だ……『二十台』だよ!!」


 ウーウーと警笛を鳴らし、薄暗い路地裏へ二十を超える装甲車両の大所帯が突入してきた。

 スキルアウトたちは何事が起きたのかも分からず、ただ無我夢中で逃げ出した。



 「全隊止まれ!! ここからは徒歩で進行する!!」

 装甲車両から、それぞれ十名余りの警備員たちが駆け下りてくる。
 隊列を組み、各部隊長の指示の下、軍隊張りの動きで路地裏を駆け抜けた。

 全身を隠せる巨大な盾。
 腰にはハンドブラスター等の小型兵器。
 肩から機関銃を提げ、体力に自身のある者はさらに大型の重火器を背負っている。


美琴「これは……壮観ね……」


 まるで戦争映画のワンシーンだ。

 荒事に慣れている美琴でも、流石にこれだけ本格的な出撃を見ることはそう無い。
 ましてや、その中に自分が含まれることなど、想像もしなかった。


黄泉川「確かにここじゃん?」

鉄装「は、はい! あのデータチップにあった地図をもとに検証しましたが、ここしか出入り口は……」


 黄泉川が訝しむのも無理は無い。
 その、アジトへの出入り口というのは――

美琴「……マンホール……ですか?」

 そう、マンホール。
 小汚い、ただの錆びたマンホールである。

鉄装「だ、だって~! 本当なんですよ~!!」

黄泉川「あ~、分かった分かった! 別に疑って無いじゃんよ!!」

アルカイザー「でも、どうしてここが出入り口になるんですか? ひょっとして敵のアジトは地下?」

鉄装「いいえ地上です……ただ、区画整理がその……滞っていたみたいで……」

 佐天が隠れていた廃墟群。
 そのさらに奥に、シュウザーの基地は存在した。

 たしかに、あの辺りを散策していると行き止まりによく突き当たったが……まさか。

鉄装「ビルとか色んなものに囲まれて、地上からは出入り不可能になってる地帯が……」


 そんなマヌケな都市計画があるだろうか……?


鉄装「い、いえ! 勿論最初は通れてたみたいなんですよ!?」

鉄装「でも新しい建物が無計画に乱造されたりとか、この一帯の地盤沈下で人が出て行ったりとかで……」

 色々な偶然が積み重なり、結局住むどころか入ることすら出来ない秘境が、学園都市の真ん中に完成していた。


美琴「空からも入れないの?」

黄泉川「ミサイルとかで迎撃されたらやばいじゃん……」

美琴「たしかに……空の上で撃墜されるよりは徒歩の方がましか……」

 それにしたって、おそらくは敵の術中にはまっているのに変わりは無いのだろうが……


黄泉川「……どうでもいいけど。何でお前がそんなに必死に弁護してるじゃん?」

鉄装「いえ、何か……他人事と思えなくて……」

 ああ、ドジっぷりが……



黄泉川「よし! 一人ずつ突入! 道順は覚えてるじゃん?」

 ニ百人を超える警備員達が、次々に下水道へと入っていく。
 手際がよく、思ったよりも時間は掛からなかった。

黄泉川「私が入ったら、しんがりがお前らじゃん」

 そう言って、黄泉川がマンホールの中に消えた。


 残されたのは――

美琴「……」

アルカイザー「……」

 この二人。


 美琴は焦っていた。
 初春との関係を聞きたい。
 一人残ったことの文句を言ってやりたい。

 そして――

アルカイザー「あの? 先にどうぞ……」

美琴「へ? あ、あぁ……うん」

 元気を出せと、そう言って励ましたい。


 美琴は下水道へ続く梯子に足をかけた。

 どうやって切り出そうか……?
 完全にタイミングを逸してしまった。

アルカイザー「……あの、御坂さん」

美琴「な、何よ!?」

 ああ、何で切れ気味なのよ……


アルカイザー「ごめんなさい」

美琴「……何が?」

アルカイザー「初春のこと……巻き込んでしまいました」

美琴「……」


 この馬鹿。


美琴「アンタの所為じゃないわよ」

アルカイザー「けど……」

美琴「あー……もう!! またそうやってうじうじしてる!!!」


 らしくないでしょ?
 そんなのは――


美琴「あんたが今やるべきなのは、そうやって悩むことなの?」

アルカイザー「けど……やっぱり……」

美琴「……アルカイザー」




美琴「いま、あんたの目に何が見えてる?」




アルカイザー「――――」


美琴「私はさ。あんたのことも友達だと思ってるのよ?」


 それは、御坂美琴と、その親友達の物語の中で――


美琴「一人で背負い込んでんじゃないわよ。あんたの重荷、半分よこしなさい!」


 佐天涙子が、かつて担った役割だった。


アルカイザー「……ははっ!」

美琴「何よ……そんなに可笑しかった……?」

アルカイザー「御坂さん」

美琴「……うん?」



アルカイザー「私、御坂さんのこと好きですよ」



美琴「――なっ!?」

 驚いて足を滑らせた。
 マンホールの中に真っ逆さま。


美琴「うわぁ!!?」


黄泉川「おっと!?」

 しかし、ちょうど下にいた黄泉川が受け止めたおかげで事なきを得た。


黄泉川「……なにやってるじゃん?」

美琴「いえ……何でも……」

黄泉川「いいから、妙なところ触ってないで退くじゃん……」

美琴「はい? ……ふひゃ!?」

 自分の手の位置にまた驚いて、美琴は飛び退いた。


 アルカイザーが、何事も無かったかのように梯子を無視して飛び降り、見事に着地した。

黄泉川「よし。全員降下したな? 先発部隊がもう先に進んでるから、さっさと合流するじゃん」

 さっさと行ってしまう黄泉川とアルカイザー。
 その後を、慌てて美琴が追いかける。


美琴(くっそ~……何なのよアイツ~!)

 並んで歩く二人を睨みつける。
 そして思う。

美琴(……それにしても……う~ん、でかい。二人とも……!!)


 また借りが増えたような、ただの逆恨みのような……



 ……来たか。


 「くくく……飛んで火に入る……という奴だ」


 それはどうかな?


 「なんだ? 不服そうだな?」


 ……そんなことは無い。敗者はただ、強者に従うのみだ。


 「しかし。アラクーネには失望したよ。まさか消滅させられるとはな」


 貴様の作戦に従ったのだろう?


 「そうだとも。俺はな、奴ならあの程度は切り抜けると踏んでいたんだぞ?」


 どうだかな……


 「くはは! 所詮は、誇りを捨てて科学に頼るような下級妖魔でしか無かったわけだ!!」


 貴様の口から誇りなどと……


 「しかし……超電磁砲がそのまま戦線に復帰しているのはまずいな……」


 何故だ? 人質がいるのだぞ?


 「だからこそだよ……そうだな。手を打っておこう」


 ……私が出るか?


 「いや。適任がいる」



黄泉川「進めぇ!! びびってんじゃないじゃん!!!」


 秘密結社の基地へと続く道程が、容易いはずが無かった。

 汚水の中から現れたのは、骸骨の剣士たち。
 ボロボロの青いマントを纏い、細身の剣で襲い掛かってくる。

 一匹一匹の強さは大した物ではないが、倒しても倒しても無数に現れる、呪われた円卓の騎士団。


黄泉川「二列横隊!! 全隊、前方へ銃構え!!」

 部隊長である黄泉川の檄が飛ぶ。
 それに従って、彼女の部下十数名がきびきびと隊列を組み替えた。

黄泉川『十字砲火!!』

 一斉掃射を受け、骸骨たちがバラバラと砕け散っていく。
 粉砕された白骨死体が下水を流されていく様は、何とも形容しがたい空しさがあった。


鉄装「黄泉川先生!? あの管から何か音が……ひゃぁああ!!?」


 こんどは、全長数メートルの巨大な芋虫が、下水管の中からヌルリと顔を出した。

 B級の洋画にでも登場しそうな、紫色のグロテスクな外見。
 ヒルというか、ミミズというか、ナマコというか。大きく口を開け、ダラダラと緑色の粘液を垂れ流している。

黄泉川「うーわ……エンガチョ」

鉄装「言ってる場合じゃないですよぉ!!?」

 巨蟲は、そこかしこの下水管から次々に這い出してくる。

黄泉川「骸骨剣士の次は、トレ○ーズじゃん? ここ、ホラー映画のロケに使えそうじゃん!」


 巨蟲が体を震わせ粘液を飛ばした。

 警備員達は盾に隠れてやり過ごそうとする。
 が、強酸性の粘液がその表面を溶かす。

 装備が破壊されていき、防具を失った者は後退を余儀なくされた。


黄泉川「ちっ……! 厄介な攻撃じゃん!!」

鉄装「どうします……? 迂回して別の道を……」

黄泉川「そんな時間があるか! このまま突破するじゃん! 全隊突貫!!」

鉄装「ええ!?」

黄泉川「この先に敵の根城があるんだ! 拉致された生徒たちも居るかも知れないじゃん!!」


 逃げ腰になった警備員達が、彼女の声に耳を傾けた。


黄泉川「私たちが怖がって逃げていたら、子供を助けられない! それでも聖職者っていえるじゃん!!?」


 黄泉川の訴えが通じたのか、警備員達が雄たけびを上げ駆け出した。

 ここに居るのはみな、愛する教え子達を守るために命を懸けた者達ばかり。
 この程度の妨害に、いつまでも怯んではいられない……!

 機関銃が火を噴き、敵の群れに手榴弾が投げ込まれた。

 傷ついた男が、仲間の手で助け出され命拾いする。

 硝煙と血と汚水の臭いが漂うここは、さながら戦場だった。



 無我夢中で戦い抜き、いつしか、彼らは目的地へとたどり着いた。

 傷ついた者を帰し、残ったのは半数に満たない。
 しかし、彼らはやり遂げた。

 ついに、敵の根城への潜入を果たすのだ。

黄泉川「気を抜くなよ……ここから先は、本当に命がけの戦場じゃん」

 誰も異議を申し立てる者は居ない。
 決意は固い。

 マンホールの蓋が開けられ、長い暗闇での戦いを終えた彼らを、月の明かりが迎え入れた。


 地上に出た彼らの目に飛び込んできたのは、雨に濡れた夜の街だった。
 明かりはついていない。

 警備員の一人が、ゴクリと唾を飲む。

 荒廃したビルが所狭しとひしめき合い、一つの巨大な要塞に見えた。

 その入り口に――


 「ほう、たかが教師の集団がこれほど生き残ったか……大した物だ」


 地獄の鬼が立ち塞がっていた。


 「まぁ、シュウザーには先に進ませるなと言われている。ここまでだな」

黄泉川「あ、あいつは……!?」

 見覚えのあるその鬼の登場に、警備員達はざわめく。


 「では始めようか! 有象無象の木っ端ども!!」


 勢いよく振り回された豪腕が、隊列の最前列の警備員たちを薙ぎ払った。

 大の男たちを軽々と吹き飛ばし、前進を続ける鬼。


黄泉川「う、撃てぇぇぇ!!!!」

 その進撃を食い止めようと、無数の弾丸が撃ち込まれた。
 だが、それは全て徒労に終わる。

 「無駄無駄無駄……! この肉体を、そんな魂の篭らない物が通るものか!!」


黄泉川「やるぞ鉄装!!」

鉄装「は、はい! ……えぇ~い!!!」

 黄泉川と鉄装が回り込み、ハンドブラスターに備えられた『パラライザー』を起動した。
 それは、いうなれば遠距離用スタンガン。
 耳障りな音を立てて、電撃が放たれた。
 使えば、どんなに凶暴な悪党でも一網打尽に出来るという優れもの。

 が――


 「マッサージか何かか?」


黄泉川「……冗談じゃん?」


 その褐色の巨人に、警備員達の持つ装備は通用しない……

 鬼が咆えた。


 「このブラッククロス四天王・ベルヴァを倒せるのは、真の戦士のみよ!!!」


ベルヴァ「ふんッ!!」

 巨人の強襲をかわそうと、警備員達の隊列が見る見る崩れていく。

 先ほどまでの怪人たちとは桁が違う。


 そもそも、警備員は街の治安維持がその主な任務だ。

 学園都市における警察機構とはいえ、その実態は教職員のボランティア集団だ。
 けっして、本職の「戦士」などではない。

 このベルヴァが初めて姿を現したあのときも、警備員はただ見ているしかなかった。


 何故なら――――


 「皆さん! 下がってください!!」

 「ここから先は私たちの出番ってわけね……!」


 悪の秘密結社と戦うのは、『ヒーロー』の務めだから。


 否。


アルカイザー「さぁ、御坂さん!」

美琴「ええ……行きましょう。アルカイザー!」


 この街を救うのは、『ヒロイン達』の役割だ――!!


ベルヴァ「アルカイザー! 久しいな!!」

 褐色の巨人。ベルヴァは嬉しそうに頬を吊り上げた。
 アルカイザーによって粉々に粉砕されたはずの肉体は、彫刻のように完璧なままだ。


アルカイザー「どうしてまだピンピンしてるの……?」

美琴「そうよ。あんたは私の目の前で吹っ飛んだはずでしょ?」

ベルヴァ「何……頭脳パーツさえ回収できれば、後は何とでも再生できるらしい」


 警備員によって回収されたパーツは、どこかの研究所が全て引き上げたという。
 つまり、それ自体がブラッククロスによるベルヴァの回収だったのか……?

ベルヴァ「詳しいことは俺に聞かれても分からんよ。俺はただこの力を楽しむだけだ」

 ブラッククロスの計画など、ベルヴァにとっては娯楽の一つに過ぎない。
 組織の指示に従いはするが、そこに思惑があるわけではない。
 彼はただ、その「悪行」が楽しいからそうしているだけだ。

 生き方をブラッククロスに捧げることで、無敵の肉体と無限の命を得ようとした獣。

 それがベルヴァという魔物の正体だった。


ベルヴァ「第二ラウンドだアルカイザー!! 今度は決着をつけてやる!!!」


 意気込むベルヴァ。

 が――


美琴「ちょろっとー? 私のことは見えてないってわけ?」

ベルヴァ「……むぅ?」

アルカイザー「悪いけどね。もう、そういうノリに付き合ってあげる余裕はないから」

 アルカイザーの手に、蒼き光の剣・レイブレードが握られる。

美琴「そういうこと。あんたなんかに構ってる暇無いのよ」

 美琴が右手を伸ばし、コインを弾いた。



ベルヴァ「貴様ら……俺を侮辱して――――



 『超電磁ウイング』



 レイブレードから放たれた紅い疾風は、超電磁砲に巻き込まれ加速していく。
 周囲を切り刻みながら、音速の三倍のスピードでそれは放たれた。

 巨人が何か言いかけたが、そんな戯言は、この暴風の前に掻き消される。

 そう――
 巨人の肉体ごと、おそらく頭脳パーツさえも粉々に粉砕する、紅い竜巻によって……!!


アルカイザー「あんたの出る幕じゃない……!」

美琴「今度はしっかり成仏しなさいよね!」



 落ちこぼれのヒーローは、仲間を得た。




 【次回予告】

 無敵かと思われた美琴とアルカイザー!

 だが、卑劣な策略が二人を襲う!!

 そしてシュウザーから告げられる死の宣告!!

 果たして、初春を無事助け出すことは出来るのか!?


 次回! 第十二話!! 【出現! トワイライトゾーン!!】


 ご期待ください!!


 【補足】

 ・う~ん、でかい。
  原作の主人公・レッドの名ゼリフですね。

 ・超電磁ウイング。
  「超電磁砲+カイザーウイング」のニ連携。カイザーウイングはまだSS未登場でした。
  さりげに佐天と美琴の初連携です。

 ・ト○マーズ。
  名作B級映画。
  紫の蟲はラバーウォームというモンスターだったのですが、あの外見をどう説明していいものか……
ツールボックス

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