上条「アンチスキルだ!」美琴「ジャッジメントよ!」 > 05


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学園都市第二学区


「では、始め!」

静かな部屋に、紙をめくる音とシャーペンのノック音が響く。

ここは第二学区の風紀委員訓練所。
今は臨時風紀委員の希望者試験の真っ最中で、この部屋では適性試験が行われていた。
特に難しくはない、小学生でも解ける問題を時間内にいかに多くできるかというものだ。

(んー変に集中力使うから嫌なのよね、こういうの)

美琴は盛んにシャーペンを動かしながら思う。

(っと…集中集中)

この手の試験は試験中にどうでもいい事を考えるとペースが乱れてしまう。
この後の試験内容も気になるが、とにかく今ある問題を解くことに集中した。
 

「やめ!各自答案を提出した後、次の試験会場に向かってください。お疲れ様でした」

「くぁー」

生徒達は手早く身支度をするが、美琴は椅子で伸びをする。
周りの顔ぶれは強力な能力者が多いためか、美琴も何度か雑誌の記事などで見たことのある人もいた。

「あら、御坂さんもいらしてたの?」

う、と美琴は苦虫を噛み潰したような顔に変わる。
この頭に響く声、癇に障る話し方、そしてバサリという扇子を開く音を同時に奏でる者は一人しかいない。

「婚后さんも来てたんだ…アハハ、偶然」

必死に作り笑いをする美琴。
婚后は美琴の手を取り

「私達、常盤台にかかればこんな試験チョロいもんですわよねー
さらりとジャッジメントになって、さらりと事件を解決してみせましょう!」
おーほっほっほ、と高笑いする婚后。
周りの視線が痛い。

「あ、それじゃぁ私こっちの試験会場だから!また後でねっ!」

半ば逃げるように美琴は走って次の試験会場へ向かった。
幸い、婚后は別の試験会場だったようだ。

「次は体力と能力テストを行います。各自ウォーミングアップしてください!」

試験監督の声が響く。

「っと…まずは着替えないとね」

キョロキョロと辺りを見回して、更衣室を探す。
と、その時遠くから─パン、と乾いた音が響いた。
「銃声?」

その後何度も響く銃声。
美琴は少し嫌な予感がしたが

「今のなに~?」

「アンチスキルだよ、訓練所が隣みたいだし」

という他の生徒達の会話を聞いて安堵した。

周りの生徒達も銃声に気付いたようだが、特に焦る様子も無い。
実は何も知らないで冷や汗を掻いていた自分は恥ずかしいのかもしれない、と少し落ち込む。

「アンチスキル…か」

銃声のするほうを見ると、こことあまり変わらない建物が並んでいた。
そして今美琴がいる風紀委員訓練所の運動場と
警備員訓練所の運動場は隣接していて、コンクリートの壁一枚で区切られているようだ。

美琴はその区切りのための壁際を歩いているので、
壁の向こうからはランニングをしているであろう足音と、大人の男性であろう太い声で「1.2.1.2」と掛け声が聞こえていた。

そして

『ダッシュじゃん!チンタラ走るんじゃない!』

拡声器を使っているのか、風紀委員の運動場まで女性の声がしっかりと響く。
おぉ、という掛け声の後、聞こえてくる足音が一際大きくなった。

「うっわー超体育会系ね…
志願制だからいいけど、徴兵制なら不幸ってもんじゃないわね」

美琴は治安を維持してくれている部隊の日頃の努力に感謝しつつ、更衣室へ向かった。

 

 

警備員訓練所


「ダッシュじゃん!チンタラ走るんじゃない!」

拡声器によって黄泉川の声が運動場に響く。

「ふ、ふこ…」

走る上条はいつもの口癖を叫びかけて飲み込む。
自分が選んだ道だ、不幸などと言ったら黄泉川に鉄拳制裁を喰らいかねない。

なんとか訓練の一つ、走り込みを何人かの隊員とやり遂げた上条は、地面に座り込んだ。

「うへぇ~」

情けない声を出してスポーツドリンクの入ったボトルを傾ける。
座り込む上条に対し周りの隊員は足早に去っていく、これから各々の判断で訓練をするようだ。

そんな隊員を労いながら、黄泉川が近づいて来た。
 

「なんだ、もうバテたじゃん?」

「いえいえ…これくらい平気ですのよ」

強がってみたのが仇となった。

「そうか、じゃぁこの後逮捕術を含めた柔道と警棒術、射撃訓練を入れるじゃん」

え、と愕然とする上条を見ないで、黄泉川は独り言のように続ける

「なんたって急だからね、
とりあえずアンチスキルになるための訓練一通り受けてもらわないといけないから、まだまだ忙しいじゃん」

「ふ、ふ…ふこ」

また言いかけて飲み込む。
黄泉川はそんな上条に気付かないで腕を引く。

「じゃーまずは柔道場行くじゃん」

半ば引き摺られるように上条は連れて行かれた。
 

 

 

 

「状況はどうだ…?」

アレイスターはいつもと変わらず逆さに浮いた状態で問う。

「言わなくてもわかっているだろう」

それに対峙するのは土御門。
いつもここにいる時は不機嫌そうだが、今日はいつも以上にそう見える。

アレイスターは静かに笑い。

「他人の感情まではわからないからな…」

「わからなくても、幻想殺しの性格を考えると答えは導き出せるだろう?」

アレイスターは黙りこむ、しかし不気味な笑みは絶やさない。
土御門は奥歯を噛み締めてから言った。

「超電磁砲に関しても同じだ。人の厚意を…」

睨まれてもアレイスターは表情を崩さない。
そして土御門の意見に反応することなく、自分のペースで話す。

「いかなる場合もプランに変更は無い。
これだけは、必ず阻止せねばならない」

言うだけ無駄だ。そう思った土御門は舌打ちを一つすると、くるりと踵を返し歩き出す。
途中立ち止まり、アレイスターに背を向けたまま小さく言った。

「これで、最後にすることだな」

そのまま土御門は部屋から消えた。

アレイスターは表情を変えず目線だけを動かす。
すると、近くのディスプレイにウィンドウが表示された。
そのディスプレイを見ながら、アレイスターは少し上がっていた口の端をさらに上げた。

 

 

 

「じゃ、始めるじゃん」

サイズの合っていないブカブカの柔道着を着た上条は、黄泉川と対峙していた。

「あのーもしかして黄泉川先生が相手なんでせうか?」

黄泉川は構えたままキョトンとした顔になる。

「何か問題あるじゃん?
もしかして、私が女だからってナメてるんじゃないだろうね?」

「いや、そういうわけでは…」

そう言いながら、上条は黄泉川の全体像を見る。
上条と同じように柔道着を着た黄泉川、あちらもサイズが合っていないようだ。
だが、上条とは逆でどうも向こうは柔道着のサイズが小さい。

特に胸周り。
いつも以上に強調され、谷間が見えている。

(女性の柔道選手って中にシャツを着てるよな…
あれ絶対着てないよな着てないよね着てません三段活用)
いや、と上条は考え直す。

いくらなんでもそれは無防備すぎないかと、結局はこうして期待させておいて、
いざはだけたら、残念実はギリギリのシャツを着てましたというパターンかもしれない。

そうだ、きっとそうだろう、難しく考えるな上条当麻。
と上条は強引に自分を納得させた。

上条がおもむろに構えると

「じゃ、いくじゃん!」

そう言って黄泉川がすぐに柔道着の胸あたりを掴んできた。
そのままバランスを崩され、倒されそうになる。

「ちょっ…わわわ」

倒れないように必死に踏ん張る上条。
なんとか転倒は逃れることができた。
 

「ふん、なかなか良い反応じゃん」

「あの、先生」

やる気満々な黄泉川に上条は申し訳なさそうに言う。

「柔道のルールをいまいち知らないのですが…」

「なんだ、簡単じゃん」

黄泉川は上条の胸元を掴んだまま答える。

「背中を付くと負けじゃん!」

上条は足を払われる。
今度は完全に不意打ちだったため、倒れることは確定。

そう判断した上条は、とにかく背中を付けないように転ぼうとする。

「──ッ」

体を捻り、なんとか肩から落ちることができた。
 

だが

「甘いじゃん!」

そう言って上条は上から押さえ付けられた。
強制的に背中を畳に付けられ、手足を拘束される。

「技が決まらなくてもこうやって寝技ってやつに持ち込んで一定時間抑え込めば一本じゃん」

黄泉川は上条を抑え込みながら言う。

「ほらほら、抜けてみるじゃん」

一方の上条は声を出せないでいた。

原因は黄泉川の胸。
寝技で上に乗る黄泉川の胸が上条の顔を覆い、上条は会話、もとい呼吸ができなくなっていた。
それと同時に、突然のフラグイベントに上条の頭は爆発寸前だった。

酸素は来ない。
それでも悲しきかな男の性、血流の速さは勢いを増す。
そろそろ意識がヤバいと感じたところで、ようやく黄泉川が起き上がった。
寝技の一定時間が過ぎたのだろうか。

「まったく、こんなんじゃ先が思いやられるじゃん」

そう言って黄泉川は溜め息をつく。

「さっさと立つじゃん」

口はもちろん、まぶたも押さえられていたため視界がぼやけてはっきり見えない。
とにかく早くしないと怖いので、立ち上がろうとした。





「っとっと…」

不意にバランスを崩し、続けて足がもつれた。
近くに支えは何も無いが、今の上条にそんな思考ができるはずもなく、ぼやける視界で何かに手を伸ばした。
「なっ─」

すると黄泉川の小さな悲鳴が聞こえ、上条が手をついた物も倒れていく。
その瞬間上条は、自分の手に柔道着の感触があると気付いた。

どさり、と結局上条は倒れてしまった。
しかし倒れた時の衝撃は無く、何か柔らかいクッションのような物に受け止められた感じがした。

特に顔のあたり…

(このクッション性…というか圧迫感、何か思い出す気が…)

そこで上条は少し冷静に考える。

足がもつれた、倒れると思って何かを掴んだ、それは柔道着だった、黄泉川の声が聞こえた、倒れた…

何かを理解した上条は、全身から嫌な汗が出る。
(これは…拳骨ものっ!)

などと考えていると、頭の上から声が掛かった。

「いつまで人の胸に顔うずめてるじゃん?
ったく赤ん坊じゃあるまいし」

そして、頭を掴まれ引き剥がされた。
また圧迫されたせいで視界がぼやけている、目の前には黄泉川がいるのだろうが、はっきりと見えない。

そこであることに気付く。

(さっき掴んだのが柔道着なら…)

少しずつ視界がクリアになってくる。

「何してる?さっさと立つじゃん」

上条が手を取ろうと視線を上にすると、クリアになった視界に初めに入ったのは黄泉川の腹。
続けてその上に見える大きな丘二つに目が行きかけたところで、上条は目を逸らした。
「どうした?」

黄泉川が怪訝な表情で覗き込んでくる。

「先に柔道着をなおして下さい!」

「あー?アンタも細かいねぇ」

やれやれと言った調子で黄泉川は柔道着をなおす。

なるほど、さっきの悲鳴は自分が柔道着に手を掛けたからではなく、突然自分が倒れてきたことに驚いただけか。
と上条は納得した。

「というか、何で何も付けてないんですか!?」

立ち上がりながら上条は言う。

「何でって…武道で何も付けないのは常識じゃん」

「え…」

じゃぁつまり下もですか?

と心の中で思った上条だったが、黄泉川がすでに自分の胸元に手を持ってきているため、慌てて対応する。
柔道のやり方は知らないが、とにかく黄泉川を倒そうと上条も足を払ったりするが。

「うっ…」

強く引っ張ったりすると、また柔道着がはだけそうで怖い。

そして

「甘いじゃん!」

倒されて寝技を掛けられる
そうしてまた乳地獄へ陥る上条当麻だった。

(これは言ってもいいですよね。さんはい、不幸だー!)
 

 

 

(不幸だ…)

学園都市第三位、電撃姫こと御坂美琴は心の中で呟く。
その原因というのも

「あの、御坂さんですよね!第三位の!」

「私も電撃使いなんです!」

「噂の超電磁砲っての見せてください!」

「レベル5になったまでの経緯を!」

何人もの生徒達に囲まれての質問攻め、かれこれ20分以上はこの状態だ。
試験はいくつもの項目を何人かで行うようで、人数が多いためか待ち時間が長い。
退屈だなぁと思った矢先、近くの生徒に声を掛けられたのが運のツキ。

(はぁ…)

美琴は心の中で溜め息をつく。

「ま、また次の機会にでも。
今日はほら…みなさん試験もあることですし」

普段は使わないような丁寧な言葉で丁寧に断る。

「そんな!御坂さんになんて今後会えるかどうか!」

「アハハ…そんな大袈裟な…」
これは厄介だと思った美琴に救済の手が差し伸べられる。

「次のグループの人、移動して下さい」

試験監督の声が掛かり、美琴とグループの生徒たちがぞろぞろと運動場の中心に集まる。

「あ、ほら私もう行かないといけませんから…」

ラッキーと小さく呟き、美琴も移動する。

同じグループの生徒も会話をしたそうにしているが、試験を気に(美琴はふりを)しているようで、黙り込んでいた。

「試験内容を説明します」

試験監督による説明が始まる。
どうやらこの試験は自分の能力をとりあえずぶっ放せばいいようだ。

(ま、とにかくやってやるしか無いわけだ)

説明を受けた生徒達が各々で準備運動をする中、美琴は一人ぱんぱんと顔を両手で軽く叩く。

(さ、行くわよ御坂美琴!)
 

 

 

「つ、疲れた…」

更衣室のベンチに座りながら上条は呟く。
柔道の後、逮捕術や警棒術も教えてもらい、遅めの昼食を取ったところでこの更衣室へ戻ってきた。
次は射撃訓練らしく、警備員の戦闘服に着替えろと言われたのだが…

「正直体が持ちませんよ…」

体全体がだるい、このまま寝てしまえそうだ。

もちろんそんなことができるわけなく、ノロノロと立ち上がり自分のロッカーを開ける。
紺色の戦闘服を取り出し、ベンチにもう一度座った。

昼食後ということもあり、眠気が濃い。
ぼーっとしていると目が霞んでくる。

「あー…おやす」

「上条!遅いじゃん!」

眠りに落ちかけたところでハッと覚醒する。

「あ、あぁ…今行きます!」

全速力で着替える上条。
ファスナーを首もとまで上げながら出ると、既に着替え終わっていた黄泉川は腕組みをしながら待っていた。

「遅いじゃん!
緊急時にこんなにモタモタしてたら部隊全体が遅れる、そして事件の早期解決ができなくなる。
個人のミスは全体のミスじゃん!わかった!?」

「は、はい…」

厳しい世界だと実感しながら、上条は力無く返事した。
「それじゃ、射撃訓練場に行くじゃん」

先を行く黄泉川の後ろを、上条はふらふらとした足取りでついて行く。

「射撃の経験は?」

歩きながら黄泉川が尋ねる。

「ありませんよ。
というか、俺の年齢で経験がある人もそうそういないと思いますよ」

「そうか」

素っ気ない返事だが、どことなく安心しているように聞こえた。

その時。



─ズドン



と、遠くから聞こえる轟音。

 

「─ッ」

焦りを見せる上条だが、黄泉川のほうは気にせず歩いたままだ。

「い、今のもアンチスキルの武器の一つなんでしょうか?」

黄泉川の態度に冷や汗を掻きながら上条は尋ねる。

「んー?あぁあれは能力者じゃん」

「え、どうしてまた…」

「近くにジャッジメントの訓練所もあるじゃん。
くわえて、今日は入隊の試験らしい」

その試験で能力をぶっ放しているのか、と上条は納得するが一つの疑問を持つ。

「え、でもジャッジメントってこんな時期に人員募集しませんよね?」

「それが、ジャッジメントにも臨時の人員募集がかかったじゃん」

「やっぱり、例の事件ですか?」
上条の問いに、黄泉川は少し考えてから答える。

「そう。表向きは年末の雑務処理用の募集だけど、資格が大能力者以上、どうみても事件の捜査にあてるためじゃん…っと」

そこで黄泉川は何かを思い出したようで

「そういえばアンチスキル上層部がジャッジメントに正式に捜査協力を依頼してるじゃん。
ま、事件の早期解決を目指すなら必要な措置かもしれないけど…」

トーンダウンする黄泉川。
上条はこの教師がいかに生徒思いであり、今苦しんでいるのかを悟った。

本来自分が全力で護るべき生徒達が、自分達と同じ戦場に送り込まれる。
それでも、生徒達の能力を借りなければ事件解決も難しい。
そんなジレンマにとらわれているだろう。

しかし今の黄泉川はそんなことを思わせない、いつもの黄泉川。
そんな強さを上条は素直に羨ましいと思う。

「さ、着いたじゃん」

黄泉川がある部屋の前で止まった。

今まで施設の中ではカードを挿し込むと開いたが、ここは特に厳重だった。
IDカードを挿し込み、黄泉川が所属部隊と自分の名前を告げ、手のひらを小さなパネルに当てると扉が開く。
中は事務所のような所とガラスで区切られていて、奥から係りの警備員がこちらを見ていた。

「こんにちは黄泉川さん」

微笑む警備員。
初老の男性で、見た目から判断すると「優しい」と感じられる。

「どうも。例の件の…」

黄泉川が言うと、男は何かを理解したようで奥の部屋へ向かった。
しばらくするとアサルトライフルと拳銃を持って帰ってきた。

安全のためかマガジンは抜いてあり、少し間抜けな見た目だ。

「はい、お待たせ」

男がガラスの小窓へ銃を置く。

「これが、アンチスキル正式採用の武器じゃん」

黄泉川はアサルトライフルを手に取り上条へ渡す。

(これが…ライフル…)

ずっしりと、鉄の塊特有の冷たさと重量感を感じる。

「はい、マガジン。ゴム弾と実弾ね」

次にマガジンを受け取った黄泉川は、適当にポケットに突っ込んだ。

「以上だよ」

「ありがとうございます。じゃ、次の部屋に行くじゃん」

拳銃を持ちながら、黄泉川は入ってきたのとは別の扉を開ける。
 

 

次に入った部屋はもう射撃訓練場だった。
自分達以外には一人の男が練習している。

「銃の細部の説明は割愛するじゃん。
まぁメンテナンスは係の隊員がやってくれるし、アンタに銃自体あまり持たせたくない」

溜め息をつく黄泉川。

「アンタは弾の装填の仕方と撃ち方を覚えること」

黄泉川はポケットからマガジンを取り出し、机の上に並べる。

拳銃とアサルトライフルのマガジンがそれぞれ4つずつ。
マガジンには赤もしくは青のテープが巻かれていた。

「このテープは?」

「青がゴム弾、赤が実弾じゃん。
ゴム弾は非致死性、通常はこれを使うじゃん」
 

上条は青テープが巻かれたマガジンを手に取り中を見る。
見た目はゴムだが触ってみるとかなり固い。

「ゴムだけど至近距離で撃つと死傷する可能性があるじゃん。
発砲はしっかり考えてからすること」

続いて赤テープが巻かれたマガジンを見ると、そこには銅色の弾が入っていた。

「実弾は許可が無い限り絶対に使わないこと!わかった!?」

「は、はい!」

黄泉川の威圧感に押される上条。
この射撃場に入ってきてから、黄泉川はピリピリしたままだ。

「じゃ、装填方法から教えるじゃん」

かくして射撃訓練が始まった。

 

 

上条が射撃訓練を始めたころ、美琴は風紀委員訓練施設内のシャワールームにいた。

「ふー」

心地良い温度に設定されたお湯が身体を優しく包む。

「ま、いつも通りって感じかな」

腕を伸ばしたり回したりしてストレッチをする。
ついでに少しビリビリとしたいところだが、水気のある床を通じて他の所へ電気が行ってしまうので我慢。

ちなみにこのシャワールームは常盤台にあるのと同じようなもので、個室は胸くらいまでの仕切り板で仕切られてある。

「あとは結果を聞くだけか…」

シャワールームに備え付けられてある時計を見ると、針は15時をさそうとしていた。

「そんなに遅くないし、さっさと結果聞いて黒子誘って遊びに行こうかな」

独り言を呟いたつもりだったが

「あら、御坂さん。
合格者はこのあとレクチャーを受ける手筈ですわよ」

「うっ」
 

まさかと思い隣の個室を恐る恐る見ると、やっぱり婚后光子がいた。
豊満な胸と綺麗な長髪に目を奪われたのは悔しいので認めたくなかった。

とにかく婚后に言われたことを整理する。

「え、レクチャー?」

「そうですわ。
合格!はい明日からよろしく!
というわけにはいかないのでしょう」

「えー」

まだ合格したわけではないが、やっぱり受けたからには合格したい。

それでもその後のレクチャーは面倒だ。

「(遅くなるとアイツにも遭遇できないかもしれないし…)」

ごにょごにょと呟く美琴に気づかず、婚后は言う。

「予定では門限より遅くなるそうなので、寮には連絡したほうがいいですわよ」

「うー」

あの寮監に事情を説明するのも面倒だ。
婚后もそのことを考えてか表情が曇っている。

シャワールームの壁に頭をぐりぐりと押し付ける意味不明な行動をしていると、ピンポンパンと案内音が響いた。

『只今より放送にて合格者の発表を行います。なお、結果は正面玄関にも貼り出しています』



数分後二人の少女が一つの携帯に気難しい顔で話しかけていた。

 

 


「またハズレじゃん。これじゃ持たせられないな…」

「うー」

上条はぎこちない様子で拳銃を構えていた。
さっきから人の形が書かれた的を狙って発砲しているがなかなか当たらない。

「今は実弾だからマシだけど、ゴム弾になればもっと当たりにくくなるじゃん」

そして実戦ではゴム弾のほうが使用率が高い。

とはいえ、黄泉川の指導にも問題があると上条は思う。
習うより慣れろじゃん。そう言って、弾の装填方法以外は何も教えてくれなかった。

映画やドラマの見よう見真似でやってみるがなかなか当たらない。
一向に上達しない上条を見て黄泉川は小さく溜め息をつく。

「ちょっとトイレ行ってくるじゃん。
まぁアンタならそれ使って妙なことしないだろうから、練習しとくように」

黄泉川はそう言って射撃場から出て行った。
「初めてだから仕方ないのですよ」

上条は自分に言い聞かせるように呟く。

戦うときは拳一つで戦ってきた身なため、銃撃戦など一般人レベルだ。
それでも構え直し引き金を引く。


またハズレ。


上条は構えたまま溜め息をついた。

ちなみにゴーグルはしているが耳栓はしていない。
黄泉川曰く、実戦で耳栓なんて着けないじゃん。らしい。

自分も休憩がてらトイレにでも行こうかと思ったが、後ろから声が掛かった。
「肘を伸ばしすぎだ、肩の力抜いて、自然に肘を曲げる」

「え?」

後ろを振り向こうとしたが、今はアドバイス通りに実践する。

「発砲の直前、息を止めて神経を集中させろ」

言われた通りにする。

(肩の力を抜いて、自然に肘を曲げて…息止め集中、発砲!)

引き金を引いた。

的の胴の辺りではあったが、初めて当たった。

「ほら、当たるだろ」

上条は後ろを振り返る。
そこには自分達より先にここで練習していた警備員の男だった。

「あ、ありがとうございます」

「いいよ。どうせ黄泉川さんのことだ、まともに教えてくれなかったんだろう?」

いたずらっぽく笑う男。
「え、えぇまぁ。
どうせ…って黄泉川先生は、まともに教えない人なんですか?」

「教えない、じゃなくて教えられない。
といったところか」

上条は男から、黄泉川が子供に対しては銃を向けない主義であること、強能力者程度なら暴走能力者でも敵では無いことを聞かされた。

「そ…それは凄いスキルの持ち主で…」

「射撃もうまいんだけどね。
まぁ、本人が使うことが少ないから教えられない感じだな」

おしいんだよな、いろんな所…
と男がぼやいているとドアが勢い良く開けられた。

「好き勝手言ってくれるじゃん!才郷!」

才郷と呼ばれた男はギョッとドアのほうを見る。
「あ、あぁ黄泉川さん。
これはアドバイスをしてた結果こうなっただけですよ」

「ほほぅ…それで、私の何がおしいんだって?」

「な、何もありません!
それじゃ、俺はあがりまーす」

そそくさと銃器をまとめる才郷。

「俺は警備員第84支部の才郷良太だ。
以後、何かあったら頼むよ」

両手に銃を抱えながらも右手を差し出す才郷。

「あ、上条当麻です」

上条も右手を出し握手する。

「上条って…例の高校生のやつか」

才郷が驚いた表情で黄泉川を見る。
黄泉川は黙ったまま小さく頷いた。

「どうりで若いわけだ、まぁあまり無茶をしないようにな。それじゃ」

そう言いながら才郷は出て行った。

「アイツは84支部で分隊を指揮してるじゃん。今後も現場でよく会うだろう」

良いヤツじゃん、と黄泉川は付け加えた。

「それじゃアドバイス貰ったみたいだし、続きやるじゃん!」

                                                                                          つづく

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