キョン「お前まさか……ハルヒの事が好きなのか?」3


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ようやく視力が元に戻り、辺りを見ると、何と警官たちが全員真っ黒こげになっていた。
と、一人だけ、見慣れない人物が近寄ってくる。

「ようやく見つけたと思ったら……何で警察に囲まれてんのよ、アンタは」

ウニ条の知り合い?

「御坂……! 助かった。サンキューな!」

「短髪にしてはすごいんだよ!」

ねえ、誰? この目つきの悪い女の子。

「……彼女は学園都市に七人しかいないレベル5の能力者。その第三位、御坂美琴。通称『超電磁砲』の異名で呼ばれている」

知っているのか雷電! じゃなくて長門!
というかそんな奴がなんでここに?

「上条当麻とインデックスは、御坂美琴と白井黒子という仲間と共に学園都市からやってきた」
「これは私の部屋で、彼らから説明されたはず」

覚えてねえよ、そんなの。
しかし、今の超能力か? すげえ威力だな。古泉、意味ねえな!

「で、御坂。白井は?」

「アンタたちとはぐれた後、あの子ともはぐれちゃったのよ。そっちに合流してるかと思ったんだけど」

「心配だな」

「うん。でもあの子だってジャッジメントだし」
「……ところで、そっちは人数が増えてるみたいだけど?」

「ああ。ここに来てから、事情を知って、協力してくれている人たちだ」
「こいつがキョン。学生服が長門さん。メイド服が朝比奈さんだ」

「そう、アタシは御坂美琴。宜しく」
「……というか、キョンっていったっけ? 何でメイド服着てるの? 変態なの?」

俺は御坂に飛び膝蹴りを喰らわせた。
顔面にクリーンヒットし、もんどりうって大地に転がる。

気丈にも、御坂は大量の鼻血を流しながら立ち上がり、叫んだ。

「いっ、いきなりなにすんのよ!」

御坂の身体から、音を立てて電撃がほとばしる。
俺に向かってきたその電撃を、ウニ条がとっさに間に入り止めた。
もしかして、俺を守ったのか? 何こいつ。俺に気があるんじゃないだろな? 気持ち悪いよ、馬鹿か?
ウニ条は俺に背を向け、御坂に向かって叫ぶ。

「おい御坂! 大体、初対面で変態呼ばわりするお前が悪い!」

「なっ……! でも、それくらいで女の子に飛び膝蹴りする!?」

他の奴はどうか知らんが、俺はするんだよ、お嬢さん。

「こいつは……キョンは、『奴』の能力にやられちまってるんだ!」

「え……アタシたちが追ってる、あの『能力者』に……?」

「ああ、そうだ! しかしな!」
「このキョンって男は……理性を極端に押さえつけられ、欲望に身体を支配されながらも!」
「窮地に陥っている友達を助けに行く為に、今ここに立っている!」
「それがどんなに難しい事なのか、学園都市での『実験』を見たお前には分かるだろう!?」

「そんな……あの『能力』の影響下にいながら、誰かを助ける為に……?」
「……ごめんなさい。事情を知らなかったとはいえ、アタシが悪かったわ」

……
まあ、いいさ。
というか飛び膝蹴りは、別に怒ったわけじゃないんだがな。
変態と罵ってくれたお礼だよ。
俺の中のM気質と、股間の愚息に、ずーんときたんでな。

「……やっぱり変態じゃない」

いいねえ! もっと! もっと言ってくれ!
可愛い女の子に罵られるのは、俺にとって御褒美なんだよ!
ほぅら……股間の愚息を見てくれ! こんなにいきり立ってる! 先走り汁で森さんのスキャンティに染みが出来てるだろ?
いーやっほぉい! そぉーれ、やっちゃうぞー! それーぃ!
腰をぐるんぐるん回転させる俺の姿を見て、御坂は呟いた。

「……こんな被害者、学園都市にもいなかったわ」
「気持ち悪いのを通り越して、哀れすぎる……!」

何か泣き出したが、その泣き顔さえ俺のリピドーには極上の御馳走だ。
気がつくと俺は、射精していた。
ウニ条の背中に、俺の放出した粘液がヒットする。
お前、邪魔だよ! 御坂の顔面にぶっかけさせろよ! 空気の読めない海産物め!

 

 

 

 

 

かなりの間、踊り狂った俺は、当初の目的を思い出した。
そう、古泉を助けなくてはならない。
あいつに、命を助けられた事もあるが、それ以上に大切な事……。
そう。妹のスクール水着を売ってやらなければならない。
同じ趣味を持つものとして、一度は手に入れたスクール水着を駄目にしてまで俺を逃がしてくれた古泉。
そいつに代わりの、新しいスクール水着を手に入れさせてやりたい。
値段は七十万円。インデックスさんの修道服は是非、手に入れたいからな。
悪く思うな、古泉よ。

さて、あたりは気絶(もしくは息絶えた)警官だらけで、俺たちを遮るものは、何も無い。
近くには、俺が逃げてきたコスプレ会場のあるビルがある。
突入すべきだ。
既にかなりの時間が過ぎている。
手足の骨が折れていた古泉が、生き残っていてくれていればいいのだが。
通帳と暗証番号を聞きだすまで、死なせるわけにはいかない。

と、俺が思案していると、御坂が言い出した。

「ねえ。キョンって『能力』のせいで、こんなになっちゃってるんでしょう?」

「ああ。長門さんから聞いた限りでは、普段のキョンは至って普通の高校生だそうだ」

「ならさ。アンタの右手で、その影響を打ち消せるんじゃないの?」

「あ!」

「そういえばそうなんだよ!」

「何の話をしてるんですかー?」

一体どういうことだ。
朝比奈さんと同じ立場で状況が分からないのは、とてもムカつく。
説明しろ、ウニ条。

「いや、俺の右手は『幻想殺し』(イマジンブレイカー)って能力を持っててな」
「それが異能の力であれば、右手で触れば、超能力・魔術問わず打ち消すことができるんだ」

ほほう。
俺はウニ条に音も無く近寄る。
鳩尾に蹴りを入れる。
くの字に折れ曲がったウニ条の身体を、更に続けて蹴り上げる。
五メートルほどの高さまで上に吹き飛んだ奴を追い、俺は飛んだ。
空中で追い抜き、両手を組んで力の限り、ぶん殴る。

地面に叩きつけられたウニ条の身体は、恐らく至る所が骨折し、内臓も痛めたはずだ。
着地した俺は、ウニ条に近寄り、森さんのハイヒールで更に蹴りを入れ続ける。

「……んな、何してんのよっ!?」

御坂が叫ぶ。遅えよ。

こいつはなあ、俺を裏切ったんだ。
何が『自分も普通の高校生』だよ? 『幻想殺し』って何だよ? そんなチート能力持ってて、普通を名乗るたあ、おこがましいぜ!

「っ……でも! そこまでする事ないじゃない!」

おうおう、必死なこった。
さてはこのウニ条にホの字ですか?
愛する人をボコボコにされて、怒っちゃいましたかぁ?

「……ざけんじゃないわよ……」

御坂から音を立てて、電撃が立ち昇る。
インデックスさんがウニ条に駆け寄り、身体を揺する。

御坂がポケットから、何かを取り出す。
……
コイン? 何だそりゃ?
俺は攻撃に備え、スカートをたくし上げた。

「……や……めろ……みさ……か」

ウニ条が声を出す。
気を失っていないとは、たいした奴だ。ああ、お前は普通じゃないんだったよな。

「……おれが……わるかっ……たんだ……自分……の、能力を話し……ていなかった」

ウニ条が立ち上がる。

「わ……りいな……キョ……ン」
「別に……騙す、つもりはっ……なかったん……だ」
ウニ条は続ける。

「俺だって……こんな力を持って……なけりゃ、普通……に外の世界で……暮らせていた、はずなんだ……」
「だから……キョンが……とてつもなく羨ましくて……」
「すま……ない……」

「とうま! とうま!」

……
『力』を持った者の、普通への憧れか?
馬鹿馬鹿しい。本当に、馬鹿馬鹿しい。この糞ったれの、寿司の具野郎が。

「気持ちは分かる。けど、彼の気持ちも分かってあげて」

……
長門。
ウニ条の怪我、治してやってくれ。
分かりきった事だったんだ。
俺の役割は、普通の人間。
まわりに集まるのは、色んな力を持つ奴らなんだ。
その溝を埋める事はできないんだろうさ。

長門に治療されたウニ条は、申し訳なさそうな表情をしていた。
もう、いいさ。気にはしてない。
……
それじゃ、俺に影響を及ぼしている『敵の能力』、打ち消してもらえるか?

「ああ。任せてくれ」

ウニ条の右手が、俺の身体に迫る。お前が美少女だったら良かったのに。

「待って」

長門が止める。
どうした? ウンコでもしたいのか? ここでしろよ? 見ていてやるから。

「残念ながら、排泄ではない」
「貴方から『能力』の影響を取り除くのは、止めておいた方が良いと提案する」
「……どういう事よ」

御坂が問う。
長門が答える。

「……彼は、本来は普通の感性を持った、普通の人間」
「今ここで、『力』の影響が消え、理性が元に戻ってしまえば」
「彼の心は、今まで自分がしてきた行為に対して、拒否反応を起こす」
「本来の彼は、とても優しい人。精神の崩壊も有り得る」

「しかし、長門さん。それは『能力者』を倒しても、同じ事だぞ?」

「……もう一つ。彼は、理性が極端に抑えられたせいで、本来よりも攻撃的な性格を獲得している」
「それは、身体能力にも及んでおり、貴方がさっき経験したような、見事な打撃はそのお陰と言える」
「私が言いたいのは、ここで彼を再起不能(リタイア)させるより、このままの状態で戦力としたほうが良い、という事」

朝比奈さんがしゃしゃり出る。

「確かに、今のキョンくんは鶴屋さんレベルの動きをしてます。わたしも、これを有効利用しない手はないかと思います」

ウニ条と御坂は、顔を見合わせ、暫くして頷いた。

「分かった。俺としても、キョンの心が壊れてしまうのは避けたい」
「全てが終わった後、ゆっくり心の整理をつけた方がいいんだろうな」
「それに……さっきの攻撃にはたまげたぜ?」

褒めるな。どうせなら罵ってくれ。

「……まあ、それはそれでいいとして。これからどうするの?」

決まってるだろ、電撃のお嬢ちゃん。
このビルの中にいる、俺の友達……知り合い……顔見知り……を、助けに行くんだ。
最悪でも財布くらいは回収したい。
みんな。ついて来てくれるか?

何だか微妙な顔つきをしたこいつらは、とりあえず頷いた。
さあ! 突入だ!

「あ、あのー……わたし、何がどうなってるのか、さっぱりなんですけど……」

とりあえず足払いをかけて転ばせた。
朝比奈さんは見事に顔面を地面に強打した。
高い足音が、階段に響き渡る。
俺の履いているハイヒールの音だ。
朝比奈さんは、そうでなくともよく転ぶので、ハイヒールは脱ぎ、今は裸足(ソックスは履いてるが)だ。

階段を下る。
ここは、数時間前、俺が不様にも逃げてきた階段だ。
あの、恐ろしい魔空間へと続く、下り階段。
正直、来たくはなかった。
しかし、古泉の財布が、俺を待ってる。

階段は狭く、二人並ぶのがやっとだ。
最前列は御坂と朝比奈さん。
女の子同士で気があったのか、何やら楽しげにお喋りしている。
緊張感の無い奴らだ。声を潜めているぶんだけマシだが。
それよりも、二人とも鼻血をどうにかしろよ。
後続の俺たちが歩きにくくて適わん。

二番目に歩いているのは、ウニ条とインデックスさんだ。
インデックスさんの後姿を見ていると、ムラムラしてくる。
ぶっかけたい想いを意志の力を総動員して我慢する。修道服を無駄に汚す訳にはいかないからな。
ウニ条の背中には、さっき俺がぶっかけた精液が半ば固まりかけている。
全くもって、気持ちの悪い奴だ。

そして最後尾に、俺と長門。
この配置は俺が提唱したものだ。
敵が中にだけ潜んでるとは限らない、後ろの警戒も必要だと。
まあ、それは別に正しいのかも知れないが、俺が思っていたのは前方にいるほど危険性が増す、ということであり、
一番後ろに居れば、ヤバくなったらすぐに逃げ出せるからに過ぎない。

ウニ条や御坂、インデックスさんは今日知り合ったばかりだ。
死んでも別にいい。
朝比奈さんは、朝比奈さん(大)の存在がある以上、死ぬ目には合わないだろう。多分。
どうせ要らん怪我をするのなら、誰かの盾になったほうが朝比奈さんの為にもなる。
歩みが止まる。

「ねえ。ここ?」

御坂が確認するかのように尋ねる。
見れば分かるだろうに。
『機関主催 第三十一回 秘密コスプレ会場』と書かれた看板が見えんのか?

「さて……どうする? 一気に突入するか?」

ウニ条よ。先陣切るなら構わんぞ?

「全員で突入すべき」

長門……それじゃ、俺が逃げられんではないか。

全員が何故か白い目で見る。
何だか責められている気がしたので言い直す。

俺だけじゃない。全員が逃げられない状況になっちまったらどうするんだ?
全滅したら、意味は無いんだぞ?

「……俺が突入する」

ウニ条、よく言った。お前は男の中の男だな。家に来て妹をファックしていいぞ。

「じゃ、じゃあアタシも!」

御坂が名乗り出る。こいつはウニ条と一緒に居たいだけなんだろうな。
まあ電撃があるし、いいだろう。

ではお前ら二人で突入、危険を排除。もしヤバそうだったら『逃げろ』と叫べ。逃げるから。
十分以上音沙汰が無い場合も同様だ。

作戦が決まり、二人はドアを開き、部屋の中に入った。
それにしても腹が減った。焼肉食いてえ。
『え……何よこれ』

『何なんだよ、これは!』

ヤバそうだ。長門、朝比奈さん、インデックスさん。逃げるぞ。

「ちょっと! とうまたちはまだ逃げろなんて言ってないんだよ!」

「確かに。もうしばらく待つべき」

「……おしっこ漏れましたぁ……」

三人からの意外なバッシングを受け、仕方なく俺は声をかける。

おい! 何があった!?

『……えーと。なんなんでせうか……』

『説明するの、難しいわよね、これ』

『キョン、とにかく入って来いよ。特に危険は無さそうだ』

本当だな? もし危険が待ち受けていたら、お前のご自慢の右手で俺の愚息をシゴいてもらうからな?

俺たちはドアから室内に入った。
俺はもちろん、一番最後だ。

中は薄暗く、何があるのかよく分からなかった。
明かりをつけなければ。
俺は入り口付近の壁にスイッチがあるのを覚えており、手探りでそれをオンにした。
明るくなった室内は、おおかたは俺の記憶通りの光景だった。
無機質なコンクリートの壁、机や椅子の類はコスプレダンスの邪魔になるので隅の方に片付けられている。

ウニ条と御坂を見ると、地下室にしては高い天井を仰ぎ見ていた。
視線をそちらに向ける。

そこには、人間がぶら下がっていた。

いわゆる亀甲縛りというやつだ。
背骨を逆にしならせる形で、たった一本のロープで吊るされている。
そいつは全裸で、目隠しをされ、ボールギャグで口を塞がれている。
乳首には穴が開けられており、そこからは鎖で『十kg』と書かれた重りが垂らされている。計二十㎏か。
死んではいないらしく、その証拠にそいつの股間のモノが、腹に付くほど反り返っていて、時々、ぴくぴく動いている。
よく見ると、そのモノには『変態』と書かれてあった。

「……いや、本当になんなんだよこれ」

「……明るい中で見ると、更にシュールよね……」

いや、少しは恥ずかしがらないか御坂よ。

「ユニーク」

「ご、ごうもんなんだよ! こわいんだよ!」

「またおしっこ漏れましたぁ……」

いや、みんな落ち着け。
これで一応は目的達成だ。

全員の目が俺に向けられる。そうだ、俺をもっと見ろ。そして蔑め。

あれが、俺たちが助けようとしていた……古泉一樹だ。

 

 

 

 

床に、染みができている。
朝比奈さんの尿ではない。
古泉の真下にあるのだから、これは古泉の体液だろう。
染みを構成しているのは、汗、涎、精液といったところか。
俺は言った。

とにかく、古泉を降ろしてやりたい。

これにはみんな、反対する意見もなく賛成した。
御坂が電撃を放ち、ロープを切断する。
およそ五メートルの高さを落下した古泉は、床に叩きつけられた時に陰茎が折れたらしく、海老みたいに見苦しく暴れた。

「……下で受け止めてやればよかったな」

ウニ条が呟く。
その必要はなかったろうぜ。
これは古泉にとっては御褒美だ。
無論、俺にとってもそうなんだがな。

俺はのた打ち回る古泉の頭を、サッカーボールのように蹴飛ばした。

おい、古泉。俺だ。分かるか?

「んー! んふー、んんんふ! んっふんっふ! んっふ、んー!」

何を言ってるのか分かんねえよ!

とりあえず数回、遠慮の無い蹴りを入れた後、古泉のボールギャグを蹴り外してやった。
古泉の前歯が、五、六本飛んでいった。

インデックスさん、朝比奈さんがこちらを何か恐ろしいものを見るような目で見ている。
誤解されたら少しばかり困るので、俺は弁解する事にした。

サッカー、日本強いですね。俺が選手だったら、ボールが破裂しちゃいますよ、はは。

何故だか、更に距離を置かれた。
二人はサッカーに興味は無さそうだ。
いつの間にか、長門が古泉のロープを解きにかかってた。
まあ、全裸の男に近づける奴なんてこの中には……ウニ条と俺しかいないだろうからな。
俺は古泉の糞野郎なんぞに触りたくはないし、ウニ条は何か御坂と話し込んでる。

そう言えば古泉は右手と両足が折れているはずだ。
長門、そこんとこ考慮してやれよ。

「了解。適度に痛みを与える」

やれやれ、羨ましい奴だ。
古泉は艶かしい喘ぎ声を上げながら、長門の思うままにされている。
朝比奈さんはまたもや失禁していて、インデックスさんは何やらお祈りの言葉らしきものを呟いている。

「……いやあ、助かりましたよ」

立ち上がることはできず、床に横たわったままでの、いつものスマイル。
というか長門よ。目隠しも外してやれ。

「断固、拒否する」

じゃ仕方がない。とりあえず怪我だけでも治してやってくれ。
あ、朝比奈さんと御坂の鼻血もな。

骨折が治り、立ち上がった古泉は恭しく一礼をした。まったく、こんな時にも気障な野郎だ。

「助けて頂いてありがとうございます。……気配からすると、彼、長門さんと朝比奈さん以外にも誰かいるようですが?」

とっとと目隠しを取れ、馬鹿か?
俺は古泉の左乳首からぶら下がっている重りを掴んで思いっきり引っ張った。

「あふん! もっとぉ! 右もお願いしますぅ!」

そんなに良いのか、この変態め。ほらほら、どうだ?

引っ張りすぎて古泉の両乳首が千切れた。断じて俺のせいじゃない。
「……では、貴方を無事、逃がした後の話をしましょう」

両胸から血を垂らしながら古泉が語りだす。
長門に目を向けたが、その顔には治療する意思は全然見えなかった。

「新川さんは……僕を縛り上げ、ボールギャグを咥えさせ、乳首に重りを付け、天井から吊るしました」
「恐らく、すぐに逃げられないようにでしょう」
「実際に快感が次から次へと襲ってきて、僕は逃げるどころか悪魔の享楽に酔い痴れる事で精一杯でしたから」

おいおい、みんな引いてるぞ。
全裸でそのスマイルはヤバいって。

「その後……新川さんの携帯に電話が入ったようで」
「僕はそのまま放置された……ここまでですね、僕の知ってる事は」

この役立たずが。

「……ねえ。この人だけでも、『能力』の影響を除去しない? 見てて吐き気がするんだけど」

「御坂もか。俺もそう思うが……」

いいんじゃねえか? こいつは機関ってとこで訓練を受けてるから、戦力ダウンにはならんだろ。
というか、今の状態では、ただの変質者だ。勃起を隠せ。

「じゃ、触るぞ」

「んっふ、どうぞ」

「股間を突き出すんじゃねえよ!」

ウニ条が触ると、古泉の身体が一瞬、震えた。

「……これは……何ともお恥ずかしい姿をっ、いやあのっ服! 誰か服を!」

いきなり股間を隠して狼狽し始めやがった。悦んでいたくせに。
長門、服を出してやってくれ。

「……やー」

何でいきなり可愛く拒否るんだよ。話が進まないから頼む。
次の瞬間、古泉が着ていたのはピッチピチのマイクロビキニだった。

 

 

 

「……あれ、黒子が前に着てたのとそっくり……」

「白井ってあんなの着てたの!?」

「ユニーク」

「ほとんどヒモなんだよ!」

「生理がきちゃいましたぁ……」

俺はなかなか良いと思うぞ、古泉。

「なっ長門さん!? これじゃあまりにも……!」

「じゃあ、消す。全裸でいればいい」

「何ですかその二択……ええいっ、局部が隠れるだけマシです!」

服の問題が片付いた後、古泉に、ウニ条、インデックスさん、御坂の事を説明した。長門が。

「そういう事でしたか……なら、新川さんの奇行、並びに僕と彼の異常な行動も説明がつきますね」
「恐らく、一週間前。その頃から、新川さんの様子がおかしくなりました」
「そして僕、次に彼……。涼宮さんのまわりの人間を巻き込んでいるのは確実ですね」

そのマイクロビキニ姿で分析するな。写真撮っておくからな。

「……まあ、貴方も事が終われば通常に戻るんでしょうが。何だか痛ましいですね」

もっと哀れんでくれ。蔑んでくれ。
まあ、それはともかく、新川さんの行方……ひいては『能力犯罪者』の行方がここで途絶えたわけだが。

「ねえ! ここに何かあるよ!」

インデックスさんの指差す方を見ると、そこには俺のカチューシャだったものの残骸で、文字が記されていた。
……
『北高』……?

「恐らく、罠でしょうが……行ってみる価値はあります」

その意見には同意して、俺は古泉に馬乗りになってその顔面を殴りまくった。
俺のカチューシャ(残骸だが)を、伝言板代わりにするな!

 

 

 

 

俺は殴っている。
何を?
分からない。だけど。
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
どす黒くそれでいて赤い液体が水溜りを作っている。
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
何で?
俺は何を殴っている?
理由は?
そんなものは最早どうでもいいことだ。
とにかく、殴る。殴れ。
そう。目の前のコレを、ぐっちゃぐちゃにしなければならない。

親父。
お袋。
妹。
シャミ。

俺は今、殴ってる。
それが何かは分からんが、どこかでみんなが俺の姿を見ていてくれているんだ。
宇宙と俺は同一であり、俺が宇宙で宇宙が俺だ。
世界は俺に微笑んでくれている。
殴る。
殴れ。
たとえ、この拳が駄目になっても。

俺の肩に、誰かの手が置かれた。

「……もう、そのくらいで許してあげて」

長門?
何を許すって?
俺はただ、殴っているだけなんだ。
邪魔をしないでくれ。

「古泉一樹が、死んでしまう」
古泉……?
俺は殴るのを止める。

俺が馬乗りになっていたのは、あろうことか古泉だった。
信じられるか? 俺はSOS団の仲間を、殴りまくっていたんだぜ。

古泉はぴくりとも動かない。
死んだのか。

長門が呟く。

古泉の身体が震え、上体を起こす。

「ど、どうぼ。いぎなじ、にゃぐられるとはおぼいばせんでしゅた」

何を言っているのか分からない。
長門よ、意識を回復させただけか? 怪我を治してはやらんのか?

「……このほうが、ユニーク」

確かに、今の古泉の顔面は凄い事になっている。
まず目がどこなのかさえ分からないし、歯はほぼ全て折れ、何本かは口から垂れ下がっている。
顔自体の大きさは普段の二倍半、といったところか。
血と、痣と、何か白いものが見える。あれは骨なのだろうな。

その顔面でマイクロビキニだ。
全く、笑えねえ姿だな。

俺は写真を撮ると、古泉に言った。

痛むか?

「いだいのぼ、とぼりこじて、かゆいでしゅね」

うん。何を言ってるのか分からん。
朝比奈さん、古泉に鏡を。

「ひゃ、ひゃい!」

古泉の顔面を恐れて、朝比奈さんも震えている。
俺だって気持ち悪くて吐きそうなところを我慢しているくらいだからな。

鏡を見た古泉は、しげしげと自分の、潰れた柘榴のような顔面を見つめる。

「なんど、ばあ……。ごれはびどいぼんでしゅ」

流石の俺も、こいつが哀れに思えてきた。
なんでこいつが、こんな目にあわなくちゃならないんだ?
なあ、長門。
古泉の顔面を、元のイケメンに戻してやってくれないか?

「やー」

なんで子リスみたいにほっぺたを膨らます。
可愛いじゃねえかこんちくしょう。
でもな。
考えてみてくれ。
今から俺たちは北校に行かなければならない。
その途中、誰かには必ず見られるだろう。
しかし、今の古泉は、化け物の顔をした男がマイクロビキニを着ているだけだ。
古泉だと気づく奴はいないだろうぜ。

「……それは……面白くない」

だろ? だから治してやってくれ。

「了解。古泉一樹の顔面を修復する」

「おや。ありがとうございます、長門さん。すっかり元通りですよ」

そう言って鏡を見返す古泉の背中には、でかでかと『 古 泉 一 樹 』という刺青が入っていた。
長門、グッジョブだ。
さて、これから北校に向かわなければならんのだが……。
誰が行く?

「全員で行けばいいんじゃないか?」

ウニ条。お前はもっと脳味噌を使うべきだ。
ここに俺のカチューシャ(残骸)でメッセージを残した以上、罠である確率は高い。
俺の目的である、古泉の救出は既に果たした。
『能力犯罪者』だかなんだか知らんが、一般人の俺や、それ以下の朝比奈さんに、何かする義務は無い。

「そうともいえないんだよ! 知ってしまった以上は、あなたたちも既にまきこまれてるんだよ!」

「そうね。このまま、『奴』がアンタたちから手を引くって考えるのは、楽観的過ぎると思う」

「わ、わたしは何とか頑張ります!」

「僕も、涼宮さんに被害が及ばないように動きたいと思います」

……
長門。お前は?

「私の任務は観察。情報操作を制限させられているとはいえ、観察命令は最優先」

やれやれ。皆さん御立派な事で。
悪いが俺は帰らせてもらうぞ。

「キョンくん!」

「今の貴方は常人以上の身体能力を引き出せている。貴重な戦力。お願い、一緒に来て」

……
そう言われてもな。ぶっちゃけ、帰ってオナニーして寝たいんだ。

「……インデックスの修道服を、二十二万で売却する。これでどう?」

なん……だと……。長門……。
破格の値段じゃないか! いいのか、インデックスさん!

「こ、この歩く教会がほしいの? 別にいいけど?」

いやっほぉぉぉぉぉい! さあ! みんなグズグズすんな! 北高まで競争だ! ひゃっはーっ!
階段を駆け上がり、警官の死体を掻き分け、俺たちは進んだ。

叫び声を上げる女子高生。キチガイを見るような目で見る商店の店員。
しかし、誰にも俺たちは止められない!

 

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