佐天「きゅ、吸血殺しの紅十字ッ!」 > 第一部 > 5


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―――第七学区、とある広場




佐天「―――はい、お待たせしました。白井さんの『あずき生クリームクレープ』」スッ

白井「ありがとうございますの」

佐天「そして、こっちが御坂さんの『ストロベリーチーズクレープ』」スッ

御坂「あ、ありがと……」

佐天「で、これが―――」

初春「はいはい! 私の『カスタードアイスブルーベリー生クリームチョコクレープ』です!!」

佐天「一度も噛まずに言えたことに感心しちゃうよ……。はい」スッ

初春「ありがとうございます♪」

佐天「そして私は『メロン風味の生地だけクレープ』……。ハハッ、不幸だ」ずぅぅん

御坂「佐天さん、ホントにいいの? 私たちの分まで奢ってもらっちゃって?」
白井「そうですわ。初春はともかく、私たちは自分で買うつもりでしたのに」

佐天「い、いや、いいんですよ。迷惑をかけちゃったお詫びです。気にしないでください」

初春「そうそう、遠慮なんてしてちゃダメですよ」はむ

白井「貴女はもっと遠慮なさいな」

初春「でも、はむッ……これで」

初春「貸し借りなしですね」ニコッ

御坂「あッ……」

白井(そうでしたの。佐天さんに負い目を感じさせないように
 わざとこんな傍若無人な振る舞いを……)

初春「でも人のお金で食べるクレープは格別ですね♪ あぁ美味しいー!!」

白井(しているのかどうかは謎ですの……)

佐天「……白井さん、人間って何日間くらいもやしだけで生活できますかね?
 私、2週間くらいはいける気がするんですよ……」フフフッ

白井「佐天さん、気をしっかり持つんですのよ!」

御坂「そ、そうよッ!! そうだ、いざとなったら
 こっそりうちの寮に連れてきてご飯食べさせてあげるわよ」

佐天「ッ!? 常盤台の学生寮の食事ですか!!
 やったーッ! 食事のレベルが一気に上がりますよ!!」

初春「あッ、私だって常盤台の学生寮でご飯食べたいですよ。佐天さんズルイです!」ウー

佐天「初春だけには言われたくないよ!」ウガー

ウイハルコノヤロー  サテンノクセニナマイキダゾー  サンヲツケロヨハナカンムリヤロー

御坂「ハハハッ……まあ、プラス思考なのはいいことよね」

白井「この場合、『図太い』と言ったほうが正しい気がしますの」やれやれ

佐天「さて、初春をSOLしたところで」

初春「されてませんよ」

佐天「この後どうします? 買い物にでも行きましょうか?」
初春「秋物の服とか? でもそろそろ冬物の準備をしたほうがいいですかね」

白井「そうですわね。私とお姉様は秋物だとあまり買うものもありせんし」

佐天「どういうことですか?」

白井「常盤台中学が外出時は制服着用が原則なのはご存知でしょう?
 冬はマフラーや手袋などである程度自由な着こなしもできますが
 秋は基本的にどうしようもありませんの」

御坂「でもついつい着る機会のない私服とか買っちゃうときもあるけどね」

佐天「んー、じゃあ冬物の小物でも見ます?」

初春「あッ、こんなのどうですか? みんなそれぞれで買って交換するっていうのは」

白井「面白そうですわね。初春にしては良いアイディアですわ」

初春「甘いものたくさん食べて、頭の回転が早くなってますからね」フンス

佐天「イラッと来る……」
御坂「それ以外はブラブラ色んなお店でも見て回りたいわね。
 最近そういうゆっくり出来る時間ってあんまりなかったし」

白井「そう言えばこの4人で一日中遊ぶのも久しぶりではありませんの?」

佐天「あー、それこの前に初春と遊んだときも思いました。
 誰かさんが最近忙しそうにしてるせいですかねー」ニヤニヤ

御坂「誰かって…………えッ、私!?」

初春「そうですよねー。それに何だか以前よりボーッとしてることが多くなりましたし。
 正に『恋する乙女』って感じですよね」ニヤニヤ

御坂「こここ、恋ぃぃッ!?」ドキッ

御坂「そ、そんなわけ―――」

白井「アノルイジンエンガ――ッ!!」

佐天(『アノルイジンエンガー!』ホントにキターッ!)

御坂「ホ、ホントにそんなことないからッ! 私、本当にいつでも暇だし!
 ま、まったく予定なんて入ってないから!!」あせあせ

佐天「それはそれで悲しいですね……」
佐天「いやーでも悔しいですよねー。御坂さんの心が、見知らぬ男の人に奪われるなんて。
 私の御坂さんは誰にも渡したくありません!」キャー

御坂「う、奪われるッ!?」

初春「そうですよ! 私の御坂さんはそう簡単にはあげられません。
 一二に及ぶ過酷な試練を突破しないと許可できませんよ!」ワー

御坂「だから、そんなことは……!」

白井「何を言ってますのッ!! お姉様は私だけのものッ!! 誰にも渡しませんわ!ッ!」ゴルァ!!

佐天初春(怖ッ!!)

御坂「だからそんなことないってッ!! それにあんたのものでもないし!!」

白井「そんなこと仰って、お姉様のいけず~♪」ウネウネ

御坂「うるさいッ!!」グイーッ

白井「ふぁたくしふぁ、ふぉんしんをもうひあげたたけてすほひー」むにょーん

佐天「ンフフフッ……でも白井さんはいつまでそんな風でいられるんですかね?」

御坂「?」スッ

白井  みょーん

白井「どういうことですの? 私のお姉様に対する愛は永久不滅ですのよ?」すりすり

佐天「でも白井さんの気持ちってどっちかって言うと御坂さんへの『尊敬』ですよね?」

白井「もちろんお姉様への尊敬の念は有り余るほどですわ。
 レベル5の第三位にして常盤台中学のエース、成績優秀、容姿端麗
 それでいて驕ることなくすべての人に別け隔てなく接することのできるお姉様は
 私の理想ですのよ」フンッ

御坂「うッ……/// そういう風に真正面から言われるとすごく照れる……」

佐天「そこなんですよ! つまり白井さんにとっては御坂さんは『憧れ』の存在で
 恋愛感情とは別物ではないかと私は思うのです!」バーン

白井「なッ!?」
初春「おおッ! 佐天さんが恋愛のベテランに見えます!」

佐天「フフフッ、何を言っているのさ初春。
 私は恋の伝道師3級の資格を持っているんだよ。このくらいのこと分かって当たり前!」

御坂「でも3級なんだ」ハハハッ

佐天「さらに私の見立てでは、白井さんは御坂さんよりも強い男性や
 自分のピンチを救ってくれた男の人にコロッと惚れてしまうと思いますよ」

白井「そ、そんなこと絶対にありませんの!! 私はお姉様一筋ですの!!」ウギャー

初春「私としては白井さんの変態性が少しでも薄れてくれれば嬉しいんですけど」

白井「さりげに何を言ってますの、初春……!」ゴゴゴッ……

御坂(確かに佐天さんの言ってることも一理あるわね。
 あれ? でも待って。『残骸』(レムナント)の事件のとき
 もし黒子をあいつが助けていたら……)

 

御坂  モアモアモア……



………………………………

…………………

…………

上条「その幻想を、ぶち殺すッ!!」ブンッ

薄着の人「うぎゃぁぁぁッ!!」バキッ

薄着の人  バタリ

上条「大丈夫か白井!?」

白井「な、なぜ貴方が、私を、助けに……」フラフラ

上条「俺がお前を見捨てると思ったのか?
 お前が酷い目にあってるっていうのに、黙って見てられるかよッ!!」

白井「なッ……///」ドキッ

白井「あ、ありがた迷惑ですの……/// ど、どうせなら、お姉様に助けて欲しかったですわ」

上条「御坂? いつも俺に勝てない御坂にお前のことを任せられるわけないだろ!」

白井「そんな……お姉様よりお強いんですの……///」

上条「ああ、だからこれからお前を守るのは、ビリビリじゃない。俺だ」キリッ

白井「はぅ……/// 当麻さん……///」ギュッ

上条「白井……。これから毎日、そのツインテールをくるくるしたいんだ。いいか?」

白井「もちろんですの。その代わり
 私も当麻さんのウニウニをつんつんさせてくださいまし……」うっとり

上条「黒子ッ!!」ガシッ

白井「当麻さんッ!!」ギュッ

………………………………

…………………

…………



御坂「いやぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

佐天「ッ!?」
白井「ッ!?」
初春「ッ!?」
佐天「ど、どうされましたの、お姉様―――」

御坂  ガシッ

御坂「くくくく、黒子ッ!! あんたはこれからも私だけを見てなさい!!
 いい!! 分かったわねッ!!」

白井「はぅッ!?」

白井  リーンゴーン、リーンゴーン♪

白井「……初春、今すぐ私を叩いてくださらない?」

初春「ん? 分かりました」

初春  ビュッ!!

パァァンッ!!

白井「ふがッ!?」

佐天「躊躇のないフルスイングッ!! 恐ろしいよ初春!!」

白井「……痛い。脳が揺れるくらい痛かったですの」

佐天「だ、大丈夫ですか、白井さん?」

白井「……これは、夢ではありませんのね。お姉様の言葉は、すべて現実ですのねッ!!」

白井  ガシッ

御坂「はッ? ちょ―――」

白井「初春、佐天さん、今日の予定はすべて中止ですの。
 これから私とお姉様は式場の予約に行ってきますわ。
 初春、貴女はその間にマリアージュの準備を
 佐天さんはたまごクラブ・ひよこクラブの準備をお願いしますの!!」

佐天初春「ら、ラジャーッ!!」ビシッ

御坂「な、なんでそうなんのよッ!! あんたと式なんて挙げてたまるかッ!!」ビリリッ!

ド―――ン!!

白井「ふぃあんまッ!?」ビリビリ

初春「し、白井さんッ!?」

御坂「それと二人も勝手に了解しないでよッ!!」

佐天「す、すいません……」

初春「白井さんの迫力に押されてしまって……」
白井「うぐぅぅ、ですの……。夢にまで見たお姉様から愛の言葉を頂けたと思いましたのに」

御坂「んなわけないでしょ!!」

白井「くッ……しかし黒子は絶対にお姉様を諦めませんのよ。
 そう言えば佐天さんこそどうなんですの?」

佐天「は? 私ですか?」キョトン

白井「以前粗暴な輩から助けてくださった殿方のお話をしていたではありませんか。
 あの方とはそれ以後お会いしておりませんの?」

佐天「な、なんで今その話が出てくるんですかッ!?」

白井「よくよく考えてみれば、自分から助けておいて
 ぶっきらぼうな言葉をぶつけるなど、恋のテンプレそのものですわ。
 佐天さんの心にその方への淡い恋心が芽生えても不思議ではありませんの」

初春「おおッ! 今度は白井さんが恋のベテランっぽいです」

白井「何を言っていますの初春! 私は恋のソムリエ3級の資格を持つ女。
 このくらい見抜けて当然ですのよ!」

御坂「だから何で3級?」
佐天「うぅーッ……ですからここでステイル君のことは関係ないじゃないですかッ!!」

白井「すている?」

佐天「……あッ!?」

佐天(しまったッ!?)

初春「佐天さん、いつの間にその人の名前知ったんですか?」

佐天「え、えーと、それは……」

白井「会ったんですのね! その方とまたお会いする機会があったんですのね!」

御坂「え、なになに? その話、私知らないんだけど」グイグイ

佐天「御坂さんがすごい食いついてるし!」

初春「佐天さんが以前恐喝の現場に止めに入って、逆に不良に絡まれてたとき
 颯爽と駆けつけて助けてくれたんですって」

白井「どうやら高位の能力者の方だとか。佐天さんを助けた後
 『俺に触れると、火傷するぜ』キリッ
 という言葉を残してその場をあとにしたそうですの」

佐天「そんなこと言われてません!!」

御坂(ちょっとあいつみたいな感じね。でも能力者だっていうから違うか)
白井「それにしても不思議ですわよね」

御坂「何が?」

白井「何でもその方、何かの模様の入ったカードを使って能力を発動させるらしいんですの」

佐天  ギクッ!?

御坂「模様の入ったカード? どういうこと?」

白井「さあ? それにしても理に適っていないというか
 超能力の理論とは関係ない感じがしますわね」

御坂(『超能力の理論とは関係ない?』)




―――白井『なッ!?』

    御坂『再生したッ!?』

    ローブの女『貴女が何を言っているのか分からないけど、
     私の生み出した『ウンディーネ』を物理攻撃でどうにかすることはできないわ。
     この子は自分の復讐を果たすまで止まらないの』

    ゾワワッ!



御坂(なんで? どうしてあの女のことを思い出したの……?)
御坂「…………」

白井「お姉様、どうされましたの?」

御坂「えッ!? いや、別に何でもない……」

初春「どうなんですか、佐天さん?」ズイッ

佐天「偶然、偶然会っただけだってば!! ほら、この前初春と遊びに行って
 遅れた初春を待ってたときにたまたま!」

初春「ああ、あの時ですか」

佐天「べ、別に大した話なんてしてないし、ホントに名前を聞いたくらいで。
 カードのことだって、その、えっと……そう! 『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』
 を……きょ、強化するためのものだって言った、よ?」

白井「まあ、そうとしか考えられませんわね。変わっているのには違いありませんけど」

佐天(ホッ……)
佐天「そ、それじゃあそろそろ、行きましょうよ! ね?」すたッ

初春「えぇ!? 私まだクレープ食べ終わってないんですけど。
 それに何で私には恋愛トークふってくれないんですか?」

白井「初春にそんな話をふっても無駄だということはよく分かってますわ」

初春「そ、そんなー……。一応私にも聞いてくださいよ!」

佐天「はいはい。しょうがないなぁ。で、初春が今一番気になるのは何科の植物なの?」

初春「私の恋愛対象は人類ですッ!!」

初春佐天白井  ワーワー

御坂(気のせい、よね……)

 

 

――――第七学区、地下街




御坂「じゃあみんな、準備はいい?」

初春「はい!」

白井「もちろんですの!」

佐天「ばっちりです!」

御坂「じゃあ目をつむって……」

御坂(うぅーッ……。誰のでもいいから可愛い感じのやつが当たりますように)

佐天(うーん、御坂さんのを選んで
 すっごい子供っぽいやつだったらどう反応すればいいのか……)

初春(常盤台のお嬢様だけあって、白井さんとかすごい値段のものを選んでそうです。
 元は取れそうですね)

白井(感覚を研ぎ澄ませるんですのよ! そしてこの中にあるお姉様の紙袋を選び取るんですの!
 日々の生活の中で鍛え上げた黒子のお姉様レーダーなら可能なはずッ!!)
御坂「せーの……はいッ!」

御坂「これッ!」
初春「これですッ!」
佐天「これだッ!」
白井「これですのッ!」

御坂「えーと、とりあえず、自分のが当たった人はいないわね?」

白井「私は大丈夫ですわ」

佐天「私もでーす」

初春「私も。で、これは誰が選んだものですか?」

白井「ん? それは私が選んだものですわね」

初春「白井さんのですか!?」

白井「……何ですのそのリアクションは」

初春「いえ、別に。あ、白井さんの、私が選んだやつです」

白井「これは初春のですの? うぅー、ハズレですわ!」

初春「えーッ? 私だって結構いいやつ選んだんですよ」プンスカ
御坂「ん? ということは……」

佐天「私が持ってるのが御坂さんので、御坂さんが持ってるのが私のってことですね」

御坂「お互いに交換か……。ちょっと恥ずかしいね」

初春「じゃあ早速開けてもいいですか?」

白井「どうぞご自由に」

初春「では……」ガサガサ

初春「おおッ! これは……」バサッ

佐天「毛糸のショールだ!」

御坂「ワンポイントで花のコサージュも付いててオシャレね。
 黒子、あんたけっこういいセンスしてるじゃない」

白井「当然ですわ。まあ、できればお姉様に受け取ってほしかったところですけど」

初春「ありがとうございます、白井さん。大切にしますね!」

白井「どういたしまして。では今度は私が……」ガサガサ

白井「えーと、これは……なッ!?」
佐天「へ? 何これ?」

御坂「か、カワイイッ!!」キラキラ

白井「な、何ですの!? この両側にカエルの顔がくっついた紐は!
 新手のヌンチャクですの!?」ブンブン

初春「マフラーに決まってるじゃないですか」

白井「明らかに子供用ではありませんの!! 中学生にもなってこんな子供じみたもの……」

御坂「えー、黒子いいなぁそれ。私もそれが良かったなぁ」うっとり

白井「うッ……!」

初春「ほとんど御坂さん一点狙いで選んだものですからね。
 あ、でも後でトレードとかはなしですよ。この冬、しっかり使ってください」ニコッ

白井「くッ……。犯人を捕まえた際の拘束具として利用してやりますの」

初春「マフラーとしてですよ」

御坂「そうよ黒子。学校にもそれで行けばいいじゃん。可愛いよー♪」

白井「どんな辱めなんですの……」ガクッ
御坂「じゃあ次は私ね」ガサガサ

佐天「ど、どうぞ……」

御坂「おッ、これは……」

初春「帽子ですね! 白の、これはラビットファーですか? すっごくオシャレです!」

佐天「え、えーと、どんなの選んだらいいか分からなくて
 それで自分が欲しいのを選んでみたんです。だから御坂さんの趣味には合わないかも……」

御坂「ううん、そんなことないよ。自分じゃこういうの選ばないからなんか新鮮だけど。
 でもとっても可愛い! ありがとう、佐天さん!」

佐天「ハハハッ、どうも……///」

白井「お、お姉様。ちょっと被っていただけませんの?」

御坂「ん? いいよ」ポスッ

初春「おおッ!!」

白井「う、美しすぎますの……! お姉様マジ天使ですの!!
 黒子、興奮して鼻血が……あ、これで拭こう」ゴシゴシ

初春「ああッ!? なんで私があげたカエルマフラーを使うんですか!!」
白井「緊急事態でしたので。仕方ありませんわ」

初春「ティッシュとかハンカチ使ってくださいよ!!
 カエルの顔が血まみれで恐ろしいことになってるじゃないですか!!」ウガー

白井「いやー重宝しますわ。初春がくれたこのカエルタオル」

初春「マフラーですッ!!」

佐天「じゃあ最後に御坂さんが選んでくれたのを開けますね」

御坂「どうぞ。結構頑張って選んだから、気に入ってくれると思うんだけど」

佐天(うッ……。ホントにあのカエルマフラーみたいなのだったらどうしよう……)ガサガサ

佐天「これ……」スッ

御坂「えーと、手袋。ちょっと大人っぽい感じのやつを選んでみたんだけど、どうかな?」

初春「す、素敵です!!」

白井「さすがお姉様。黒の手袋とは、ワンランク上のセンスですわ。
 これで少しは佐天さんも大人の女性に近づくのでは?」クスッ

佐天「よ、余計なお世話ですッ!」
佐天「でもホントに素敵です! ありがとうございます、御坂さんッ!!」

御坂「うん。私も佐天さんが喜んでくれて嬉しい」

初春「いやー、みんないい物が手に入ってよかったですね」

白井「一人を除いて、ですの」ジトーッ

御坂「交換も終わったことだし、この後どうする?」

白井「そうですわね。完全下校時間を考えると、次に行く場所で最後になるかと」

初春「はいはい! 私、ゲームセンターに行きたいです!
 今日も私の不死デッキが火を吹きますよ! Wメテオッ!!」ヤー

佐天「えー、初春またあれやるの? 私たち見てるだけになるじゃん」

御坂「あ、初春さんあれやってみたら? ギターフリークス」

初春「そう言えば私、あんまり音ゲーってやらないんですよね。でもなんでそれなんですか?」

御坂「あれ、なんでだろう? 初春さんってギター上手いイメージが……」うーん…
白井「私はそれよりどこかの喫茶店でゆっくりお茶でも頂きたいですわ。
 明日からまた風紀委員の忙しいお仕事が始まることですし」

佐天「あ、それって私たちが攫われた件でですよね……。なんか、すいません」

白井「フフフッ、佐天さんが責任を感じる必要などどこにもありませんわ。
 それにあの誘拐事件とは直接関係ないことですの」

佐天「それってどういうことですか?」

初春「あの事件の捜査にここのところ時間を割いていたので
 通常の風紀委員の仕事がたまってるんです。書類とか書類とか、書類とか……」うぅ…

白井「珍しく固法先輩が始末書を書いていますの。ちょっといい気味ですわ」ケケケッ

佐天「でもあの事件の事後処理とか、色々あるんじゃ……」

白井「そう言えば佐天さんはご存知なかったんでしたのね。
 あの事件は学園都市上層部から圧力がかけられていて
 事実上風紀委員は捜査できない立場にありましたの」

佐天「それでも助けに来てくれたんですか!?
 うぅ……なんかますます責任を感じちゃいます……」ガクッ
初春「だから佐天さんは何も悪くないですって。
 それに私たちが何もしなくても、きっと誰かが助けに行ってましたよ」

佐天「?」

白井「固法先輩に後で聞いたのですが、私たち以外にも上層部の対応に納得できない
 風紀委員や警備員がいたようですわ。彼らも私たちと同じように独断で捜査していたそうですの」

御坂「じゃあ私たちより先にあのビルを制圧してたのって、他の風紀委員だったってこと?」

白井「かも知れませんわね。佐天さんはあのとき私たち以外の人を見かけておりませんの?」

佐天「えッ!? いや、特に、誰も……」

御坂「…………」

初春「今回の場合、誰だったか分からないほうが好都合かも知れませんね。
 その後の捜査にもきっちり圧力がかけられているそうですし」

白井「誘拐された学生を全員保護したら、現場検証もしないまま則撤収でしたものね。
 あのビルには現在も何の調査も入っていませんわ」

佐天「え、それって……」
白井「今も戦闘の跡が残ったまま、無人で放置されていますわ。
 犯人も一般人も入りたい放題ですの」

佐天(ってことは、もしかしたら……)

初春「どうかしましたか? 佐天さん」

佐天「えッ!? いや、その……。あッ、そうだ!!
 今日はスーパーで特売やってるんだった!!」

白井「と、特売?」

佐天「そうです! もやしが5袋72円!! だ、だから行かなきゃ!!」

初春「えッ!?」

佐天「そういうことなんで、私ちょっと先に帰りますね! じゃ、じゃあ!!」ダッ

タッタッタッ……

初春「あッ! 佐天さん!!」

白井「どうしたのでしょう? そんなにお財布事情が切迫しているんですの?」

初春「佐天さん……」

御坂「…………」

 

―――???

ギギギィィィィ……  バタンッ!

ローブの女  スタッ、スタッ

白衣の女「予定よりお早いお戻りで」

ローブの女「そうなのよ。思ったより『必要悪の教会』の動きが迅速でね。
 困ったものね。彼らも」

白衣の女「…………」

ローブの女「どうかして?」

白衣の女「いえ、非常に嬉しそうなお顔をされているので。作戦は上手くいったのですか?」

ローブの女「想定していた以上に、ね。
 私たちが考えていたよりも、もっと大きな得物が手に入りそうよ」

白衣の女「ローブの女「あら? もっと喜んでもいいのよ」

白衣の女「十分喜んでいますが」

ローブの女「あまりそうは見えないけれど」

白衣の女「私が真に喜ぶとき、それは私たち『科学の子』の目的が達成されたときです。
 今はまだこれだけの喜びで十分です」

ローブの女「そう? ならいいわ。
 貴女のことを謙虚というべきか、尊大というべきか悩むところだけど」

白衣の女「ご自由に」フフッ

ダッダッダッ!

黒衣の男「総裁ッ!! 総裁はお戻りかッ!!」

ローブの女「そのように大きな声を出さずとも聞こえているわ。私はここよ」

黒衣の男「総裁ッ!! 『黒衣の兵』はどこに? 
 総裁と共に学園都市に侵入した我が忠実な部下たちはどこにおるのです!?」

白衣の女「その前に総裁が無事に戻られたことを喜んだらどうです?」

黒衣の男「五月蝿いわッ!! どこの者とも知らぬ輩が口をはさむなッ!!」
それは何より。おめでとうございます」

ローブの女「あまり乱暴な口の聞き方をするものではないわ」

黒衣の男「し、失礼しました……! して、『黒衣の兵』はどこに?」

ローブの女「いるわ。今広間で疲れを癒しているでしょう?」

黒衣の男「あ、あれだけでございますか? 出立の前にはあの十倍はいたはずッ!!
 彼らは一体!?」

ローブの女「まだ死んではいないでしょうね。
 『必要悪の教会』の魔術師は一応命までは奪っていなかったみたいだから。
 しかし学園都市の上層部と『イギリス清教』が通じている以上、じきに処分されるでしょうね」

黒衣の男「なッ……!? 同志が、我らが同志が命を落とすのですぞッ!!
 黙って見過ごすおつもりですか?」

ローブの女「私たちが成すべき大事には犠牲はつきもの。それは皆理解しているはずよ」

黒衣の男「しかしその『大事』は成ったのですか? 
 学園都市から能力者を連れてくるという大事は?
 帰ってきたのは疲れ果てた我が部下だけではありませんかッ!!」

白衣の女「総裁が抜けていますよ」

黒衣の男「黙れと言ったのが分からんのかッ!!!」
ローブの女「成ったわ、大事は。十二分に、ね」ニコッ

黒衣の男「そんな……! 私は納得できません!!
 これほどの犠牲を出して成されたこととは、一体なんだったのですか?」

ローブの女「彼らは私たち『科学の子』の教えに殉じた。今はそれだけ理解できれば十分よ」

黒衣の男「到底そのような言葉では理解できませぬ! 納得のゆく説明をッ!!」

ローブの女「ふぅ……貴方も中々しつこいのね」

ローブの女  ツカッ、ツカッ

ローブの女「ならば貴方も」カチャ

黒衣の男「?」

ローブの女「殉教の道を行きなさい」

ベチャッ! ゾワゾワッ!

黒衣の男「なッ!?」
ボムッ!!

黒衣の男「――――――ッ!?」ゴボゴボ

黒衣の男「―――、―――ッ!! ―――、―――、―――ッ!!!」ゴボゴボ

ローブの女「ウフフフ……」

白衣の女「…………」

ギュムッ! ギュムッ!

黒衣の男「――――――ッ!! ――――――ッ!! ―――……」ゴボッ

黒衣の男「…………」

ローブの女「ウフフフ。『ウンディーネ』ったらやっと復讐が果たせて嬉しそう」

白衣の女「しかし良かったので? 『黒衣の兵』を指揮する人間がいなくなってしまいましたが」

ローブの女「問題ないわ。残った彼らの中から一番優秀な者を選び、また数を増やせば済むこと」

白衣の女「信仰心とは便利なものですね。湯水のようにあらゆるものを引き出すことができる」

ローブの女「湯のように温かく、水のように清らかだからよ。
 恐怖、怒り、不信、葛藤……。それらを和らげるにはなくてはならないものだわ」

ローブの女  スッ

バシャァッ!

黒衣の男  ゴロッ

ローブの女「さて、私たちは猜疑と不安が煮詰まるまで、暫し待つとしましょう」

 

 

 

―――第七学区、とある廃ビル




ヒュッ  カランカラン……

ステイル「これといって手がかりになるものはなしか……」

ステイル(あったのは儀式場と潜伏中に使っていた生活用品のみ。
 まるで近々ここを離れることが分かっていたように、何も残っていない)

ステイル(しかし奴らの目的は結局なんだったんだ?
 誘拐の手口そのものは巧妙だったかも知れないが、その後の対応は褒められたものじゃない。
 そもそも学生を誘拐して何をするつもりだったんだ?)

ステイル(もしくは『学生を誘拐すること』自体が目的だったのか?
 それはつまり……)

カランッ

ステイル「誰だッ!?」サッ

「きゃッ!?」

ステイル「……何だ、君か」

佐天「びっくりした……。そこにいるとは思わなかったから、驚いちゃったよ」ハァ

ステイル「奇遇だ、また会ったね」

佐天「えッ? あ、そ、そうだ―――」

ステイル「なんてこと言うと思ったのかい? どうしたまたここに来たんだ」

佐天「の、ノリツッコミ!? 本場の笑いが分かってるなんて、ステイル君もやるなぁ」ハハハッ

ステイル「ハァ……。で、何の用だい?
 自分が監禁されていた場所で記念撮影をするつもりじゃないんだろ」

佐天「…………」

佐天「ここに来れば、ステイル君に会えるんじゃないかと思って」

ステイル「そいつは感激だ。日本人は義理堅いと聞いていたが
 わざわざ危機に晒された場所に戻ってきてまでお礼を言いに来るなんてね。
 僕の周りには失礼な日本人が多いから、軽いカルチャー・ショックだよ」

佐天「もちろん、助けてくれたお礼を改めて言いたいっていうのもあったけど
 それだけじゃないんだ」

佐天「……お願いがあってきたの」

ステイル「聞くだけ聞こう。聞き入れるかどうかは、内容によるけどね」
ジリッ…………

佐天「…………」

佐天「……私に、魔術を教えてほしいの」

ステイル「…………」

ステイル「本気で、言ってるのか」

佐天「ほ、本気ッ!!」

ステイル「…………」

佐天「…………」グッ…

ステイル「……君は、本当に馬鹿だ」

佐天「す、ステイル君ッ! 私―――」

ステイル「僕は言ったはずだ。君の言う『力』はそんなものなのかと」

佐天「だからだよッ!! ステイル君は言ったよね?
 魔術は才能のあるなしに関係ない『力』だって!! だから……」

ステイル「君は何も分かっていない。魔術とはどのようなものなのか
 どんな危険を孕んでいるものなのかを。君は何も考えていない」
佐天「違うッ! 私の話を―――」

ステイル「君はただ見たこともない『力』に少しばかり興奮して
 冷静な判断力を失っているだけだよ。しばらくすればそんな気持ちも―――」

佐天「私の話を聞いてよッ!!!」

シ――――――ン……

ステイル「…………」

佐天「私、言ったよね? 私は何かあっても何もできなくて人に頼るだけだって。
 いっつもそう……この前だってそうだよ。
 あのとき、ステイル君が来なかったら、私、きっと殺されてた……」

ステイル「…………」

佐天「もう、弱いままじゃ嫌だよ……。誰かに助けられて、誰かに護られて
 自分じゃ何もできないままなんて。役立たずの、ままなんてッ!!」

佐天「私も『力』が欲しい。せめて自分くらいは守れる力が。
 そのくらい望んじゃだめなのッ!!
 ねえ、教えてよステイル君。私はずっと弱いままでいなくちゃいけないのッ!!
 強くなりたいって心から思うことは、いけないことなのッ!!!」
ステイル「…………」

ステイル「いけないことじゃ、ないさ」

佐天「…………」グスッ…

ステイル「元々十字教なんてそのためにあるようなもんだよ。
 弱き者を守るため、救われぬ者を救うため。
 そしてそれを果たすことを誓い、主の教えを知り、強くなるために」

佐天「うん……」

ステイル「『力』を欲するのは悪いことじゃない。
 場合によっては、僕たちはそれを手助けする義務もある」

佐天「じゃ、じゃあ……!」

ステイル「でも、君に魔術を教えるわけにはいかない」

佐天「な、なんでッ!? 言ってることが違うじゃん!!」
ステイル「君に魔術を使わさせるわけにはいかないんだ」

佐天「だから、なんでそうなるのッ!! 説明してよッ!!」

ステイル「…………」

ステイル「魔術を使えば、君は……」

佐天「…………」ゴクッ…

ステイル「……死ぬ」

佐天「えッ……」




バタンッ

初春「そんな……佐天さん……」

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