上条「なんだこのカード」 > Season2 > 05


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垣根「お仕事御苦労さん」

眉間に穴の空いた死体を漁り、キーカードを取り出す。本来の職分としてここの警護をしている者ならば、最低限の出入り口のゲート権限ぐらいは持っていよう

学園都市は、不安定な状況にある。積極的に逃亡をする者、それを阻止する者、何も知らない者

つまり、学園都市保守層とアメリカの息がかかった層との戦いに、それを知らない・意図的に取り合わない立場である

その3者がこの場所にはいた

公表はされていないが、樹形図の設計者は壊れた。そのことによって、この場所の価値は一気に低下した。だが公表していないことで、その警備を減らすわけにはゆかない

そしてこの状況下では、それは寧ろ有効的に利用できたのだ。この場所ならば、いくら資材を大量に持ち込んでも、人員が急に増えても、世間的には、全く不自然さは無い

入ってすぐ側に扉があり、休憩室のネームプレート。正面5mの所に次の扉がある

わざわざ休憩室なんぞに入って敵に会う訳にもいかないので、そのまま次の扉へ

奪ったカードを使うが、Lockedの表示は変わらない。舌を打つ

強引に突破、などと考えていると正面の扉が開いた

虚を突かれたのは警備している方である。どうやら休憩室に向かうところだったのだろう

間髪いれずに腹部に拳をぶつける。直接体内に未元物質を送り込めば、筋力がいくら劣ろうと致命的な衝撃を与えることになる

生き死にに関わらず、動かなくなった人間を横にどけ、漁る。先程の人間とは所属が異なるのか、装備が異なる

垣根(こいつら、さっきの警備してた連中とは違う。武器水準が高いな)

カードを奪い、自動的に閉まった扉のロックを解除する。閉まる前に見えた向うはまだ廊下のようだったが、大きな部屋や空間に出た場合、まだ日中である以上、研究者や警備兵がうろついているハズだ

それら全ての視界に入らずに行動することは難しいだろう。少なくとも今の恰好では確実に目立ち見つかるので、ピクリとも動かなくなった人間の衣類と装備を奪い、扮する

垣根(コソコソするのは面倒だが、仕方ねえか)

頭に叩き込んだ地図を頼りに、自然な動きで地下の階段へと進む

今の彼に必要な行動はハッキングでも何でもない。狙撃の邪魔になる装置の電源を落とすことだ

樹形図の設計者への送受信を行う施設である以上、使用される高域の電流電圧を供給する必要がある

その高圧電流電圧は馬鹿みたいにエネルギーを消費する防衛装置にとって都合がいいので、そこから供給されているという訳だ

以上は事前に調べ上げた仮説であるので正しいのか分からないが、何にせよ、室内の電源が落ちるのは隠密行動で的にも都合がいいのだ

地下の一室にある変電設備に触れ、外装を剥がす

電流が通っているだろう配線に手を突っ込み、未元物質に電流が通うように能力を展開する

電子の流れは、マイナスからプラスに向かっているのは常識で、その常識に基づいてあらゆる電子機器は設計されている

その電子の流れを強引に逆にしてやる

するとそれだけで、あらゆる電子機器はショートしたり、エラーを吐き続け何れ物理的に壊れる

未元物質と言う常識外れの能力を持つ彼にとって、電子や粒子の動きの法則を狂わせる程度、ナンパするよりも簡単な事だ

バチバチという音や何かの動きが停止した音が鳴り、照明が落ちる。無論非常電源程度は配備されているだろうが、一度狂った電子が設備全てに駆けまわった為、精密機械の類は軒並み壊たので、単純な照明などを除いて、つまり非常照明の類以外の全ての施設機能は停止した

垣根(だが、このままだとまず間違いなく、標的は慌てて出てきたところを砂皿に撃ち抜かれることになる。それじゃ仕事上は完璧だが、俺にとって不味い)

着ている敵の装備から無線を取り出した

垣根「オイ誰か聞こえるか!この停電は何だ!?」

『原因は不明。今調べさせに行っている』

垣根「外には狙撃手が居やがるぞ!どうなってんだ!クソ!仲間が撃ち抜かれた!恐らく北東のビルの屋上と思われる! 」

『了解。別働隊を向かわせる』

こんなもんかと呟いて、無線を破壊し、ゴミ箱へ。今の話から調査隊が来るだろうから、身を隠す

垣根(すまねえな、砂皿。ま、簡単にやられたりはしねえだろ)

 

 

 

(電源を落としましたか。効果的ですね)

上条(でも様子がおかしいぞ。非常電源入ってんのにまともに明り見えないし)

(何か細工をしたのでしょう。ま、これで彼自身が罠にはまる可能性も増えたことになるんですがね)

上条(まだ日があるけど施設の中は暗そうだからなぁ)

(早く見つけましょう。といってもこっちは彼に見つかっても不味いですが)

全くフェアじゃねえよな、と呟いて垣根が施設に入って行った、警備部隊用の裏口から上条も入ろうとする

やはり、壊れている。手をあてがってみると

(ああ、回路自体が逝ってますね。こじ開けるしか)

とはいっても、取っ手のようなものがあるわけではない。緊急用の手動開閉用のものも見つからない

(施設内部の扉が全部こういうタイプの物だったら、密室や隔壁閉鎖された廊下ばかりでしょうね。これは中がかなり混乱してるかもしれません)

人差し指を扉の淵にそってなぞる。強い光を発しながら、まるでレーザーカッターの如く切り開かれていく

上条(扉が出るたびにいちいちこんなことするのか、暑いし手間だ)

(今にスクールの連中が強襲するでしょうから、そうなれば扉を吹き飛ばしても問題は無いでしょう)

(でも、爆薬の類があるわけではないので、奪うか何かしないといけませんがね)

目の前の、ガタンという音と共に可動可能になった扉をスライドさせる。開いた先には壁に人が座る様にあった

(この人もさっきの人と同様死んでますね)

(その上装備が奪われてます。そして正面奥の扉はまた強引に開くしか)

死体となり完全に生気を失った顔に手を当て、開いたままの瞼を閉じてやる

残酷な方法だが、一瞬で黙らせるには適している。上条にはそれが気にくわないが

(臓器類の内部破壊とは、えげつない方法です)

(一応、残ってる使えそうな爆発物は貰っておきましょう)

上条(……ああ、そうだな)

 

建物内にガラスの割れる音と爆発音が響いた

上条(本格的に始めやがったか。急がないと)

「な、なんだこの爆発?」「わからねえ。おい、照明も付いてないぞ」「なんだそりゃ。寝てる間に何が」「おい、ドアが開かねえ」「仕方ない、ぶち破れ」

そばの休憩室から声が聞こえた。寝ていた連中が今の音で起き出したのだろう

(丁度良いです。彼らに紛れて行動してみては)

上条(悪くないな。気絶させたり殺したりするよりずっといい)

屋外の死体の服装に着替えると中から爆発音がした。屋内に戻る

上条「おい、いつまで寝てんだ。侵入者があるみたいだぞ」

「すまない。だが侵入者なら、最近来た特殊部隊が相手にしてるはずだ」

上条「最近来た部隊?」

「 あの不気味な連中だ。外のお前は気付かないかもしれないが、ありゃ何かおかしいぞ。休みやしないし顔色も見せねえ」

「フェイスガードしてるやつもいるしな。俺が思うに急増クローンか精神がイっちまった奴かなんかだな、アレは」

上条「いいのか?お前らは内部の警備だろ?」

「あのレベルの装備をしてる連中が居る中で、俺らみたいな軽装が何人かいても邪魔か盾にしかならねえさ」

「ま、一応応戦しました、ってことで様子程度は見るけどな」

「ここだけの話、樹形図の設計者は隕石か他国の軍事衛星に壊されたって話しだ。実際ここは価値のある施設じゃ無くなっちまったんだよ」

「あーその話、マジなんだ?ったく、俺達何してるんだか」

話しながら、てきぱきと爆発物を閉まっている扉に取り付け、吹き飛ばす

「さて、どんな地獄が待ってるかな」

そう言って、上条を含めた軽装の警備員が突入していった

 

 

定規「ちょろい」

グレネードで割った正面玄関から突入し、少女は呟いた

照明が切れた為に警戒していた警備員を同時に突入したケーブルの少年が宙に浮かせ、展開した無数のナイフで切り裂く

そして彼らの攻撃は心理定規の能力で侵入者の若い男女には向けられない

次々と、その場に居た複数の警備員は行動不能になる

定規「さて、衛星制御室にでも行って標的をあぶり出しましょーか」

少年「了解」

定規(このままだと砂皿のおじさまが狙撃する形でしょうけど、あなたなら既に手を打っているわよね、帝督)

衛星制御室は2階と3階に分けて存在している

巨大なモニターを中心に半円状に備え付けられた多くのデスクが2階と3階にわたって設置されていることにはなっている

が、今はどうか分からない

資材の急搬入と人員の増加が意味するのは防衛力強化だろう

少しは警戒しながら進もうかと考えてつつ、銃を構えながら二階へと階段を進む

すると、体を止められる。正確には、念動力で動きを止められたのだ

何するのよ、と少年の方を見ると階段の端を指差す

罠であった。取り付け型の赤外線発射装置

恐らくこのまま進めば罠が作動して、蜂の巣にでもなっていたのだろう

危ういところだった

心理定規の最大の弱点は、その能力は対人でしか効を成さないことである。故に、機械の罠は命取り

少年の方も、超能力者クラスの演算能力を持っているわけではないので、盾でもない限り、飛来するであろう無数の銃弾などから身を守りきることはできない

少年が万能なゴーグルを装備していなければどうなっていた事か

ありがとうの意を込めてウインクしどうやって突破するか考える。装置を破壊しない限り突破は難しそうだ

定規(まだ電源が落ちてからそんなに時間は経ってない。にもかかわらず、結構な罠ねぇ。まるで私たちがここに来るのが分かっているかのような)

階段を下り、十分な距離を取って少年に目で合図を送る

一度場所さえ分かってしまえば、念動力を使って強引に装置を引きはがすことは可能だ

合図の意味を汲み取って少年が能力で引きはがす。当然、赤外線の受信が無くなったので、一斉に罠が発動した

階段という空間全てを覆うように弾幕が貼られ、更に擲弾レベルの爆発が駄目押しの様に数回発生

巻き込まれれば彼女らは即死だっただろう

だが、逆にそれによって階段に設置された罠は全て一掃されたはずだ

撒きあがる粉塵の中を間髪いれずに駆け抜ける

階段を上りきった場所は広い空間で、その空間の左の両開きの大型スライドドアを抜けた所が衛星制御室であるはずだ

温感センサー搭載の単眼サイトをとおして敵の場所を確認。瞬時に敵の脳内には少女と少年が味方であるように書き換える

後は正面玄関と同様、飛来するナイフに拾ったライフルによる銃撃で事足りる

やはり制圧は時間がかからなかった

 

 

佐天「あ、あそこ、爆発」

少女が指差した先は目的地側の少し高いビルである

浜面「多分、狙撃手でもいたんだろうな」

佐天「そげき、しゅ、スナイパーってやつ」

浜面「ああ。そうだ。見ろよ、目的地のアンテナの先端。本来なら航空照明がついてるんだが、光って無いだろ。電源を落とされてるんだ」

車を運転しながら指差した先は確かに光が無く、施設も真っ暗だった

佐天「本当に、戦ってるんですね」

浜面「戦いなんて言う綺麗な言葉だったらいい。大概は、攻撃側の一方的な虐殺だ」

虐殺……と頭の中でリフレインしていると、車が止まった

浜面「下りろ」

佐天「そのまま行くんじゃ? 」

浜面「そのままなんて危険だ。安全を確認できる範囲で少しずつ進む。俺はお前に危害が加わってほしくないからな。事実を見せたいだけだ」

車を降りてしばらく進むと、正面玄関らしき場所のガラスに大穴が空いているのが見えた

良く見るとその奥には血まみれの人影が見えた

止まった足を促すように少女の腕が引っ張られる

同時に施設内から掃射音と爆発が聞こえる。同時に噴煙も見える

浜面「絶対安全とは言えない、けど、守ってやる。そして、見るもの見たら、とっとと逃げる」

本来の彼には似合わないであろう真面目な顔が、こういう場では特別引き立つ

佐天「見せたいものがある、なんて普通の男女の仲ならロマンチックなんですけどねー」

浜面は、少女が余裕の無い表情で無理やり出した冗談に罪悪感を覚えた

だが進行は止めない

まず浜面が先に施設内に入り、死体から装備を奪う

1階の安全を確認して隠れている少女へ合図を送った

少女がナイフ片手に駆けてくるタイミングで、もう一方の出入り口から繋がる扉が吹き飛んだ

咄嗟に少女を自分の体の後ろに隠し、盾となって銃口をそちらに向ける

入ってきたのは数人の警備員で、装備は軽装だ。浜面が小銃しか持たず、攻撃してくる事もないので警備員は扇状に展開する

「何だお前は?!侵入者か?!」

「武器を捨てろ! 後ろに居る奴もだ!」

多勢に無勢、その上戦力にもならない少女が居る以上下手な事はできない。浜面は武器を捨て、両手を挙げる。後ろの少女も浜面の陰から出て、ナイフを捨てた

その少女の姿を見て、警備員の男が反応する

「ああ、その顔は、味方だったか。すまない」

そう言って一人が銃を下げると、全員がそれに従う

何のことか良く分からない少女が居る一方で、浜面はやっぱりか、と呟いた

上条(なんで浜面があの子と一緒にこんな所に居るんだよ)

(予想外すぎますね。彼には滝壺さんという存在があったのですが)

(その顔は、と言ってましたが何の事でしょうか )

上条(それも気になるが、今は第二位だ。ここらでちょっと身を引かないと)

上階で大きな爆発音

警備員は一瞬顔を見合わせ階段へ走る。上条もそれについて行くが、最後尾でついて行き、一人地下へ向かった

 

取り残されたのは浜面と佐天、転がる死体

佐天「これが見せたいものじゃないですよね」

死体となった人間を指して言う

浜面「違う。こんなもんだったら、わざわざ見せたくは無いっての」

青ざめた少女の顔色を窺いながら、例のナイフと安全装置を外した拳銃を渡す

佐天「私にも、殺しをしろって言うんですか?」

浜面「こういう武器だって、殺さない手段はある。武器や手足を撃ち抜けば、敵が能力者でもない限り、まず動かなくなるからな」

佐天「でも、能力者だったり、他に武器持ってたらこっちがやられちゃいますよね?それって危険じゃないんですか? 」

若干ヒステリーを含んだ声が伝わる。精神が少し狂いだしているようだ

浜面「それでも、殺すよりはマシだ」

短く言い放った。だが――

佐天「でも、もう何人も殺してるんでしょ、あなた」

思わず強く佐天を睨みつけるが、言い返せない。佐天も食い下がらない

佐天「こういう場所に慣れている時点で、殺しをしたことが無いなんて嘘。それで殺しはしないなんて、甘いだけだって思うのは、素人でも分かりますよ!」

言葉が痛烈に突き刺さる

佐天「行きましょう。あなたが見せたいものの所へ、早く。なんか私は味方と思われてるみたいだし、守ってくれるんでしょ?」

一人階段へ向かう少女を慌てて追いかけ、浜面は前に出た

その脳内では、少女から投げ付けられた言葉が何度も繰り返されていた

定規「ちょっと、どうなってるのよ! 」

半ば要塞と化している衛星制御室でドレスの少女は叫んだ

肩には銃弾が掠った跡と、滲む血

対人では怪我を負うハズの無い少女は、防弾壁の陰で傷ついていた

彼女の能力は【心理定規】。その名前の通り、彼女の読み取る他者の精神は数値化されていた。それは無論演算を必要とする能力なのだから、効率のよい処理の上では当然のことだ

それにはまず、相手の精神情報を掌握しているわけだが、それが読み取るたび、配置されているどの部隊の人間も元に戻っている。つまり敵⇒仲間と設定したものがまた仲間⇒敵へと戻されているのだ

原因と考えられるのは、中央に立つ、垣根提督が危険だと警告した少女

彼女への能力使用は、まるで自分の能力の作用の仕方を知っているかのような精神防壁を張られ、通じない

そして、陰に隠れていても関係なく、自分へと飛来してくるナイフ

これは仲間のケーブルを垂らした少年による攻撃と同じものだが、どうも攻撃の意識が複数以上有るような動きをしている

奪った銃で、迎撃する。既に持ってきた武器は使い果たした

分が悪すぎる――そんなことを思っていると、自身の体が浮き上がる。半身が陰から出てしまい、銃弾が体を掠る

定規(クソ、どう考えてもアイツの能力よね、コレは!)

全力で仲間の少年の心を動かし、思った通り敵と設定されているものを仲間に戻す

そのようにして少年の頭の中では能力によって強引にしかも頻繁に書き換えが行われていた

そんなことが繰り返されれば、どんなハードウエアでも書き込みと消去を繰り返せば寿命が来るのと同様に、壊れる

まるで操り人形の糸が切れたかのように、少年は倒れ、無茶苦茶な表情を浮かべて動かなくなった

同時に念動力による攻撃は無くなった。代わりに手榴弾が身を隠している場所に投げ込まれる

定規(帝督の言った方法でも全然通じない上に、この状況。逃げるしかないじゃない!)

幸い、出入り口の扉は自分たちが入った時に全て吹き飛ばしてあり、近い

一瞬でも敵の攻撃を止めることが出来れば、部屋を出て2階の広いフリースペースに出ることは可能だろう

定規(一瞬でいいから、黙ってろ!!)

頭脳をフルに回転させて、自分に射線を向けている者から順に仲間に設定する

もちろんそれも一瞬で書き換えられるが、その一瞬が有ればいい

何とかして、部屋を出る――扉を前にして、足の腱の側を銃弾が掠った

苦痛に顔をゆがめる時間を作らずに制御室を飛び出した

だが、そのタイミングで階段から警備員数人が駆けあがってくる そう、上条がさっきまで身を隠していた連中だ

定規「な、なんなのよぉぉぉ!」

生まれて、15年程度しか経過していない精神が細る

それら警備員部隊の関係を書き換え、三者三様の敵対関係を作り上げる

仲間内で銃を乱射し、鉛玉が彼らの体を貫通し、留まる。動かなくなった

これで、2階のこの空間には敵はいなくなったことになる

それだけで集中していた線がほんの少し、緩んだ

定規(痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)

肩からの出血、左足首付近からの出血。正直、彼女はその能力的特徴から痛みに慣れていない

動けない。二階のフリースペースとも言える広い空間の真ん中で彼女は腰を地べたにつけた

そこへ上がってくる浜面と、少女 その体格は自分を苦しめた者に似ている。その顔つきは、自分を苦しめた者が装備していたフェイスガードから垣間見えたそれに似ている

絶望が頭によぎった。思わず、顔を背ける

だが目を背けた先は、自分を苦しめていた直接的な原因が徐々に歩み寄っていた

定規「うわぁああああぁぁああぁぁああ!!」

少女は叫び、持っていた銃の引き金を引く

勢い良く飛び出す銃弾。しかし少女の片腕では反動など抑えられようもない

反動で全く弾丸は当らず、フェイスガードを一発掠ったのみで弾倉は空になる

定規「あれ、あれ?あれあれあれあれあれあれあれあれあれあれれれれれれれれれれ………」

恐怖に押しつぶされ、少女はピクリとも動かなくなった

何が起きているのか分からない浜面と佐天

浜面には既に見たことのある少女がゆっくりと浜面の方を見て、そして、ナイフ片手に接近してくる

持っていたライフルで応戦し、佐天の盾となる浜面

少女の動きは素早かった。そして浜面はその俊敏さを見たことがある

浜面(発条包帯かよッ! )

銃弾を簡単に回避し、猛烈な勢いで喉元を裂きに来る

その動きは前回のものとは次元が違った。恐らく浜面に敗れた際に強化案でも出たのだろう

そんなことを考えている暇もなく、だが狙いが分かっているので、そのコースを予測し手を構える

途中で腕の動きが変化した。構えた浜面の右腕にナイフが刺さる

刺さったと同時に一発の銃声が響いた。グラりと体勢を崩す少女

腕にナイフが刺さったままの浜面は展開についていけない。そこへもう一人の少女が浜面を押しのける

佐天「うわあああああああああああぁぁぁぁ!!!」

悲鳴に近い声を挙げて、少女は少女に切りかかった

すでに佐天が先ほど放った銃弾で瀕死の状態となった少女に、佐天は止めの一撃を、体重と勢いを加えた一撃を刺す

俊敏に動くための軽装はいとも簡単に貫通し、命が刈り取られる

浜面はただ見ていた。そして少女が少女に何をしたのか、意味を理解した

浜面「自分を、殺したか」

ポロっと、呟く。そして今だ興奮冷めやらない佐天の目の前で倒れている少女のフェイスガードを取り外した

浜面「良く見ろ。これが俺がお前に見せたかったものだ。本当は、こんな形では見せたくなかったけどな」

自分とまったく同じ顔をした人間だったものが、そこには有った

顔の輪郭からほくろの位置まで、普段風呂上りに見ている自分と同じもの

瓜二つの、自分

徐々に下がっていた感情が、今度は違う形で湧きあがる

吐き気がした。寧ろ吐いた。とても立ってはいられない。ふらふらとした体を浜面が支える

浜面「見ろ」

まだ見ろというのか。自分が殺した自分を

背けようとした顔を無理やり死んだ自分へ向けられる

すると死体から青い炎が上がった。表面の戦闘服が溶け体が溶け顔が溶け、そして焼ける

あまりにも早く、その死体はこの世から消えさった

まるでそんな人間は居なかったかの如く

そしてその消え始めから消え去るまで、少女は目を離すことはできなかった

物音がした。正確には、制御室からである

ここは敵から近過ぎる。そう思った瞬間、浜面は閃光弾と発煙弾を一秒間隔で連続して制御室に投げ込む

そして動かなくなった佐天を強引に抱きかかえ、二階の窓から外へと飛び出した

 

 

 

垣根「さて、何処へ行くつもりだ? 」

ヘリポートと施設を繋ぐ廊下の片側の壁に寄りかかり、研究者の風体をした男に語りかける

彼の護衛は全て一瞬で潰された。文字通り、圧力をかけられブチュリという音と共に

「……わ、私は殺さないのか?そういう任務だったハズだが」

男の顔は引きつっていて、声は上ずっている

垣根「少し興味が有るんだよ。てめぇらの研究にな」

そう言って、USBメモリを見せ付ける。一見、どこにでもあるものだが

垣根「こいつの中身、見たぜ。いつからだ」

男の胸倉を掴み尋ねる

垣根「いつからこんな状況なったんだ、この都市は」

男は分からない、と言いたげな顔をしている

垣根「よし、質問を変える。これに入っている技術はここのものじゃない。そしてお前らが外へ積極的に出ようとしているの は、ここと同等、もしくは高レベルの研究が可能になったからだ。違うか?」

「わ、私は研究者だ。ここの都市の立場は知らない。そしてお前が言っていることは正解であり間違いだ。もう事は研究なんていう段階ではないんだよ……」

「私だって何かの冗談で有ってほしいと思う。だが、ねじ曲がってしまったんだ。未来が。最悪の形で」

白衣の中から、おずおずとディスクを取り出す

「ここに入っているデータは全て事実だ。そして、中身は分からないが、君の持っているデータもおそらくね」

胸倉の拳を緩め、ディスクを受け取る

「もし今君が絶望しかかっているなら、更に追い打ちをかけるかも知れない。だが私は犬死にするぐらいならあがく。私なりの方法で。だから見逃してはくれないか」

真剣な目で垣根を見つめた。甘いことを言っているのは、何人も殺してきた垣根には分かる

垣根「一つ聞かせろ。お前の言う犬死ってのは今ここで俺に殺されることか?」

「違う。この先の事だ」

垣根「……分かった」

道を開ける

「ありがとう。甘えるようなことだが、君のような力ある人間が、これから都市内部で我々の手助けをしてくれたら助かる」

垣根「そいつはどうかな。てめえが渡したこのデータ次第だ。それと」

男に紙を渡す

垣根「対空網は今最高レベルだ。脱出するなら他の方法を使え。目の前のヘリは囮にしてやる」

「何から何まで助かる。君には感謝する」

垣根「構わねえよ。もともとお前を拷問して情報を得ようとして使おうとしていたルートだからな」

不気味な笑みを浮かべる垣根に男はゾッとしたが、すぐにその紙を頼りに駆けだした

垣根はそのままヘリへ向かい、操縦者を逃がす

そして乗り込んだヘリを垂直上昇させ、対空網に引っ掛かる高度に達する前に自らの能力を持ってして、内部から爆発させ、大きな6枚の翼で空中で完全に破壊した

ヘリコプターが爆発し、中から白く光る翼が飛び出すその光景は遠目からも確認でき、また、神々しいものだった

 

 

 

上条「うっひょー派手にやったもんだな」

上条がその光景を見たのは施設の窓からだった

向かった地下では電源系統に明らかに何かをした跡があり、戦闘が始まっていたことから、それらを標的の動きを固定するための陽動と判断して、すぐに脱出用のヘリがあるところまで向かった。その途中のことだった

(あの翼は間違いなく彼でしょうね。大分、派手ですが)

(わざわざ明らかに破壊しましたと言わんばかりの行動です。むしろあれは囮でわざと逃がしたのかもしれません)

上条(なにか約束でもしたのか、第二位の要求を満たしたのか。理由はいくらでも考えられるが、厄介だな)

(ええ、彼の行動理念が変化した可能性大です。何をしでかすか、分かりませんよ)

(こうなれば悪手でしょうが、直接接触しますか? )

そうするかなぁ、と呟いたとき、背後から物音がした

立っていたのは白い軽装戦闘服の少女である

上条(またかよ、勘弁してくれよ)

もう何度目かわからないが、一度見つかってから執拗に追いかけてくるのだ

その度に気絶させるのだが、異常な速度で復帰する

体内に埋め込まれた装置か何かで強制的に覚醒させているのだろう

今回もナイフ片手に突っ込んでくる。その動きは素早い、が上条にとってはそこまでの脅威ではない

動きが予測できるためである。だが今回は違った

ナイフの切っ先が上条の手元へ伸びた瞬間、ある反応が起きた

(これは――対消滅?!)

上条が把握した瞬間、ナイフの何かが消滅した。同時に少女の体が爆散する

上条のそれは、とんでもなく高度な演算の下、発生する膨大なエネルギーを管理しているのだ

それが彼女にできようはずがない。結果、体内でエネルギーを処理しきれずに爆散したのだった

(微量ですがガンマ線の発生を感知しました。これはエネルギー管理に失敗してますね)

(何をしたんでしょうね。そして何がしたかったんでしょう)

上条(わかんねえよ。俺以外にこの能力を使える人っていんのか?)

(人間には100%無理ですね。unknownの塊な右腕は解析すら不明ですが)

上条(そうか。ってあれ、右手はまだ不明なの?)

(私達の能力が上がって逆にunknown分野が増えました。演算し続けるとどこかで制御式を超越するんです、その右手は。まぁ右手で得られた方法をもとに物質対消滅なんかは行ってるんですけどね)

頬に付いた肉片を拭い、掃う

上条(だったらどうやって、不完全ながらあの子はその能力が使えたんだろうな)

疑問は残るが、第二位の下へ向かうべく、翼が消えた地点へ文字通り自分を吹き飛ばした

 

 

 

 

 

 

佐天(……ここは? )

まどろんだ意識が徐々に覚醒していき、ここが自分の知る部屋でないことに気が付く

なんというか、男くさい。部屋も今自分が寝かされているこのベッドも

でも、不思議とそこまで嫌な気分はしなかった

しばらくベッドで不思議な気持ちに包まれていたが、自分が気を失う前に目にした内容が自然に思い出された

気分が良かったのは一瞬で消え去り、血の気が引くのを感じた

負の感情が高まり、体がガタガタと震える。目を瞑り自らの体を抱きしめ、布団の中でうずくまっていた

浜面「飲めよ。落ち着くぜ」

気が付くとベッドの側に男が立っていた。自分の額にペットボトルのココアが押しあてられる

その暖かさで、少し落ち着いた。何とか身を起こし、それを受け取る

浜面「一気に飲むなよ。ゆっくりとだ」

頷いて、キャップを開け、口元へ

暖かく甘い味と香りが僅かばかり精神を癒す

半分程度飲み、キャップを閉めた。気が付くと震えは止まっていた

ココアの効果なのか近くに人が居るからなのかは分からないが、心が少し安心しているようだ

浜面「落ちついたか?」

佐天「はい。ありがとう、ございます」

浜面「俺が勝手に連れて行っただけだ。礼を言われる筋合いは無えよ」

視線を佐天から逸らし、言いにくそうに言った

佐天(そうだ。この人がアタシを強引に連れて行かなきゃ、こんなことにはならなかった)

そう考えると怒りに近い感情も湧いてくる。しかし

佐天(でも、それじゃあ私が、私の知らないところで戦ってたことには気が付かなかった )

佐天(知らなくていい事だった? そんなことない。だって起因はあったんだ)

佐天(あの時、知らずの間に良いようにデータを採られて、それで私が作られたとしたら)

佐天(知らないままでよかった訳が無いじゃない)

だが、自分は能力者では無い。恐らくあの少女達は何らかの方法で強化されているのだろう

自分はベースである、とあの怪しい白衣の老人は言っていた

つまり自分単体では彼女らのように戦うことはできないのだ

あの時あんな風に動けたのは偶然でしかない

そんなことを考えていると、あの時の感情が蘇る

一度温まった体と精神は一気に冷え切って、震えが戻ってくる

浜面「意識が戻ったんなら、部屋まで送ってやるけど。どうする?自分の部屋の方が気が楽になると思うぞ」

確かに自分の部屋の方が落ちつけるだろう。だが

佐天「あ、あのまだしばらくここにいちゃ、駄目ですか」

浜面「別に構わねぇけど、どーしてだ? 」

佐天「部屋の方が落ちつけるとは思うんですけど、落ちついたら落ちついたで逆に不安で。友達とかに話せる内容じゃないし……」

そうか、と浜面は呟いた。無理もないだろう。自分のクローンを殺して悩んでる、なんて話せる女子中学生が居ようはずもない

体も震えていることだし、もう少し落ち着くまで待ってやるべきか。そう結論が導かれた

浜面「俺が巻き込んだんだ、好きなだけ居てくれていいぜ」

佐天「ありがとうございます」

とはいったものの、さっきまで寝ていた訳で布団の中で眠りにつくこともできない。なので半身を起したまま浜面に質問を投げつける

佐天「……いったい何人、現れて死んでるんですか、”私”は」

浜面「俺が所属している所の連中が倒したのが5人、俺が1人、君が1人。最低でも7人だ。そんで、間違いなく他のトコでも現れて戦ってるんだろうな」

わざと”戦っている”という表現を用いたのは浜面なりの配慮なのだろう。目撃されて、目撃者が生きているということは、逆 にいえば自分が殺されているから、ということぐらいは彼女の頭でも理解できた

佐天「そう、ですか。そう言えば、どうしてアタシにあれを見せようとしたんです? 」

浜面「言ったろ。この事実を知らないままでのうのうと生きてるだけってのが許せないって。そしてあの強引な、殆ど強姦魔みたいなの手口だけど、お前は来たんだ。あるんじゃないのか、心当たり」

佐天「……あります。心当たり。でもここからは私の問題です」

浜面「乗りかかった船だ、最大限手伝わせていい。俺だって強くないけど、女の子一人が抱えられる問題でもないだろ」

佐天「なら、教えてください。あなたの事。まずは名前から。あ、私は佐天涙子っていいます」

 

 

 

 

垣根「そいつは、最悪な状況だな」

夕暮れの中で手に入れたディスクを何の気なしに眺め答える

電話の男の声が伝えた状況は、事実上、スクールという組織の崩壊を意味していた

非正規の方法で加えた砂皿緻密が敵部隊の攻撃により行方不明となり、ドレスの少女とケーブルの少年は敵に回収された可能性大という結果だ

4人いた人員は垣根帝督のみ

電話の男『簡単にいえば崩壊。この面子でここまでやられるとは、想定外の極みだ。代わりのメンバーが決まるまで、しばらくは休業とする。お前には特別に部屋を用意してやった。好きに使え 』

垣根「偉く好待遇だな。だけど、せっかくだ。そこで羽休めさせてもらうぜ」

そう言うと、電話は切れた。しばらくして、メールが届く。住所が記されている

垣根(第五学区の、一等地。露骨な好待遇すぎて、暗に監視してるとでも言いたいのか)

実際、都合のいい手ごまであったスクールの構成員が消えたのは少しは痛手だが、表立って単独行動が出来るこの状況には損益バランスに変化は無い

特にあの心理定規という能力は自らの能力では防ぎきることが出来ない上に使われたのか分からない為、潜在的な危険度が無かったわけではない。一種の開放感すら感じた

垣根(まずは、この厄介な監視体制を何とかするか)

第7学区まで移動し、繁華街へ向かう

当然、尾行をまくためであるが、人ごみに紛れても追跡者の気配は消えない

一番単純な方法を採る

ビル群が多いこの都市では裏路地は巨大な迷路として広がっている

散々その路地を暗殺や暗躍などで使ってきた彼にとっては、ホームグラウンドだ

上手く袋小路に追跡者を追い込むことなど、難しいことではない

袋小路の陰に身を隠し、追ってきた人間を観察する

垣根(中々の手練だったが、こういうのは逃げる方が有利だ。お前の能力不足じゃねえ)

男は175cm程の体躯に締まった体。だが所々で見せる筋肉はその辺のスキルアウトより理想的なつきかたをしている

垣根を見失ってか、キョロキョロしている

垣根「散々ついて来やがって、この辺で終わらせようぜ」

手には消音器付きの拳銃を構えて男へ向ける

上条「上手く追い込んでくれるじゃないか。ホントに見失ったかと思って冷や冷やしましたよ」

変装用の色の付いた眼鏡を外し、まっすぐに垣根の方を見た

上条「久しぶり、と言ってもわかんねえだろうけど」

垣根「お前みたいな知り合いは生憎記憶にないな」

シュン、と音が鳴り、上条の顔の左を物体が通過する

垣根「選ばせてやるよ。お前が何処の誰の命令でこんなことをしてんのか言うか、言わずに撃ち殺されるか」

上条「それって、言っても殺さないって保証は無いんだろ」

垣根「さぁ、それは返答と俺の気分次第だな 」

上条「そりゃあ怖いね。ま、答えてやるよ。別に誰からの命令でもない。俺個人の行動だ」

両手を大きく広げて自由をアピールする

垣根「はぁ?なんだそりゃ?真面目に答えやがれ」

また顔の横を銃弾が通過する。さっきよりよっぽど顔に近い

上条「真面目も真面目。大真面目ですよ、ワタクシめは。寧ろ他に付いてきた尾行を撹乱させてやったんだ、感謝してほしいぐらいだな」

垣根「お前が居る時点で意味ないだろ、ソレ。もういい」

上条の胸に銃弾が放たれる。ちょうど心臓の位置めがけて

ガァンと鈍い音が鳴った

垣根「鉄板仕込むたぁ、古風だな」

ボディが駄目なら頭である。いつの間にか対ショック体勢だった上条の額を狙う

無論これは、上条の攻撃先誘導なのだが、知らずに釣られてしまった

上条「させるかよっ! 」

撃ってくる先が的の小さい頭と分かっていれば、今の上条にとって銃弾を避ける程度、できないわけではない

首を傾けつつ斜め後方に飛んで回避して、そのまま体を動かして距離を取りつつ持っていた色付きの眼鏡を投げつける

良くある手段では、この眼鏡は閃光を発したり、小規模の爆発をもたらしたりする

そんな手に引っ掛かる垣根では無い

確実に破壊するため、翼を一本展開して握りつぶす

垣根「ただの眼鏡かよッ!おちょくるのも大概にしやがれ!! 」

効果が薄いと判断した拳銃を投げ捨て、そのまま翼で薙ぎ払おうとする

普通に触れれば人間は裂けて潰れる所だが、その男は右手でそれを容易く受け止め、その翼を千切り取り、取った部分は消え去った

垣根「テメェ……!! そのツラ、思い出したぜ。幻想殺しァ!!」

消された翼を再度展開し、残る5本も同時に現れる。男のキャラクターに合わない、天使のようなフォルム

上条「相変わらず、似合わねえ御姿でございます事ッ!! 」

少し厚めの特集合金製靴底を複数個所、球状にくり抜いたその中心で微量の物質を消滅させる

矢のような速度で上条が垣根に急接近。想定外の急加速に対応が遅れ、上条と垣根自身を包み込むように翼が動く

上条の右手の方が早く垣根の頭に触れ、そのままの勢いで押し倒した

上条「終わり。油断は禁物だな」

右手の隙間から覗く垣根の視線と上条の視線が交差する。表情は歪んで悔しそうだ

どこかから、拍手の音がした。上条にとっても予想外。音の方へ顔を向ける

?「かみやん、良くやってくれたにゃー」

既に夜。ビルの間から洩れる光が薄く当りを照らす

暗がりの中から出てきたシルエットは、金髪、サングラス、そして上条が通う学校の制服?

 

 

 

上条「つ、土御門?!」

土御門「お陰で、そいつを無傷で葬れる。少しは手を焼くと思ってたから助かるぜぃ」

動揺している上条を見て、状況を把握する垣根。上条の立場は何処のものなのかは不明だが

垣根「……グループか。ッ、もうバレたってのか」

上条には、バレた、という言葉に思う処があった

上条「やっぱりあの爆破はブラフなのか! 」

土御門が、生徒が良い回答をしたことに喜ぶような表情を見せ、言う

土御門「その通り。標的を逃がすとは第二位もやってくれたぜよ」

垣根「メインプランすらも不必要になった今、不安要素は即削除か。そこが浅いな学園都市も」

土御門「そんなザマで格好つけてもダサいだけだにゃー。それじゃ、さよならだぜぃ、未元物質」

拳銃を構え、発射されるそのわずかな時間。実は土御門が現れてから、上条の垣根を抑える力は無意識なのか、減っていた

その事に一番最初から気付いていた垣根はすぐには振りほどかなかった。タイミングを計っていたのだ

銃声。少し前に上条の右手を払い、翼を展開。飛び出した銃弾は阻まれる

銃の発射音と翼の展開で、上条も一気に身を引いた

土御門「かみやーん、逃がしたら駄目ぜよ!」

土御門は白い翼の斬撃を回避しつつ銃を撃つ機会を見つけては撃ちこむが、無論阻まれる

第二位が上条から離れた時点で銃撃など無駄であることは銃を撃っている土御門が一番理解している

ならばなぜすぐに撤退しないのか

垣根(間違いなく、時間稼ぎ。ここの詳細な座標を正確に仲間へ送る為の)

上条「うるせえ!マジで殺すつもりだったろ?! 」

必死に翼を回避している土御門に殴りかかろうと接近する上条。だが彼の目の前に現れた鉄板がそれを止めさせる

それを見て一転、攻撃を止めて飛び上がる垣根

垣根(俺を始末するのにこいつだけで来るはずが無い。間違いなく第一位を含めた他の連中が……)

垣根の頭上に、空間移動の反応

垣根「来やがったか、一方通行ァ!!」

見もせずに、そこへ翼を振り回す。が、一方通行の反射がそれを阻む。強大なエネルギーの反作用が翼を介して垣根に伝わる前にその翼を自壊させる

一方「うるせェ。見た目通りに即昇天してろ」

落下するベクトルを操作して、空中で垣根目指してまっすぐ突き進む一方通行。垣根が瞬時に直線上から退避すると、その方向へ弾丸と化した空気が突き進む

垣根(面倒臭ぇ。こっちは壊されるわけにはいかねえ物を抱えてんだ。まともにやり合っても勝てるって確証がねぇ奴を相手にってのは……)

そんな余計なことを考えていると、連続した空気の塊が彼を捉える

咄嗟にディスクが入ったポケットを守ったが、被弾

空中で、垣根の体勢が揺らぐ

垣根(無茶は出来ない。刺し違えるような攻撃も駄目だ。何よりここは戦いたい状況じゃねぇ)

垣根(奴の反射に関係しないベクトルで攻撃をすりゃあ、ある程度第一位を削ることはできるだろうが、導かれるのはジリ貧。全てに対応される可能性を捨てきれない。となると)

落下していく垣根の目が捉えたのは幻想殺しだった

鉄板が土御門を守る様に急に現れ、上では一方通行が現れた

(間違いなく、空間移動能力を持った人が居ますね)

(その上、第二位の動きは消極的。このままではいずれ殺されますが、どうします?殺されてしまえば能力者情報は流出しませんが)

上条(殺されたら殺されたで、今度は死体の流出って可能性がある。寧ろ生きている方が自分で自分を守ろうとする分都合がいいだろ。なにより)

上条(極力死人は出したくない。それがどんな極悪人であってもな)

土御門「よそ見するとは余裕だな、上条当麻ぁ!!」

障害と判断された上条を沈黙させるべきと判断した土御門は、いつしかのように上条へ襲いかかる

隙を突いたつもりなのだろうが、逆にそれによって土御門の攻撃は単調になった

顔へのジャブで意識を上に集中させて、腹部への二―キックという強引な連携。だがそのリズムは無理がない

片足になった瞬間を見計らい、まるで足を切断するかの勢いでの足払い

逆に虚を突かれ、無力にも宙へ浮いた土御門に今まで散々に使って鍛えられた右ストレートを与える

土御門が後方へ吹き飛び始めたのを確認して、例の靴底を使った急上昇

落下する垣根と入れ替わるように、追い打ちをかけようとしている一方通行と垣根に割って入った

一方「邪魔だァ三下ァ!! 」

上条を吹き飛ばすべく、薙ぎ払うように左側から突風を巻き起こす

どうやって空中へ飛び上がったのかは分からないが、急に体勢を変えにくい空中で、幻想殺しの無い左側からの突風であれば吹き飛ばせると考えたのだが

ベクトル自体が消滅した

ここで一方通行が操ったベクトルは空気にかかるベクトルである。そのエネルギーが乗った空気自体が消滅した場合、ベクトルも霧散する

そしてその代償として、強烈な閃光が当りを照らす。そしてさらに恐らく少し離れたところから監視しているはずの空間移動能力者の眼を潰す為に、同時に強力な電磁パルスも発生させる

一般的な周波数の光が強力になっただけで、且つそれが、予兆も無しに現れた場合、それをあらかじめ反射対象にしていない 一方通行には、その閃光は効果を表す

一方で落下中の第二位の目に入った光は、黒く汚れた地面に反射された光である。その影響は、直接見てしまった一方通行に比べてそこまで大きなものではない

垣根が驚いて光源を見ると、一方通行の動きが止まっている

逃げるならば、今だ

水平方向へ翼で空気を叩き、地表スレスレで一気に加速し、その場からの高速離脱を図る

彼はまだ気が付いていないが、電磁パルスによって周辺の電子機器が壊れているので、この裏路地という迷路の中を駆けて行った事は結果として好判断だった

(この風の音、無事に逃げた様ですね)

(しかし、この閃光を発生させる方法、自分自身が回避できないというデメリットが大き過ぎます。使用の度に効率が良くなるようにエネルギーの制御方法を上書きしてはいるのですが、この光だけは効率よくしない方がいいかと)

上条(そうだな。何も見えねーよ)

全身のナノマシンの感じる重力から逆算することで、自らの体勢が今どうなっているのかを把握し、最適な体勢で地面へ落下する


三転着地を決め、路地の方向へ走る。無論まだ視界が回復したわけではないが、閃光を出す前に得た情報をもとにシュミレー トした仮想の空間を元に動いているのだ

この方法ならば、目をつぶっていてもぶつからずに走れる

上条と垣根が去った後、残ったのは土御門と宙から落下した一方通行

彼らの視界が完全に回復した時には既に二人の影はなかった

土御門「完全に逃げられたな 」

一方「三下の野郎、何をしやがった?一瞬代理演算の供給が遮断されるレベルの電磁波が発生したンだが」

土御門「知らないぜよ。だが、無線から携帯まで全滅してるのは確かだ」

核兵器かよ、と呟くと海原が空間を裂いて現れた

海原「お二人とも健在でしたか。電子機器類の反応が無くなったので心配しましたよ」

一方「はッ、心にも無いこと言ってんじゃねェよ。だがこのザマだ」

土御門「見ての通り、逃がした。上条当麻もな」

海原「本日の所は失敗、ということですね」

土御門「ああ、その通りだ。だが、上条も第二位を探している様だった。アイツにも監視をつけて泳がせれば、そのうち引っ掛かるかもしれない」

海原「分かりました。手配しておきます」

まさか第一位と第二位との間を割って入るとは、無茶苦茶な奴だと再評価しようと思ったが、上条は最初から無茶苦茶な奴であったということに気がつく

つまり、甘く見たのは自分達だったのだ

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