上条「・・・・・・六軒島?」3


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EpisodeX~proof of the golden witch~

6月21日06:58

Room5

――朝だ。
 結局、御坂の部屋の椅子に座って眠り込んでしまったらしい。なぜ俺、上条当麻が御坂の部屋にいるのかというと大きく理由は二つだ。
 一つは御坂からの頼み。なんでも…部屋の鍵は一本しかない→私は眠ってしまうかもしれない→初春さんが戻ってきたら開けてあげられないかもという三段論法だ。 二つ目は垣根達だ。なんせ二人が戻ったのは11時過ぎ、寝ている可能性が高い。打ち止めも寝ていただろうし、わざわざ起こすのも忍びないと考えてだったんだけど……まずい



上条「み、御坂ー…」

御坂「んん……?誰ぇー…?」

上条「俺、上条当麻。寝ぼけてないで一旦起きてくれ御坂ー」

御坂「!?…な、なんであんたがここに!?」

上条「いや……なんでってお前が頼んできただろ?覚えてないのか?」

御坂「…そうだわ。思い出した…」

上条「でな、お前が頼んでたことなんだけど俺もどうやら眠ってしまってたみたいで…悪いッ!」

御坂「頼んでたことっていうと初春さんのことよね…?じゃあ初春さん部屋には入れなかったってことかー…」

上条「そうなるな…本当にすまん。2時くらいまでは起きてたんだがー…」

御坂「ううん。無理に頼んで先に寝た私も悪いし気にしないで。こっちこそ無茶頼んでごめんね……でも初春さん、2時過ぎても戻らないなんて…食堂で眠っちゃってるのかしら?」

上条「それか、どこか他の部屋に居てるとかかもな」

御坂「もう7時前だし…着替えて、初春さん探しに他の部屋見に行きましょ」

上条「そうだな」

 

 

 

6月21日06:30

Room2


――外は大雨だ。煩い雨音に目が覚める。
 打ち止めは…?ああ、そうだ。俺は昨日途中一人で帰ってきたのだと思い出す。ガキには言い過ぎたと、今更ながら少し後悔した。
 そういえば、昨日はバラを探してやると約束した事を思い出しながらカーテンを開ける。窓からはちょうどバラ庭園が見下ろせる。昨日は花びら一枚と落ちていなかった庭園の道は、今や赤や白で斑模様を描いているほどだ。この雨ではちっぽけな目印をつけた薔薇を見つけるのは至難の技だ。
 学園都市の天気予報に"当たる・当たらない"という概念は無い。全てはツリーダイアグラムによって支配され、何分何秒単位で完璧なる予測がなされる。だからこう…いつ止むのかはっきりしない雨というのには、逆に感慨深くさえ思う。…さっさと止んでくれ、本当に面倒だ。

 

6月21日07:09

Room6

「土御門いるか?」


――ドアの向こうからノックの音と共にくぐもって声が聞こえる。上条当麻だ。俺はドアを開く。



土御門「カミやん?どうかしたのか?」

上条「朝から悪いな!あのさ、部屋に初春さん来てるか?」

土御門「初春?ああ、お花畑のお嬢さんかの事かにゃー?」

御坂「そうよ。結標さんと一緒に戻ってきたかなと思ったんだけど…」

土御門「結標……?」




――いない。眠気が一気に覚める。広い部屋には俺一人。結標どころか海原すらいないのだ。あの面子で話が弾んで夜通し会話を続けていたなんてありえるのか?



土御門「初春さんどころか…今、ここには結標も海原もいないぜよ」

御坂「結標さんも、海原さんも……?」

上条「というかお前、昨日はあの後戻らなかったのか?」

土御門「電話が終わったら3時前だったから、もう行くの面倒になったんだにゃー」

上条「…さいですか。…さっきの続きだけど、じゃあ姫神も合わせると、昨日最後まで残ったメンバーだな」

御坂「初春さん、すぐに帰るって言ってたからあのまま話続けてましたっていうのはないと思うんだけど…」

上条「誰も鍵を持ってなくて部屋に入れなかったんじゃないか?」

土御門「それはないと思うぜよ。自己紹介の時に言ってたと思うが、結標はレベル4の座標移動だ。ドアの前まで来て中に人を飛ばして開けてもらえば鍵なんて要らないんだにゃー」

御坂「たしか結標さん…自分を移動させるのには大きな精神負担が掛かるんだったっけ?」

土御門「そうだにゃー。さすがにあの状況なら戻ってくる時は一人じゃないだろうから、しないはずないと思ったんだがな…」

上条「うーん…」

 

 

 

6月21日07:15

Room1


絹旗「外は超雨ですね」

滝壺「本当だ…」

麦野「昨日の昼の天気が嘘のようね。こんなに降るなんて思ってなかったわ」

絹旗「今日は外に出る予定だったのに、この雨じゃ超嫌になりますね…」

麦野「服が濡れるし今日は止めましょ。あの謎解き、明確に日時は示されてないし。学園都市からも期限を設定されてない。つまりいつまでいても良いってことよ」

滝壺「…でもあんまり長くかかると、フレンダもはまづらも心配すると思うよ?ここ携帯が圏外だから連絡がとれない…」

絹旗「ほんとですね…だいたい圏外なんて表示、私初めて超見ました!」

麦野「あら。でも…まぁ学園都市に電波の無い場所なんて存在しないものね。にしても、ケータイが使えないのは参るわねぇ」

絹旗「あの二人は"考えるより行動する"派の人間ですから、あんまり私達が帰らなければ、超勝手に上に虚偽の報告とかしそうで超怖いですね…行方不明とか」

麦野「ありえるわ…有り得過ぎる。あの二人ならやりかねないわ」

滝壺「あの二人はおっちょこちょいだからね……」

麦野「んなことになって猟犬部隊でも出てきてみやがれ……この仕事のギャラは全員間違いなくゼロよ」

絹旗「なんですと!?超困ります!!海外超マイナー映画祭ができなくなります!」

滝壺「…なにそれ?」

絹旗「よくぞ聞いてくれましたね!滝壺さん!それはですね…」

麦野「どうせ外で仕事の時、終わった後に現地で名前も知らない映画見まくるとかでしょ?」

絹旗「…むむ、なぜわかりましたか」

麦野「んなのすぐ分かるわよ。じゃあ……その自称映画マニアさんにとって、こんな洋館とかはどうなの?モロに映画の舞台って感じだけど」

滝壺「…そうだね。孤島っていうのもあるし」

絹旗「見た目だけは超最高ですね!ミステリー映画とかとっては超見栄えする舞台だと思いますよ……ただ中が」

麦野「…中ァ?肖像画が駄目とか?」

絹旗「いえいえ、滅相もないです!一つ残念っていうのは寝室です。正確には寝室の鍵です」

滝壺「…?」

絹旗「……鍵が"オートロック"っていうのはどうも雰囲気が削がれます。個人的にはあのレトロな手動式のが超理想だったんですがね…」

6月21日07:15

廊下

上条「やっぱり雲川先輩のところも姫神、帰ってきてないって言ってたから、4人一緒でどこかにいるって考えるのが普通だな」

御坂「…そうね。一応麦野さん達にも聞いてみましょ。垣根さんは、部屋でまだ打ち止めが寝てるかもしれないから最後ね」

上条「一方通行の部屋は……さすがにないな。次に会った時にでも聞くだけでいいか」

御坂「ええ。……全部杞憂だと良いんだけどなぁ…」

上条「そうだな。俺もそう信じたい……たしか麦野さん達は1か。土御門達の部屋が階段側から見て一番手前だから、1は突き当たりの部屋だな」



――"嫌な予感"っていうのは最初から二人共にあったのかもしれない。
 でなければわざわざ各部屋に赴いて、たかが寝室に戻らなかっただけの人間を探すような事はしなかっただろうから。たぶん他の人には伝わらない。そう…直感的なものが何かを示していたのかもしれない。

 そして異変に気付いたのはその時だった。俺と御坂で麦野さんの部屋に向かう途中。"それ"は見付けた。Room2、たしかここは一方通行の部屋だ……。

 

 

6月21日07:10

Room3


打止「昨日はミサカをここまで連れ帰ってくれてありがとう!ってミサカはミサカは感謝感激の気持ちを表してみたり」

垣根「いや…それは別に良いけどよ。あれ…?そういや上条は帰ってきてないのか」

打止「鍵はミサカ達持ってたから入れなかったんじゃないかなってミサカはミサカは思ってみるんだけど…」

垣根「まあそうなんだけどな、ここの鍵、電子ロックだから超電磁砲なら余裕だと思うんだけどな…」

打止「あ、そっか!ってミサカはミサカは納得してみる。じゃあミサカでも開けられるかなー?」

垣根「お前はたしかレベル3程度なんだろ?学園都市でそれなりの場所の電子ロックなら難しいかもしれねぇけど、さすがにここなら開けられるんじゃないか?」

打止「そうかな?後で試してみようってミサカはミサカは宣言してみたりー!」

垣根「ああ、そうだ。お前荷物は向こうの部屋か……ちょっと待ってろ」


――部屋の内側から微量の電気を放出して、必死に鍵を開けようとしてる打ち止めを横目に、俺は部屋の内線へと手を伸ばす。たぶん一方通行の部屋の鍵も能力でこじ開ける事は可能だろう。だがそんな事をしてしまうと、いくら打ち止めといえど一方通行が昨日の機嫌のままだとすればさらに悪化させる恐れさえある。だから先に連絡をとっておこうって魂胆のつもりだったんだが。



垣根「何だこれ。繋がらねぇ」



――受話器をとっても内線のツーという音がしない。ただ、数字のボタンを押せばきちんと機会音はするから、この電話機が壊れているワケではなさそうだ。断線か?

 

 

6月21日07:16


――悲鳴が響く。この声は超電磁砲か…するとすぐに勢いよくドアを叩く音が聞こえる。叩かれているのは俺の部屋だ。



一方「朝っぱらから何なァンですかァァア!?」



――ドアを開く



上条「…一方通行ッ!無事だったか!!」

御坂「よかった…」

一方「あァ!?何言ってンだオマエ等…」

上条「ド…ドアにな…」



――ドア?三下はどうやらドアの外側を指さしているらしい。……。



一方「……これは何の遊びだァ三下?」

――そこにはドア一面に血のようなもので付けられた数々の手形、引っ掻いたような跡。見るからに悪意や殺意みたいなものを感じる。



上条「ち…ちがう!俺じゃねぇよ!今、御坂とここを通りかかった時に見付けたんだよ…」

一方「……てことはオマエの部屋には付いてなかったのかよ」

上条「あ、ああ…土御門の部屋からこっちに歩いてきた時に見た部屋には、そんなのは一つもなかった…」

御坂「いったい誰がこんな悪趣味なこと…」



――改めてドアの前に立つ。微かに香るこの匂いは、間違いなく血だと確信する。さっさと掃除しないと落ちなくなるなと、そんな事を考える。ふと、足元を見下ろすと蠍のコインがキラリと光った。

一方「……ンな事どォでも良い。オマエ等どっちかで使用人呼んできて掃除させろ。目障りだ。俺は面倒臭いから行かねェ」

上条「…ああ!分かった。使用人の人呼んでくるから一方通行は部屋にいろよ!」

御坂「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!私も行くわ!」



――雨の中杖を着きながら歩き回るなんて真っ平御免だ。三下の言うとおりに大人しく部屋で待っていようとしたのに、だ…


土御門「一方通行…なんぜよそれ?お前がやったのかにゃー?」

麦野「第一位サマの新手の芸術かしらん?」

滝壺「…ドアに描くのが今の流行りなの?」

絹旗「一方通行のセンスには超脱帽ですね!しかもその血、超自分のですか?」



――超電磁砲の悲鳴で部屋から出てきた連中は"アイテム"に"グループ"。やはり暗部のヤツは頭がオカシイ。マトモなヤツはいないのだと確信した。

 

一方「煩ェぞ三下共が。なンでこの俺が朝っぱらから、こンな面倒臭ェことしなきゃならねェンだよ」

麦野「ありゃ?違ったかにゃーん」

絹旗「一方通行がそういうの、あまりに超似合い過ぎだという話ですよ。あ、嫌味ではなく超素直な超尊敬ですよ?」

一方「超超超超言うンじゃねェ。うぜェぞチビガキ」

絹旗「超何ですか!それは侮辱と受け取りますよ!?大体、口癖と言うのは本来遥か昔から人間のアイデンティティだと超言われているんですよ!」

滝壺「…そうなの?きぬはた」

絹旗「超そうですよ!」

一方「オマエ……。頭悪ィンだな……」

絹旗「超私のこと馬鹿にしてますよね!?」

垣根「おい!朝からうるせぇ!さっきから、御坂といいお前らといい…何やってんだ?」

打止「ぴょーんってミサカはミサカは可愛く登場してみたり。おはようあなた!」

一方「…あァ」

滝壺(………あなた…?この二人、もう結婚してるの?)


垣根「…なんだそのドアは!?」

一方「ハァ…。さっき三下達が気付いたンだよ。誰がやったのかは知らねェ。俺が寝てる間にやったンだろ」

打止「………おわー」

垣根「というか、お前完全に扉閉じ出てきてっけど、鍵持ってんだよな?手には持ってねぇみたいだけど」

一方「」

垣根「……」

麦野「きゃはは!実は絹旗より頭残念なのかしら?第一位サンは」

滝壺「あくせられーた……」

絹旗「鍵を忘れて部屋に入れない小学生じゃありませんし、超まさかまさかですね!」

土御門「天然なんだぜぃ。実はな」

打止「うーんー…ミサカの能力で開けてあげられたらよかったんだけどってミサカはミサカは残念に思ったり。このカードキー型オートロック、ミサカの能力じゃ開けられなかったの。やっぱりお金持ちだとこういうところにもお金をかけるんだねってミサカはミサカは感心してみたり!」

垣根「ああ、さっき試してたのは結局無理だったんだな」

麦野「試す?能力で鍵開けるのが?」

打止「そう。ミサカの能力は欠陥電気でエレクトロマスターとしてはレベル3程度の能力なんだけどなーって、ミサカはミサカは肩を落としてみたり」

絹旗「へぇ…"電撃使い"のレベル3で開かないって言うなら超大した強度なんですね。この鍵」

垣根「だな。学園都市外って、あんまり行った記憶もねぇから分からねぇけど、数十年もの科学技術の違いがあるって言われてる学園都市並ってのはすげぇよな」

麦野「慣れとか基本的構造の違いってのもあるのかもね。私はエレクトロマスターじゃないからよく分かんないけどさ」

土御門「だにゃー」

打止「お姉様なら…これくらい普通に出来ると思うんだけどってミサカはミサカは言ってみたり」

絹旗「超電磁砲が戻ってくるか、使用人に頼むまで、部屋には戻れないみたいですよ?一方通行!」

滝壺「…うれしそうだね、きぬはた」

 

 

――そこからの展開はとても早かった様に思う。俺と御坂は一方通行の部屋のことを使用人の人に伝える為ゲストハウスを出て本館に向かった。途中ゲストハウスの一階のソファには雲川先輩がいた。どうやら本を読んでいるらしかったが、何を読んでいるかはわからない。古くて分厚い何か難しそうな感じがした。

6月21日7:24~本館・入口~

上条「源次さん!」

源次「上条様。今そちらにお伺い致そうと思っておりました」

御坂「え?」

源次「…朝食なのですが、申し訳ありません。こちらの不備でまだご用意出来ておりません。至急準備を致しておりますので、ご用意出来次第またお呼びいたします。」
上条「ちょ、朝食はいいんだ!それより来てくれ!一方通行の部屋のドアに血の手形みたいなのがたくさん付いてるんだ!」

源次「一方通行様のお部屋に…?後ほど清掃いたします。申し訳ありません」

御坂「あと、初春さん達が見当たらないの。こっちに来てたりするかしら?」

源次「……初春様?昨日は遅くまでご歓談していらっしゃったのは記憶にございます。たしか午前1時頃にお茶をお持ち致しました時には初春様、姫神様、海原様、結標様の四名でいらっしゃった様に思います」

上条「やっぱり4人か…まだ食堂にいる可能性はあるか?」

源次「わかりません。すぐに探してみます。実を申しますと、使用人・紗音と熊沢の姿も見えません。ご存知ないでしょうか?」

上条「紗音さんと熊沢さんも?」

御坂「見てないわ…ゲストハウスの方にはいないと思うけど…」

源次「お客様方も食堂の方かもしれません。探してまいります」

上条「俺達も行くぜ。人多い方が見つかりやすいだろうしな!」

御坂「…そういうと思ったわ。行きましょ」

 

 

同時刻~ゲストハウス一階~


雲川「…姫神、初春、海原、結標。なら…あと二人は使用人だと思うけど。これで"第一の晩"は過ぎたわけだ。【鍵の選びし六人を生贄に捧げよ】とはな。」



――渡来庵一階。小さな机に乱雑に広がる数々の本。これは昨日の夜に本館の図書蔵庫室から拝借してきたものだ。大体あんな程度の言葉で"解け"とはよくも言ったものだ。これは"なぞなぞ"ではない。ただの"確認テスト"だ。知らなければ解くことができない。そんな問題だ。



雲川「"賢い"と"頭が良い"というのには大きな違いがある。学園都市序列第一位から四位まで揃いに揃っているけど、誰も解けはせんだろうなぁ……いや、これでは齟齬が生じる。正確には"解こうとしない"だな」

 

 

 

6月21日7時30分~ゲストハウス2階~


嘉音「…皆様方。もう起床されておりましたか」

麦野「えっと、あんたはたしか…嘉音だったっけ?」

嘉音「はい。そうでございます麦野様」

土御門「誰かに何か用かにゃー?」

嘉音「はい。源次がこちらに来ると聞いていたのですが…入れ違いになったようです」

土御門「源次さんは来てないぜよ。ああ、そうだ。これ、後で良いから、どうにかしといてもらえるかにゃー?あとマスターキーも頼むぜぃ」

嘉音「…これは…!」

麦野「んー?なんか心当たりあんの?」

嘉音「いえ……同じようなものを先程見たもので」

一方「…同じようなモノ?」

垣根「血の手跡か?」

嘉音「手跡ではありませんでした…僕が見た限り、魔法陣のように思いました」

土御門「……」

絹旗「マホウジン?…魔法?そんなの描いて、超何になるんですかねぇ…」

麦野「魔法ねぇ…そんな言葉聞いたの小学校低学年以来だわ」

垣根「俺達は学園都市の人間だからな。魔法やオカルトなんて信じられるわけがないって話だ」

滝壺「…奇跡は偶然として、ただ何億分の一の確率で存在する。起こったことはその確率に当て嵌まっただけ。そういう考え方だもんね…科学の町、学園都市の教育機関は」

絹旗「しかし、疑う余地がありませんね。だって例えば…そう。超難しい学校を受験するとします。受かる可能性は見込めない。ほとんどゼロに近かったとしましょう。人は祈るでしょう。神様か、何かに。そして、結果は合格だったとします。その人間は、本当にその合格は神様によるものだと考えますか?祈りが届いたからだと思いますか?」

一方「……」


絹旗「答えはNoです。間違いなく。人は自分の努力のおかげだと超涙を流すでしょう。そしてそれは超正解です。つまりはそういうことなんですよ」

垣根「……」


絹旗「問題が解らなかった。その時適当に書く解答が正しい確率は極めて低い。だけど可能性はゼロでは無いんです。だから偶然は存在する。"能力開発"はそれに基づいた考えなんじゃないんでしょうか?」

滝壺「…"奇跡"っていうのは人間の都合の良い解釈だってこと……?」

絹旗「それも超そうですね。そしてもう一つ。神様や魔法やら、おまじないやら。超すべては人間の作り出した勝手な妄想です。現実逃避になんかはよく使われるのが証拠です」

麦野「…彼氏と別れた→これは神様の所為なんだ。っていうのがそれね」

絹旗「はい。要するに"そういうの"は超人間の都合の為に存在するということですね」

一方「クカカ!チビガキにしては正当な事いうじゃねェか」





打止「うー…それは違うよってミサカはミサカは小さく一人で呟いてみる…」

 

 

土御門「さて。だいぶ話がズレたが、さっきの話の続きだぜぃ。その魔法陣はどこに描いてあったんだにゃー?」

嘉音「はい。バラ庭園横の倉庫にございます。……まさか見に行かれるおつもりですか?」

麦野「それ良いわねー面白そうだし。それに私達は碑文の謎を解く為に呼ばれたのよ?その魔法陣、関係あるかもしれないじゃない」

垣根「魔女に魔法ってのは、しっくり来るしな。それに…一方通行も気になるだろ?」

一方「……」

土御門「って事だにゃー。案内してくれ」

嘉音「……分かりました」

 

 

 

6月21日7:35~ゲストハウス1階→~


嘉音「…その前に、源次に報告に向かいたいのですが、構いませんか?」

土御門「構わないぜぃ。」

垣根「源次さんはこっちに来るつもりだったんだろ?でも来てない。もしかしたら途中で上条達に会ったのかもな」

麦野「ああ、そうかもね。ただ行って報告するだけにしては遅いし」

嘉音「…報告?何をですか?」

垣根「この部屋のことだよ。あとは4人の話だな」

嘉音「…4人?」

土御門「昨日、最後まで食堂にいたやつらが帰ってきてないんだにゃー」

麦野「何それ。初耳よ」

絹旗「具体的には超誰なんですか?」

土御門「姫神秋沙に初春飾利に結標淡希、海原光貴の4人だぜぃ」

垣根「本館にいるんじゃねぇか?」

土御門「たぶんそれをカミやん達は探してるんじゃないかにゃー?」

絹旗「えっと…超今思い出したんですが…海原光貴っていうと、もしかして常盤台のご子息のことですか?」

上条「とりあえず食堂に行く前に、近い他の部屋を探してみたけど…いないな」

御坂「本館、人数の割に部屋多いわねー。ゲストハウスがあるんだから客人を泊めるってわけでもないでしょうに…」

源次「…ゲストハウスこと、渡来庵は本来リゾートホテルとして建てられましたので」

上条「へぇ。あのバラ庭園もその為に作られたのか?」

源次「はい」

上条「今も綺麗に整備されてるんだな」



御坂「……ねぇ、あれ。使用人の人じゃない?」



―――御坂が指差した先の窓には嘉音くん、そして学園都市組が、こっちに歩いてきているようだった。

滝壺「…超電磁砲はこの通路の奥。体晶がないから、はっきりとはわからないけど」

打止「うん!お姉様はこの奥43m先にいるよってミサカはミサカは言ってみる。お姉様から出てる微弱な電磁波で分かっちゃうもんねってミサカはミサカは説明を加えたり」

一方「こォいう時は能力は便利だよなァ」

垣根「まぁな」

土御門「超電磁砲がいるならカミやんもいるだろうな」

打止「あと12m。ソナーで見るとあと二人お姉様と一緒にいるみたいだよ」

絹旗「…やっぱり、電気系の能力は超色々便利ですね」

滝壺「きぬはたの能力もすごいと思うよ?銃弾も防御できるし…」

絹旗「銃弾を防御って言っても、出来るのは超お粗末な小型銃だけですよ?それにオート防御といえば強化版が超隣にいますしね…」

一方「…俺のは防御じゃねェ。反射、ベクトル操作だ。ンな事も知らねェのか」

麦野「…それも便利な能力よね」

垣根「"隣の芝生は青く見える"ってやつだな、誰かが言ってた。実際、俺は麦野の能力が羨ましいしな」

麦野「…そんなものなのかしらね」

御坂「こっちに来てるわ。私達に用事かしら?」

上条「何でわかるんだ?」

御坂「打ち止めの発してる電磁波ね。まあ自分の能力と同じある程度の距離になると分かるの。簡単にいうと…"AIM拡散力場の共鳴"ってヤツかしらね」

上条「なるほどな…」



打止「お姉様っ!」

御坂「打ち止めに…雲川さん以外全員じゃない。それに一方通行…アンタ面倒だから来ないって言ってたじゃない!」

土御門「俺達が来たのは別件だにゃー」

嘉音「はい。源次様、ご報告がございます。バラ庭園の倉庫に妙な落書きが…」

源次「…バラ庭園?」

 

 

 

6月21日7:42~バラ庭園倉庫前~

上条「な…なんだ…これ」

御坂「何かの模様…?」


――バラ庭園の倉庫シャッターには、大きな円。いや、魔法陣か……見たことない模様だが似ている。禁書目録に関わる魔術師が描くものに。

源次「嘉音…鍵はどこに?」

嘉音「ここにあります」

土御門「…一回開けてみた方がよさそうだぜぃ」

垣根「この魔法陣?にどんな意味があるのかは知らねぇけど、それはそうだな」

嘉音「…お待ちください」

――シャッターが開く。



中にあったのは




死 体 だ 。





ヒトが倒れているとか、そんな甘いものじゃない。


どう見ても


死んでいる。





上条「!?」

御坂「何よこれ……!!」

垣根「…おいおい、笑えねぇぞ」
一方「………」

打止「ねぇ、何があるの?ミサカ小さくて見えないんだけどーってミサ」

一方「来ンな!!!おい滝壺、絹旗、そいつ連れて今すぐ部屋に帰れ」

絹旗「ちょ…」

滝壺「わかった。行こう。きぬはた、打ち止め」

打止「え…ミ、ミサカも見たいのにーってミサカはミサカはお姉ちゃんに引っ張られながら未練を叫んでみたりー!」

―――打ち止めは帰った。滝壺はああ見えても頭が良いのかもしれないと場違いなことを考えながら、再び倉庫を見る。暗くてあまりよく見えない。ここから見える限り、死体は5体。



初春飾利、姫神秋沙、海原光貴、結標淡希、熊沢チヨ。



行方不明の能力者達に使用人が一人。



一方「…にしても良い趣味してやがンじゃねェかよ。顔を耕すなンてよォ」

垣根「全くだな」

麦野「でもどうやら全部ではないわね。ほら、そこ。初春飾利に結標淡希は半壊程度で、識別できるし」

垣根「確かにな」

御坂「な…なんであんた達はそんなに冷静なのよ!!!ひ、人が5人も殺されてるのよ!?」


麦野「殺されたかは分からないわよ?自殺かもしんないしねぇ」

垣根「まあ流石にたぶんそれはねぇけど。ちなみに一つ訂正だ。どうやら5人じゃなくて6人みてぇだぜ」

上条「は!?」

一方「あァ。この奥か。顔は潰されてて確定は出来ねェけど、これは多分"使用人・紗音"だな」

垣根「服と体型的まあそうだろうな」


御坂「も…もうやだ!!」

上条「御坂!!」




―――超電磁砲が走り出す。その後を三下が追う。まァ普通の人間なら反応はこんなものだろう。レベル5とはいえ、超電磁砲は超能力者の広告塔みたいな存在だ。暗部に関わりが無いどころか、死体すらまともにほとんど見たことなどないのだろう。


嘉音「安全の為、僕は御坂様達を追いかけます。あと警察にも連絡を」

源次「わかった。すぐに追いかけろ」

嘉音「はい」

麦野「さて、中坊共は全員消えたことだし聞きましょうか。誰がやったのかって話よ」

垣根「こんな血生臭い場所で意見発表会か?テメェも大概だよな、麦野」

麦野「うるせぇ、二位様がよォ。あんたはどう思う?一方通行」

一方「俺に振ンじゃねェよ………まあ八割方、学園都市から来てる人間の仕業だろォな」

土御門「使用人じゃ無理だろうしな。レベル1の初春飾利や原石・姫神秋沙はともかくレベル4の結標や海原までとなったら話は別だろう」

麦野「じゃあ、もうレベル5が犯人だって言ってるようなものじゃない。その理屈だと」

土御門「そこまでは言ってない。ただ結標も海原も暗部の人間だ。そんなやつらまでとなると限られてくるって話だ」

垣根「そりゃ確かにそうかもな。というか思えば、殺された基準がわからねぇな」

一方「…どォいう意味だ」

垣根「グループの連中なんて殺したら、犯人はその程度を殺す事が出来ると周り知らしめるようなもんだろ。候補は絞られてくる」

麦野「例えば、ウチの滝壺なんかじゃ無理ってことね」

土御門「あとは、この現場の状態的に外される人間は出て来る。"超電磁砲"、"原子崩し"なんかじゃ、これは難しいと思うぜぃ」

麦野「まあ確かに、私の能力ではないわね。"頭部消失"ならともかく"顔面粉砕"じゃ私の分野ではないというか」

一方「…待て。それは"能力で殺人を行った"って前提の話だろォがよ。庭用の鍬でもありゃ、あンなの誰にだって可能だ」

垣根「それは間違ってはねぇけどよ、それこそ前提が要る。"能力を使わずに鍬で顔面を耕すことが出来る状況≒何かしらの理由により抵抗出来ない状況"を作り出すことだ。言ってる意味わかるか?」

麦野「要するに"眠らせる"ってのが一つでしょ?」

土御門「アリバイから犯人突き詰めるなら、まず"いつ殺されたか"を知ることが最初だな」

垣根「…この島、医者はいねぇのな。それかただ単に俺達の前に出てきてないか。どちらにしろ"そういうの"に詳しいやつがいないってのは些か不利だな」

麦野「医者がこの島の当主専属とかなら出てきてないだけってのも有り得るわね。出て来る必要がない」

一方「……まァ見た限りじゃ死後*時間ってところじゃねェか。少なくとも死んで1時間なンかじゃねェな」


土御門「……」

垣根「となると、一番怪しいのは勿論」



麦野「あんたよね。一方通行」

 

 

 

~本館1階~

絹旗「あれは超電磁砲…?」



―屋敷のドアは勢いよく開く



上条「御坂ッ!」

御坂「みんなが死んじゃった…う、初春さんが死んじゃった…私が…私が最初から気付いていれば、初春さんを残したりしなかったのにッ!!黒子に何て言えばいいの……」

絹旗「……」

滝壺「……」


打止「…"最初の鍵"。お花のお姉ちゃんも選ばれたみたいだねってミサカはミサカは今聞いたことから情報を整理してみる。」


滝壺「ラストオーダー…?」

打止「でも大丈夫だよ、お姉様。黒子っていうのは学園都市の人のことでしょ?……ミサカ達が"言う"ことなんて無いから。」

上条「どういう意味だ…?」

打止「だからね、ミサカ達は誰一人生きてこの島を出ることはないってことだよってミサカはミサカは簡略化してみる」

御坂「何?じゃあ私達もあんな風にみんな殺されるってこと?誰が?何の為に?どうして私達は殺されなきゃならないのよ!!」

絹旗「超電磁砲…一度、超落ち着いた方が良いです」

御坂「落ち着く!?そう……そういえば、あんた達も麦野さん達と同じ暗部組織の人間だったわよね。…だから落ち着いてられるのよ!!普通の人は、私は、人間が殺されてるのに落ち着いてなんかいられない!!!」

打止「人が死ぬことなんて最初からわかってたことでしょってミサカはミサカはお姉様に確認してみる。死んだのは6人。"碑文"の通りだよ」

上条「…碑文?」

打止「そう」

雲川「"第一の晩に、鍵の選びし六人を生贄に捧げよ。"」

 

 

――――


雲川「ってことだけど」

上条「…じゃあ先輩は、誰かが碑文の通りに殺人を行うつもりだと?」

絹旗「……で、超面白い解釈ですけどあまり笑えませんねっていう話をしていたところです」

雲川「まああの程度、私の頭脳を以ってすれば造作もないけど」

打止「あなたの頭がいいことはミサカはよく知ってるよ。だから、できればそのまま傍観していてほしいなってミサカはミサカは己の欲望を口にしてみたり」

上条「……?」

御坂「だから……あんた達おかしいわよ!!どうして碑文がどうとか、わかっていたこととか、そんなこと言ってられんのよ!!それに…碑文っていうならまた人が殺されるって事じゃない…!」

滝壺「超電磁砲…言いたいことはよくわかるよ。私もこわい」

~バラ庭園倉庫~

一方「ぎゃは!そりゃそうだろォなァ。俺でもそう思うわ」

麦野「犯人がアンタなら全部証明可能だし。まあ強いて言うなら"倉庫の密室"と"何故殺したか"は証明できないけどね」

土御門「密室なんて結局どうにでもなるものだにゃー。例えば《倉庫は初めから鍵がかかっていなかったかもしれない》しな。推理小説でも読んでみればいくらでも抜け道なんてある」

垣根「ちなみに麦野。重要なのはフーダニットにハウダニットだ。ホワイダニットなんざどうでもいいんだよ」

一方「密室の話は同意だ。だがオマエの話には同意出来ねェなァ。人を殺すなら理由ってのが要るンだよ。金でも快楽の為でも何でもなァ」

麦野「場合によっちゃ、それが犯人を特定する鍵になるしね」

土御門「理由というなら…話は戻って、どうしてこの6人なんだって話だにゃー…」

上条「死んでいたのは…6人だ」

雲川「ふぅん。今の話じゃ外からの明かりで見えたのは5人だけのようだけど。どうして6人目が判別できた?」

御坂「…指輪よ。手だけは見えた。あの人指輪をしていた…高そうなダイヤの指輪。…あとは私は直接見ていないけど、垣根さんは服装と体型だって言ってたわ…」

絹旗「倉庫には鍵がかかってましたし、超完全密室ですね…」

上条「…嘉音くん。あの倉庫、鍵は一つしかないのか?」

嘉音「はい。使用人室に一つしか…先程は倉庫に行く為、僕が所持していました……これでは犯人は僕達だと言っているようなものですね…」

滝壺「そんなことはないよ。私達は学園都市の人間だから、そういう"常識"はないよ」

雲川「………」

 

―――



一方「じゃあ、【仮定Ⅰ・一方通行が犯人の場合】だ。結標、海原はまァ良い。顔も知ってるし、動機があるのも頷ける。だが残りはどうする?会ったこともねェ人間ばかりだ」

垣根「【動機Ⅰ・打ち止めの為】ってのはどうだ?一方通行。あの子、やけに魔女伝説を信仰してるしな。殺した選考基準はランダム、"碑文らしく見えるように"。ま、俺は理由なんかどうでも良いんだけど」

麦野「ひゅー。面白いじゃない。起こらないから自分で魔女伝説を起こそうって話?」

一方「…愉快で素敵な考察だなオイ。オマエ達も今すぐ此処で惨殺してやろォかァァア!?」

土御門「落ち着け、一方通行。ただの空想の一例だにゃー(コイツだったらやりかねないけどな…)」

一方「大体、こんな目立つ風にした意味が理解出来ねェ。ご丁寧にシャッターに魔法陣まで描きやがって。ンなの、此処に何かありますって言ってるよォなもンだろォが」

麦野「そうね。目立つ様にしたいってなら食堂でも良い話だし」

垣根「魔法陣といや、このシャッターの塗料、お前の部屋の手形と同じじゃねぇのか?」

一方「みてェだな。じゃあなンだ?あれは俺を殺しにきたってのか?笑える話だなァオイ」

麦野「あはは。あんたの部屋、魔避けでもしてあって、だから入れませんでしたっとかじゃないの?」

垣根「部屋に入ろうと足掻いた跡って事か?またオカルト的な話だな」



―――部屋の魔よけ、オカルトと聞いて頭を掠めたのは、あの"蠍のコイン"だ。
そんな戯言、死んでも口に出さねぇけど。

 

 

~本館・客間~

絹旗「ああ皆さん、超お帰りなさい。何か新しい発見はありましたか?」

麦野「ぜーんぜん。死亡推定時刻すらもまともに分からないし」

滝壺「あの…シャッターの魔法陣は?」

垣根「それもさっぱりだな。まず何が書いてあるのかが読めねぇ」
一方「分かったのはあの文字がヘブライ語ってぐれェだ」

御坂「ヘブライ語…?今、あの魔法陣を再現してみようとしてたんだけど」

上条「あんなところにわざわざ書かれてたワケだしな……何か意味があるのかと思ってさ」

麦野「意味ねぇ……私はあんまり図形自体覚えてないわ」

御坂「何かこう…十字架みたいなのがあった記憶はあるんだけど……」

垣根「ああ、んな気はするわ。ドイツの十字架な」

滝壺「…なにか宗教的な意味があるのかな?」

上条「インデックスに聞けば分かったかもしれないけどなあ……俺にはさっぱり」

土御門「俺もだにゃー」


打止「きゃはははははは!!」






一方「……!」


打止「誰一人としてこんなのも知らないの?生まれたばかりのミサカでもわかるのに?本当に?」



―――打ち止めは超電磁砲の持っていたペンを奪い取り、紙に絵を加えていく。



打止「これは太陽の7の魔法陣。書かれてる文字はヘブライ語。天地と左右に書かれているのは風火水土を司る天使たちの名。そして斜め四方には四大の王たちの名。」

御坂「……?」

絹旗「あ、あと…円周部にも超文字が書かれてましたね」

――打ち止めは筆を休めず円周部にも、また文字の羅列を書き込んでいく。



打止「こうでしょ?旧約聖書の詩篇、第116編の16節と17節だよってミサカはミサカは説明する…まあ、あなた達は科学の街、学園都市の人間だから知らなくても頷けるけど」

御坂「……す、すごいわね、打ち止め。…それで、この魔法陣にはどんな意味があるの?」

打止「太陽の力を借りる魔法陣。黄金で描き護符にして身につけたる者は、いかなる牢獄であろうとも束縛から逃れ、自由を得られる力を授けられる」

上条「…束縛から逃れ、……自由を得られる…?意味深だな…」

打止「この束縛という意味は、何も肉体的なものだけを指さないと解釈されているの。…だから、縛られて牢屋にいる人ばかりに意味がある訳でなく、しがらみや逃れ得ぬ運命とか、精神的な束縛からの解放も意味してるんだよってミサカはミサカは追加する」

垣根「……しがらみや、逃れ得ぬ運命か。…これまた意味深だな」


絹旗「しかし…さっぱり超わっかんないですね。"それ"とあの6人の遺体と超何の関係があるんでしょう。…束縛からの解放どころか、超殺された上に倉庫に閉じ込められてたわけですし」

打止「別にね、その6人のために魔法陣が描かれてるわけじゃないの。"魔法陣のため"に、6人はそこにいるんでしょ。お気の毒だけれどってミサカはミサカは弔いの態度を見せてみたり。まあ、仕方ないんだけどね。………きゃはははははは!」

御坂「……ッ!」

滝壺「どういう意味なの…?"魔法陣のため"に、6人がいるっていうのは?」


―――打ち止めは、自ら描いた図形を指さす。また、聖書か……?



打止「それは円周部に書いてる。詩篇、第116編、16節と17節。…ミサカはミサカは読み上げる。【主は私の枷を解かれました。私はあなたに感謝の生贄を捧げ、主の御名を呼ぶでしょう】…ね?」

御坂「ね?、って…」



―――つまり、このクソガキが言ってるのはこういう事だろう。

魔法陣の完成→生贄が必要→6人はその犠牲

簡単な話じゃねぇか、そんな話。信じるワケねぇけどな。
大体、昨日からコイツは狂ってやがる…魔女の手紙やら魔法陣やら。学園都市にいて誰がそんな話信じる。オカルトなんて魔女なんているわけがない。この下らない話がもし本当だったとしても、それはどこか遠い国にいるシスターズの一人の得た知識がネットワークに流れて、それを鵜呑みにしているだけだろう。
携帯は圏外で、固定電話は線が切られている。嵐で船も来ない、完全なるクローズドサークル。
今から連続殺人を起こします、最期には誰も生き残れませんってか?ハッ、笑わせる。出来るもんなら、やってみやがれよ。

 

 

 

6月21日8:45~本館・客間~


麦野「ただいまー」



―――部屋に入ってきたのは麦野さんに土御門、源次さんに嘉音くんだ。打ち止めの魔法陣教授の後どこかに行っていたのは知っていたけれど、そういえばどこに行くかは聞いていなかった。



上条「おかえりな……!?」

垣根「……また物騒なもん持ってくるのな、お前は」

麦野「自分が使うんじゃないわよ、ホラ」

滝壺「……っ?」



―――麦野さんが持っていたもの。滝壺さんに渡されたもの。それは…ライフル銃だ。しかも…見る限り結構本格的なものだ。2つあった内の1つが滝壺さんの手に渡り、もうひとつは雲川先輩に渡された。



麦野「上条。あんたも一応、無能力者ってなってるらしいけど、銃…二本しかなかったの。悪いわね。で、滝壺と雲川サンは武力行使する術がないってことで、私達と力を少しでもフェアにする為。最低限の抵抗力があるのと無いのじゃ全然違うって話よ」

滝壺「…ありがとう、むぎの。できれば使うことがないようにしたいけど」

雲川「感謝する、第四位」

土御門「これで犯人に殺されそうになっても正当防衛ってことで打てばいいぜよ。ま、一部の人間には効かないけどな」


御坂「で、その銃…どこから持ってきたの?」

麦野「当主サマの部屋よ。本人はいなかったけどね。源次さんが鍵持ってたから一緒に行って開けてもらったのよ」

源次「それはお館様が昔、アメリカより取り寄せたものです」

絹旗「西武劇ですね!私も超よくそう言った映画は見ますけど、その銃は超随分昔のものみたいですね。あまり、きちんとした整備も超されてないみたいですし…」

源次「……はい。随分と前のことですので」

麦野「まあ、無断で借りてきたものだし…文句は言えないわね」

―――

~本館・客間~朝食後

麦野「あ、そうだ。思い出したわ」

絹旗「どうしました?麦野」



―――そう話を切り出した麦野さんはスカートのポケットから2本の鍵を取り出す。部屋の鍵のようなカード型ではなくて、差し込むような典型的な鍵だ。



麦野「鍵。さっきのバラ庭園の倉庫の鍵よ。2本あるのは本来の鍵に加えて、その上から南京錠を掛けたから」

一方「……現場はそのままだ。何も移動させてねェし、勿論死体も移動していない。」

麦野「私が鍵を掛けるまで何もしていないことは土御門に垣根、一方通行が立会証明人ってわけ。で………この鍵は、こうするわ」

―――鍵は二本とも麦野さんの手から消え去った。正確には消えたんじゃなくて、分解されたと言うんだろうけど。あれが"原子崩し"か…。御坂のレールガンも大概だけど、あれこそ食らったら一たまりもないな……。



麦野「これであの倉庫にはもう誰も立ち入れないわ。掛けた鍵には垣根の能力で触れられないようにしておいたしね」

垣根「触ったら手が融ける仕様にしてあっから、気をつけた方がいいぜ」

滝壺「……」



雲川「……些細なことなんだけど。…どうしてそこまでする?」

絹旗「警察が来た時のためですか…?」



一方「…保険だ。色々となァ」

 

―――また誰もが口を開かない静寂が続いた。どれくらい経ったのだろうか?御坂は口を開く。


御坂「は、犯人ってさ…ここにいる私達以外の人間Xってことはないのかな?」

上条「この島に今、俺達以外の犯人Xがいるってことか…?」

御坂「そう…。この島の黄金を狙ってとか…」

麦野「…それはないわ。まず第一に侵入者Xが学園都市外の人間を仮定するならば、どうやって能力者を殺したか…それはさっきの話に戻るわね。仮定二・侵入者Xが学園都市の能力者の場合。これはまず、どうやってここまで来れるかって話よ。」

垣根「だな。その話はさっき出たんだよ、超電磁砲。…学園都市の能力者は長期休暇や、やむを得ない事情で帰宅する時には体内にマイクロチップを打ち込まれて、いつでも学園都市側が現在地を把握出来るようにされる。今の俺達もその状況だな」

土御門「最近は特に"そういうの"に厳しいから、余計に無理だと思うにゃー」

御坂「でもそんなハズない…!…私達の中に殺人犯なんかいるわけないッ!!」

上条「…俺もそう思う。いくら能力者とはいえ、結標さん達は無敵じゃない…。回避はできても一方通行の反射みたいな事はできない。つまり銃で撃たれれば死ぬし、鉈で頭を割られれば死ぬ。……人間なんだから当然の話だろ」

絹旗「むっ!それは銃弾や刃物が超効かないオート防御の私や一方通行に対しての超侮辱ですか?」

上条「そういう事を言ってるんじゃなくてな!」

一方「……じゃあよォ、三下。逆に聞くわ。…オマエは何でこの中に6人を殺した殺人犯がいないと思うンだ?」

上条「殺す理由がないし、殺される理由もないからだ!!…どうして俺達が殺し合いなんてしなくちゃならねえんだよ…!?」

御坂「そうよ……やっぱりこの中に殺人犯なんているわけないわ!」



―――ガシャンと食器がぶつかる様な音が響く。麦野さんが紅茶のカップを置いた音のようだ。



麦野「………あんた達何言ってんの?マジ意味わかんない。……特に上条はともかく三位。テメェはそんな事を言えるわけがねぇよなァ?」

滝壺「……あの日のこと、忘れたわけじゃないでしょう…?」

御坂「………ッ!」

麦野「…さっきから虫酸が走ってたんだよ。テメェの態度。まあ…大方あの時フレンダが言ったと思うけど、物分かりの悪い中坊にはもう一度言ってあげるわ。『私らは仕事じゃ人殺しなんて厭わない。そいつの送ってきた人生なんて興味ないし殺される理由も興味ない。』……この中の暗部にそういう仕事に当たってるやつがいるならこの事件も仕方ないって話だろ。」

垣根「おいおい麦野。そう超電磁砲を虐めてやんなよ。まあ一つも間違ってはないけどな」

上条「垣根……ッ!」

麦野「もう面倒だから断言してやるよ。《犯人はこの島にいる》。今だにな。だからもうお前はこの部屋にいない方がいいと思うわよ?これからも私達は内部しか疑うつもりはないから。そんな話、聞きたくないんでしょ?」

御坂「…もう……いいわよッ!そんな会話聞きたくないッ!やっぱりあんた達おかしいわよ……」

麦野「あはは!でも三位?ゲストハウスには戻らない方がいいわよ。私達がするべきは自衛。外部犯ってなら向こうにいる方が危ないし……ねぇ?」




御坂「……源次さん。本館の中の部屋って、お借り出来ますか……」

源次「…ご案内いたします」

上条「御坂……。俺も一緒に行く」

御坂「……来なくていいわよ」

上条「海原と約束したんだ…お前を守るって。だから、行く」

御坂「……ありがとう」




上条「一方通行!また飯の時間にでもなったら呼んでくれ」

一方「………あァ」



―――そう言って、俺と御坂は源次さんに連れられ客間を出ていく。本当は…あの中に殺人犯がいようがいまいが、あそこにいるのが一番安全なんだろうけど、初春さんのことがある御坂にはあの会話は精神的につらいものがあるだろうからな。

 

 

 

~本館2F・客室~

源次「ここが本館の客室になります。渡来庵と同様の設備になりますので不便は無いかと思います。…ただ、鍵はカード式オートロックではなく普通の鍵となりますが」

御坂「……わかったわ。ありがとう」

上条「鍵は一本しかないんですか?」

源次「はい。申し訳ありませんが、1本のみです」


―――

御坂「部屋……ゲストハウスと内装もあんまり変わらないのね」

上条「だな。でもこっちの方が古い感じだな。館自体、結構前に建てられたものなのかもな」

御坂「あの肖像画も結構年期が入ってたように思ったわ」

上条「肖像画…な…」

御坂「ねぇ、当麻。本当はね…私も怖いの」

上条「……」

御坂「自分が殺されるかもってのもあるけど……他にも色々。あんたは滝壺さんが言ってた"あの時の事"っていうのは……知らないわよね?」

上条「ああ。でも……言いたくないことは言わなくてもいいんだぞ……?」

御坂「…ううん、良いのよ。もう…あんたが全部終らせてくれたんだし。………あんたが一方通行と戦う前にね、私があの実験に関わってる研究所を潰しに行ってた途中。麦野さん達"アイテム"と戦ったのよ。……って言っても直接やりあったのは麦野さんと、ここにはいないフレンダって人だけなんだけど」

 

上条「アイテム……?」

御坂「そ。学園都市暗部組織の一つよ。あんたがどこまで"そっち"に関わりがあるか知らないから、それ以上は言わないけどね」

上条「その時に何かあったりしたのか……?」

御坂「私は…その時に殺されかけた。麦野さん達アイテムにね。研究所が私を侵入者として始末するように依頼を出してたのよ。…まあ、それが分かったのは後からなんだけど」

上条「じゃあ御坂はその時麦野さん達に勝ったのか…?」

御坂「負けてはないわ。私は今こうして生きてるしね」

上条「そっか。…でも良かった。お前が生きてて」

御坂「当麻………。でね、私が言いたいのは、つまりは麦野さんの言うとおりってこと………」

上条「……え?」

御坂「……ううん。何でもない」

 

 

 

6月21日18:56~本館・客間~


源次「お客様方。ご夕食の準備が整いました。こちらにお運びしてもよろしいでしょうか?」

土御門「ああ、もうそんな時間かにゃー」

麦野「いいわよ。運んでちょうだい」



―――声で目が覚める。時計を見ると、もう夜の7時だ。…結局、超電磁砲と三下が出て行った後は麦野も興が覚めたのか部屋にあった本を読みだし話を続ける事はしなかった。クソガキはテレビを見続け、残りも各々好きな様に過ごし、俺はソファーで眠る事にした。



麦野「お腹空いたわね。結局、10時頃に食べてからお茶しか飲んでなかったし」

滝壺「うん。お腹減ったね」

雲川「もうそんな時間か。気付かなかったけど」

打止「ねーあなた。ってミサカはミサカは呼びかけてみたり」

一方「なンだクソガキ」

打止「お姉様達呼びに行かなくて良いの?」

一方「………あァ。忘れてたわ」



―――忘れていた。三下だけなら行かねぇけど超電磁砲もいるなら仕方がないなと俺はソファーから起き上がり、側に立てかけてあった杖を手に取り、立ち上がった。



打止「今から行くの?ならミサカも行く!ってミサカはミサカは高らかに宣言してみたり。ドアとか、あなた一人じゃ不便でしょ?」

一方「………勝手にしろ」

打止「じゃあ勝手にするねってミサカはミサカは先んじて走ってみたり!」

一方「部屋ン中走ンじゃねェよ!……おい、土御門。俺は三下の所行ってくるから飯来たら先に食ってろ」

土御門「了解だぜぃ。…しっかしお前は律儀だな」

一方「…うるせェよ。シスコン」

――――
打止「でねー結局ミサカはお姉様と上条当麻が何を言ってるか、全く理解できなかったのってミサカはミサカはあなたに同意を求めてみたり」

一方「……」

打止「内部犯だとか外部犯だとか…最初からそんなの"い"ないのにねーってミサカはミサカはぶーたれてみる」

一方「……」

打止「あの密室が良い証拠。わざわざベアトリーチェは魔法で人間は出来ないようにってあんな風にしたのに」

一方「……」

打止「もう!ちゃんと聞いてるの!?ってミサカはミサカはあなたを問い詰めてみる!」

一方「…聞いてますよォー」

打止「む!…大体、あなたが助かったのはミサカが置いてたコインのおかげなんだよってミサカはミサカは白状する!」

一方「……はァ?コイン?」

打止「そうだよ!…でもどうせ、あなたは何を言っても信じてくれないから言わないけどってミサカはミサカは不満を漏らしてみたり。…………えっと、お姉様達の部屋は…この隣だね」





一方「…ハァ。……………またこのパターンか」




―――そう。"また"だ。そこにあったのは…。

 

 

垣根「あれ?一方通行とミサカちゃんは?」

土御門「ミサカちゃん?」

垣根「打ち止めのことだよ。なーんかラストオーダーって言いにくいというか何というか」

土御門「まぁそれは分かるな。…あの二人は上やん達の部屋に行ったぜぃ」


垣根「上条?」

 

―――部屋のドアに描かれた図形。
鮮血の色を模した塗料。
また、だ。
嫌な予感しかしない。
前回と違うのは…その図形が円ではなく幾何学的である事、そして…ドアに手紙が挟まっている事くらいか。



一方「…おい、三下」



―――俺はドアに向かって言う




打止「……」

一方「返事しやがれ…三下。この俺がわざわざ来てやってンだぞ」
打止「お姉様ー?ってミサカはミサカはドア越しに呼びかけてみたりー」



―――返事はない。三下はおろか、超電磁砲すら。



打止「……テレビのような音は聞こえるよ?かすかにだけどってミサカはミサカは現状報告」

一方「ンなとこに耳つけるンじゃねェよ。汚ねェ…」

―――封筒を手に取る。…こういう差し込まれ方をした場合、普通は中の人間に宛てて残された物に違いない。もしかすると使用人の誰かが先に来て、返事が無いから手紙を残したという可能性はあったが、たぶんそれはないのだろう。その封筒には片翼の翼が描かれていたから。



打止「手紙……ベアトリーチェからだね」

一方「……貸せ」



―――こんな物、今はどうでも良い。中身はどうせ、また魔女がどうとかくだらないに決まっている。俺は手紙を握り潰し投げ捨てる。大事な物なのにと、打ち止めはそれをまた拾い上げた。

一方「開けろ三下。聞こえてンだろ」

打止「…うーん。お姉様達いないのかな?外に散歩しに行ってるとか…」

一方「ンな訳ねェだろ。オマエと一緒にすンな」


―――こんな雨の中?有り得ない。クソガキならともかく。…それに、もしもそうなら一言俺達に声を掛けて行くだろう。



源次「どうされまし……!?」



―――使用人、源次だ。俺達の帰りが遅いから見に来たのだろうか…。驚いているのは当然、扉の絵に対してだろう。当然だ。

 

一方「……今来たらこの有様だ。中には上条当麻と御坂美琴が居る筈だがノックしても返事がねェ。…マスターキー持ってンだろ?開けろ」

打止「……でね、この封筒も挟まってたのってミサカはミサカは封筒を掲げてみる」

源次「!………その封筒はお館様の………かしこまりました。少しお待ち下さい」



―――そう言うと、源次は鍵束の中から一本の鍵を選び出す。どうやら使用人は本館の全てのマスターキーを持っているらしい。



源次「上条様、御坂様…お部屋を失礼いたします…!」

 

―――鍵が鍵穴に差し込まれ、鍵が開く音がする。
ドアノブを捻り、開く。
…隙間からは光が漏れる。電気が点いているらしい。やっぱり居るんじゃねぇかよ。



ガシャン



それは、ドアチェーンを引っ張る音だった。チェーンが掛かっている。当たり前だが、チェーンは外から掛けられない。…それは在室も示す。部屋の中からは打ち止めが言う様にテレビの声も漏れ聞こえた。

…灯り、チェーン、テレビ。
示すのは二人の在室だが、………気配がない。

源次は扉の隙間から三下達を呼ぶ。………返事はない。

一方「……妙だな」

源次「いらっしゃるのでしょうか……」

打止「この隙間からじゃ全然分からないってミサカはミサカは肩を落としてみたり…」

源次「倉庫から何か工具を持ってきます…」

一方「……その必要はねェ」



―――8月31日。その日から俺の能力には制限が付いた。…いつ何が起こるか分からないこんな時に能力を使うのは躊躇われるが、仕方がない。

俺は首元のチョーカーのスイッチに手を伸ばす。



打止「おおっ!ってミサカはミサカはいきなりチェーンが切れたことに驚いてみたり。さすがあなただね!」

源次「……学園都市の方々は皆様、こんな事が出来るのですか…?」

一方「ンな事ねェよ。このクソガキには出来ねェし、三下にも出来ねェ。人それぞれだな」

 

―――扉を開ける。
テレビの音がより一層わかる様になる。付いているのはクソガキがよく見ているアニメだ。



一方「…………超電磁砲…?」

源次「なッ…!?」



―――ベッドの上に仰向けになっている超電磁砲の姿。……靴を履いたままだ。

後から源次の背中に隠れながら入ってきた打ち止めは、超電磁砲を見て、きゃっ!と短い悲鳴をあげる。


違和感は二つだ。


靴と、……超電磁砲の眉間からまっすぐに何かがある。……眉間にまっすぐとあるもの…古風なナイフのような凶器が突き立てられていた。

突き立てられた根元からは血が滴り落ち、シーツを真っ赤に濡らしている。
超電磁砲は眉間に凶器を打ち込まれ、死んでいる。

両目は見開かれ、自分を殺した相手を確かにその目に見たのだろうが、それを伝える口は、すでに永遠に閉ざされていた。

…眉間に再度目を移す。古風のナイフ。その柄の部分には複雑な意匠が施されている。
……一言で言えばオカルト的。またクソガキが騒ぎ出すような、何かの悪魔をデザインしたかのような物だった。

源次「……上条さまは…?」



―――可能性の一つとして挙げられるのは、超電磁砲を殺したのは三下という結論だ。チェーンが掛けられていた以上、殺せるのは三下しかいない。結標や、ここにはいない、とある風紀委員の様な空間移動者ならば可能なのだろうが。

超電磁砲の姿はベッドの上にあったが、もうひとつのベッドは空いている。…三下はどこだ。無能力者である以上この部屋の外に出る事は出来ない筈だ。まあ……前提として超電磁砲が自殺でないならの話だが。



源次「一方通行様!!」



―――聞こえるのは隣の扉の方からだ。扉を開けた途端に、湯気とャワーの音が迎えた。

この部屋バスルームは、安いホテルと同じようなトイレが一緒に付いているユニットバスという物だ。シャワーを浴びる時は防水のカーテンを引いて使う。

そのカーテンが半分開かれている。

……そこには裸の上条当麻が両目を見開いたまま、バスタブの中に崩れ落ちていている。

打ち止めは超電磁砲の側で必死に名前を呼び続けている。

三下の眉間にはさっきと同じ様なナイフが刺さっている。頭部はずっとシャワーを浴びっぱなしだった所為か、超電磁砲のように顔の半分を血で汚しているということはなかったが、シャワーを浴びたまま死んでいる姿は、流石に無惨だと思い、俺は蛇口を捻りシャワーを止めた。

―――廊下から絹旗の声が聞こえる。
麦野や垣根の声もだ。
おおよそ、帰って来ない俺達を面白がって来たというところだろう。



絹旗「…またしてもこれですか…」

麦野「今回もまた訳の分かんない図形ね…」

垣根「これも魔法陣って呼べんのか?」



―――来ているのはどうやら三人だけのようだ。レベル5が二人に、レベル4が一人。……そして絶命している超電磁砲を見つける。


絹旗「レ……超電磁砲…ッ!?」

麦野「はぁ……あの4人の次は超電磁砲かよ」

垣根「これも他殺だな」

打止「ねぇ……お姉様死んじゃったの?ってミサカはミサカは尋ねてみる…」

垣根「あんま言いたくねぇけどそうなるな。死後膠着は始まってねぇし…殺されて1時間ってトコだろうな」

麦野「で、こっちは上条当麻ってワケか」



―――全裸って事は入浴中を襲われたのだろう。死体の服を脱がせて風呂にブチ込むってのは存外、労力が必要だ。

血の飛沫はバスタブの至る所に飛んでいる。



麦野「あららー。これは流石に誰が見ても死んでるわね。不様な死体だわ」

一方「……オマエ等三人で来たのか。残りはどォした」

麦野「残り…?ああ、滝壺達の事言ってんの?だったらあいつらは客間よ。土御門と使用人を置いてきたし、滝壺と雲川サンは銃も持ってるし」

一方「……」

 

 

麦野「てかさ、その凶器何なの?超電磁砲も同じのが刺さってたけど」

一方「…ナイフってよりはアイスピックだな。刃がねェ」

麦野「まあそれもあるけど…私が言ってんのは柄の方よ。それはまたオカルト?何にしても趣味悪い事この上ないわね」



―――倉庫の時もそうだが、普通の人間はこんな場景、見ていられないものなのだろう。それを見続けられるのは、やはり俺もコイツらと同じように狂ってるんだろうなと再確認させられた。

 

―――上条当麻は学園都市序列第一位・一方通行に勝利した。
だが、所詮は無能力者だ。
幻想殺しを持つアイツに超能力は効かない。
しかし、裏を返せばそれは"異能のチカラ以外は有効"ということだ。たとえば銃、ナイフ。…何でも良い。あの右手は、物理的な物には全くの無力であるということだ。


初め、俺は超電磁砲は三下に殺されたのだと思った。理由は分からないけれど。


それがこの有様だ。三下は風呂で死んでいる。全裸で。

ならば…三下を殺したのは超電磁砲?それはとても簡単な事だ。
じゃあ、その超電磁砲を殺したのは誰だ?チェーンが掛かった密室で、どうやって殺した?



…正確な死亡推定時刻が分からない限り、アリバイは誰一人として成立しない。

 

滝壺「…お帰りなさい」

雲川「その様子だと、結果は予想通りだったみたいだけど」

土御門「……だにゃー」



―――結局、死体はそのまま放置、部屋は施錠して俺達は客間に戻る事にした。例の手紙は打ち止めが持っている。どうせろくでもないだろうが、後で開封すれば良い。



麦野「…嫌な予想ほど当たるってのは本当ね。上条と三位は死んでたわ。誰かに殺されてね。しかも密室で」

垣根「チェーンが掛かってたんだと。で、部屋の扉にはまた血の図形。もう犯人は魔女で良いんじゃねーか?」

滝壺「……図形?」

垣根「ああ。今度は円じゃねぇ幾何学的というか。でも書かれてる言語は同じヘブライ語だったし…あれは魔法陣って呼ぶんじゃねぇか」

雲川「……」

垣根「…ミサカちゃん、あれは何か分かんのか?」

打止「…わかるよ?あんなの初歩の初歩だから。」


絹旗「…超何が書かれてるんですか?」


打止「あれはね、月の1の魔法陣。…記されているのは、旧約聖書、詩篇第107篇の16節。【主は青銅の扉を破り、鉄のかんぬきを打ち破って下さいました】。…魔法陣の効用は2つあるの。1つは、如何なる方法によって閉ざされた扉でも開くことができる。」

麦野「そりゃ便利な魔法ねぇ。魔法の力に頼らなきゃ開けぬ密室の扉っていう、魔女さまのアピールってわけ?」


打止「そうなるねってミサカはミサカは麦野さんの意見に同意する。……そしてもう一つは、開かぬ扉を八方塞の事態に見立て、扉を開く。……難解な事態の時に用いることで、それまで思いつきもしなかった解決策を与えてくれる。……簡単に言えば、観察力や洞察力、ひらめきや直感を授けてくれる。ベアトリーチェはあなた達に、この扉の開き方がわかるかって質問してるんだよってミサカはミサカは説明する。」

絹旗「ふーん…正直2つ目は超よく分かりませんけど、要するに私達を煽ってるで超おーけーですかね?」

雲川「まあ…そうだろうけど。その密室ってのをどうしたかって話だな」



垣根「それもそうだが……何かさっきから臭わねぇか?この部屋からじゃなくて廊下、外から」

打止「うー…何か臭いよってミサカはミサカは鼻を摘んでみたり」
土御門「何の臭いだ……?」

源次「確かに何か匂います…」

―――味覚障害だとか嗅覚障害じゃない限り、断じて良い匂いとは言えない、何かが焦げた様な………………ああ、そうだ。思い出した。これは、ニンゲンが焼ける臭いだ。……どうやら他の連中は分かっていないようだが。



嘉音「厨房の火の不始末かもしれませんね……見てまいります。源次様はここでお客様と一緒に居てください」

源次「しかし…一人で行動するのは危険だ」

麦野「じゃあ絹旗。一緒に行ってあげて。私が行っても良いんだけどあんたの方が役に立つだろうしね」

嘉音「い、いえ…!お客様にその様なことは…」

絹旗「超良いですよ。ここにいても暇なだけですし、何にせよ。私が一般人ごときに殺されるワケが無いですし」

嘉音「……すみません」

源次「申し訳ありません。…では絹旗様、よろしくお願いいたします」

絹旗「不謹慎ですけど、こんな映画みたいな場面、超滅多にないですしね!では超行ってきます」



―――そう言うと、二人は客間をでていった。絹旗の能力はレベル4の窒素装甲。自動防御が働いていて、普通の銃程度じゃ当たる事が無いらしい。まあ、超電磁砲まで殺されてる以上そんな程度で安心出来るのかは不明だが…な。

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