サーシャ「亡命します」 > 4


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編者注:この章からオリキャラあり。

【殲滅白書】

ヴェロニカ「ようやく作戦の決行日が決まったわ。」

ローザ「いよいよってわけですね。」

オルガ「いやーこれでイギリス旅行も終わりってわけですねー!」

ローザ「遊びに来たわけではないのですよオルガ?」

アーニャ「……」


そこはロンドンの外れにあるカフェ

そのカフェの奥のテーブルに、現在4人の美少女が席についていた
そして、そのテーブルの周辺を覆う様に、魔術が展開されている。
彼女達の会話は、他者から見ればただの他愛も無い日常会話に聞こえる
魔術師が見ても、絶対に彼女達を魔術師だと判別することができないほどのレベルの高い
術式。発動させた人間がいかに強力な魔術師かが窺い知れる。


ローザ「部隊の人間は、すでにロンドンの内部に拡散し、待機させています。号令一つですぐにでも結集は可能です。」

ヴェロニカ「結局のところ、そこが一番苦労したわけよ。こんな魔術師の巣窟みたいなとこに、
殲滅白書の一部隊を感付かれる事無く侵入させるのがね。」

オルガ「でもさー、それって結局はこの作戦が失敗したらって事ですよねー?
誘拐が成功しちゃったら無駄無駄無駄ーって感じじゃないですかー」

ヴェロニカ「オルガ、無駄な戦いは避けるものよ。余計な血を流すのは双方にとって良くないわ。」

オルガ「えー?つまんないつまんないー」

駄々をコネながらとなりのアーニャに抱きつくオルガ
それに対し、若干ながら鬱陶しそうな表情をするアーニャ

ローザ「アンタはちょっと黙ってなさい」

アーニャ「……お腹すいた」

ヴェロニカ「店員さん、この子に何か作ってあげて。何でもいいわ。とにかくメニューに載ってるの全部持ってきて。」


店員と思しき人は少々戸惑いながらも、注文を受けて厨房へと消えていく

彼女らはロシア成教殲滅白書に所属するシスターだ
正確には殲滅白書のヴェロニカ部隊である

 

 

【簡単なプロフィール】

ヴェロニカ
殲滅白書ヴェロニカ部隊のリーダー
年齢 18
身長 165前後
特徴:長い金髪、部分的に三つ編み
第一印象はどこかのお嬢様
モスクワ大学に飛び級で入学した秀才だが、殲滅白書の仕事が忙しくて去年退学
単位は半分程取っていて、全て優。羨ましい。
戦闘の時には強気で判断力もある優秀な指揮官だが、私生活ではレストランでメニューを決めるのに1時間近く悩むほどの優柔不断で、
わりと小心者
悩んだ末にローザに泣きついてくるため、ローザからウザがられている

ローザ
年齢17
身長165前後
特徴:黒髪ショート、胸は大きめでヴェロニカの嫉妬を煽っている
生真面目、ドS
魔術師の家系で本人も魔術の才能あり
しかし本人は魔術よりも科学者の道を進むためにモスクワ大学に飛び級入学
そして去年、その才能をヴェロニカに見出され、本人の意思に反して無理矢理退学させられた
ヴェロニカ部隊の財務大臣だが、私物を無理矢理経費で落とす様に懇願してくるヴェロニカとオルガが悩みの種
特にヴェロニカに依存されつつあるので、最近は部隊を移動しようかどうか真剣に検討中
オルガ
年齢18
身長175以上180未満
特徴:銀髪ショートヘアーで側面だけ少し長い感じ
活発な印象、頭はあまり良くない
語尾を伸ばすとこがウザい
実家はロシアの実業家でリアルお嬢様
おてんばな性格を直すために修道院に送られたのだが、そこで才能を見出されて殲滅白書に入隊
身体能力はかなり高い
可愛い物が好きで、大量のぬいぐるみを経費で落とそうとしてローザに殺されかけた事もある
上記の理由でアーニャにもよく抱きつく
サーシャを見つけると同様に抱きつくが、その度にバールで薙ぎ払われる


アーニャ
年齢14
身長155付近
特徴:栗毛色で長いツインテール
口数は少なく人見知りが激しい
ツインテールは床に付くくらいに長く、たまに誰かに踏まれる(主にオルガ)
ヴェロニカ部隊最強の天才少女、食欲はインデックス級
テロに巻き込まれて両親を失い、修道院に送られ、そこでオルガと同様に才能を認められて殲滅白書へ
食べても全く太らないため、ヴェロニカとローザの嫉妬を煽っている
戦闘の時は髪が真っ赤に染まる
抱きついてくるオルガがウザい

 

オルガ「誘拐なんて回りくどい事しないでー大雑把にぶっ壊すのが殲滅白書のやり方じゃないですかー。
っていうか私の語尾ってウザいんですかー?」

ヴェロニカ「相手は在らざるモノじゃない、人間なのよ?私達は虐殺するのが仕事じゃないの。
上は最初から文字通り殲滅する予定だったみたいだけどね。それよりもローザ、私の事密かにウザいって思ってる?」

アーニャ「もぐもぐ」

ローザ「誘拐対象の五和という少女ですが、彼女は天草十字凄教所属ですね。魔翌力自体はそれほど高いとは言い難いですが、
身体能力は中々のものです。今更気付いたのですかヴェロニカ?」

ヴェロニカ「誘拐は体力馬鹿に任せるとしましょうか。うすうす感づいてはいたわよ。反省はしてないけど。」

オルガ「誰が体力馬鹿だー!あと語尾がウザいっていうなー!アーニャもウザいって言うなー!」

アーニャ「もぐもぐ…ウザい」

ヴェロニカ「オルガ、あなたの実力を見込んでの事なのよ。これが失敗したら、本当に殲滅行動に出なきゃならないんだから。」

アーニャ「みなごろし?」

ヴェロニカ「そうね、まずはサーシャ・クロイツェフを引き渡す様に交渉するけど、交渉が失敗したら戦闘になるでしょうね。
加担したイギリスのシスターは共謀罪で全員殺すわ。ちなみにサーシャは殺さない様にね。上からも指示を受けてるから。」

ローザ「上は後始末をちゃんとやってくれるのでしょうか?あと少しは反省しろ。」

ヴェロニカ「とりあえず、一連の行動は私達ヴェロニカ部隊の独断ってことになるわね。まあ要はトカゲのしっぽ切りよ。
でも、ロシア本国に生還できれば問題無いわ。適当に処罰しましたーですませるつもりでしょ。
たぶんイギリス側は私達全員の首を要求するでしょうけど、適当なスケープゴートを差し出せばいいのよ。
例え文句を言ってきたとしても、ロシア成教はローマと同盟関係にある。そしてイギリスはフランスと敵対する。
この三つを同時に敵に回す度胸なんてあるのかしら?それとだが断る。」

ローザ「そんなのはどうでも良いのですよ。問題は、ローマがロシアを裏切らないかどうかじゃないですか?」

ヴェロニカ「大丈夫よ。今回のサーシャ・クロイツェフ奪還作戦は、ローマ正教の最高権力者の肝入りなんだから。」

ローザ「教皇ですか?何でまたサーシャなんて欲しがるのでしょうか?」

オルガ「決まってるでしょーかわいいからですよー!」

ヴェロニカ「そんな下っ端じゃないわよ。」

ローザ「下っ端って、もろにヒエラルキーの頂点じゃないですか」

ヴェロニカ「人間のヒエラルキーではね。だけど、人間のヒエラルキーに属さない、それを遥かに超える存在が居るとしたら?」

ローザ「天使がローマ教皇を操ってるとでも言いたいのですか?そんな馬鹿な話が…」

話半分で聞いていたローザだが、一つだけ思い当たる節がある

ローマ正教の最深部、極秘中の極秘と呼ばれる部分の話だが、ローマ正教を実際に牛耳っているのは教皇や枢機卿及び教皇庁の人間ではない
その支配者は、人間を超えた存在。その名を知ったものは、知るにふさわしくないと判断されたら例外なく抹殺される。

どこかで耳にしたそんな噂話


ローザ「しかし、それはオカルト的な話では?」

ヴェロニカ「科学者を目指してたあなたからすれば、魔術も十分オカルトに見えなくて?
オカルトのトップがオカルトってのも別に不思議じゃないと思うわよ?」

ローザ「まあそうですけど…」

オルガ「つまり安心してブッ殺せーってことですよねー♪」

ヴェロニカ「そゆこと♪」

アーニャ「おかわり」

ローザ「アーニャ、それ以上食べたらあなたの給料から引きますよ」

アーニャ「!?」

ヴェロニカ「まあまあ、ここは隊長権限で特別に必要経費にしてあげるから」

ローザ「じゃあヴェロニカの給料から引きます。」

ヴェロニカ「ちょ、おまっ!」

アーニャ「いただきまーす♪」


オルガの口調とテッラの口調は微妙に似ているが、両者の間に接点は無い

 

 

【サーシャvs五和】


ここは天草十字凄教の教徒達の修練場
一見すると日本で言う道場の様に見えるが、魔術の威力に耐えられる様に特別な術式が施こされた魔術的な空間でもある

現在その修練場で、二人の少女が木制の槍を構え、対峙している


片方は五和

戦闘ではフリウリスピアという海軍用船上槍を扱うゆえに、槍術には長けている

槍術は流派にもよるが、段位は初心・仕掛・目録・許・印可の五つに分かれている
実戦経験が豊富な事も考慮すれば、五和は最低でも許の実力はあると思われる

ちなみに五和が構えている槍は、白蝋棍を身長程度に短くし、先端を重くカスタマイズしたもので、
彼女が普段使用している海軍用船上槍に対応させたものである

対するサーシャは段位で言えば初心。今日初めて槍を手にしたくらいだ。
手にしている槍は鞭杆という短くて扱いやすいものである。

ところでなぜ二人は今、対峙しているのかというと、別にケンカしているわけではなく、
単に五和の槍術に興味があったサーシャからの申し出によるものである


建宮「はじめ!」

五和「はあッ!!!」


合図とともに気合いの入った声を上げ、同時にダン!と地面を蹴り、初撃をサーシャに撃ち込む
洗練された、全く無駄の無い一撃

対するサーシャは、持ち前の反射神経を駆使してそれを何とか食い止めた


五和「今の一撃を食い止めるなんてさすがですね。」

サーシャ「第一の解答ですが、ぶっちゃけビビりました」

五和「どんどんいきますよ!」


すかさず二撃、三撃と攻撃を繰り出す五和
対するサーシャは槍の扱いなど全く持って慣れていないため、防戦に徹するしかない

そしてついに、下段から上段へ、サーシャの槍を下から打ち付け、槍を空中し弾き飛ばした。

 

 

勝負あり。五和も建宮も瞬間的にそう判断した。

だが、サーシャは跳躍し、再び空中で槍を掴み直すと、そのまま宙に浮いた状態から片手で槍を振り回し、五和に叩きつけた

一体どんな運動神経と動体視力をしているのかと呆気にとられた五和だが、何とかそれを防ぐ
しかし、攻撃の主導権は完全にサーシャに移った

サーシャの槍術は滅茶苦茶で、例えるならスキルアウトが両手で鉄パイプを振り回している様な感じである
しかし、サーシャほどの運動神経と、実践で鍛え上げられた格闘センスの裏打ちがあると、ただの乱雑な攻撃が、
槍術の熟練者である五和にとっても脅威となる

確実に隙を突き、尚且つ隙を見せないサーシャ
逆に防戦一方となる五和
こりゃおもしろくなってきやがったのよと興味深そうに観戦する建宮

そもそもサーシャは在らざるモノとの戦闘においては、術式で強化された多種多様の拷問用霊装を使いこなす戦闘スタイルであり、
必然的に高い身体能力とマルチな戦闘能力を要求される。
そう言った面を考慮すると、身体能力や格闘センスは五和を凌駕すると思われる

身体能力とセンスでサーシャが押し勝つか、槍術熟練者の五和が巻き返すか

しかし、どんなに身体能力とセンスがあっても、人間である以上必ず隙というものが生まれる

五和はその隙を創りだすために、サーシャが真横から振り出してきた槍を、同時に自分の槍を縦に構える事で防ぐ
だがそれだけではない。サーシャの槍が当たると同時に、自ら強く一歩前に踏み出した。

防ぐ事と前に出る事を同時に行う五和、そして押されて若干の隙を見せるサーシャ

その隙を逃すまいと、五和は体を旋回させ、その勢いで真横からサーシャの槍に一撃を加える
サーシャも瞬時に体制を立て直し、槍をスイングする

激しく槍同士がぶつかり合い、乾いた音が修練場内に響く

同時に、両者の槍が弾かれ、手から離れ、飛んで行った
イメージでいうと、打者二人が互いに互いのバットに目がけてフルスイングした様な感じである
五和「はぁ…はぁ……参りました…さすがですね」

五和はわずかに息を切らせながらそう言う

一方サーシャの方は、目に見える範囲では全く疲労を見せていなかった


サーシャ「第一の解答ですが、最初に槍を飛ばされた時点で私の負けです。お見事です五和。」

五和「いえいえ、あなたの槍を弾き飛ばして油断していた時点で私の負けですよ。」

サーシャ「第二の解答ですが、実践なら私はあの時点で死んだも同然です。ですから(ry」

五和「いえいえ、それを言うなら」

サーシャ「第三の解答ですが(ry」

五和「いえ、絶対の私の負けです(ry」

サーシャ「第四の解答ですが(ry」

五和「第五の解答ですが」

サーシャ「真似しないでください」

建宮「あのう…お二人さん?」


どちらも延々と負けを譲らなかったので、とりあえずその場は引き分けと言う事になった


その後、軽くシャワーを浴びて汗を流し、着替えを済ませ、二人はロンドンの街へと繰り出して行った

 

 

 

【本編です】


五和は横幅の短いカーテンの前で、何やら期待の眼差しをそちらに向けながらそわそわしていた

彼女達は今、ロンドンのとあるブティックに居る
せっかくの友人とのお出掛けを修道服で歩き回るのは少し味気無いと思い、五和の提案でサーシャは適当に服を調達する事になったのだ。

ちなみに従業員さんは、修道服で来たお客様に少々戸惑っていた
もしも修道服ではなく、例の拘束衣で入ってきたら一体どんな顔をするのだろうか?


しばらくすると、試着室のカーテンが開かれた



そこには、修道服の時とはまた違う印象の、可愛らしい女の子が立っていた

上はタイト気味で、薄い生地の黒い長袖ニットチュニック。
Ⅴ字に開いた胸元の下は真っ白なインナー

下は袖口が広く、少し大き目のインディゴライトのデニムショートパンツ
頭には何かないと落ち着かないという本人の希望により、黒のキャスケットを被っている

足元は黒のハーフブーツと黒の二―ソックス。
全体的に黒を基調とした格好で、サーシャの金髪がより美しく映える
長袖チュニックの袖口からは、白い指だけがちょこんと出ていて可愛らしい
ブーツとショートパンツとの間に挟まれた太股と膝小僧も可愛らしい
緩めのショートパンツなので太股全体が露出されているわけではないが、むしろそれがサーシャの足の細さを強調する
アクセサリーはイギリス清教のロザリオをそのまま付けているが、それだけでは物足りないので他数点
どう見ても俺の趣味ですほんとうにあ(ry




サーシャ「第一の解答ですが……どうでしょうか?」


サーシャは後ろで手を組み、もじもじと太股を擦り合わせながらそう尋ねるが、
返答するよりも早く五和はサーシャに抱きついていた


五和「て、店員さん!この子いくらですか!?」

サーシャ「ひゃわっ!い、五和っ!ほっぺが!ほっぺがまさつで!!」

店員「お客様!?」


最近ではこの二人の間ではよくある光景である
ちなみに服の代金の請求書は天草十字棲教に送られました
サーシャ「第一の質問ですが、本当に良かったのですか?」

五和「ええ、先程練習に付き合っていただいたので、特別講師料と言う事で経費で落としときます」

サーシャ「第一の解答ですが、五和がそう言うのならお言葉に甘えましょう。ありがとうございます。」

五和「いえいえ(ニヤニヤ)」

サーシャ「……」

五和「ふふ…(ニヤニヤ)」

サーシャ「……第二の質問ですが、なぜこちらを見てニヤニヤしているのでしょうか?」

五和「いやぁ、やっぱりかわいいですね。もう一回抱きついていいですか?」

サーシャ「五和……最近ワシリーサに似てきましたね……」



そんなわけで、二人は色々な場所を歩き回ったのであった
時間も移動範囲も限られているのが五和にとっては少々残念であったが、
それでもサーシャとのデートもといこうしてお出掛けできる事が素直に嬉しかった
サーシャ「第一の解答ですが、そろそろお腹が空きました」

五和「そうですね、じゃあ、この近くにある広場でお昼ご飯にしますか」



二人は今、広場の噴水の前に腰掛けている


五和「実はですね、なんと今日はお弁当を作って来たんですよ!」


五和は鞄からバスケットと水筒を取りだした


サーシャ「第一の質問ですが、その大きさの鞄によく入りましたね。確か、五和の海軍用船上槍も一緒に入ってるのでは?」

五和「収納スキルです。細かい事は気にしないでください。はい、まずは恒例のおしぼりをどうぞ」

サーシャ「第一の解答ですが、もはやあなたのアイデンティティーですね」

バスケットの中身は透明なタッパーごとに分けられたおにぎりとおかずが入っている


サーシャ「第二の質問ですが、これがジャパニーズライスボウルですか」

五和「おにぎりは初めてですか?気に入ってもらえるといいのですけど…」

サーシャ「(ぱくっ)……大変おいしいです。中身はツナですか」

五和「他にも色々な種類がありますから。あ、それとおかずもどうぞ。」

サーシャ「はい、では次はこれを……むぐっ!!!」

五和「サーシャちゃん?」

サーシャ「だ、だいさんのしつもんですが、このあかくてすっぱいのは…?」

五和「それは女教皇様特性の梅干しですよ。」

サーシャ「UMEBOSHI!?」

五和「ああ、サーシャちゃんにはちょっと慣れない味かもしれませんね。はい、お茶をどうぞ。」

サーシャ「いただきます」

五和「お砂糖もありますよ」

サーシャ「気が利きますね。」

五和「サーシャちゃん、頬っぺたにご飯粒が(ひょいパクッ)」

サーシャ「五和は良いお嫁さんになりそうですね」

五和「そんな、お嫁さんだなんて/////」

サーシャ「お茶が美味しい……」


両手を頬に当てて赤くなっている五和
特にそれを気にする事なくお茶を嗜むサーシャ

その後、サーシャオリジナルの砂糖たっぷり緑茶が注がれた水筒の蓋を膝に置き、改めて広場を見まわし、一息ついた


サーシャ「ここは静かですね」

五和「そうですね。観光スポットとはあまり縁の無い場所ですから。でも、私は良い場所だと思いますよ。」

サーシャ「第一の解答ですが、同意します。」


五和の言うとおり、この広場は、例えばトラファルガー広場の様な知名度も立派な建物も無い。
下町的な空間と言ったところだろうか。
人気もあまり多くないため、人ゴミが織成す喧騒も感じられない


噴水から溢れる水の音、風に揺れる木々のざわめきがよく聞こえる
頭上を見上げると、まるで傘の様に視界いっぱいの緑が広がる
その隙間から零れる木漏れ日が心地良く感じられる

サーシャにとっては、ガイドブックに載っている観光スポットよりも、
そのガイドブックに頼ってるだけでは絶対に巡り合えないこういう静かな場所の方が好きだ
五和「いいですね…」

サーシャ「そうですね。良い場所です…」

五和「いえ、そうではなくてですね」

サーシャ「?」


五和は前方を指差した
そこでは、二人の女の子が楽しそうに追いかけっこをしていた
身長の差から考えると、おそらく姉妹なのかもしれない

五和はその二人の女の子が遊んでいるのを羨望に近い眼差しで見つめていた


五和「私、妹が欲しかったんですよ」

サーシャ「妹…ですか…?」

五和「ええ。だって楽しそうじゃないですか。いつも一緒に居られるってところも良いですねー。」

サーシャ「そういうものなのでしょうか…」
五和「あーあ、私もサーシャちゃんみたいな妹が欲しかったなー。サーシャちゃんもウチに生まれてくれば良かったのに。」

サーシャ「それはまた奇妙な発言ですね。第一の解答ですが、日本人の親からこんな金髪の女の子が生まれてくるなんて想像もどうかと。」

五和「良いじゃないですか。突然変異って事で。」

サーシャ「第二の解答ですが、突然変異の前に奥さんの浮気を疑うべきでしょう。
それに、突然変異でこんなのが生まれたら、みんな気持ち悪がりますよ。」

五和「そんな事ないですよ。」

サーシャ「ありますよ…」

五和「……?」


サーシャ「あるんですよ……こんな目の赤い子供が生まれたら、誰だって気味悪がりますよ。」


五和「サーシャちゃん、あの…」

サーシャ「そう言えば、五和にはまだ話した事がありませんね。と言ってもこれを自分から話すのはあなたで二人目になるのですが。」


普段は前髪で隠れてあまりよく見えないのだが、意識して確認してみると、サーシャの目は赤い
五和はその事を微塵も気にしていなかったし、指摘された今、改めてその事を認識したくらいのものなのだ。
もしかして地雷でも踏んだのだろうか?

サーシャ「第三の解答ですが、人間の虹彩はイエロー、ブラウン、ブルーの三つが基本色となります。
赤い目は、本来であれば自然界には存在しないのです。本来であれば。」


赤い目は先天性白皮症に見られ、動物などに先天的に発症する。人間にもこれが発症する事はあるが…


サーシャ「補足しますと、私は俗に言うアルビノというものでは無いとの診断を受けました。
医学でも完璧に証明できないのです。」

五和「えっと、それはつまり…」





サーシャ「では第一の質問ですが、現代の科学ですら説明できないこの目を持って生まれた私は、
あなた方から見たらどの様に映るのでしょうか?」


サーシャはその赤い目で真っ直ぐに五和を見据えた

今でこそ先天性白皮症も医学で証明され、それを正しく知る人間は差別などという愚行を犯さない
だが、それ以前はどうだったか?日本でも見世物にされていたという記録がある。
そして現代においてさえもその知識や、そもそも医学が先進国並みに浸透していない地域ではどうだろうか?
アフリカでは、先天性白皮症の人間が今でも迫害されている。耳を疑いたくなるような悲劇も起きている。まるで現代の魔女狩りの様に。


人間は、自分達と異なる者に違和感を持つ
同時に、人は自分の知識が及ばない物や事象については恐怖感を抱く


その二つを同時に兼ね備えた彼女の赤い瞳は…

もしかすると、彼女の前髪が長いのは、その赤い目を隠すためなのかもしれない
仮にそうだとしたら、少なくとも彼女は持って生まれたその赤い目で良い思いをした事は無いのだろう


サーシャ「……」


サーシャは依然変わらずに赤い瞳で五和を見つめ続ける

同時に心の中では、彼女は後悔していた
なぜムキになってこんな下らない事を言ってしまったのかと

五和は良い人だ。
こんな事を言って空気を悪くしてしまったにも関わらず、彼女はきっと優しくフォローしてくれるだろう。

「私はそんなの気にしない。誰にだって悩みの一つはある。何らかの障害を持っていても、明るく強く素晴らしい人生を歩いている人は居る。」

まあそんなところだろう。とても道徳的で素敵な言葉だ。
まるで聖者が愚者に隣人愛を説いている様だ。心の中では憐れみ蔑みながらも。


そんな言葉は、五和の口からは聞きたくなかった
果たして彼女はどんな同情の言葉をかけてけくるのか……

五和「私はサーシャちゃんが好きです。」

サーシャ「……はい?」

五和「サーシャちゃんがどれだけ苦しんできたかも分かりませんし、そもそもどうすれば良いのか?
どう答えるのが一番良いのかなんて私には分かりません。私なんかにそれが分かるくらいなら、
きっと世界中から差別や偏見なんて無くなってるしょうから。」

サーシャ「……」

五和「ですから、これが答えじゃダメですか?目が赤いからどうとか言われたって、
好きなものは好きなんだからしょうがないじゃないですか。」


それは、サーシャの予想していた答えとは全く違っていた

簡潔に言えばその答えは、“どうでも良いし興味無いです”といった感じか。
そんな稚拙で冷たいとも受け取れる様な答えだ。
別の言い方をすれば、それを特別な事だと思っていないとも言える

そう言えば、以前ワシリーサにも自分からこの事を話した事がある
ワシリーサは何を言ったかと言うと「へえ、そう?まあ可愛いから良いんじゃない?可愛ければ正義なのよ!
赤い目もキュートなのよ!サーシャちゅわああん!!」とか言いながら飛びついて来たのでバールで薙ぎ払った覚えがある


サーシャ(やはり、この人はワシリーザに似てきていますね。いや、あるいは最初から…)

五和「え?何か言いましたか?」
サーシャ「第四の解答ですが、何でもありません。」


そう言うと、サーシャはトスンと寄りかかり、五和に体重を預けた


サーシャ「少し、疲れました。」

五和「じゃあ、向こうのベンチで休みましょうか」





ベンチに座ると、サーシャは五和に膝枕を要求してきたので、五和は快くそれを受け入れた


サーシャ「第一の解答ですが、五和は相変わらず胸が大きいですね」


膝枕のアングルだとかなり強調されるようだ。胸が。


五和「サーシャちゃん、それセクハラですよ」

サーシャ「第二の解答ですが、私の職場では日常茶飯事でした」

五和「こんな年端もいかない子にそんな事するなんて、一体どんな変態なんですかその同僚は」

サーシャ「五和に似てますよ。良い意味で。」

五和「私はそんな事してませんよ!」

サーシャ「補足しますが、良い意味で、ですよ。」


そう言うと、サーシャは意地悪な笑みを浮かべた

静かな昼下がりの広場
優しく自分の体を撫でる様に吹く風を感じながら、その風が奏でる木々の揺れる音に耳を傾けながら、
五和の膝枕で穏やかに寛ぐ。

多分、今この瞬間は、サーシャにとっては最期の審判の向こうにあるという神の国にも劣らない世界になっているのだろう

そしてもしも五和がその神の国に居ないのならば、サーシャは迷わず十字架を捨てるだろう



こんなに穏やかな気持ちになれたのは、ここに来た初めての夜にルチアに抱きしめられた時以来かもしれない





五和の膝の柔らかさが心地良かった

彼女の頬笑みも優しさも

時々、温かい手でそっと自分の頭を撫でてくるのも

全てが愛おしかった

サーシャ「五和、私は五和の友人になれた事を誇りに思います。」

五和「えっ!?いきなり何ですか?そんな恥ずかしいセリフを言うなんて」


五和は僅かに顔を赤くしながらそう言う


サーシャ「自分でも驚いています。第一の質問ですが、五和はどうですか?」

五和「もちろん、サーシャちゃんの友達になれて、ううん、それ以前にサーシャちゃんに出会えた事が嬉しいです。」

サーシャ「ありがとうございます…五和……」


サーシャはそっと目を閉じた

そして、そんなサーシャのおでこを、五和は優しい頬笑みを浮かべながらそっと撫でた

サーシャ「第一の解答ですが、もしも自分が男性だったら、この場であなたにプロポーズしているでしょうね。」

五和「プ、プロッって!?もう、さっきからおかしいですよ!?」


先程の恥ずかしいセリフの時よりもさらに、今度は誰が見ても明らかなくらいに顔を真っ赤にする五和


サーシャ「本心ですよ。五和は同性の私から見ても良い女です。」

五和「そ、そんな事ないですよ。私なんて、サーシャちゃんみたいに可愛いわけでもないし、
女教皇様みたいな武器(胸)も度胸(堕天使)も無いし、目立たないし、それに…」

サーシャ「それに?」


五和「…守れなかったんです。大切な人だったのに、私は何も出来なくて……
本当は私がその人を守らなきゃならないはずだったのに、逆に私はその人に守られてしまったんです。
それで、その人はボロボロに傷付いて……」


いつかの神の右席との戦いを思い出し、五和の顔が曇った

そんな五和の様子から、サーシャは察してみた


多分、その人というのが好きなのだろう。彼女にとっての大切な人なのだろう。
だからこそ、きっと大切な人を守れない自分の無力さが許せないのかもしれない。
サーシャ「第二の解答ですが、大丈夫です。五和は美人ですよ。私より胸も度胸もあります。目立つかどうかはともかく。」

五和「そこは否定してくれないのですね」

サーシャ「それに、戦いの強さだけが強さではありません。五和の優しさも強さです。誰かを傷付ける強さよりも、
誰かを幸せにできる強さの方が尊いものだと思いますよ。」

五和「ですが、私には、誰かを幸せにできるほどの力なんてありませんよ。」

サーシャ「ありますよ、ほら」


そう言うと、サーシャは五和に膝枕されている状態から右手を伸ばし、
そっと五和の頬に触れた



サーシャ「第三の解答ですが、私はこんなにも幸せじゃないですか。」


反則だった
その時のサーシャは、今まで見たことの無い様な優しくて無邪気な頬笑みを浮かべていた。
例えるなら、天使の頬笑みという表現がしっくりくるかもしれない
その表情を見た時に、五和は不覚にもドキッとしてしまった
サーシャ「私は、こんなにも五和を愛しく感じているのです。あなたの想い人にも同じ優しさを向けてあげれば、
きっとあなたに振り向いてくれるはずですよ」

五和「サーシャちゃん…」


嬉しいのやら恥ずかしいのやら、五和にはもはやよく分からなくなってしまっている


五和は自分の頬に当たっている白くて小さなサーシャの手の甲に、そっと自分の手を重ねた
そうすると、不思議と感情が落ち着いていく
自然と表情が柔らかくなっていくのを自分でも感じられる



この感覚を覚えておこう


たぶん、これがサーシャの感じている優しさであり、幸せなのだと思うから


それがあの人にも伝わるのなら…






サーシャ「第四の解答ですが、もしもその想い人が五和を泣かせたら、私があらゆる手段を持って
その人に“死んだ方がマシ”というふざけた言葉の意味を教えてあげましょう。」

五和「いえ、そこまでしなくてもいいですから。」


天使の様な頬笑みが邪悪な笑顔に変る瞬間を五和は目撃した

その頃遠く離れた東の島国では


上条「(ぶるっ!)な、なんか妙な寒気を感じる。上条さんは誰かから呪われてるのでしょうか?」

Dedicatus545「心当たりは沢山あると思うんだよ。」

上条「不幸だ……俺が何したってんだよ」

545[とーまは立て逃げしまくりなんだよ]


いつものことです

その後、一休みした後にロンドン巡りを再開した二人


五和「最後はとっておきの場所を紹介してあげましょう。フフフ」

サーシャ「第一の解答ですが、なんだか自信あり気ですね。ちなみにここはウェストミンスター宮殿です。
現在でもイギリスの国会議事堂としての役割を担っています。」

五和「ウェストミンスター宮殿と言えば、ビッグベンですね。世界で最も有名な時計塔の
一つに数えられています。」

サーシャ「宮殿に併設されているあの高い時計塔ですね。高さは96m。しかし、一般人は
登る事ができないという残念な観光名所でもあります。」

五和「ですが、もしも登る事ができるとしたら?フフフ…」

サーシャ「なるほど、だからその薄ら笑いですか。」

五和「と言っても実は私も登るのは初めてなんですけどね」

 

 

【時計塔前】


五和「一応、ビッグベンは国会議員の紹介があれば登れるのですが、今回はその議員でも知らないルートから登ってみましょう。」

サーシャ「裏ルートとかいうやつですね。」


五和は時計塔の壁をくまなく調べている


サーシャ「……結界?」

五和「ええ、ありました。どこかで聞いた噂通りです。だいぶ古くなっていますから、これくらいなら、
こうやってこうやってここをいじって……おっ、いけましたよ!」


ガラスの割れる様な音が響いた


サーシャ「元はそれなりに強い結界だったみたいですね。しかし、どうしてここに魔術の痕跡が?」

五和「どうやらこの時計塔は、議会を裏から掌握する王室派の方達のための建物だったのかもしれませんね。
正確には、こっちが表ルートみたいです。現在では王室派の方達もこの時計塔を使用していないみたいですけど、
それでも一般人に公開しないのは、王室派の影響力の痕跡がばれるのを防ぐためなのかもしれません。」

サーシャ「なるほど、不思議ではありませんね。そもそも議会になる前は宮殿だったのですから。」
結界が完璧に崩れると同時に、壁しか無かったはずの場所に一つの扉が現れた

年季の入ったその扉を開けると、その奥にはまた扉があった。

そしていくつかの扉を開けていき、いくつかの結界を破壊し、たどり着いた先には、一つの魔法陣が床に描かれていた


五和「これは…なんの魔法陣でしょうか?」

サーシャ「第一の解答ですが、攻撃的な術式は組まれていないみたいです。おそらく、大規模な転移魔術を可能にする魔法陣でしょう。」

五和「なるほど、王室の方々にこの塔を登らせるなんて事をするわけにはいきませんからね。」

サーシャ「第二の解答ですが、年季はありますが、どうやらまだ機能しているみたいです。行きましょう。」


サーシャは五和の手を引っ張り、魔法陣の中心に立った
手を握ったまま二人の体はどこかへと移転されていく

移転された先には、広い空間と三つの扉があった

それぞれ開けて確認してみたが、一つは王室派の従者の待機室
もう一つは、王族のための豪華な部屋
最期の一番大きな扉の向こうは、部屋の中心に高そうなテーブルが置かれた会議室の様な場所だった

おそらく、昔は本当のイギリス政治の中心だったのかもしれない

二人は王族のための部屋に入り、その部屋に備え付けられたテラスに出た




五和「……すごい…絶景かなって感じですね」

サーシャ「……」


実際に階段を登って来たわけではないので実感が湧かなかったが、どうやらここはビッグベンの最上階であるらしい


右を見ればテムズ川を一望できる
左はロンドンの名所や街並みが一望できる

世界最大の観覧車であるロンドンアイには及ばないが、それでもこの景色は彼女達に感動を与えるのに十分だった


サーシャ「第一の解答ですが、100年前の王族の方々も、きっとここからこの景色を眺めていたのでしょうね。まさに英国の頂点として……」


こんなにも有名な観光スポットなのに、この景色は絶対に誰も見る事ができない。
そう思うと、ますますこの景色が感動的のものに見えてくる。
サーシャ「第二の解答ですが、いつかあなたの想い人にも見せてあげられるといいですね。」

五和「そうですね。前途多難ですけど……」

サーシャ「もしもダメだったら、その時は私が貰ってあげますよ」

五和「ふえっ!?」

サーシャ「冗談です。第三の解答ですが、良いリアクションをありがとうございました。」

五和「でも、それも良いかもしれませんね。」

サーシャ「…え?」

五和「もしも私が男だったら、きっとここでサーシャちゃんにプロポーズしちゃってますよ。こんなに良い景色があるんですから。」

サーシャ「あの…五和?」

五和「クスクス、冗談です。良いリアクションをありがとうございます」

サーシャ「……」

五和「あれ、サーシャちゃん?もしかして怒ってます?」

サーシャ「別に(ぷいっ)」

五和「でも、もしも本当に私が男だったら惚れていたかもしれませんね。」

サーシャ「騙されませんよ」

五和「もう、可愛いんだから(ぎゅっ)」

サーシャ「第四の解答ですが、またですかっ!」

五和「ああ柔らかい…」


人気の無いというより、全く人の居ないこの秘密の部屋のテラス

もしも五和が男だったら、色んな意味で本当に危なかったかもしれない
五和「では、また一緒にどこか行きましょうね。あとさよならのハグをしても良いですか?」

サーシャ「第一の解答ですが、昔のあなたが懐かしく感じられます。」


日も完全に沈んだ時間帯だ。随分と長い時間あの場所に居たのだろう。

サーシャは女子寮へ、五和は日本人街へ、二人は別れて帰路に着いた




五和「サーシャちゃん今日も可愛かったなあ。今度はネコミミとかつけてみようかな♪」

?「えー、アタシは犬耳の方が好みかなー」

五和「そうですか?でもサーシャちゃんなら両方……誰ですか!?」

?「誰でも良いじゃないですかー?あなたの身柄にだけ用があるんですから」

五和「……魔術師ですか?そう言えば、先程から人の気配が…」

?「余所見しちゃだめですよー?」

五和「えっ…」


気付いた時には長身の少女は五和の目の前に来ていた

そして五和が言葉を上げるよりも早く、鳩尾に一撃をたたき込む


(ドゴッ!)


五和「ガフッ…!」


全身の酸素が無理矢理引き抜かれる様な感覚に襲われる

そのまま、五和の意識は途切れていった


オルガ「身体能力が高いって聞いたけど、大した事なかったですねー。よっこいしょ。」


オルガは五和を担ぐと、そのまま夜のロンドンの街並みに消えていった

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