上条「二人で一緒に逃げよう」 美琴「………うん」 > 第一部 > 03


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アンチスキル・黄泉川部隊本部――。

黒子「DNA鑑定は出ましたの?」

黄泉川「いや、まだじゃん」

トレーラー型の装甲車の中に設けられた臨時の司令部。そこに、黄泉川や複数の警備員たちがいた。そんな中、1人学生の身分である黒子は、デスクで出されたお茶を飲みながら黄泉川に訊ねた。

黒子「一刻でも早く御坂美琴を見つけないと気が済みませんの。出来うるなら科学部隊の方に伝えてくれません? 早くしてくれ、と」

黄泉川「そう焦るな。焦ったら捕まえられる犯人も逃してしまう」

黒子「でも……っ!」

黄泉川「本来ならこれは我々アンチスキルの仕事じゃん。お前は“奴”に詳しいから学生顧問として協力してもらってる。何か不満でもあるじゃん?」

黒子は苦虫を噛み潰したような顔をする。

黄泉川「奴を捕まえるのは私に任せろ。何があっても、アンチスキルの誇りにかけて御坂美琴を捕まえる。お前はとにかく冷静になるじゃん」

黒子「………………」ブツブツブツブツ…

そうアドバイスした黄泉川だったが、黒子は俯いてブツブツと唱えていて聞いていなかった。

黄泉川「………………」

そんな黒子を横目で窺い、黄泉川は手元にあった資料を眺めた。そこには、美琴の写真と共に『殺害優先』という文字が添えられていた。

黄泉川「(ふん、御坂美琴……今まで幾人もの極悪犯罪者を捕まえてきた私の手から逃れられるとでも思っているのか? ならお前に、現実を知らしめてやるじゃん)」

黄泉川は、この状況を面白がるように笑みを浮かべた。
学生たちが下校のためにパラパラと街に現れ始める頃、上条と美琴は今までいた学区の端の方まで来ていた。

上条「このまま街を抜けて郊外を突っ切って、次の学区に行こう」

上条は後ろを振り返り言う。

上条「ん? あれ? 御坂?」

背後にいたはずの美琴がいない。

上条「おい、御坂!?」

上条は、焦るように辺りを見回す。

上条「あ、あんな所に……」

すぐに美琴は見つかったが、彼女は上条から後方10m辺りをトボトボと歩いていた。
急いで上条は美琴の元に駆け寄る。

上条「何やってんだよお前。見失ったら大変だろうが」

美琴「………………」

が、彼女は顔を上げようとしない。

上条「とにかく、このまま街を抜けて郊外を突っ切ろう。夜までには次の学区に行けるだろう」

そう言って上条が前に向き直した時だった。

美琴「………やだ」

上条「は?」

上条は思わず振り返る。
美琴「………………やだ」

美琴が呟く。

美琴「………やだ」

上条「お前何言って……」

美琴「疲れた」

上条「え?」

美琴「疲れたの! もう歩けないの!」

上条「な……ぁ!?」

美琴「もうクタクタ……。朝からずっと歩きっぱなしなんだもん……」

まるで親に拗ねる子供のように美琴は愚痴を吐く。

上条「それは、仕方ないだろ?」

美琴「仕方なくない!! あっちの道に行ったらアンチスキルがいるから遠回り。こっちの道へ行ってもアンチスキルがいるから遠回り。そんなんばっかりで全然進めてないし、もう疲れたの!!」

上条「お前、自分の置かれている状況ぐらい分かるだろ? 俺たちは一刻でも早く先に行かなきゃならねぇんだ」

美琴「やだ! 休みたい!!」

上条「おい、わがまま言ってんじゃねぇよ!!」

美琴「………!」

上条「!」

少し苛立ちを覚えた上条が怒鳴ってしまったためか、美琴は驚くように彼の顔を凝視した。
美琴「………」ウルッ

美琴の目が涙目になる。

上条「………いや、だから……とにかく今は急がなきゃならないんだよ。そこだけは分かってくれよ……」

美琴「………ごめんなさい」

上条「………………」

元気を無くした美琴が謝る。そんな彼女を上条は気まずそうに片目で窺う。

美琴「…………でも、もう歩けないのは本当なの。足が……棒みたいになっちゃって………」

上条「(参ったな)」

上条は地図を広げる。

上条「………あ」

美琴「?」

上条「こっから先、500mぐらい行ったところにモーテルがある。そこで、休んでくか?」

美琴「……! うん!!」パァァ

美琴の顔が明るくなった。

上条「(やれやれ……)」

美琴「さ、早く行こうよ!!」

上条の裾をグイグイ引っ張る美琴。

上条「あ、ああ………」

そんな彼女を見て上条は胸中で溜息を吐く。

上条「(御坂の奴、まるで幼児退行してるみたいだな……。まあ色々あったから仕方ねぇけど。先が思いやられるな……)」

それからしばらくして、2人は郊外のモーテルに辿り着いた。
学区と学区の僅かな距離の間にある郊外の道。そこに、モーテルはあった。
『モーテル』と言っても、日本では馴染みのないものだったが、ここ学園都市では、アメリカ式のモーテルをモデルに実際に設計されたモーテルがいくつもあった。

主人「………いらっしゃい」

中に入ると同時、正面に見える受付にいた中年の男が上条とその後ろにいる美琴をジロジロと見てきた。恐らくはモーテルの主人だろう。日本人とはいえ、どこかアメリカの映画に出てきそうなその主人の雰囲気もモーテルらしいと言えばらしかった。ただ、カウンターの端に飾ってあった高級そうなフィギュアが気にはなったが。

上条「すいません……ちょっと休憩がてら一部屋借りたいんですけど。いや、小さな部屋でいいんで」

主人「…………君たち学生?」

上条「え?」

主人は上条を、次いで美琴を見る。美琴の方は上条に隠れるようにして、更に帽子も目深に被っていたため、主人にはその顔は見えなかったが。

上条「…………そうですけど……」

主人「どういう関係?」

上条「………えーっと……」

まさかそんなことまで訊ねられるとは思わなかったのか、上条はしどろもどろしてしまう。

上条「(まずいな……何か怪しまれてる? ……不幸な上条さん的な展開だと、この後バレたりしちまうんだよなあ……。でも気のせいかもしれないし、ここで引き返しても逆に怪しまれそうだし……)」

主人「どうした?」

上条「その……兄妹です!」

美琴「……………………」

主人「そうか」

上条「え?」
主人「いやね、こっちは学生と言うよりかは、主に教師とか研究者とか相手に商売やってるんで。最終下校時刻も近いのに学生……しかも男女のペアを泊めるとなると、色々学校側がうるさいんだよ。倫理的な問題でね」

そう言って主人はカウンターの中をゴソゴソと探る。

上条「………はぁ」

主人「でもま、兄妹なら別にいっか」

美琴「……………………」

主人「あ、ここに名前書いて」

主人はカウンターの上の紙をトントンと指で叩く。見ると、今までに宿泊したらしい人たちの名前がずらっと並んであった。

主人「あと一応、身分証も」

上条「………お、俺の分だけで構いませんよね?」

恐る恐る上条は訊ねる。

主人「ああ」

上条「(良かった……)」

言われた通り、上条は紙に名前を書き、学生証を見せた。

主人「じゃ、これ鍵ね」

主人は手にしていたルームキーを、上条に渡す。

上条「ありがとうございます」
上条と美琴は、部屋を見つけると早速中に入った。

上条「ふう、受付のおっさんにバレないかと冷や冷やしたぜ。いつもの俺なら不幸だから速攻バレてただろうけど、今日はついてたな」

上条はカーテンが掛けられた部屋の奥の窓から外を見た。たまに、車が通り過ぎていく音が聞こえる。

美琴「………ねぇ?」

上条「ん?」

振り返ると、帽子を脱いだ美琴がそこにいた。

美琴「1つ聞きたいんだけど、さっき何で私たちのこと『兄妹』って言ったの?」

上条「え? 何でって……」

何故か美琴は不服そうな顔をしている。

上条「それが一番普通っぽくねぇか?」

美琴「…………………」

上条「それとも何だよ? どんな間柄だったら良かったんだよ?」

美琴「え!? あ……その……それは……」ボソボソ

上条「何だよ?」
美琴「こ……こここ……こいb」

上条「夫婦か?」

美琴「!!!!!!!!!!」
美琴「ななななななななな何でふふふふふふ夫婦なのよ!!!!//////////

上条「違うのか?」

美琴「こここここんな歳の夫婦なんているわけないでしょうがバカぁぁ////////!!!!」


ドゴン!!!!


上条「ぶえっ!?」

美琴の渾身のボディブローが上条の腹に決まる。

上条「おまっ! い、今のは効いたぞ!」

美琴「あ、あんたがデリカシーないからでしょ!!////////

上条「?」

美琴「うううう//////……もういい!! 私シャワー入るから!!」

顔を赤くさせ美琴は言った。

上条「あ? ああ」

スタスタと、美琴はシャワールームに向かう。

美琴「覗かないでよね!?」

上条「べ、別に覗かねぇよお前の裸なんて!」

美琴「死ね!!」

それだけ残し、美琴はバタンとシャワールームのドアを閉めた。

上条「何だよあいつ……よく分かんねぇなあ」

首を傾げる上条。

上条「あ! そうだった!」

と、何かを思い出し、上条は部屋を出て行った。
イギリス・某所――。

土御門「とにかく、今後はそういう方向性で掛け合ってみるしか……」

美琴に『弧絶術式』を発動した末死んだ魔術師のアジト。そのアパートの前で、インデックスたち『必要悪の教会(ネセサリウス)』のメンバーは何かを真剣に話し合っていた。

Prrrrrrr.....

土御門「っと、失礼。電話だぜい」
土御門「はいもしもし、こちら土御門」



上条『土御門か? 俺だ! 上条だ!!』



土御門「カミやんか!?」

インデックスステイル神裂「!!??」

土御門「無事か? 今どこにいる? 超電磁砲はどうした?」

受話器の向こうの上条に問い掛ける土御門。インデックスたちが土御門の周りに集まる。

上条『取り敢えずは俺も御坂も無事だ。一緒にいるよ』

その言葉を聞き、インデックスたちが安堵の息を吐く。

ステイル「ったく、心配掛けさせやがって」

神裂「彼ならやってくれると思ってましたよ」

インデックス「とうま……短髪……良かった……」
一方、学園都市。

上条「今、学園都市のモーテルから掛けてる」

土御門『誰か側にいるか?』

ゆっくり振り返る上条。少し離れた場所で、受付の主人が来客に応対しているが見えた。

上条「いや……それは大丈夫」

上条は今、モーテルのエントランスの端に設置されている公衆電話で土御門たちに電話を掛けている。

土御門『だが、今も学園都市内にいるのは確かなんだな?』

上条「そうだ。まだ、学園都市から逃げ出すのには時間が掛かりそうだ」

土御門『やっぱりか……』

上条「土御門、何とかして助けてくれないか? 俺はともかく、御坂が色々心配なんだ」

土御門『こっちも出来ることはやってるんだがな……』

上条「……『弧絶術式』について、新しいことは何か分かったか?」

土御門『ダメだな。せめて死んだ魔術師が何故、超電磁砲を狙ったのか……。それが分かれば、何か有力な手掛かりを掴めそうな気もするんだが……』

上条「……クソッ! 魔術師の野郎め!! 生きてたらぶん殴ってやったのに!!」

土御門『落ち着けカミやん。前も言ったろ? 冷静にならなければ助けられるものも助けられなくなるって』

上条「…………っ」

土御門『こっちも電話で上の連中に頼んでみたんだがな。学園都市に戻りたい、って。だが、人手不足を理由に断られた。もしくは学園都市と厄介になることは嫌だったのかもな。だから今、直接話しにいこうと思ってたんだが……どうなるかな』

上条「……何で……こうなるんだよ!!」

上条は拳を握り、ワナワナと震わせる。

土御門『………とにかく、カミやんは出来るなら頻繁に連絡を寄越してくれ。特に、学園都市から『外』に脱出する時にはな。俺たちも、何とかそっちに行けるようしてみるから』

上条「…………分かった」

公衆電話にうなだれるようにして、上条は小さく答えた。


『とうま!!!』


上条「!!!!」
突然、受話器の向こうから土御門とは違った幼い少女の声が聞こえてきた。

上条「インデックスか!?」

インデックス『そうなんだよ!』

上条「みんなと上手くやってるか?」

上条は、電話に出たインデックスに訊ねる。

インデックス『私のことはいいんだよ! 短髪は……短髪は無事なの?』

だが、彼女は自分のことよりも、余程心配だったのか美琴について逆に聞いてきた。

上条「何とかな。随分参ってるようだけど……」

インデックス『ごめんなんだよ……。私がもっと早くに『弧絶術式』に気付いていれば……』

受話器越しでも分かるほど、インデックスの声は落ち込んでいた。

上条「はぁ!? 何言ってんだよ!? お前のせいなんかじゃねぇからな!! 悪いのは死んだ魔術師だ。お前が責めを負う謂れはねぇ!!」

インデックス『でも……』

上条「俺もそうだが、御坂もお前には感謝してる。お前がいなかったら俺は御坂のことに気付いていなかったし、御坂もやばいことになってたかもしれないんだ。だからインデックス、お前のせいじゃない」

インデックス『うん……』

上条「よし」

インデックス『とうま……私、絶対短髪を助け出す方法見つけるから。だから……とうまも短髪のこと、守ってあげてね……』

上条「任せとけ」

笑顔で頷きながら、上条は自信たっぷりと答える。
インデックス『短髪には……今、とうましか頼れる相手はいないんだから』

上条「ちゃんと分かってる。心配すんな」

2人の会話はそれで終わった。

土御門『カミやん』

上条「土御門か」

土御門『そういうわけだ。こっちも出来るだけ頑張ってみるから、カミやんも頑張ってくれ』

上条「ああ」

土御門『では、また連絡してくれ』

上条「分かった」

電話を切る上条。彼はしばらく、公衆電話に腕を掛けうなだれるようにして微動だにしなくなった。
何か考え事をしているようだった。

上条「…………戻るか」

顔を上げ、振り返る。と、そこで受付の主人と目が合った。

上条「…………………」

すぐに目を逸らす主人。上条はそんな主人を横目に、無言でカウンターを通り過ぎていき、部屋に戻った。
上条「これからどうするか……」ガチャッ

美琴「あ」

上条「ん?」

美琴「……………………」

上条「……………………」

上条が部屋のドアを開けた瞬間、2人は言葉を失くしそこで固まった。

上条「あ……いや……その……これは……//////

美琴「……………………」

額に青筋を立て拳を握る美琴。無理も無い。何故なら今彼女は、バスタオル1枚だけを持って身体を僅かに隠していた状態だったのだから。



美琴「この……変態!!!!!!!!」



バチバチバチッ!!!!!!



上条「ぎゃああああああああああああ!!!!!!!!」



モーテル中の電気が、一瞬だけ停電した。
美琴「まったく、信じらんない。人の風呂上りの姿見るとか」

上条「いや、無茶言うなよ! こっちだってあのタイミングで鉢合わせるとは思わなかったんだ!」

美琴「どうだか? 本当は狙ってたんじゃない?」

タオルで頭を拭きながら、美琴は尖った口調で言う。もちろん今彼女はちゃんと服を着ていたが、上条に対する怒りはまだ収まっていなかった。

上条「んんなわけあるか! 大体お前も無用心だろ!! 同じ部屋に泊まってんのに!!」

ベッドに腰掛け必死の言い訳を試みる上条。

美琴「だって部屋にあんたの気配が無かったんだもん」

タオルを椅子の上に掛ける美琴。彼女は上条と向かい合うようにしてもう1つのベッドに腰掛ける。




上条「つーか、俺がお前の裸姿覗くわけないじゃん。まだ中学生だってのに」




美琴「!!!!」

上条「それにいくら上条さんでも、女の子の裸見ていちいち興奮するほど節操無い男じゃないし」

美琴「……………………」

上条「だから別にこれからも今みたいなことあってもお前は気にする必要ないぞ……ってどうした?」

気付くと、美琴が黙ったまま俯いていた。

上条「ん? 俺もしかして何か悪いことでも言ったか? いや、さっきの鉢合わせについては悪いと思ってるけど……」

美琴「………っ」

本当に、上条には悪気が無かった。寧ろ、一連の言葉はどちらかというと美琴を気遣うために言ったことだったが、彼女は上条の予想とは裏腹に、何か傷ついたような、ショックを受けたようなそんな感じだった。
上条「御坂?」

上条が美琴の顔を覗き込む。

美琴「あ、あんたは……!」

上条「いっ!?」バッ

急に美琴が顔を上げた。何故か、目を潤ませながら。

美琴「あ……あんたは……」

上条「???」

美琴「その………」

一度、顔を逸らす美琴。だが、何か意を決するように彼女は再び顔を上げ上条を見つめた。




美琴「私の裸なんて見ても、やっぱり何とも思わないの?」




上条「!!!!!!!!!!!」

美琴「…………、」

目を潤ませ、上目遣いでそう訊ねてきた美琴。風呂上りで肌は上気しており、赤みを帯びているその姿は、元の肌が白く綺麗なためか、中学生とは言え妙に色っぽさを醸し出している。おまけに彼女の自慢のシャンパンゴールドの髪は少し濡れており、どこからか甘い香りも漂ってくる。

上条「(こ……これは……何か色々とまずい……)」

そんな彼女の艶かしい身体が、距離にして50cmの範囲内にあれば、さすがの上条も正常な対応が出来なかった。
美琴「………当麻」

上条「(うお! ちょっ、待って……これはヤバイ。ヤバ過ぎる……)」

しどろもどろし、思わず視線をあちこちにやる上条。

美琴「ねぇ………」

相変わらず彼女は、上目遣いで上条に答えを求めてくる。どうやら彼女にとってはちゃんと答えてほしい真剣な問題のようだった。

上条「(えー……ど、どうすんの俺!?)」

美琴「答えてよ……」

上条「…………っ」

美琴は上条を見つめてくる。間違いなく彼女は、1人の女性として質問している。

上条「(ここで逃げたら、男がすたるぞ上条当麻)」

胸中にそう呟く上条。そして彼は何かを決心するように、1度息を吐くと、美琴の顔を見据えた。

上条「み、御坂……」

美琴「な、何?」

上条「………………」

この時、美琴の姿を見て上条は改めて思う。こいつも女の子なんだな、と。いつもは追いかけたり追いかけ回されたり、電撃浴びたり浴びせられたりと、よく分からない間柄でそんなことを意識することもなかったが、こうやってきちんと面し合って見るとちゃんと分かる。間違いなく、彼女は1人の女の子なんだと。
正直、彼女とこんな展開になるとは夢にも思ってみなかったが、目の前の彼女が、1人の女の子として答えを求めてきている以上、上条も1人の男として、真面目に応じてやらなければならなかった。
上条「いや……その……さすがにさっきのは……俺も……デリカシーが……なかったかな……」

美琴「う……うん……」

上条美琴「「…………………」」

上条「だから……」

美琴「!」ビク

上条「あー……だからね……その……何だ……改めて考え直してみると、だ……」

美琴「うん……」

上条「さっき……お前のバスタオル1枚の姿見て……」

美琴「うん//////////

上条「あ、こいつこんな綺麗な身体してるんだな、って思ったのは事実……だ」

美琴「ホ、ホントに?」

上条「ああ……」

上条は美琴に視線を合わせきっぱりと答える。

美琴「…………………」

上条「…………………」

2人ともそれ以上、出てくる言葉がなかったのか、自然と、見つめ合う形のまま動かなくなった。

美琴「……………………」

上条「……………………」

部屋が静寂に包まれる。今、確かに上条と美琴は1人の男と1人の女として面し合っている。
そして、一瞬、彼らの間に大人の空気が流れた時だった。




ガシャアアアアアアン!!!!!!!!




上条美琴「!!!!!!!!!!」
部屋の外から物音が聞こえた。

上条「何だ!? 敵襲か!?」

美琴「えっ!?」

ベッドの上で固まっていた2人が同時に立ち上がる。

上条「何があった!?」

急いでドアを開ける上条。

上条「!!!???」

そこで上条が見た物とは………


主人「ああああああ何てことだあああ!!!!!!」


上条「ど、どうしたんですか!?」

客「いやね、何か主人、カウンターでホラー映画見てたらしくて、急に僕が入ってきたもんだから、驚いて『愛しのカナミンフィギュア高級クリスタルガラス製』を落として割ってしまったらしいんだよ」

カウンターの前にいた教師らしい男が苦笑いを浮かべて説明する。上条が視線を下に向けると、受付の主人が床に落ちて割れて、無残な形になったフィギュアの残骸を見て泣いていた。

主人「よ、嫁さんと娘に逃げられて落ち込んでた時に俺を励ましてくれた『愛しのカナミンフィギュア高級クリスタルガラス製』が粉々になってしまったあああああああああ!!!!!! 俺とカナミンの愛も粉々になってしまったあああああああ!!!!!!」

頭を抱え、床の上で男泣きをする主人。その光景は余りにもシュールだった。

客「だからいつも注意してたじゃない。割れやすいものはカウンターの上に置いちゃダメだよ、って」

上条「…………………」

上条は呆れたと言うよりも呆然としていた。

主人「カナミンんんんんんんんんん!!!!!!」

客「まあまあご主人」

主人「俺がホラー映画見てる時にお前が急に現れるからだーーーーーー!!!!!!」

客「えーーーーーー!?」

上条「アホらし………」

溜息を吐き、首を振ると上条は部屋に戻っていった。
美琴「な、何だったの?」

部屋に戻ると、美琴が心配そうに訊ねてきた。

上条「何でもねーよ。主人が愛用のフィギュアが割れたんだと」

美琴「何それ」

上条「さあ?」

美琴「………あ」

上条「ん?」

美琴「………………」

上条「………………」

美琴「………そ、そのさっきは変なこと聞いてごめん////////

上条「………い、いや別に……。と、とにかく俺も答えたからな////////

美琴「………わ、分かった。さ、さーてと、そろそろ寝ようかな」

上条「えぇっ!!!???」

美琴「えぇっ!!!???」

上条「あ、ああ。寝るのか、そうか寝るんだよな。つ、疲れてるもんな。ど、どうぞご、ごゆっくり」

美琴「う、うん。ちょ、ちょっと仮眠取るだけだから……。お、起きたらご飯でも食べよ?」

上条「そ、そうだな……」

上条美琴「「……………………」」

美琴「お、お休み!!」

上条「おおおおう。お休み!!」

光の速さでベッドに潜り込む美琴。上条の方はキョどりながら、室内に設置されていたテレビを点け番組を見始めた。
2人はまだ、色んな意味でウブだった。
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