とある世界の残酷歌劇 > 幕間 > 02


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さて、まずは前提条件の確認から始めよう。

この日、即ち一〇月九日。
学園都市の独立記念日という実におこがましい名目の局地的祝日。
一体この街で何が起こっていたのか。

端的に言えばつじつま合わせ。伏線の回収だ。

学園都市の七人の超能力者。その頂点たる双角。

第一位『一方通行』。
第二位『未元物質』。

この日の出来事は両者の激突、全てはその一点に集約される。

他は諸々一〇月九日に起こる出来事としては些事であり、舞台を彩るただの装飾に過ぎない。

その後、物語を左右する事になる『ピンセット』も。
異郷の魔術師の少女の所持している『原典』も。
優先度で言えば『三人目』となる少年と『第四位』の少女のすれ違いも。

今日この時点においては大した意味を持たない。
この一〇月九日という日は全て超能力者同士の激突のために用意された舞台だ。



しかしそれは舞台裏の物語。楽屋ネタにもいいところだ。
忘れてはならない。この物語の『主人公』、世界を左右する極点たる存在は誰なのか。

『第一位』の少年も
『第二位』の少年も
『三人目』となる少年も
『第四位』の少女も

いいとこ二枚目、三枚目。核足りえるには役者不足でしかないだろう。
後々彼らが主役の座を射止めるまでになる可能性は否めない。むしろ確率としては高い。
『主人公』。。舞台の花形。苦難と悲劇に塗れながらも物語を進行させる存在。
そうなる素質を彼らは持っている。

だが、まだ。
この時点では足りない。

その資格者たる役者は僅かに二名。これでも異例の事態と言えるだろう。

一人は代役。
最初の幕で空白となった主役の席に座らされた不幸な少年。
しかし彼の演技は完璧だった。誰もが彼を主役と疑わないだろう。
誰もが『最初』を忘れてしまうほど彼は紛れもなく主役としては申し分ない。
そう、少し前までは。

一人は対役。
補色としての存在。陰陽の逆転配置。幻想には現実を。無力には実力を。男には女を。
相反するが故にそれぞれが輝いて見える。影がなければ光も輝くまい。
鏡像として主役を引き立たせるために存在するもう一人の主役級。
そう、少し前までは。

だがこの日。
彼と彼女はこの日の結末、二人の超能力者の激突に対してなんら無力だった。
何故ならそういう筋書き。世界はそうできている。
故にこの日、本来ありえない事象が生じる。

『主人公の不在』

つまり、そういう事。




彼と彼女が共に動けばそこに何らかの物語が発生するのは必然。
相互作用として確実に物語が生じる。それが『主人公』というものだ。

しかしこの日に限っては邪魔者でしかない。
舞台に彼らは登場を許されない。配役表には存在しない。

滑稽劇でも悲恋劇でも存分にやればよかろう。ただしそれは別の幕で。
ほんの二十四時間程度時間をずらせばよかったものを、どうしてよりによってこの日なのか。
どれだけ役者が素晴らしかろうと上演中に真横で演られればただの邪魔にしかならない。

そう、この日。日付が最悪だ。
この時以外には絶対に起きなかった例外中の例外。

『主人公』だったはずの二人が勝手に舞台に上がってきて。
他の役者など省みず、二人で全てを完結させた。

『主人公』が登場すれば彼らを中心に物事は進められなければならない。
これは物語の普遍条理。そうでなければ物語として成り立たない。

だが思い出してほしい。この物語に冠された題字。あの四文字。
この物語の、主人公ではないにしろその結末には彼女こそ必須。でなければああは名乗れまい。
そこに割り込んできた四文字。それもまた対比。しかしそれらは紛れもなく対であり。

片方が終わればもう片方も終わらざるを得まい。



舞台の上は大混乱だ。
何しろ時間がない。役者も足りない。脚本など書き直している余裕はない。

だから全ては即興劇。アドリブを積み重ね場の空気を読み無理矢理に繋げてでも舞台を成立させる必要がある。
お粗末な筋書き。要らない閑話。伏線を雑に蹴散らし辻褄合わせを駆使して。
結果駄作となろうとも、幕が降りるまでは終われない。

誰も彼もが物語を終わらせようと躍起になって、結果全てが台無しになる。
これはそういう茶番劇。端から見れば滑稽で仕方なかろうが役者たちは必死だ。
文字通り客観的に見ればすぐに見当は付くだろう。

だってどう考えたってこの物語、まったく続ける気がないじゃないか。

ならばどうするのが最善か。決まっている。

続けなければよい。終わってしまえばよい。

間違って続いてしまう可能性を排除すればよい。






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