上条「アンチスキルだ!」美琴「ジャッジメントよ!」 > 15


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上条たちは一五学区内の大きな交差点に来ていた。 

交差点と言っても車の通る道では無く、歩行者でいっぱいだ。 
それでも最終下校時刻が近いためか昼間よりも人は少なく、買い物袋を下げた学生たちが商店とは逆の方向に歩いていた。 
 
どこからか流れているクリスマスソングは今日初めて聞いた曲だったが、すでに上条の頭に染み付いている。 
 
「さてと…」 
 
黄泉川が立ち止まる。 
三方向に別れている交差点。いわゆるT字路だが、上条たちから見て二手に別れる道は後で合流する。 
商店の種類で二手に分けたようだが、一組で警邏をするとなると非常に厄介だ。 
 
「時間も時間だし、二手に別れるじゃん」 
 
「え?」 
 
黄泉川の予想外の提案。 
これまでは上条の経験が浅いこともあり、2人1組を崩さないまま警邏していた。 
その結果、毎回この道に差し掛かった時はぐるりと一周まわった後、また同じ道を通って次の場所へ向かう形になっていた。 
 
これでは時間もかかるうえ、疲労も溜まる。 
 
そのためこの道に来るたび上条は憂鬱になっていたのだが。 
 
「もういい加減慣れただろうし。あぁもちろん上条はそっちの道じゃん」 
 
そっちの道、と言って黄泉川が指差したのは若年層向けの商店が集まった道。 
若年層と言っても、学生の街学園都市においての若年層と言えば小学生や中学生のことである。 
年齢層が低いため、起こるトラブルと言えばマセたガキんちょによるカツアゲ程度。 
 
大体は警備員の注意で事はおさまる。 
 
「何も無いとは思うけど、もし何かあればすぐに連絡するじゃん」 
 
「了解です」 
 
「まだ侵入者がいる可能性はあるじゃんよ。見つけたら考えるより連絡じゃん」 
 
もう一度上条が返事をして、二人は別れた。 
 
 
人通りが疎らになった通りを歩く。 
上条と同じ方向に歩く者はいない。 
すれ違うのは小学校高学年から中学生くらいで、時折律儀な学生が挨拶をしてくる。 
 
「さようならー」 
 
「おぅ、気を付けて帰れよ」 
 
少し擽ったい気持ちになりながら挨拶を返す。 
 
ふと時間が気になって、周りを見渡すが時計は無い。 
仕方が無いのでポケットから携帯電話を取り出す。 
サブディスプレイに時間を表示させようと、横のボタンを適当に押したところで上条は固まった。 
 
“不在着信20件” 
 
仕事中は気にならないようにサイレントモードにしていたので全く気付かなかった。 
とにかく携帯を開いて誰からの着信なのか確認しようとしたところで、また着信が来た。 
 
警邏中のため迷ったが、着信件数から考えて異常だと思い電話に出る。 
 
「もしもし…」 
 
『やっと繋がった!』 
 
最大音量の声が上条の耳を駆け抜けた。 
 
『とうまとうま!今から私の言うことをよく聞いてほしいんだよ!』 
 
聞き慣れたその声は、上条の返事を待たずに話を続ける。 
 
『今ね、学園都市のほうに──わわっ』 
 
突然話が途切れて、どさり─と音がする。 
 
『ちょっと!今私が説明しているんだよ!』 
 
『うるさいなーこういうのは当事者が説明するべきでしょ』 
 
なんだなんだと思っている間に、電話の相手が代わったようだ。 
 
『あーもしもし。使えない頭を最大限に使って考えてね日本人』 
 
「あれ?どこかで聞いた声だな…」 
 
『私はフロリス。アンタとはハロウィン以来かしら』 
 
面倒くさそうに、そして少し苛々とした口調で答えるフロリス。 
 
「あぁ…あの時の…」 
 
『アンタはいつかぶっ飛ばしてやるから』 
 
「それは何故でせうか…」 
 
上条の問いは無視される。 
 
『話がずれたね。こっちも忙しいから手早く話すけど、レッサーって知ってるでしょ?』 
 
頭に浮かぶお転婆少女。 
随分と振り回されたが、いくらか迷惑もかけた。 
 
「あぁ、レッサーがどうしたんだ?」 
 
『こっちにいないんだよね。そのうえさ、どこかの噂ではアンタに会いに行くとか』 
 
「え?それじゃあ、もしかしたら学園都市にいるかもしれないってことか?」 
 
『そんなところ。でもまだ確証は無いから何とも言えない。 
その様子じゃアンタのところにはまだ来てないみたいだし』 
 
はて、と上条は考える。 
今この学園都市は空からの侵入者か何かで警戒態勢。 
そしてイギリスでは魔術師が1人行方不明で日本に向かったという噂。 
 
「これはきっと…不幸だ…」 
 
侵入者が名前も顔も知らない輩ならまだしも、知り合いとなればいろいろと面倒だ。 
最悪自分が侵入を手伝ったと疑われかねない。 
 
『はぁ?何?どうかしたの?』 
 
「いいや…とにかく、学園都市のほうで見つけたらどうしたらいいんだ?」 
 
彼女の性格上、言ってすぐに聞かないのは上条も知っている。 
 
『んーそうだなーちょっと、ベイロープ』 
 
しばらく遠くでの会話が行われたようだが、上条には聞き取れなかった。 
 
『もしレッサーに会ったら、ベイロープの手が暴れだす前に帰ってこい。とでも言ってもらおうかな』 
 
「はぁ?そんなことでアイツが帰るのか?」 
 
『文句はいいから。多分血相変えて戻ると思うよ』 
 
面倒くさそうに、それでも余裕そうにフロリスは答える。 
 
「そうか?じゃぁそうさせてもらうよ」 
 
『さっきも言ったけど忙しいから、そろそろ切るよ』 
 
上条があぁ、と返事をするかしないかで電話は切れてしまった。 
切れる直前、何やらカッチンカッチンと聞き覚えのある音がしたがもしかして向こうでも噛み付いて回っているのだろうか。 
 
(とにかくインデックスには夜に電話するとして…) 
 
ぐるりと繁華街を見回す。 
 
疎らと感じたさっきよりも人通りは無く、わずかな生徒は早足で駅に向かっていたりして、店では店頭の商品を戻し始めている所もある。 
今日一日中歩きまわったのに、今からいるかもわからないレッサーを探すと考えるとさすがに気が滅入る。 
かと言って確証の無い情報を無線機で流すわけにもいかないし、そんな事をすればレッサーが学園都市にいようといまいと面倒なことになる。 
 
「あー…不幸── 
 
上条が力無く呟こうとした時、あるものを見つけた。 
 
長い黒髪を先だけ三つ編みにくくり、ラクロスのユニホームのような服装。 
そして、両手には大量の買い物袋。 
 
「──!」 
 
相手も上条に気付いたようで、視線が合う。 
 
 
「「あー!!」」 
 
 
二人の声が閑散とした商店街に響く。 
 
「やっと見つけまし、むぐぐぐぐ」 
 
トーンの高い声が周りの視線を受けるので、上条は咄嗟に相手の口を塞いだ。 
 
「叫ばなくていいから!とにかく落ち着け!」 
 
それは自分にも言い聞かせるように小さく叫ぶ。 
 
「落ち着いていられませんっ! 
今日一日身を削り、骨を折り、この広い街を探し続けたんですから!」 
 
「その割にはやけにショッピングを楽しんでいるようで…」 
 
「あ、あははは…噂には聞いてましたが、珍しい物が多いですね」 
 
もじもじと、買い物袋を後ろに隠すレッサー。 
 
上条は溜め息を一つ。 
 
「で、学園都市の防衛システム破ってまでショッピングですか?」 
 
「ち、違います!これまでの事を全て引っ括めてアナタにお礼をと思い!」 
 
「お礼されるような事したっけ?」 
 
キョトンとする上条を見て、レッサーは買い物袋をドサドサと落とす。 
 
「なななな…アナタって人は…」 
 
そんなレッサーを横目に、上条はこの一件をどうするか考える。 
 
(これは…報告するべきなのか…) 
 
報告するとなると上条自身も取り調べられるだろうし、レッサーを学園都市に留めとかなければならなくなる。 
 
(イギリス側はレッサーを早く帰らせろって言ってたしなー) 
 
そうするとなると、ここで悩んでレッサーを留めておく訳にもいかない。 
事情を説明してさっさと帰ってもらうのが得策だ。 
 
「あー…レッサー?」 
 
未だに絶望モードのレッサーに声を掛ける。 
 
「なんですか… 
私は…私は今苦労が水の泡になった事で立ち直れないです」 
 
「それに追い打ちをかけるようで悪いんだけど…さっきフロリスから電話があって…」 
 
上条が言い終わるより先に、フロリスとの単語が聞こえたあたりからレッサーの顔から血の気が引いた。 
 
「な…な、何て言ってましたか?」 
 
「早くイギリスに帰ってこいとか」 
 
「そっ!それ以外に何か!」 
 
「えーっと…ベイロープの手が暴れ出す前にどうのこうのって」 
 
はひぃ!と意味不明な言葉を発してその場で頭を抱えるレッサー。 
 
「うぅ…いつかバレるものとは思っていましたが…こうも早く…」 
 
「おーい…レッサーさん?」 
 
「こんな事をしている場合じゃありません!早急に帰らねば!」 
 
それまで頭を抱えていたレッサーだが、まさに血相を変えながら何やら道具を取り出す。 
レッサーが何かを小さく呟くと、その道具は蒼白く光りスケボーのように平らになった。 
霊装のようだが、どうも科学的な代物に見える。 
 
「それじゃ、私はもう帰りますのでっ!」 
 
「お、おぉ…お気をつけて」 
 
我侭であろうレッサーがここまですんなり帰るとなると、イギリスには相当恐ろしい何かがあるのだろうか。 
そんな事を上条が考えている間にも、レッサーが取り出した霊装からモーター駆動のような何やら科学的な音が聞こえてきた。 
 
「次お会いした時は、きっちりとお礼しますのでえぇぇぇ!」 
 
レッサーの言葉だけを残して霊装は物凄い速さで飛び立っていった。 
上条はまた溜め息を一つ。 
 
「だから何の礼だよ…」 
 
そう呟きながらレッサーの消えた方向を見上げた。 
藍色の空に真っ赤な光りが名残惜しそうに残っている。 
今はビルの谷間にいるので見えないが、高い建物からなら沈みかけの夕焼けが見えそうだ。 
 
『本部から各隊員へ、只今上空レーダーに未確認飛行物体あり。 
学園都市内部から外部へ出た模様。昼間と同じ物体の可能性が高いため警戒態勢は解除。以上』 
 
上条はイヤホンを耳から外して首をぐるぐると回す。 
 
「あー何か無駄に疲れた気がする…」 
 
欠伸を堪えながら伸びをしていると外しているイヤホンから怒鳴り声が漏れてきた。 
 
『上条!どこで油売ってるじゃん!何かあればすぐに連絡しろって言っただろ!』 
 
「いえっ!何も異常ないです!すぐ行きます!」 
 
イヤホンを外していなければ…と冷や汗を掻きながら、上条は悲鳴をあげている足で走りだした。 
 
 
第七学区の病院 
 
 
「コイツが着替えで…日用品はこっちだ」 
 
病室の椅子に座りながら、一方通行は提げた買い物袋を指さして入っている物ひとつひとつを説明する。 
 
「ンでこっちが…」 
 
「あーもうわかったわかった。 
荷物なんて後で確認するからさぁ」 
 
少々乱暴に買い物袋を奪う手。 
その手は普通の人より白く、1万人近くいる彼女の姉妹と比べても白い。 
白く無機質なこの部屋では溶けこんで消えてしまいそうだ。 
 
「お前この間もそう言って後から何が無いだの言ったよなァ?その度にここまで来るのは俺なンだよ」 
 
「はいはい。上位個体の検査でよく来るんだし、物はついでじゃん」 
 
 
番外個体 
 
ロシアで死闘を交えた仲だが、その時の威勢は殆ど無い。 
目の隈は薄くなり、睨みつけるような眼差しは眠そうな、とろんとした目付きに変わっていた。 
 
「じゃァこれで」 
 
やれやれと椅子から立ち上がり、ドアへと足を向ける一方通行。 
 
「はぁ?もう帰るのー? 
愛しの番外個体に会いたくて会いたくてウズウズしてたんじゃ無かったのかにゃー?」 
 
「勝手に言ってろ」 
 
いつものやり取りなので気にせずに足を進めるが、今日はいつもと違った。 
 
何かに引っ掛かっているシャツの裾。 
 
違和感を覚えた一方通行が振り返ると、番外個体の綺麗な手がシャツをキュッと握り締めていた。 
番外個体の表情は髪で隠れて見えず、黙り込んだまま。 
 
「ったく…ガキじゃねェんだから」 
 
そう言って番外個体の手を振り解こうと足を進める一方通行。 
しかし、番外個体は手をギュッと握り強くシャツを引っ張る。 
 
「…おい」 
 
さすがの一方通行も少し不安気味に声をかける。 
それでも番外個体は黙り込んだまま。 
 
「……番外個体…」 
 
一方通行は諦めたように番外個体へ歩み寄る。 
 
が、ここで違和感に気付いた。 
 
番外個体の肩が小刻みに震えている。 
同時に広がる「やってしまった」という後悔の渦。 
 
「っくっくっく……」 
 
「番外個体、てめェ…」 
 
「アッハッハー!引っかかりやがったー!」 
 
番外個体は一方通行のシャツから手を離し、その手を自分のお腹へ持って行く。 
 
「ギャハハ!番外個体…だって! 
っくくく、ホント可笑しいの何のって!」 
 
お腹痛いーとお腹を抱えて笑う番外個体。 
どうしようもない怒りを堪え、ギリギリと歯ぎしりをしながら一方通行は回れ右をした。 
 
「あははっ──っと帰さないよー!ミサカの演技が勝ったんだから、延長戦だよーん」 
 
番外個体はベッドから乗り出して、今度は一方通行の腰に後ろから腕を回す。 
それでも無言のまま一方通行は足を進める。 
 
「わわっ!ちょっと、一方通行!」 
 
一方通行に掴まっていた番外個体は見事にベッドから転げ落ちる。 
 
 
それでも回した腕は離さない。 
 
 
「あれれー?もしかしてミサカの演技に騙された事がそんなに悔しかったかにゃーん?」 
 
まさにその通りだが、素直に認めるわけにもいかず適当に合理化する。 
 
「うっせェな…俺はあのクソガキ迎えに行かなきゃなんねェんだよ。 
それよりこのまま病院抜け出す気かァ?」 
 
「あ、それいいかも。 
上位個体なんて放ってこのまま夜のホテルに行っちゃう?」 
 
アホらし、と一蹴する一方通行。 
 
「とにかく俺はクソガキをだなァ──」 
 
「ミサカはココだよー!ってミサカはミサカは自分の存在感をアピール!」 
 
病室の扉を開きながら打ち止めが現れた。 
と、番外個体と一方通行を見て固まる打ち止め。 
 
「ご…ゴメンね。まさか二人がそんな関係だったなんて知らなくて。ってミサカはミサカは二人のイカガワシイ関係を見ないように両手で目を覆ってみる」 
 
「アホかおま─ 
 
「そうだよーん。ミサカと一方通行の関係はお子ちゃまな上位個体にはちょっと刺激が強すぎたかにゃーん?」 
 
一方通行の口を手で塞ぎ、今度は首に手を回す番外個体。 
 
「そそ…そんな事ないもん! 
ミサカだって大人な付き合いしてるもん!ってミサカはミサカは自分も大人な女性ってことをアピール!」 
 
打ち止めは真っ赤になりながら必死に叫ぶ。 
 
「はぁ!?アンタもしかして本気でロリコンだったわけ?」 
 
向けられる軽蔑の視線。 
 
「だァ!うぜェっての!」 
 
首に絡まっている番外個体の腕を強引に振り解くと「キャァ」と似合わない悲鳴が聞こえたが無視。 
とにかく病室から出たい一方通行だが、口実としていた打ち止めは此処へ来てしまった。 
それでも足をドアへ進める一方通行。 
 
「あれ?もう帰るの?ミサカはまだいたいよ。ってミサカはミサカは─ 
 
「飲み物買ってくるンだよ」 
 
短く言い捨てて一方通行はピシャリとドアを閉めた。 
 
 
「……可愛い人」 
 
 
さっきの下品な笑い声とは打って変わって、静かな声で番外個体は呟いた。 
 
「本気で食べにかかっちゃおうかにゃーん?」 
 
意地の悪い目付きで打ち止めを見る番外個体。 
 
「ななな…それは絶対ダメかも!ってミサカはミサカは必死に自分の存在をアピール!」 
 
「なーんて…冗談かもね」 
 
「え?冗談なの?違うの?ってミサカはミサカは曖昧な答えに戸惑ってみる!」 
 
「さぁね」 
 
隣で不安そうな表情を浮かべる打ち止めのおでこを軽く突付く。 
 
「アンタも可愛いヤツ…」 
 
「え?なんてなんて?」 
 
何でも無いよ、と言って窓の外を見つめる。 
その横顔は普段の番外個体からは想像できない表情で、打ち止めでさえ見惚れて、悔しくも大人の壁を感じてしまった。 
 
「でもでも、やっぱり負けられないかも。ってミサカはミサカは宣戦布告!」 
 
「ふっふーん。じゃぁミサカもお子ちゃまの遊びに付き合っちゃおうかな」 
 

 
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