球磨川『学園都市?』 > 12


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 「それなら、ビーカーをぶっ壊す!クソガキィ!!伏せてろォ」

 
ビーカー自体を破壊しようと、思い切り自らの拳で殴りつける一方通行だったが、
 
ビーカーから返ってくるのは衝撃だけで、壊すことは適わなかった。
 
「ちィ!何ですかァこの物質はァ!?」
 
一方通行が破壊できない物質などは、この世には存在しない性質を持つものだけである。
 
すなわち、この物質は地球上の成分で形成されていないということになる。
 
実はこのビーカーは学園都市レベル5の第二位の能力者である、
 
垣根提督の“未元物質”によって作り出された物で、文字通り地球上に存在しない物質なのだ。
 
未元物質によって作り出されたこのビーカーは性質だけでなく強度面でも鉄壁を誇っているため、能力を利用した攻撃でも破壊はできない。
 
しかし、だからといってこの部屋の爆発に耐え切れるかの保障はないため、一刻も早く何とかしなければいけなかった。
 
実際には物質の解析をすればベクトル操作を行えるのだが、今の一方通行と打ち止めにはそんな猶予はなく、
 
それに感づいた一方通行はビーカーの破壊を諦め、再び警告マークを表示しているモニタの前へ移動する。
 
「ちょっとまってろクソガキ……」
 
ビーカーが破壊できないのであれば、爆弾を無力化すればいい。
 
この部屋のみが爆破対象ならば、恐らく爆弾は室内のどこかに隠されているはずだと推測し、モニタによって爆弾の位置を検索する。
 
が、どれだけ検索しても爆弾の位置を示す表示はない。
 
そればかりか、代わりに現れた爆弾の種類が事態をより悪化させることになった。
 
モニタに映し出された爆弾はN-40小型爆弾というもので、学園都市の科学力を集めたその爆弾は
 
ライター程の大きさでありながら、小規模のエリアのみ原子爆弾に匹敵するほどの破壊力をもたらすというものだった。
 
――爆破まで残り百秒……
 
「くそったれがァ!!」
 
一方通行は思い切り操作盤に両手叩き付け、急いで部屋中の探索を開始する。
 
床をめくり、壁を剥ぎ、天井を破壊して、機材を全てひっくり返す。
 
だが、一向に爆弾は姿を現さない。
 
――残り六十秒……
 
カウントダウンだけが、無常に刻まれていく。
 
――残り五十秒……
 
「ねぇ……」
 
打ち止めが、口を開いた。
 
――残り四十秒……
 
「このビーカーなら大丈夫だよってミサカはミサカは提案してみる……」
 
「アァン?なに言ってンだクソガキィ」
 
意味が理解できないといった様子の一方通行だったが、打ち止めの言葉の真意はしっかりと一方通行へと届いていた。
 
“自分を置いて避難しろ”という意味だろう。
 
事実、打ち止めの浮かべている笑顔はどう見ても無理やり作っているものだった。
 
――残り三十秒……
 
しかし、一方通行は爆弾を探すのを止めない。
 
「ねぇ!聞いてるのってミサカはミサカは憤慨してみたり!」
 
そんな一方通行の姿に、打ち止めは眼に涙を溜めながら怒鳴りつける。
 
だが、一方通行はその言葉を無視して探索をし続ける。
 
――残り二十秒……
 
「おねがい、だからぁ……って……ミサカは……ミサカはぁ…………」
 
とうとう泣き出してしまう打ち止め。
 
そしてようやく一方通行が口を開いた。
 
「うるせェぞ!クソガキ!!俺はテメェを守るって決めたんだ!だからテメェが俺の決めた事に口出しすンじゃねェ」
 
「いつもみてェに眼ェ光らせながら俺様の活躍を期待して待ってやがれ!!俺は第一位の一方通行だァ!!」
 
打ち止めは、そんな一方通行の叫びを聞き「うん!」と涙で塗れたまま、笑顔を見せた。
 
――残り十秒……
 
ガチリ、と微かに爆弾が起動体制に入る音がした。
 
それは、横たわる天井の体から発せられた音だということを、一方通行は聞き逃さなかった。
 
――残り五秒
 
全力で、天井の死体まで駆け寄る。
 
――残り四秒
 
一方通行はその体を担ぐと、渾身の力と能力を使って壁際まで吹き飛ばす。
 
――残り三秒
 
すぐさま打ち止めのビーカーの前まで移動する。
 
――残り二秒
 
「最後の最後まで失敗尽くしだなァ……」
 
そういって両手を天井の死体へと伸ばす。
 
――残り一秒
 
打ち止めが何かを叫んでいるが、一方通行にはもう何も聞こえない。
 
爆風からこの少女を守ることだけを考えていた。
 
――残り〇秒
 
世界が、白く染まる。
 
「…………」
 
恐る恐る打ち止めは眼を開く。
 
爆発音は聞こえた、何かが崩れ落ちる音も聞こえた。
 
しかし、何の衝撃も伝わって来なかった。
 
「よォクソガキ……無事かァ?」
 
間の前には、自分を守ってくれた白い白髪の少年が居るだけで、他には何もない。
 
モニタも、操作版も、事件機具も、天井も、そして天井の死体さえも、何もなかった。
 
だが、打ち止めに必要な人物だけが生きているだけで十分だった。
 
「無事だよ!ってミサカはミサカは敬礼してみたり!!」
 
ビシッという効果音が似合うほどの敬礼を向けた打ち止めの姿に安心した一方通行は、ビーカーを破壊するための解析を開始する。
 
「ン……やっぱヤメだァ」
 
そんなことを言って、急に解析を中断する一方通行。
 
打ち止めはそんな彼の挙動に苛立ちを覚え、駄々をこねる。
 
「えー早く出してよーぶーぶーってミサカはミサカは頬を膨らましてみる!!」
 
「あー!うっせェ!!よく聞けェ……俺ァまだやる事が残ってンだ!だから一人で帰すよりも、中入ってた方が安全なンだよ!!」
 
「やる、こと……?」
 
もう少し喚かれると覚悟していた一方通行だったが、「やる事がのこっている」という言葉に打ち止めは大人しくなった。
 
いや、怯えていると表現したほうが正しいのかもしれない。
 
「それってあの男の人のこと……ってミサカはミサカは尋ねてみる」
 
まさに“あの男”、という打ち止めが指している人物を叩きのめす事が、一方通行の“やる事”だった。
 
球磨川禊を打倒すること。
 
「そうだァ……あのふざけた三下以下の糞野郎にはちィーっとお灸を据えなきゃなンねェからなァ」
 
どうやって始末してやろう、と思案している一方通行に投げかけられた言葉は同調するものではなく、否定のそれだった。
 
「やめてってミサカはミサカはあの男の人に関わって欲しくないって心配してみる」
 
「ハァ?ここまでやられたんだぞ。お礼参りは必要だァ……何より俺の怒りが収まらねェ」
 
今度こそ本当に理解できないといった表情を浮かべる一方通行。
 
なぜこの少女はこんなに心配しているのか?今しがた爆弾から守ってやったのを忘れたのか?
 
そんな考えが一方通行の頭の中を支配する。
 
「あの男の人は、何ていうか……関わっただけで駄目になりそうだから……」
 
球磨川の姿を思い出し、プルプルと小刻みに震える打ち止め。
 
「あなたが居なくなるのは嫌だからってミサカはミサカはあなたの身を案じてみる」
 
これほどまでに球磨川との接触を拒もうとする打ち止めの姿に、一方通行は少しだけ躊躇するが、
 
それを上回るほどの復讐の炎が彼の足を出口へと向かわせた。
 
「ッハ!何回言わせンだ。俺はレベル5第一位の一方通行様だぞォ。心配するのは黄泉川ン家に戻った時の祝勝会の手配だけにしとけェ」
 
そう言って、一方通行は打ち止めの前から去っていった。
 
「……うん」
 
力なく頷いた打ち止めだったが、この数分後に、一方通行は球磨川禊に蹂躙される事になる。
 
 
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