佐天「…アイテム?」32


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あらすじ

一方通行は絹旗は滝壺か体晶を受け取って一時的に能力を引き上げて一方通行と対峙する。
ステファニー達は依然学園都市と日本国の出入国ゲートで戦っている。

二方面で行われている戦いはそれぞれ、どうなるのだろうか?





――第三学区出入国ゲート前

フレンダとステファニーはゲートに到達する前にトラックの荷台から降りていた。
彼女達は砂皿が数多を引きつけている間に他の部隊を必要最低限排除することだった。


一般にも利用される出入国ゲートなので多くの民間人が居た。


彼らは避難するか、砂皿と数多の戦いを遠巻きに見たり、車の中からクラクションをプープーと鳴らしている。
相当数の人がいるこの状況でフレンダとステファニーの二人は避難している人達の群に紛れ込んでゲート付近に近づきつつあった。


アタッシュウェポンケースの取っ手の部分にあるレバーには手が掛かっており、いつでも発砲出来る状態だ。
猟犬部隊やMARの隊員は砂皿と数多の戦いに注目しており、注意力に欠けていた。



「(よし…、フレンダ行くよ?)」


「(了解!)」


フレンダとステファニーは一気に飛び出すと出入国ゲートに構えている警備の隊員達に向かって発砲する。
アタッシュウェポンケースから発射された弾丸はゲートの踏切の当たりに派手に火花を散らす。
すると敵もフレンダ達の存在に気づいたようで、反撃をしてきた。


「まさか、実の妹と一緒に戦うことになるとはねー!」


「結局!私も想像してなかったって訳よ!」


二人はアタッシュウェポンケースの鍵を開錠するとそのままクルツ短機関銃を取り出す。
そしてそのまま派手に弾丸を四方にバラまいた。


消音器によって音はかき消されているものの、短機関銃を発砲しているのはやはり人目について、周囲で見ていた人達の間からは悲鳴が聞こえてきた。
その中には透明の容器に収納されている超強力なVXガスが入っているケースがあるのだが、これは使わない。一般人が多すぎる。


フレンダとステファニーが放った弾丸は車や出入国ゲートの窓ガラスを手当たり次第にぶち破っていった。


ダダダダダ……!


マガジンを全て撃ち尽くすと即座にマガジンを取り返る。
そうして敵に反撃の隙を与えない様にしつつ、徐々に二人は出入国ゲートに近づきつつあった。


ゲートは高速道路の入り口にある様なスペースよりも少し大きくなっており、猟犬部隊の隊員二人がそこを防護しているが、彼らは伏せて反撃の機会をうかがっている様だった。
ステファニーはそこに背負っていたHMK416を構えると容赦なくグレネードをぶち込んだ。

下部レールから射出されたそれは間の抜けた音を周囲に響かせる。
しかし、その音とは対照的に、直後、派手な炸裂音が聞こえた。出入国ゲートの一部が吹っ飛んだのだ。


「おーおー!あっちでも派手にやってるじゃねぇの!!」


数多が暴れているステファニーとフレンダを遠巻きに見つつ、どこか他人事のように喋る。


「てめぇが囮だったって事か?砂皿ちゃん」


「囮ではないさ、陽動だよ、陽動」


「結局、どっちも同じ事だろッ?」


二人は再び戦いの世界に没入していく。


ステファニーはフレンダと共に制圧して出入国ゲートに入る。
目の前はもう日本国だった。


(この先を越えれば、…が、学園都市から出れる…!)


ステファニーは銃を構えつつ待機している。
隣にいるフレンダも周囲の様子をキョロキョロと見回している。


あらかたの敵は排除したつもりだった。
あとは後方で木原数多と戦っている砂皿を迎えて脱出して、おしまい。
しかし、まだ残っている敵は数多と戦っている砂皿とフレンダ達を分断しようと目論んでいるようで、フレンダ達に猛攻撃を加えてきた。


「お姉ちゃん!相手は砂皿さんと私達の間を分断しようとしてるよッ!」


「分かってる!」


そうはさせない、一緒にカナダに行くと砂皿さんは言ったんだ!
ステファニーはHMK416を背中に再び持って行き、クルツのトリガーをぐっと絞る。
トリガーを絞られたクルツは再び高速で弾丸を吐き出していく。


「ぐ、がッ、ハッ!」


猟犬部隊の隊員達は高速で射出される弾丸の前に倒れつつも次第に車の影から身を伏せて抵抗する様になっていく。


「フレンダ!ここ、あんまり持ちそうにないかも!」


「まだ持ち堪えなきゃ!砂皿さんが来てないもん!!」


フレンダは狙撃銃で狙撃を敢行しているものの、敵が段々と接近してきているので狙撃銃を捨てて拳銃で敵を退けようとする。



「ダメだ、敵が多すぎる!」


ステファニーの悲鳴の様な叫びが聞こえる。
撃ち続けなきゃ!!フレンダは弱気になってる姉に向かって檄を飛ばしつつ、拳銃を撃つが既に弾丸はなくなりつつあった。


猟犬部隊等の学園都市の治安維持部隊に囲まれつつある。
既にフレンダとステファニーは満身創痍の状態だった。


「クッソ…!あれを使うしかないのか?」


「あれってまさか、あの毒ガス!?お姉ちゃん!!」


ステファニーはフレンダの問いかけには答えずにアタッシュウェポンケースに収納されている透明の球状の容器を取り出す。
そしてそれをグレネードの弾丸に装填する。


「BC兵器は…ダメだよ…!まだ民間人が沢山いる…!一般人にも、被害が出ちゃうよ!!」


「で、でも…!」


ステファニーは自分達と砂皿が分断されつつある状況を打開しようと判断し、BC兵器(バイオ化学兵器)に手を出そうとしている。
砂皿を救う点ではその使用は正しい。けれど、一般人が多数いるこの状況でそれを使うとなれば話しが違う。

フレンダの僅かばかりの道徳心がその使用をためらわせていた。


「信じようよ、お姉ちゃん、砂皿さんは必ず勝つ!それまで普通の武器で戦おう!」


彼女の発言を聞いてステファニーは装填していたグレネードランチャーのBC兵器の弾丸を手にとって再びケースに収納する。
そして間髪入れずにクルツを短発モードに切り替えて発砲を始める。



「私達と砂皿さんが分断されないためには…ここを持ち堪えて、なおかつ砂皿さんがここに来るまでまたなきゃいけない!フレンダ、我慢出来る?」


「出来るよ!!」


暫くして銃声が聞こえなくなる。
恐らく、猟犬部隊やその他の増援部隊を斃したのだろう。


フレンダは出入国ゲートからにょきっと顔を出す。
すると200メートルくらい離れたところで砂皿と数多が依然、激闘を繰り広げていた。


フレンダはこの距離なら、と思いアキュレシー・インターナショナルを取り出す。
ヘンソルト十倍のスコープに映し出された数多の姿。しかし、激しく入り乱れての戦いのため、狙撃は出来なかった。


「ダメだ。狙撃が出来ない。放置された車両の中に敵の残党が居る可能性もあるから、援護にも行けないよ…!」


フレンダがステファニーにそう告げて身をかがめようとした時だった。


「まだ終わってないですよ?」


「…!」


二人の前に全く同じ顔のクローンが現れる。
全く同じ容姿の彼女を見てステファニーはポカンとするが、フレンダは見覚えがある顔だった。


「まさか…超…電磁砲?」


「いえ、違います。容姿は似ていますが正確にはお姉様のクローンですね、とミサカは脱走者のフレンダ=ゴージャスパレスとそれを幇助した姉に向かって事実を話します」


「脱走者ねぇ……クローンのあなたにもいつか思う時がくるって訳よ!この腐った街から脱出したいってね!」


妹達にそう告げるとフレンダは痛む足を押さえつつ、腰に差しているククリ刀を抜刀する。
ステファニーもアーミーナイフを出して身構え、もう一人の妹達に備える。


「白兵戦ですか、とミサカはつぶやきます」


「結局はあなた達もそれを望んでるんでしょ?こんな勢いよく飛び出てきちゃってさ」


フレンダはそう言うと一気にゲートの中から飛び出て戦う。
車のボンネットの上を器用にステップを踏んで歩いているモンスーンの妹達の一人と対照的に足を麦野に撃ち抜かれているフレンダでは明らかに妹達に分があった。


「おや?足を怪我をしてるのですか?」


「まぁね。ちょいと仲間を裏切った罰よ、罰!でも、あんたらにはこれで十分って訳☆」


ダァン!ダァン!と音を立ててステップを踏んでいく二人。
車のボンネットは彼女達の足跡を刻んでいく。


(クッ……あ!だいぶ痛むって訳よ……!)


「痛そうですね?苦痛に表情が歪んでますよ?とミサカは裏切り者の白豚に哀れな視線を送ります」


「かー。超電磁砲とそっくりなその容姿。ウザイって訳よ。大量生産のクローンにはそんな事、言われたくないわねぇ」


フレンダはそう言うと痛みをこらえて一気に飛び込む。
ククリ刀の歪な形状が妹達の首筋を捉えようとしている。しかし、それも敵わなかった。
というのも妹達の周りに一瞬殺気が感じられたから。



「あっぶないモン持ってるじゃない!」


「チッ、気づかれましたか、とミサカは舌打ちをして悪態をつきます」


常盤台の制服とは全く似合わない黒い手袋。
そこから伸びている細い糸。


「へぇ?ピアノ線か何か?」


「学園都市製の糸です。本来の斬鋼線、と言うものは硬質な物質だけしか切れません。しかし、学園都市の開発したハードサイエンスによって柔らかい物質も切れるように改良されました」


モンスーンに所属している妹達の一人は恐ろしいことを平然と言うと試し切りと言わんばかりに目の前の車にひゅっと糸を当てた。
すると車が真っ二つにした様に切断されてしまった。


「へぇ…おっそろしい武器持ってるわね?」


けど、負けるわけにはいかない。あと少しで日本の土を踏めるのだ、そしてその先には故郷のカナダが待っている!


「はぁ、結局、私は御坂関係とは相容れ居ない関係なのかな?」


「?」


妹達は首をかしげる。
フレンダは「あなたはしらないでしょーけど」と一言言い放つと一気に間合いに侵入する!
ブォン!とククリ刀をふるう。間一髪でそれを避けると妹達は両手に嵌っている手袋の先端に構築されている斬鋼線をゆらぁとフレンダに向ける。

風に靡かれるような勢いでフレンダに向かってくる緩やかな斬撃を彼女は上半身と下半身をひねって回避する。


「へぇ…裏切り者のくせに、結構やりますね、とミサカはフレンダの身体能力に感嘆します」



妹達がにやっと笑った時だった。
フレンダ達が戦っている後方、つまり、砂皿と数多が戦っている方でどよめきが起こった。
それは見ている野次馬達からもたらされたものだった。


そのどよめきが示す意味。恐らく、彼らの戦いに決着がついたのだろう。
フレンダとステファニー、はては二人の妹達もお互いに武器を持ったまま、立ち尽くす。


彼女達は戦いの帰趨が気になるようで、互いの得物を持ったまま、硝煙から出て来る影を凝視した。


「砂皿さぁぁぁぁん!」


ステファニーはいても立ってもいられなくなり、その名前を叫ぶ。頼む!応えて!砂皿さんっ!
祈るような気持ちで彼女は腹の底にぐっと力を込めてあらん限りの大声で叫ぶ。


「う、うるさ…い、そんなに大きな声を出さなくてもきこ、えるわ」


硝煙の中からずいっと出てきたのは砂皿だった。その時、びゅうっと強風がふいて煙りが取り払われる。すると、数多が地にはいつくばる形で倒れていた。


「や、殺ったんですか?」


「いや、昏倒しているだけだ。殺してはいない」


そう言う砂皿は片足を引いている。かなりの強敵だったのだろう。


(敵ながら、いや、一博士としては無類の力を誇るだろう…、よくやったぞ、木原数多)


砂皿は歩きながら素直に数多を内心で称賛した。立ち往生している車列を縫うようにして、とぼとぼとした足取りでステファニー達のいるゲートに向かう。


ステファニーは目の前でポカンとしている妹達そっちのけで砂皿の方に向かって走っていく。



「砂皿さん!大丈夫ですか!?」


早く手当てをしなければヤバイ。ステファニーはそう思い、いてもたってもいられなくなり砂皿に駆け寄った。
砂皿がここまで打ちのめされているところをステファニーは今まで見た事がなかった。彼女にとっては衝撃的な光景だった。


「だ、大丈夫ですか?」


「ば、馬鹿やろ、俺には構うな…!早く、ゲートを越えろ……まだ敵がいるんだぞ?」


彼は早くゲートを越えるように促す。
しかし、ステファニーは砂皿の注意にも顧みず、砂皿の肩に自分の手をかける。


「ダメです!砂皿さんも、一緒に帰るって約束したじゃないですか!!」


そう、三人で一緒に帰ると決めたんだ。
しかし、砂皿はその言葉を否定する。


「お、俺の帰る場所は……や、やっぱり戦場(ここ)なんだよ、ステファニー」


彼にとっての平穏とはは戦場なのかもしれない。
砂皿はそう言うとふふと自嘲気味に嗤った。


「な、なに言ってるんですか?砂皿さん!ホラ、ゲートまで後少しですっ!一緒に、行きましょうよ!」


「あぁ、あと少しだ、な…だから早く、いけ!」


砂皿は数多との戦いでかなりの深手を負っていた。しかし、猟犬部隊やモンスーン、MARの増援部隊は彼にをとどめをさせなかった。
フレンダが肩で息をしながらも必死にクルツを構えて、砂皿達を守っているからともいえるが、何より砂皿という数多を倒した化け物に対して畏怖の念が彼らの心中に去来していた事が大きい。


ステファニーは砂皿を肩で支えたまま、ゆっくり、しかし着実にゲートに近づきつつあった。ゲートまであと少しだ!
彼女はゲートの中にいたフレンダに先に出る様に大声で指示する。



「フレンダぁ!!そのままゲートを越えて!!」


「うん!」


フレンダはクルツを構え、ゲートから出る。
すぐ目の前にいるクローンにバイバイ、と小さい声で話し掛ける。


「チッ!じゃあな、糞ビッチとミサカは白豚の裏切り脱走者を見送ります」


妹達の罵声にフレンダはふっとは鼻で笑う。まるで自由を噛みしめるかのように、そして、妹達を見下したような表情で告げた。


「ほざいてろっての。私は今から自由って訳よ☆」


「自由?」



フレンダは「そ☆」とクローンにウインクをするとゲートを跨いで日本にはいる。
その後をステファニーと砂皿が着いてくる。彼女達も日本に入った。


その光景をみたフレンダ。姉の肩に手をかけている砂皿。
フレンダから見た砂皿とステファニー。夕日の残滓の明かりを背景に歩いているその二人の姿は数年来の信頼関係をそれだけで証明していた。


フレンダはその光景を見て頼もしいと思った。同時に、日本に入った事で、フレンダは自分の頬の筋肉がゆるんでいくのを知覚する。
緊張状態から脱出したのだ、という安心感と油断が彼女をそうさせたのだ。しかし、ステファニーの声でフレンダはびくっと肩をふるわせた。


「フレンダっ!まだ気を抜いちゃだめ!取り敢えず、どんなんでもいーから車の確保っ!」


「う、うん!」



日本側ゲートもかなり混乱しており、遠くから、警察のサイレン音が聞こえている。間もなくこの現場に来るパトカーの音だろう。

一方、境界線にいたモンスーンの二人は学園都市の技術の粋である自分達を見せまいといち早く退避する。
残った猟犬部隊は既に自分達の任務が失敗した事に怯え、その場で自決し始めた。


パァン!パァン!


渇いた銃声がゲートから聞こえてくる。
それを見たステファニーとフレンダは唖然とした。


「………任務を失敗してその後に彼らを待っているのは死ぬよりも辛い事なの?」


「結局、あの部隊の人達も哀れって訳よ…」


二人が話しながら近くにある車を物色する。
キーが入ったままの車がゲート付近にあったのが幸いだった。


「す、砂皿さん!乗ってください!」


フレンダが砂皿に話し掛ける。かなりの重傷だ。手当てをしなければ。
そう。日本に入ったからと言って直ぐに気を抜いて良い訳ではないのだ。砂皿は依然重傷。
ステファニーとフレンダにしても疲労困憊状態だ。予断を許されないのだ。




と、その時、一発の乾いた発砲音が周囲に響き渡った。




パァン!


その時、間延びした発砲音。
それは猟犬部隊の隊員達の自決と違って、明らかにこちらに向けて放たれたものだった。




「クッソ!!!」


自分がつい先ほど油断してしまったことに怒りがこみ上げてくる。
フレンダは拳銃を撃った数多がにやと笑いながらその場で這いつくばっていくのを目視した。


(結局、とどめを刺すべきなの?)


フレンダはクルツを構える。クルツを向けられた数多はフレンダ達の方を見るとにやっと笑い、そのまま仰臥する。
恐らく、最後の力を振り絞って砂皿のことを撃ったのだろう。
彼はフレンダがとどめを刺すまでもなく、程なくして、絶命した。


木原数多が死んだ。フレンダはそう思うとクルツを再び背負って車に砂皿を乗っけようとする。
ここからどこかにいって砂皿の手当をするのが先決だった。


「お姉ちゃん!砂皿さんを車に乗せて!早くいかなきゃ、警察が来る…!」


「うん…!わ、分かってる!!」


浮ついた声でステファニーはフレンダに向かって答えると砂皿を後部座席に乗せる。
ステファニーは既に双眸に涙を一杯にため込んで、今にも決壊しそうな勢いだった。


「お姉ちゃん、泣かないで!まだ諦めるな!」


「う、うん!じゃ、フレンダ、行くよ!!砂皿さんの事しっかり見ててね!」


ステファニーはそう言うとフレンダの「うん!」という返事が来るより早く、運転席に放置してあった、キーを差し込んでぐいっと回す。
一拍の間を置いてエンジンが小気味のいい音を立てるのを確認する。




彼女達を乗せた車は学園都市と日本国の出入国ゲートから脱出していった。
すぐ直後に警備員と日本国の警察が到着したが、その時は既にステファニー達はそこにはいなかった。



――第三学区 立体駐車場


「ったく。手こずらせやがってよォ」
(結局俺は攻撃出来なかった。ま、勝手にコイツが潰れたから良いけど、腑に落ちねェ…)


「ダメですね、やっぱり、超勝てませンでした」


「よく頑張ったと思うぜェ…?」
(体晶を使ったコイツは厄介だったな、さっさと犯して殺しちとするか)


絹旗は一方通行の前にひれ伏していた。
一方通行が絹旗に何かしたというわけではない。彼女が体晶の衝撃に耐えきれず事切れたのだった。


「あ、あなたは超強いですね…」


「あンがとよォ。でもな、俺はお前に触れてねェ。それは誇れるべきだぜ?」


「あ、ありがとうございます…。……ホラ、アイテムの抹殺命令を受けてるんですよね……?さっさとひと思いに殺して下さいよ」


絹旗は観念した、という風に、突っ伏している状態からごろんと仰向けになる。
抵抗の意志がないことを示していた。

一方通行はふふんと笑うと、絹旗に手をかざした。


「じゃァ、お言葉に甘えて☆」


一方通行はそう言うとぴとっと絹旗のセーターに手を当てる。
引き裂いたわけでもないのにセーターがびりびりと破れていく。


下着姿になっても絹旗は動揺しなかった。
その挙措に一方通行は僅かに顔をしかめる。これでは彼が今まで殺してきたクローンと全く同じ。


「今からてめェをグチャグチャにして殺すぜェ?何か言い残すこととかねェか?それか、未練がましく暴れてみたりしねェのか?」


「ひと思いに殺してくれるんでは?」
(…正直、超怖いです…)


一方通行の質問に絹旗は毅然と答える。
これでは全く面白くない、彼はそう思った。
なので、彼は絹旗の発言を「だァめ」と禍々しく頬を歪めて、拒否する。


「そうですか…」


「気丈に振る舞いやがってよォ…むかつくなァ。命乞いしねェのか?てめェもあのクローンと同じかよ」


絹旗は「あのクローン?」と首をかしげるが、当の一方通行本人は絹旗の質問には答えずに喋り続ける。


「むかついたぜ、絹旗ちゃン」


一方通行はそう言うと下着の表面を一気に能力で引き裂く。
絹旗の裸体が露わになり、「いや…」と小さくつぶやいた。


絹旗の諦めの声を一方通行は聞き逃さなかった。


「く、ク、クククク…カカ、アヒャ、ギャ…は…ハハハハハハ!そォ!それ!俺の聞きたい声ェ!そォいうの待ってたんだよォねェ!」


倒れている絹旗の前で高笑いを浮かべる一方通行。その姿は絹旗の目には狂人として映った。


「なァーンだァ!やっぱ、怖いンじゃねェか!絹旗ちゃン?ンンンンン?」


「…………ッ!」


絹旗はまだ膨れていない胸と薄く毛の生えた恥部を両手で隠す。
しかし、一方通行にはそんな事は全くお構いなしに絹旗の恥部をまさぐる。



窒素の壁が構築されている彼女は男を寄せ付けることはなかったが、一方通行のベクトル操作の前では彼女の窒素装甲は為す術がなかった。


「や、辞めて下さい…!」


絹旗が一方通行に懇願する。
先ほどまで気丈を装っていた彼女はしかし、目の前にいる一方通行を前にして恐怖したのだった。


絹旗の懇願も虚しく、一方通行はにやりと笑うだけだ。
彼にとっては懇願ですら今後の展開を盛り上げるスパイス位にしか感じられないのである。


一方通行はまずは絹旗の恥部に手を宛がい、一気に粘液を引き出す。
絹旗は既に全てを諦めたのだろうか、立体駐車場の天井を見上げている。


「ンじゃ、濡れてるから挿入しまァーす☆」


ふざけた調子で言う一方通行だったが、彼の股間は今から行われるであろう性行為を前にして興奮し、いきり立っている。
絹旗は今からされるであろう行為を見たくないと思い、意図的に天井を見続けていた。


その間に絹旗の膣内に一方通行の性器が侵入してきた。


「…!」
(超痛いですッ!)


しかし、絹旗は思った。絶対に声を出してたまるか!
絹旗は一方通行に少しでも不快な思いをさせてやろうと思い、声を出すのを必死にこらえていた。


一方、腰を振っている一方通行は気持ちが良い事には変わりなかったのだが、全くつまらなかった。

これじゃァ、あのクローンと一緒だ…!
一方通行はそう思った。途端、彼の頭の中でブチンと何かが切れる音がした。


(あー、コイツはつまンねェ)


かつて妹達に強要していた性行為と全く一緒だった。
自分だけが気持ちよくて、相手は全く気持ちの良さそうな反応を寄越さない。


妹達は特になにも言わず、無言で性行為を済ますだけだった。
それはクローンだから、と割り切っていたが、しかし、今目の前にいる絹旗も今まで一方通行が殺してきた妹達同様になにも言わなかった。


その素振りが彼をひどく不機嫌にさせた。
一方通行は腰を振りながらも絹旗の額に手をあてる。


「な、何をする気ですか?」


絹旗の視界に映る一方通行の手。
その手が当たった瞬間に彼女の意識は消え失せていった。


「てめェもつまンねェクローンかよ、ったく」


一方通行は目の前で事切れていた絹旗に向かって捨てセリフを吐き捨てると、一人勝手に絶頂を迎えて既に死んでいる絹旗の膣内に射精した。



「ふゥ…ったく、このクソ女が!」



一方通行は裸体でそのまま絶命している絹旗を思い切り蹴りつける。
能力を使って蹴ったので彼女の死体はそのままどこかに飛んで行ってしまった。



「クッソ…絹旗に攻撃できなかったし、ったく後味もわりィぜ…」



一方通行はそう言うと降ろしていたズボンを履き、その場から去っていく。
絹旗と戦い、性行為をしていた事で残りのアイテムのメンバーがどこに向かって行ったか分からなかった。
一方通行は内心に畜生、とつぶやく。


(どこに残りの奴らは居るンだ…?)


速効殺してさっさと追撃すれば良かったな、と後悔するがもう、そんなのどうでも良かった。
自分の脅威になり得るであろう女は死んだ。第二位も潰した。


(ゲートで戦ってる木原くンには連絡すっか?いや、また素人童貞だなンだって言われンのも腹立つからなァ…)


それに、絹旗と戦う前に思い出した、自分を負かした三下の少年の姿をも一方通行は思い出す。


(ったく…うざってェ…畜生が…!)


さっさと自分のアジトに帰って寝たい。一方通行の本能がそう告げている。


(無能力者三人は木原くンが潰してるだろうから、帰るかねェ…)


正直、一方通行は数多にまた馬鹿にされるのがいやだから、という理由があるのだが、そういうのを全てひっくるめてめんどくさいと思った彼は一気に飛び立って帰ることにした。



――柵川中学学生寮

佐天はテレビに釘付けになっていた。
美琴とファミレスで話した後、学生寮に帰った佐天はフレンダからの脱出の連絡が来るまでなにも出来なかった。


時間つぶしにテレビを見ていると、どうやら学園都市の中で様々な組織が目まぐるしく抗争を繰り広げていた。
いや、抗争と言う表現よりも寧ろ戦争といった方が良いかも知れない。


たまたま居合わせた報道カメラマンが撮影した幾つかの学区で行われた戦いは一般市民の目に触れることになった。
そしてまた新たに情報が入ってきている様で、ニュースキャスターがイレギュラーで読み慣れていない原稿を読んでいる様がテレビに映し出されていた。


テレビの中継は学園都市の第三学区の出入国ゲートから脱出する三人組をしきりに報道している。



(これ…フレンダ達よね…?)


佐天はテレビを食い入るように見つめている。
映し出されているのは銃を発砲し、ゲートの中に立てこもっているフレンダ達を一般人が撮影した動画だった。


キャスター曰く、この三人組の内、二人が学園都市から脱出した様だった。
佐天は一人で要るにもかかわらず、「え?」と素っ頓狂な声を上げる。


(三人とも脱出したんじゃないの?)


佐天はキャスターが何か間違えて言っているのだ、と思いたかったが、死亡した男の身元が明らかになり、自分の体が震えるのを知覚する。
テレビでは車に乗り込もうとしているステファニーの肩に担がれてぐだぁっと脱力している砂皿の後姿が映し出されていた。


あの様子だと砂皿は確かに死亡と判断して良いだろう。


『えー、ただいま入った情報ですと、死亡したのは砂皿緻密という傭兵で、現在、来学した目的などを警備員が調査しており…』



テレビから流れてくるキャスターの声を聞くと、砂皿が死んだ事はどうやら確実だったそうだ。
しかし、残りの二人に関しては脱出したとしきりに伝えているので佐天はほっと肩をなでおろした。


(フレンダとお姉さんは学園都市から逃げれたのかな…?)


佐天は安心したものの、フレンダから連絡が来ないのでまだ安心できない。


(どうなったんだろう、フレンダ、それにあいつら…大丈夫かな?)


佐天はフレンダの安否の他にもう一つ心配な事があった。



(アイテムの奴ら、スクールと戦うって言ってたけど、平気だったのかな?)


仕事が終わると普段麦野から連絡が来るはずなのだが、珍しく今日は来なかった。
フレンダが脱出したという事は何かしらアイテムの内部にも何か変化があったのかも知れない。しかし、佐天はそれを知るよしも無い。



(取り敢えず…連絡待ちかな…)


そう思った矢先だった。
佐天の仕事用の携帯がなる。メールが送られてきており、送り主はフレンダからだった。


From:フレンダ


Sub:連絡遅れたって訳よ

涙子、脱出成功しました。
もう日本にいます。砂皿さんは車内で死んじゃったけど、私達は無事です。

じゃ、バイバイ、涙子。



フレンダから送られてきたメールは佐天を安心させた。
彼女はフレンダを脱出させたことで安堵した。
自分が誰かを助けたんだと、佐天は思った。そう考えるとちょっと嬉しくなった。


しかし、砂皿は死んだ。
彼女達を助けようとして。


その厳然とした事実が佐天の前に立ちはだかっている。
確かに佐天はフレンダとステファニーを学園都市から脱出させることに一役買った。


それでも、その功績を帳消しにする砂皿の死。
人一人を脱出させるのに一人の命が失われた。
佐天はそう考えると何とも言えない気持ちになり、フレンダから送られてきたメールを読むと、そのまま静かに携帯の電源を切った。




――翌日 「アイテム」のアジト 第七学区にて


麦野を医者に連れて行って、その後アイテムのメンバーは昨日の戦いの格好のままアジトにつくやいなや寝てしまった。
そして、絹旗はついに帰ってこなかった。
死んでしまったのかも知れない。



「おい、起きろ――!」


浜面はソファで倒れ込むように寝ている二人を起こす。
滝壺、麦野、そして浜面。


当初は四人いたアイテムも今や二人。下部組織の構成員である浜面も入れて三人という有様になってしまった。


「う…は、はまづら。きぬはたはまだ帰ってない?」


「あ、あぁ…まだ帰ってない…」


滝壺は浜面の沈痛な表情を見て、「そっか」と一言小さくつぶやく。
結局、昨日の夜、絹旗は一方通行に殺されてしまったのだろうか。滝壺は体晶を使って絹旗の居場所を確かめようと思い、ジャージのポケットに手を伸ばす。


しかし、滝壺が絹旗に体晶を渡してしまった事を思いだし、その手をポケットから再び出した。
あの時渡さなければ、絹旗は助かったのに…。そんな考えが彼女の脳裏に浮かぶ。


「絹旗、あいつはうちらの為に戦ってくれたんだよ…」


「わたしが体晶を渡さなければよかったんだ…」


「そしたら、あの場に居たみんなが死んでたぞ。あの第一位の狂った表情を見なかったのか?」


「……」


体晶を渡した事で自責の念に駆られる滝壺をしかし、浜面はいなす。



「…あんたら…起きてたの……?」


「むぎの」「麦野」


二人が同時にソファの方に振り向く。
すると黄色いコートを羽織ったまま寝ていた麦野がずいっと体を起こそうとしていた。
片目と片腕に包帯を巻いている姿は痛々しい印象を滝壺と浜面に与えた。


「絹旗はやっぱり帰ってきてないか…」


「そうだな…」


「クッソ…この後どうすればいいんだ?」


「組織としての体は正直保てないわね。私と滝壺…それに浜面だけじゃ…」


麦野はそこまで言うと黙ってしまった。
昨日の今日で起こった出来事にまだ頭が追いつかない。


「取り敢えず、電話の女に連絡してみるか…?」


「良いのか?麦野。あっちは学園都市の息がかかっているかもしれないんだぜ?」


浜面はそう言うと滝壺にも翻意を促そうと思い「な?」と首をかしげる。
しかし滝壺は「うん」とは言わなかった。


「多分、大丈夫だよ…電話の女は平気なはずだよ…」


「え?」


浜面はきょとんとした面持ちになる。麦野は自分の眉間に僅かに皺がよった。



「電話の女が平気ってどういう事?滝壺」


「……夏休みに何回か遊んだから…」


本当はフレンダを逃がす為に学園都市を彼女も一役買ってるからだよ、とは死んでも言えなかった。
なので、滝壺は適当に話しをしていく。
麦野も滝壺の発言をおかしいと思ったものの、早く今後の指示を仰ぎたいと思い、携帯を取り出して佐天に電話をかけた。


『もしもし…!?麦野?無事だった…?』


「あぁ。何とか。ただ、絹旗が帰ってこない。それに…」


『……それに?』


「フレンダが脱走した」


『……そうなんだ』


「上からあんたに向かって何か連絡は来てないの?」


『いや、特に来てないよ…』


麦野はそっかと言うと「何かあったら連絡ちょうだいね」と一言言って電話を切った。


「電話の女の方にも特に連絡は来てないみたい…」


彼女は独り言の様にそうつぶやくとふらふらした足取りで風呂場に向かっていく。
昨日の怪我は病院の凄腕の医者に看て貰い、ある程度回復していた。


風呂場に向かって行く途中に麦野が浜面に声をかける。


「浜面、お腹減った、シャケ弁お願い」


「あ、じゃあ何か買ってくるよ。滝壺、お前は?」


「私は…パンが良い」


浜面は二人の要望を聞くと、近くのコンビニに弁当を買いに出かけていった。
麦野はバスルームに行き、既にシャワーを浴びている様だった。


(きぬはたが死んで、フレンダは学園都市から脱出成功かぁ……)


滝壺の周りから二人の人が居なくなってしまった。
一人は永遠に合うことが出来ない。もう一人も会おうと思っておいそれと会える相手ではなくなってしまった。


(これから、アイテムはどうなっちゃうんだろうなぁ…)


自分の居場所。結局はアイテムという組織の中にもないのだろうか。
浜面に好意を寄せていた時もあったが、浜面が麦野とつきあい始めた時から次第に興味は薄れていった。


結局はここにも自分の居場所が無かったのかも知れない。
滝壺はそう考えると少し悲しい気持ちになった。


かつて自分に居場所が出来るといいね、と言ってくれたフレンダは帰るべき所に向かって行った。
そして今は既にこの学園都市には居ない。


(自分の居場所、私も探そうかな?)


滝壺はソファに身を沈める。
風呂に入りたい、麦野がシャワーを浴び終わったら私も入ろう、そう思った。
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