佐天「…アイテム?」30


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あらすじ

麦野は滝壺にスクールの追撃を行うために体晶の服用を強要する。
木原数多はフレンダ達が学園都市を脱出しようと企んでいる事を一方通行に知らせる。
彼の増援を期待したが、当の本人は第七学区で垣根との激闘に従事していた。






――第三学区と日本国の境界線


「おせぇぞ、一方通行」


「わりわり、垣根のヤローがよ、最後に抵抗しやがってよ、クックッ…にしても哀れなヤローだったぜ」


一方通行は垣根の最後の姿を思い出し笑っている。
心理定規を殺害され、怒り狂った垣根はグループの四人に渾身の一撃を放った。


一方通行はベクトル変換能力で回避。結標達は重傷を負って戦線離脱した。
今この第三学区のゲートにいるのは一方通行と木原数多とその配下の猟犬部隊の隊員とMARの隊員達とモンスーンと呼ばれる妹達四人だった。


「一方通行、今ん所こっちに向かってくるのは恐らく、砂皿、フレンダ、ステファニーだ。
で、離反者を出した組織アイテムは今下部構成員の男を加えて四人、同じく第三学区にいて今撤退中との事だ」


数多はどうする?と一方通行に促す。このままここでフレンダ達を殺戮するか、撤退中のアイテムを襲撃してアイテムを壊滅させるか。


「第三学区からこちらに向かう奴らは全員無能力者だ。こちらで十分対処できる。しかし、手負いとはいえレベル5とレベル4を三人抱えているアイテムは正直まともな軍備て勝てる見込はない」


「じゃ、俺ァ、アイテムを潰してくるわ。生死は?」


一方通行はにやぁと口元を歪めて笑う。数多も同じくにやと笑って「問わないぜ」と言う。


「へェ、じゃ、自由に暴れてもいいンだな?」


「好きにしろ、上にはテキトーに言っとくから。まずは、離反者を出した組織を徹底的に粛正しなきゃなぁ」



数多の発言を聞くと一方通行は、能力で高く飛び上がり、崩壊しかけているアイテムに引導を渡すために第三学区の立体駐車場へと向かって行った。
その後姿を見送りながら、数多は目の前にいる隊員達を整列させる。


「お前等の何十倍も死線をくぐり抜けてきた戦争の犬どもがやってくる!」


猟犬部隊とMARの隊員達、そして妹達四人が聞き入っている。
総勢数十名ほどの学園都市の応急に構成された治安維持部隊の前に訓辞を行っていく。
訓辞を聞いている彼らは夜のとばりが降りつつある学園都市の夕日に照らされている。


「最年少の女、フレンダ、その姉、ステファニー、そしてその師匠格の男砂皿」


「最高の敬意をもって……皆殺しにしろ!」



「ハッ!」


第三学区の出入国ゲート前の大型駐車場が隊員達の声で大きく揺れる。
数多はその光景を見てにやと笑う。この軍備を越えられるモノなら越えてみろ。


圧倒的な兵力。三人を数十人で潰す。数多はそれがアンフェアだとか、なんだとか言われようが構わなかった。
敵を潰す。それだけで彼の任務は遂行されるのだから。



――第三学区 暗部組織モンスーンの狙撃手が待機しているビル

日が沈み始める。
薄暮(はくぼ)の頃合い。


太陽はその影を奥多摩の山々に映し出し、徐々にその身を沈めていく。
出入国ゲートは平常通り機能しているのだが、警備にあたる兵力はいつもの数十倍という異様な光景だ。


警備に当たっている部隊“モンスーン”の構成員の一人、妹達は出入国ゲートの付近の高層ビルの屋上で伏せた状態で警備行動に当たっていた。



(敵はいつになったら来るのでしょうか…?)



狙撃手の仕事は射撃ではなく、待つことだと言えよう。
敵が来なければ、結局はその場で待機し続けるだけ。狙撃手が構えている間に敵がよそで鎮圧されていたなんて事もある。


妹達の内の一人はメタルイーターと呼ばれる大型の対物ライフルを構えながら待機していた。
数多の訓辞後に配布された冊子を見る。その冊子には三人の顔写真と経歴が記載されている。



「ったくいつになったら来るんですかね?とミサカは苛立ちを隠さずに質問します」


メタルイーターを構えている妹達の一人に話しかけているのは、もう一人の妹達。
対物ライフルの狙撃判定を行う、補助役の妹達。


「待つのが狙撃手の任務ですよ」


「そうですね…」



狙撃手を務めている妹達の一人はスコープを学園都市を走っている車輌に合わせて行く。
祝日という事で交通量は少ないが、それでも学園都市と日本の首都圏をつないでいるこのゲートは数々の車輌や人がいる。


各車両を一台一台チェックしていく。ターゲットの三人は変装しているかも知れない。
あらゆる可能性を考慮する必要がある。


高層ビル群から見える日本国の夕景。
新宿の高層ビル群の赤色ランプがコウコウチカチカと灯っている。


(三人は学園都市から出て、どこにいくんでしょうか?)


狙撃手を務める妹達が内心につぶやく。
山々に残っている太陽の残滓の光は学園都市のビルを真っ赤な光で舐め尽くそうとしているかの様だった。
その光がスコープに入ってくる。狙撃手の妹達の一人が太陽光を見るのを避けようとした時だった。


不意に腹部に痛みが走る。
続いて、胸、どちらも人体急所に該当する部位だった。


(ど、どこから…?)


まさかと思い、妹達の内の一人は高層ビル群に視線を合わせる。
乱立するビルの中から狙撃手を見つけ出すのは難しい。
窓は太陽光を乱反射してまぶしい。


「こ、こちら…モンスーン、狙撃を受けました…!」


狙撃手はちらっと狙撃助手を務める妹達を見るが、その彼女も既に敵に発砲されている様で、絶命していた。



――第三学区のとあるビル


前衛部隊だろうか?とにかく砂皿は敵の狙撃部隊を制圧したことに安堵する。
彼はSR25で中距離狙撃を敢行して敵の組織とおぼしき狙撃犯を射殺したのだった。


「警備の狙撃手を倒した、望遠レンズで確認した。今から、出入国ゲートに向かうぞ」


「「はぁい」」


二人の姉妹の仲の良さそうな返事が聞こえてくる。
傷の手当てを済ませたステファニーとフレンダは中型のトラックの荷台に乗り込んでいく。
二人が乗り込むのを確認すると砂皿は自分の武器である狙撃銃を大きいダッシュボードに折りたたんで隠していく。


途中の路上で拝借した中型トラックの中は引っ越しに使うマットや梱包用のベルト、段ボールなどが山積みにされていた。
その中で身を寄せ合うようにして座るステファニーとフレンダ。運転手は砂皿が務める。




「フレンダ、私の隣に座ってな?」


「うん」


トラックの中ではライトがともっている。
二人は肩を並べて仲良く座っている。


「この後、ゲートを抜けたら、さっさと日本からおさらばしよう」


「砂皿さんはどうするの?一緒にいくの?」


「そうだね、一緒に帰って、カナダで住もうか!?ふふ」


「砂皿さん、ウィンタースポーツとか出来なさそうじゃない?結局傭兵だけが取り柄だ!見たいなカタイ人みたいな感じがする訳だけど…」


フレンダの会話にあちゃーと額に手を当てるステファニー。
当の発言主のフレンダは首をかしげる。だって窓は通気口もしまってるから、この会話は運転席にいる砂皿さんは聞こえないはずじゃ?


『このトラックには無線が詰んであってだな…その、何だ、聞こえてたぞ……フレンダ』


「っひぃ!すいません><」


フレンダはびくっと肩をふるわせる。
ステファニーは、あはは…と苦笑いを浮かべている。


『俺がオーストリアの特殊部隊に居たときは、フィンランド軍との合同訓練もやったからなぁ…スキー、スノーボードはお手の物だ』


フレンダはすいません!と叫ぶと「ま、いい」と無骨な声が帰ってくる。
その声に彼女は肩をなで下ろすと、今度はステファニーが質問する。


「砂皿さん、聞こえてたなら答えて下さいね~?」


『……なんだ?』


ステファニーはトラックの天井部分を見つめて話す。


「さっき言ったこと、ダメですか?」


『さっき言ったこと?』



はい、とステファニーは答えると「カナダで一緒に……って話しですよ」とつぶやくように話す。


『……』


砂皿は答えなかった。
恐らくステファニーの声は聞こえているはず。


「私じゃ、やっぱ弟子みたいな感じですかね?にゃはは…」
(戦う前に私はなんてこと言ってるんですか!?)


そう思いつつも彼女はどうしても伝えたかった。
自分が砂皿に対して師弟関係以外でも好意を抱き始めているという事を。


「あはは、冗談ですよ!?砂皿さん。砂皿さんだって私とフレンダの学園都市脱出作戦に関わってるから逃げる場所とかないかなって思っただけです!行く当てがあるなら、無理には…」


ステファニーは明るい反面、自分が傷つくのを恐れる傾向ある。
砂皿からの回答が来なかったので、彼女は傷つく前に自虐に持ち込もうとしていたのだが、その必要は無かった。


『で、ではそうさせてもらおう。オマエは一人にしておくと危険だからな、そう思うだろ?フレンダ?』


「ははー、結局お姉ちゃんも、砂皿さんも照れ隠ししてるって訳よ!私はしらなーい!好きにしてくださーい!」


フレンダがそう言うとステファニーと砂皿の会話が途切れる。ってか喋れ、こいつら。



「じゃ、じゃあ、その、砂皿さんもカナダに来たら…その美味しい店とか一杯、あの、その…!」



ステファニーのあたふたとしている姿を見ながら、フレンダは幼少時代に遊んだカナダの事を思い出す。
カルガリーの市内中心部にあるタワー。そこから見る夜景とオーロラは本当に綺麗だった。

その市街地を出れば広い一本道とその両脇にあるだだっぴろい牧草地が広がっている。
東京の西多摩地区がいくつも入ってしまう広大な土地、それがフレンダの生まれ育ったカナダのカルガリーという所だった。



(この三人で必ず帰る…!カナダの土を踏むまで死んでたまるかって訳よ…!)



決意を新たにするフレンダ。
と、そこでトラックの荷台の部分にいるフレンダたちに無線が入る。



『お前らはここで降りろ。俺に考えがある』




フレンダとステファニーは顔を見合わせた。



――第三学区 立体駐車場


体晶を飲め、そんな提案には決してうなずけない。
滝壺は麦野の刺す様な視線から目をそらさずに首を横に振る。


「勝てる見込みがあるなら、体晶を使っても良いよ。ケド、むぎのは今日の朝の闘いでもスクールの垣根に勝てなかったよね?」


「うるせぇ…!いいから飲め!」


「麦野っ!こんな馬鹿な争いはやめて今日は退こう!フレンダだって死んだ訳じゃ無いんだろ?明日探せばいい!」


麦野の頬に一筋の涙が伝っていく。


「わからねぇんだよ…!なにしたら良いか…!」


「むぎの…」


「帰ろうぜ…?麦野。心理定規だかなんだかしらねぇが、傷の手当をして、休んでまずはそっからだろ?」


浜面の説得に麦野の心が動かされたのだろうか?
麦野はまだ見える右の目から伝う涙をぬぐうこともせず、小さく、ほんの小さく頷いた。



「なぁ、滝壺、絹旗はどこに行ったか分かるか?スクールと戦ってから姿みてなくないか?」


「確かに…。大まかな方角だったら分かるけど…。距離は体晶を使わなきゃ分からないよ」


浜面は「そうか」と言うと携帯を取り出して絹旗を呼び出そうとする。
その時、ちょうどタイミング良く絹旗から電話が掛かってきた。


スクールとの戦闘で負傷したので出るか不安だったが、すぐに出る。
浜面が「おう、絹旗」と言いかけた時、絹旗の声が先に浜面の受話器に届いた。



『浜面!今どこにいるんですか?』


「あぁ?俺達は今第三学区の立体駐車場だけど、それがどうかしたのか?っていうかお前スクールと戦ってて、それで負傷してたんじゃ…?」


『はぁ!はぁ!スクールとの闘いの後、失神してましたけど、その後、起きて…そしたら…!』


どうしたのだろうか?絹旗の様子がおかしい。何かあったのだろうか?


「オイ!絹旗何でお前そんなに息があがってんだよ!つか、今どこに居るんだ?」


『私ですか…?私は今浜面達のいる所に向かってますよ!』


浜面は律儀に集合するなんて偉いな、程度にしか思わなかったが、それは違った。


「今日は…麦野も怪我してるし、帰って良いぞ?わざわざ来る必要なんて無いぞ?な?」


浜面は絹旗と電話しつつ、負傷している麦野と疲れている滝壺を見つめると彼女達も浜面の意見に同意の様で、頷いている。
これで今日の任務は終わりかと思われた。


しかし、絹旗は電話を切ろうとはしなかった。
むしろ、休む事を提案している浜面に『超それどころじゃないんです!』と告げた。
浜面が聞き返すよりも早く、絹旗が怒鳴る。









『第一位が私達を殺しに来るんですよ!』



「は?意味わかんねーよ!確かに第一位が暗部墜ちしたって話しは聞くけど…」


第一位。その呼称を聞いて麦野と滝壺の動きが止まる。


「はまづら。第一位ってどういう事?」


滝壺が浜面の方に近寄ってくる。
麦野もその後をとぼとぼと歩いてくる。


『あー!GPSでそっちのいる場所追ってたんでもうつきます!とにかく、逃げますよ!浜面!足の確保を!』


浜面は「お、おう!」と返事を返す。
絹旗との電話は既に切れており、携帯をポケットに入れると同時に、立体駐車場のドアがバタン!と勢いよく開けられた。


「はぁ…はぁ…はぁ…!は、浜面!」


「絹旗!すげぇ汗だぞ…!どんだけ走ったんだ…!?」


その話しは後!と絹旗は浜面との会話を打ち切る。
肩で呼吸している絹旗に滝壺と麦野が近寄る。


「多分、もうすぐ…はぁ、はぁ、来ます…よ!」


浜面はその言葉を聞くやいなや、急いで近くにあった車をピッキングして開錠する。


「よし、お前ら、乗れ!」


浜面がアイテムのメンバーに乗車を促したその時だった。


チーン!
一基の立体駐車場のエレベーターが浜面達の居る階に到達した事を知らせるベル音が木霊する。






「どォも、どォも、アイテム抹殺命令を受けてやってまいりましたァ…」






最狂であり、最強。そしてアイテムの彼女達にとっては最凶の男、一方通行が目の前に現れた。
たじろぐアイテム、彼女達に勝機はあるのか。
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