佐天「…アイテム?」27


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あらすじ

佐天と美琴は偶然ファミレスで遭遇してしまった。
しかも、フレンダと一緒に居るところを目撃されたのだ!
彼女達は話し合った一方、今日は自分になにもしないでほしいと佐天が一方的に提案する。

一方、砂皿と木原数多の戦いの軍配は辛くも砂皿に軍配があがった。
彼は先行するステファニーを追う。


ステファニーはランクルを飛ばし、フレンダとの集合場所に向かって行く。






――学園都市第三学区

紆余曲折を得て、アイテムのメンバー三人と浜面は別ルートを辿ってアイテムのアジトがある第三学区の個室サロンに集合した。


「お前等、大丈夫だったか?」


浜面はその場にいるアイテムのメンバーに声をかける。
しかし、声をかけられた当の麦野、滝壺、絹旗の三人は思い思いにメイクしていたり、映画を見たり、携帯を見たりしている。


全く聞いちゃいねぇ様子だ。と、思ったら返答が帰ってきた。


「遅いよー、浜面」
(良かった…死んじゃったかと思ったじゃない…)


「あ、はまづら。良かった生きてたんだ」
(はまづらが死ななくて良かった)


「…超浜面ですか…逃げ切ったんですね」
(戻ってこれたのは三人だけですか……)


浜面の問いかけに三人が一様に答える。
しかし彼女達の返答に頷きつつも、浜面は違和感を感じた。
そしてそれを声に出す。


「フレンダはどうしたんだ?」


浜面は素粒子工学研究所内に入らずに待機していたところ、麦野の合図で車を出し、襲撃され、走って…さんざんな体でこのアジトに戻ってきた。
なので別行動を取っていた絹旗とフレンダがどこにいったのかわからない。


(絹旗はここにいる…けど…フレンダは…?)


「消えた」



おそろしい程に落ち着いた口調で言い放つ麦野。
あっさりと答える彼女に浜面は寒気を感じる。



メールが帰ってこない。
フレンダは戦渦の中にいるのだろうか?それとももう学園都市を脱出したのだろうか?


(どこにいったの?フレンダ)


滝壺は携帯のフォルダを見るが、返信は来ない。
午前中の素粒子工学研究所で一緒に居たのが最後だった。


どうか無事に生きていて欲しい、そう祈願した。
恐らく、フレンダが学園都市から脱出しようと考えてるなんて露ほども知らないだろう、浜面を眠気眼に映し出す。
あれ?浜面がけがをしている。



「はまづら。怪我してる」


顔面に僅かながら傷が出来ている。軽い裂傷のようだ。
滝壺が怪我を指摘すると、麦野はメイクをやめて浜面の顔を見、次に滝壺の顔を見る。


自分が気づかなくても、滝壺が気づいた。その事がちょっと悔しかった。
怪我をしている浜面は何でもねぇよ、と鷹揚に相づちをうって答える。



「フレンダ、どこいったんだろうな?」


浜面がぼそとつぶやくが誰ももう答えなかった。
代わりに今後どういった対応を取るかを麦野が説明していく。


――ファミレスのジョセフ



「『見届けたい人が居る』かぁ…佐天さん…何を、誰を、見届けたいんだろう…?」


美琴はついさっきまで一緒に話していた佐天の発言を思い出す。
彼女の友人でもある佐天は知らない所で学園都市の暗部に墜ちていた。


(佐天さんが暗部に墜ちた理由は…無能力者に対する能力者の傲慢に辟易したから…?)


能力者、それは自分たちの事だろう。
佐天の周りに能力者の友人は自分達しかない。


佐天の友達も幻想御手に手を出したと初春から聞いたことがある。
彼女の周りは無能力者の人達もいるのかもしれない。


(そしたら、普段の何気ない言葉が彼女に取っては耐えられない事だったのかも知れないわね……)


美琴は自分が佐天に対して何を言ってきたか、それすら思い出せない。
日常会話に自分がどんな事をいっていたか…。しかし、そんな何気ない会話の節々に佐天を暗部に堕とすまでの言葉を吐いていたか?と美琴は思う。


(いくら何でも…佐天さんがそんな理由で暗部に墜ちる?)


実際は人材派遣(マネジメント)の男の甘言で釣られた事も佐天を暗部に堕とした大きな要因と言えよう。
しかし、美琴にはそうした勧誘があった事を確認することはできない。


(でも、佐天さんは自分の意志で、って言ってた。気の強い所もある佐天さんなら…自分の状況に飽き飽きして…っていうのも有り得るかも知れないわね…)


結局は自分の意志か、と美琴は思う。



佐天を縛るモノはなにも無かったのだ。この仕事も自分の意志でやっていると言っていた。


例えそれが罪悪感を引き起こさせる仕事であるにも関わらずだ。



それでも、許すことは出来ない。
あの計画にいかなる形で協力していた奴は…。


人を殺す事に対する免罪符を得たい、そう彼女は言っていた。
その免罪符を得るために、彼女は見届けたい人がいるといっていた。


その人の事を見送れば…佐天はどうするつもりなのだろうか。
美琴の興味は尽きない。


美琴はこれ以上一人で思案しても始まらない、と思い何と無しに空を見上げると飛行船が飛んでいた。
飛行船は電光掲示板が横に貼り付けられており、天気や各種情報を放映している。


『ただいま…第三学区、第七学区、第二十三学区の出歩きは禁止します…正体不明の集団が戦闘を続けている模様です…』


(まさか…佐天さんはこれを見届けるって事?)


集団…美琴は学園都市の暗部に所属している集団を一つだけ知っている。



アイテム。
かつて美琴と戦火を交えた事もある、女の集団だ。



(見届けたいって…あいつらの事…?それに…第七学区…ここじゃない!!)



実際にはアイテムのメンバーは第七学区から第三学区に移っているのだが、美琴は自分の肌が粟立つのを知覚した。
美琴は伝票を持って立ちあがる。


(佐天さんが何をしたいかはわからない…けど、もし、あの計画に連なるものだったら?)


どこに行けばいいのか分からない、しかし、美琴は店を出ると第七学区のビル群に向かうことにした。


ジョセフを出て暫く歩いて行くと、いつもなら賑わっている市街地。
しかし、待ちを行く人は少なかった。ビルの電光掲示板に目を通すと、何らかの勢力が依然として学園都市で破壊活動に従事している模様だった。





(学園都市で何かが起きてる事は間違いない…)




美琴は休日の歩行者天国で車の通行が途絶えた道路に一人ぽつねんと立ち尽くした。



――甲州街道

ステファニーは地下駐車場からランクルで飛び出し、目下全力で第三学区のフレンダとの合流地点に向かっていた。



(砂皿さん、無事ですかね……?)


ステファニーは助手席に置いてある武器、砂皿の中距離狙撃銃SR25を見る。
今砂皿が持っている武器は仕込み杖の日本刀とアーミーナイフにハンドガンのみ。
それだけであの顔面凶器の男に勝てるかステファニーは不安になる。


(あの顔面トライバルの男に負けちゃったんですか…?)


負ける…それが戦場で何を意味しているか知悉しているステファニーは最悪の状況を想像する。
そして自分だけで学園都市から逃げ切れるのか否か、自分の思考が暗澹たる気持ちでしめられていく。



(…いつも…砂皿さんは帰ってきてくれる…。だから暗いことを考えるのはやめましょ!!)


砂皿はいかなる戦場からでも生還してくる。それは変わらない。
彼の口癖をステファニーは思い出す。


(“私なら、どんな状況であっても爆薬で死ぬ事だけは絶対にありえない”そうですよ…砂皿さんは死ぬはずがない)


爆薬で死ぬ事はない、その口癖はいつしかステファニーにとって、彼は戦場では絶対に死なない、と解釈するようになった。


(そう。砂皿さんなら絶対に死なないはずです…!)


ステファニーは車を走らせつつ彼の無事を祈りながら、第三学区へと向かって行く。



――第三学区の個室サロン


「未元物質は、この建物の中に居る」


AIM追跡者である滝壺が体晶を使って敵対組織であるスクールのメンバー垣根帝督のサーチを行った結果だった。
アイテムの一同は息を呑む。

なっ…!と動揺する間にガァン!とアイテムの個室サロンのドアが蹴破られた。


麦野と未元物質もとい、垣根がなにやら雑談を交えているようだったが、絹旗はお構いなしに手近にあったテーブルを投擲するが、効果はなかった。
絹旗も垣根に致命傷を与えたとは思っていない。少しでも傷を与えられれば良い位の考えだった。


「ったく…いてぇな…、そしてムカついた。まずはてめぇから粉々にしてやる」


絹旗は垣根の殺気を孕んだ視線に冷や汗を流すが、決して動揺せず、浜面と滝壺に逃げるように指示する。
そして窒素装甲でサロンの壁を破壊し、脱出通路を造り出す。


「早く脱出して下さい、浜面と滝壺さんではあの男には勝てません。車を確保してとっとと遠くへ行って下さい」


絹旗はそう言うとちらと麦野の方を見る。
麦野も同意しているようで無言で頷く。ただ、麦野は滝壺と浜面に寂しそうな表情を一瞬だけ覗かせたのを絹旗は見逃さなかった。


麦野は滝壺達から垣根に視線を移す。
そして勢いよく原子崩しを放出する。


先の研究所では未元物質に全く太刀打ち出来なかった。
しかし、立ち向かわなければなるまい。もし麦野が倒れたら、アイテムの他のメンバーに、いや、浜面に危険が及ぶ。それだけは避けなければなるまい。


「おい、原子崩し、まずはあのセーター一枚の糞アマ殺させろよ、頭きてんだ、俺ァ」



「させるかっての、私にも色々あってね」


ふぅん、と垣根は鼻で笑うと未元物質を顕現させる…と言ってもみえないのだが。



「二位と四位の差はデカすぎんだよ」


垣根はそう言うと一気に未元物質を破裂させる。辺りには強風が渦巻き、麦野はサロンの個室の壁まで一気に吹き飛ばされ、背中を強打した。



「殺さなかっただけ、感謝するんだな、ま、これも昔のよしみって奴か、はは。ってかAIM追跡者がどこにいったか教えろよ?」


「う…ぐ…っ。教えてどーすんのよ?」


麦野は飛びそうな意識を必死に制御し、壁から離れる。
原子崩しを顕現させても垣根にはまるで効果がない。



「……滝壺を利用して、どしたいのかってきいてんだよっ!」


「ん?あぁ、あの女か、アイテムは学園都市の治安維持部隊の一角だろ?統括理事長の野郎との交渉権を獲得する為にはいくつか組織を潰して俺の力をアピールしなけりゃならねぇ」


「……ふん、高校性のガキ一人でまともにこの学園都市を相手取ろうって?」


「あぁ。一応そのつもり。その為にはAIM追跡者の能力が必要なんだよ。あいつの力があればどんな能力者に対しても先制攻撃をかけられるからな」


麦野の目に映し出される垣根の表情には迷いは一切感じられず、寧ろ自身に満ち溢れていた。



「ふーん…そう。…でも、簡単に滝壺を渡す訳にはいかないわね」


「だったら取引しよう」


「取引……?」


「滝壺とさっき一緒にいた男がどこに向かうか教えてくれたらお前の命は救ってやるよ」


「は?バカじゃないの、わざわざ組織の仲間を売る程墜ちたくはないわね」


「ふ、はっはっ…ふふ…おもしれぇ」


垣根は思わず、といった様にせせら笑う。


「何か面白い事言ったかしら?」


「いやぁ、同じ組織でもここまでズレがあるとはなぁ…」


垣根の一言に麦野は眉をひそめる。この男は何かを知っている。


「なに?仲間を売らない、ってそんな事当たり前じゃないの?」


「当たり前ねぇ……お前ん所のフレンダ、何で集合場所に来ないんだと思う?」


「…………まさか」



麦野の脳裏にフレンダの顔が浮かぶ。
まさか、アイツ!裏切りやがったのか?
彼女は自分の頭に一気に血が上り沸騰する感覚を覚える。



「そのまさかだぜ?そもそも俺がアイテムの集合場所であるこのサロンの存在を知ってるのがおかしい話しだって思わなかったか?」


「……」


麦野の表情は怒りの表情になっていく。
自分が垣根に太刀打ち出来ない事が判り、しかもアイテムから裏切り者が出た事実に彼女は崩れ落ちそうになった。



「ここで絶望するか?」


さっと垣根は手をかざす。
麦野は掌に原子崩しを顕現させる。垣根には効果がないと分かっても、この苛立ちを誰かにぶつけなければ気が済まなかった。


「抵抗するなら…命の保証は出来ねぇぞ?原子崩し」


「うっさい…未元物質」


垣根はそうですか、と軽い調子頷きつつ話すと二人のいるサロンに(といっても半壊状態だが)赤いドレスを着た女がやってきた。
白のINEDの薄いカーディガンを羽織っているその姿はこの半壊したサロンの空間とあまりにも不釣り合いだったが、逆に奇妙にマッチングしている様にもみえた。


「あら、取り込み中かしら?帝督」


「心理定規じゃねぇか、どうした?」



「狙撃手からピンセット貰ってきたわよ?その直後に狙撃手はお宅の窒素使いにやられて重傷だけどね」


心理定規はアタッシュケースに詰められたケースごと垣根に手渡すと、麦野がいるにも関わらずそれを手に嵌める。


「うお!これかっけぇな」


自分の手からかぎ爪の様に伸びたピンセットを少年の様に見つめる垣根をよそに、心理定規は麦野に問いかける。


「大人しく投降すれば?原子崩しさん?」


「はっ…誰が降伏なんざするかっての」


麦野は戦意未だ衰えずと言った調子だ。
確かに彼女が崩れればアイテムが恐らく壊滅する。彼女が最後の砦なのだ。
この最終防衛ラインを突破された場合、恐らくアイテムの下部組織で働いている浜面にも被害が及ぶかも知れない。


「…ここを突破されたら後がねぇんだよ!!」


怒声を張り上げ、麦野は原子崩しを放出する。
しかし、それらは大気中に張り巡らされている未元物質の前に立ち消えになる。


(クッソ…!滝壺……浜面!逃げたか…?…????…………体が動かねぇ……!)


次なる攻撃をしようと麦野はステップを踏もうと思い動こうとするも、体が動かなかった。



「うちらが投降進めたのによぉ…ったく、原子崩し」


垣根はそう言うと心理定規にくいっと麦野のそばに行くように首で指示する。
命令された心理定規ははいはい、と悪態をつきつつも麦野のそばにゆっくりと寄っていく。


立ち尽くしている麦野の額の辺りに心理定規はさっと手を添える。


「ふーん……さっき逃げた男の名前は…浜面仕上…付き合ってるんだ、あなたたち」


「…っク…の、覗くんじゃねぇ…!コラ!」


「で、フレンダに対しての距離が…あちゃーだいぶ離れてるわね……えーっと、滝壺理后はっと…あら?この状況で嫉妬してるの?一緒に逃げたことに?」


「滝壺さんに大好きな彼氏を取られたくない」


「……何がしてーんだ…このクソアマぁ」


怒りの中にも一抹の不安な表情を浮かべる麦野は心理定規が手をかざして自分の方に向かってくるのを直視する。


「平気よ、滝壺さんに対する嫉妬の感情をちょっとだけ強くして、あなたの浜面クンに対する距離をちょっとだけ離すだけだから…」


麦野は距離?と心理定規の言ったことに首をかしげる。


「そう、私の能力は人間に生まれる感情を距離として測定して、それを調節出来る力なの」


「……まさか…」








「ちょっとだけいじらせて貰うわね?」


「…な、オイ!待て!……!待って!」


先ほどまで威勢の良かった麦野は心理定規の能力の説明を聞かされ、大人しくなる。
しかし、心理定規のすらっとした細い腕は麦野の頭のあたりにぴたと触れる。


「頼む…!ま、待て!ま…待って下さい……!」
(やだ!やだ!それだけは…やめて!)


「ふふ、今更そんな事言っても通じないわよ?」


心理定規はそう言うと麦野の頭に手を当てた。
麦野は絶望にうちひしがれている様な表情で、「…い、やだ…」とつぶやき、その双眸は心なしか濡れている様にも見える。



「あーあー流石の原子崩しもまさか自分の感情が操られるなんて思ってもなかったか」



垣根は腰に両手を当て、麦野の様子を見る。
自分の思いが攪拌され、つい数秒前の自分の記憶はあるのにその感情にならない。
そしてその感情の歪みを歪みと思えない状況になっていた。



「未元物質、解除するぞ」


「えぇ。恐らく、彼女にはもう抵抗する気力はないから、平気よ」


未元物質が付近から消え失せると麦野は脱力したようにその場にぺたっと座り込んでしまった。


「……」


自分の頭を抱えながら麦野は何かを思い出そうと記憶を辿ろうとする。
しかし、わからない。今、自分は誰も好きな人など居ない。


(このペアリングは誰としたやつよ?男の知り合い…浜面は普通にパシリだし)


(…でも…滝壺と浜面…うーん…パシリの男と私が付き合ってるわけが…ないか…)



彼女が頭を抱えて考えている間に垣根と心理定規は同じサロンにいる絹旗を撃破すると、アイテムのレーダーであり、照準補佐役でもある滝壺を捉えに向かって行く。
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