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美女と山男

あらすじ

昔、ある山には山男が棲んでいた。彼は人間になろうと麓の村に近づいたが、村人たちは彼を恐れた。村に山男が来ては、村を守る巫女が彼を追い払っていた。しかし、山男は何度巫女に追い払われても村に近づいた。彼は、人間になりたかった。

そんな村で、ある日一人の赤子が産声を上げた。赤子は巫女であるカカの家に生まれ、やがて村の重鎮になるよう運命付けられていた。赤子はカガチと名付けられ、多くの期待を背負いながら、何不自由のない暮らしの中で成長していった。

カガチが逞しい青年に成長したころ、村ではある娘が評判になっていた。見目麗しい娘の名はコノハといい、村の多くの男たちを魅了した。しかし、コノハは貧しい家に生まれ、病弱な母の世話に懸命なため、良い寄る男たちには目もくれなかった。カガチもまた、儚げなコノハに魅了され、彼女に相手にされなくとも足繁く通った。その甲斐あってか、コノハは徐々にカガチに心を開き始め、村の男たちも「カガチだったら」と、二人の仲を裂こうとする者はいなかった。しかし、カガチの母であるカカは、溺愛する息子がそんな軟派だとは夢にも思わず、コノハが息子に色目を使っているのではと考え、二人の中をどうにかしたいものだと機会を伺っていた。

ある年、再び山男が村に近づいてきた。いつものように巫女カカは山男を追い払おうとしたが、息子とコノハを仲違いさせる好機と考え、山男に「もう村に近づかないと約束したら、村の美しい娘を一人やる」と提案した。山男はこれを受け入れ、以来村には二度と来なくなった。一方巫女カカは、村人に「山男は村の美しい娘を要求し、これを受け入れなければ村を襲いに来ると脅してきた」と伝えた。言うまでもなくコノハに白羽の矢が立ち、無論カガチは猛反対した。しかし、村を救うためだとコノハは受け入れ、生贄になることを決心した。

山男が棲む山へ、巫女カカとコノハ、そして何人かの村の男たちが向かっていた。その道中で、巫女一行の前にカガチが姿を現した。彼は一行から立ち退くように言われたが、それに答えず無言で近づいてくる。巫女カカに命じられ、村の男たちがカガチを抑えたが、カガチは隠し持っていた短刀で男たちを斬り付け、高笑いし、「自分はこの山の神である。その娘を渡さなければ、そなたらの首を貰い受ける」と一行を牽制した。巫女カカは息子の愚挙に激怒し、村の男たちにカガチを捕らえるよう命じる。それをカガチは短刀で次々と刺殺し、ついには母であるカカをも手に掛けた。返り血を浴び、血塗れになったカガチは、硬直したコノハに手を差し伸べる。彼はコノハを助けたいあまり、でたらめを言い、狂人の如き暴挙に出たのだった。しかし、そんなカガチに対し、コノハは小さな声で「人でなし」と罵った。この悲劇を起こした原因は自分にあるとして、コノハは放心しているカガチの手から短刀を奪い、自らの胸を刺して絶命した。

カガチはしばらくその場に立ち尽くし、やがて姿を消した。彼もまた山男の一人になったのだ。やがて彼は村に近づくようになる。彼は、人間になりたかった。


登場人物

カガチ
本作の主人公。村を山男から守る巫女の家に生まれた。巫女の跡継ぎとして、やがて村のの重鎮となる存在だが、本人にそのような自覚はない。素質と環境に恵まれており、村では男女問わず人気がある。

コノハ
貧しい家に生まれた娘。村で一番美しいと評判で、近づいてくる男は数知れない。しかし、当の本人は病弱な母の世話で忙しく、良い寄って来る男たちには目もくれない。

カカ
山男から村を守る巫女にしてカガチの母。厳格な人物として村では有名だが、息子であるカガチには甘い。溺愛する息子と仲の良いコノハをよく思っていない。

山男
山に棲む謎の人物。人間になるという目的で幾度も村に近づき、その度にカカによって追い払われている。彼の正体や、村との関係は不明である。