『リゾナント殺人請負事務所録』 Interlude.2~殺し屋たちはおなかいっぱい~


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「ねえ香音ちゃん、聞いて聞いて。超おもしろい話があるっちゃけど」
「おもしろいとか言ってておもしろかったことあんまないじゃん」
「いいからいいから。この前さ、『戦争』あったっちゃろ?香音ちゃんは参加しとらんやったけど」
「ああ、組を一つ潰したってやつ?」
「別に潰すんが目的やったわけやなかったっちゃけどね」
「『前線(フロント)』さんとこの依頼だっけ?」
「そう。会長の愛人さんが拉致されたとかで、助け出してくれって」
「で、助け出すついでに皆殺しにしたと」
「返せって言ってもどうせ返さんのやけん、そうするしかないっちゃろ?」
「ま……そうだね。うちらは殺し屋だし」
「それでさ、あいつら超ウケると。自分らのこと魚の名前で呼び合ってんの!」
「魚?タイとかヒラメとか?何でまた…あ、『海野商会』だからなのかな。ウケるっていうか寒いんだけど」
「『俺が何で“イタチザメ”って呼ばれてるか教えてやろうか?』とか言ってんの!超ウケん?」
「ちなみに何で?」
「知らん。聞く前に殺したけん」
「聞いてやれよ」
「でさ、一番ウケたのがさ、もう、プッ!超ウケる!アハハハハ……!」
「一人で笑うなよこっちは置いてけぼりだよ」
「香音ちゃん、カワハギって魚知っとーと?」
「知ってるに決まってんじゃん。おいしいよね」
「そうなん?衣梨、魚は苦手やけん。骨多すぎて迷惑やない?」
「迷惑やない?って言われても。魚だって人間が食べやすいために生きてるんじゃないし」
「刺身やったら食べられるっちゃけど」
「カワハギは刺身でも食べられるよ」
「そうなん?けど別にいいや」
「いいのかよ。…っていうか何の話だよ」
「そうだそうだ、でさ、『俺は“カワハギ”だぜぇ~』とか言ってるやつがいたと」
「そんなワイルドだろう?みたいな感じに言ってたの?」
「それはちょっと盛ったw」
「盛ったっていうのかなそれ。そもそも盛る意味が分かんないけど。で?」
「そいつも『俺が何で“カワハギ”って呼ばれてるか知りたいか?』とか言ってんの!」
「またかよ。別に知りたくはないけどそれでどうしたのさ?」


「『俺は人間の皮を生きたまま剥ぐのが大好きなんだ特にお前らみたいな若い女のな』とか言ってんの!超ウケん?」
「趣味悪すぎて普通は笑うよりドン引きなんじゃないかな」
「でさ、それ聞いたはるなんがすっごい真面目な顔して返したっちゃけど、それがもう、超ウケる!思い出しても超ウケるっちゃけど!アハハハハ……!」
「また置いてけぼりかよ」
「『カワハギって自分の皮が剥がれやすいからカワハギって名前なんですよ』って!ウケる!アハハハハ……!」
「オチ?まさか今のがオチ?もうちょっと溜めて言うとかしてよ。ここまで引っ張っといてそんなサラッと言うなよ」
「そう言われよったときの顔がまた笑えたっちゃん」
「まあそれは想像するとちょっとおもしろいけど」
「その後めっちゃ怒ってさ」
「だろうね」
「そしたら優樹ちゃんが『まさためしてみたいー』とか言い出してさ」
「ん?何が?話が飛んだけど」
「『あのカワハギさんの皮ほんとにはがしやすいかやってみたいー』って」
「……言いそう」
「そしたらはるなんがまた真面目な顔で『あの人は本当のカワハギじゃないから無理じゃないかな』ってw」
「言いそう」
「超おもしろくない?マジウケるっちゃけど!衣梨笑いすぎでお腹痛かったもん」
「…笑ってたの?」
「もう超笑ったー」
「笑ってるの一人だったでしょ」
「何で分かったと?」
「分かんないことが分かんないよあたしには」
「あー、超おもしろい話やったー。満足すぎる。お腹いっぱい」
「……よかったね」

ため息を吐き、香音は考える。
衣梨奈との話の中、急速に膨れ上がった思いについてだった。
その表情には、深い悩みが表れている。

今日の夕ご飯、焼き魚と煮魚のどちらにしようかというその切実な悩みは、衣梨奈が去った後も続く。
そうだ、どっちも食べればいいじゃんという素晴らしいアイディアが浮かんだのは、しばらく後のことだった。





投稿日:2013/11/27(水) 17:02:08.95 0