『モーニング戦隊リゾナンターR 第17話 「世界を変えるチカラ」(リライト)』


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第17話 「世界を変えるチカラ」

飯田の張り巡らした結界に絡め取られた愛は、記憶の回廊の中で自分の過去を追体験していた。
それは愛に生体兵器i914としての覚醒を促す演習プログラム。 世界中から集められた子供たちとの死のゲーム。
子供たちの髪の色や肌の色、ゲームの内容は変わっても、結果的に子供たちが命を失っていくことに変わりはない。
繰り返される虐殺。 それを実行しているのが過去の自分だという事実は愛の精神を蝕んでいく。

小川の能力の正体が掴みきれない蠍火は、広いフロアから階段へ戦いの場を移していた。
遮蔽物を利用して、ランダムに銃撃を加えていく蠍火だったが反射を持つ小川には通用しない。院長室がある最上階に近づきながら、打開策を練る。

院長室では飯田がPCを操作していた。
院長室の表示で偽装した機械室の中で、過去の追体験に苦しむ愛の姿を眺める飯田からは何の感情も感じられない。
退屈したミクが画材に触っているのを見ると、僅かに頬を緩め口を開く。

「あんた、絵が好きなの?」

たどり着いた最上階で蠍火は小川と拳を交えていた。
小川の戦技に愛と同じ匂いを感じた蠍火は、小川と高橋は仲間だと考え、そのことを小川自身に伝える。

「アナタたちの目的は何なのデス」 自分と愛を仲間扱いする蠍火に対して、怒りの炎を燃やす小川。

「あいつは敵だ!」

記憶の回廊の中では幼い愛による虐殺が続いていた。
愛の戦闘スキルがアップしたのにともなって、子供たちも武器を手にするようになっていた。
新しい子供たちを相手に訓練が始まろうとした時、訓練場の扉を開放して子供たちを逃がす者が現れた。
それは…まだ幼さを残す過去の小川麻琴だった。
子供たちを逃がすために愛の相手をした麻琴は、反射のチカラを発動することなく愛の攻撃を受けた。
自分の胸を貫く愛の腕を掴みながら、小川は自分の思いを言葉にした。

「愛ちゃんのこの手はたくさんの人を助ける手だ」
発動したフォトンマニピュレートによって、断片化し塵に帰る小川。
幼い愛はその様子を見てケタケタと笑っている。



激昂した小川の拳によって打ち倒された蠍火は、ダメージを負いながらも逆襲の機会を狙っていた。
自分の様子を窺う小川の足を掴むと、これまで隠していた発炎能力を発動するが、反射によって自らが炎に焼かれてしまう。
全身を苛む激痛。 薄れゆく意識の中で蠍火は一人の少女の顔を思い浮かべていた。

数名の同志と民主化運動の指導者の潜伏先を急襲した際、誤って命を奪ってしまった子だ。
女であり年齢も若い蠍火に助けを求めるつもりで、抱きついてきたその子の行為を、見定める余裕もなく本能的にチカラを発動してしまい、緑炎で焼き尽くしてしまった。
…私の炎ってこんなに熱くて苦しかったんだ、ゴメンね。 もうすぐ私も…。

記憶の回廊の中では、愛の過去の記憶の追体験が続いている。

「麻琴は私が殺したんだ。 私がダークネスのスパイだということを知られてしまったからね」

麻琴を自分の手で消し去ってしまった事実を受け止められない愛に代わって、里沙が愛の罪を引き受けようとしている。
麻琴を消失させた愛への憎悪が原因で、治癒能力を失った紺野あさ美は、保田の元で働くという。
科学の力で麻琴を復活させる日が来ることを信じて。

…まだこの頃はダークネスなんて存在しなかったはずなのに、あたしの為に里沙ちゃん。 それにあさ美ちゃんのチカラ。
自分が動機の仲間の運命を暗転させた事実は、愛を苛む。
…わたしがみんなの未来を壊したんだ・・・わたしが
助けを求めるように固く閉ざされた金属製の扉を見つめる。 自分には誰かに助けてもらえる資格なんてないと判りながら、その扉を誰かが開いてくれるのを待ち続ける。

蠍火は小川が自分に止めを刺すのを待っていた。
攻撃を誘う為に痛む身体を無理矢理動かそうとする蠍火だったが、小川は動こうとしない。
蠍火の発炎能力のレベルや、反射によって蠍火が受けたダメージから推測して、蠍火には自分への殺意が無かったと判断したのだ。

「私もかつては正義のヒーローを目指したんだ。 今のあんたに止めを刺すなんて出来ないね」

蠍火を残してその場を立ち去ろうとする。
「私のこのチカラであの交信女をやっつけて、世界を救って、そのついでにミクって子も助けてやるよ」



職員として病院に潜入した蠍火がリンリンマンの人形劇を初めて演じたとき、ただ一人喜ばなかったのが、ミクだった。 
任務のために良い人を演じていることを見透かされた気がした蠍火はミクに尋ねた。 リンリンマンのどこが楽しくなかったのですか?と。

「リンリンマンが倒した怪獣カメゴンはみんなを困らせるために町で暴れたの? お父さんやお母さんとはぐれて寂しくて心細かったから町にやって来ただけかもしれないじゃない」

能力者の企てたテロによって両親を亡くし、自分も怪我を負ったというミクの言葉を聞いた蠍火は人形劇の設定を変えた。
リンリンマンは怪獣をやっつけたりしない。 お仕置きをした後に面白いギャグを披露して一緒に大笑いして友達になる。
自分の印象を良くするために、任務の遂行のために計算した上での行動だった。
しかしリンリンマンのギャグに微妙な空気が流れる中、大喜びしているミクを見た時、蠍火の中で何かが変わり始めていた。

…ミクちゃん。 あなたのことを救いたい。 他の誰かを傷つけることしかしてこなかった私が今さらこんなことを思うのは変だけど。
蠍火の思いとは裏腹に、その身体からは力が失われていた。

「「リンリンが「バッチリです」と言えば、喜びが何倍にも増えた」」
「「危機に陥った時、リンリンの「バッチリです」を聞けば勇気が湧いてきてピンチを乗り越えられた」」

屋上で戦った女、愛の言葉が思い浮かんだ。
大事な局面で誰かも判らない女の言葉を思い浮かべた自らをッ蠍火は自嘲した。 そして…。

「…バッチリです」

力を失った蠍火に背を向け、飯田の待ち受ける院長室に向かおうとした小川の背後で声がした。
振り返った小川は、手摺りを頼りに立ち上がろうとしている蠍火の姿を目にした。
蠍火の蒼く光る瞳に宿る揺るぎない意志を見て取った小川は悟った。

「君も繋がっちゃったみたいだね」

憎むべき高橋愛によって、並行世界に存在するリゾナンターと繋がった蠍火を倒すために、小川はチカラを発動した。

小川の反射の前には自分の拳も炎も跳ね返されてしまうことを体感している蠍火は戦い方を変えた。
炎によって発生させた煙で小川の視界を奪い、空気を燃焼させて酸欠状態に追い込んでいく。
自分の反射をすり抜ける蠍火の老獪な戦い方に冷静さを失った小川は闇雲に突撃するが、足場を失い宙に投げ出される。
蠍火が発炎能力で手摺りや防護ガラスを固定していたビスを焼き切っていたのだ。
吹き抜けのフロアを眼下にしながら、飛び出していた金具を辛うじて掴む小川。

「戦ってみてワカリマシタ。 あなたのそのチカラは誰かを傷つけるためのチカラではない。 大切なものを守るためのチカラデス」
蠍火が手を差し伸べている。

その手を掴もうとした小川だったが、次の瞬間はねのけて十数メートル下のフロアに落ちることを選ぶ。
格下の相手に敗れ、情けをかけられた屈辱に瞼を濡らす小川が思い浮かべたのは保田の顔だった。

「保田さん、力になれなくてす・い・・ま・・・せ」
そして時間は止まる。
「A」との戦いで傷ついた保田がフロアに激突寸前の小川を見つめながら、呟く。
「無様ね」
その言葉とは裏腹に、慈母のような瞳で小川を見つめ、手を伸ばす。 そして…。

制止した時間が動き出した。

蠍火はフロアに落下したであろう小川の姿を確認しようとするが、視界は自分たちの戦いで発生した煙によって遮られている。
唇を噛みしめると、立ち上がり院長室に向かう。
そして扉を蹴り開けた。

愛は祈るような思いで扉を見つめていた。
鈍い音。 金属の板が変形していく。誰かが扉を開こうとしている。
扉全体が破壊され、倒れていく。

「なんや、アンタか」
「A」が立っていた。 保田との戦いでいつになく傷ついているが、愛は気づいた様子もない。
「そのざまはどうしたことだ、世界の破壊者」

「A」は愛に確認した。
生体兵器としてこの世に生まれ、そのチカラを覚醒するために数多くの命を奪った過去をお前は乗り越えたのではないかと。

乗り越えたつもりだったが、誰かの命を奪うときの自分が、あんな風に笑って楽しんでるなんて思ってもみなかった。 そして仲間の運命を壊してしまったこと。
愛は言った。 自分は最低な存在だと。
「こんなあたしが全ての世界を救うなんてバカらしい。 あんたもそう思うやろ」

「A」の使命は愛の旅を完遂させることだ。 世界の破壊者、高橋愛を旅の終着点に立たせるためには、自身の安否も厭わない。
だから愛の罪の意識を減少させるだろう言葉を、言語バンクの中からサーチした。 洗脳、生命、価値観、催眠、薬物、教育。お前の責任ではない……etc 0.0015秒の時間を要した。
そして「A」の口をついて出たのは…。

「お前は最悪だ」
愛の目から涙があふれ出る。
「たとえ他人の生命を奪うことに罪悪感を覚えない教育を受けていたとしても、薬物を投与され、催眠を受けていたとしてもお前の耳には入った筈だ。 
お前のチカラに怯え立ちすくむ哀れな犠牲者の声を」
「A」は困惑していた。 愛の罪悪感を解消させるために選んだ言葉たちが愛を糾弾していくことに。
保田との戦いで体内に損傷が生じているのか。
この事態を止めようとするが、もう止まらなかった。
愛の顔は歪み、そして…。

「うるさい!」

自分が最悪だということは自分でも判っている。
でも「A」を含めた他の誰かは、愛の前から遠ざかることで最悪な事態を免れることが出来る、しかし…。

「このあたしはこんな最悪な自分を抱えて、死ぬまで生きていかなければいけない」
最強にして最悪である悲しみを、愛は吐露してしまう。

「遠ざからない」 「は?」
全ての世界を巡る旅が終わるその時まで、自分は愛から離れないと言いながら手を差し伸べる。 お前はこんなところでうずくまっていていいのか、と。
「A」の手を掴む愛。 その時はじめて「A」が傷ついていることに気づく。

「あんた」
愛の手が粘液で濡れる。 半透明の潤滑液はサイボーグである「A」にとって血液のようなものだ。

「構わない」 気にするなと言い掛けた「A」の言葉が愛の動作によって止まる。
「うわっ、バッチィ。 手が汚れてしもうたやん」
お前というやつは…。 「A」の嘆きが機械室に吸い込まれていく。

「ミクちゃん!!」
院長室の中ではミクと長い髪の女、飯田圭織が仲良く並んで絵を書いていた。
暢気そうにミクは書いた絵を蠍火に見せる。
リンリンマンの絵を描いたんだよと言うミクを部屋の外に追い出す。
「病院の人たちに出会うまで走って!!」

後ろ手に扉を閉めた蠍火はチカラを発動する。
掌に緑炎をかざし、飯田圭織に迫る蠍火。 飯田はというと卓上に置いてある自分の携帯電話を操作する。
助けを呼んでも無駄なことを告げた蠍火のポケットが振るえた。
出るように促す飯田を油断せず監視しながら、発信相手を確かめれば、刃千史の連絡員が使っている偽名だった。
まさかと思いながら電話に出た蠍火に聞き慣れた機械の合成声が告げる。

「同志蠍火よ。 世界の脅威となるミクを処断せよ」
目の前で飯田が話していることが、そのまま機械合成されている。

機械室の中では愛が「A」の手当をしている。
時折愛の気分が悪くなるのは、蜘蛛の糸のような結界の所為らしい。
「人間とは、能力者とは不便なものだ」
「A」の聴覚センサーが複数の足音を捉えた。
愛もまた…。

「刃千史という奴らの別働隊だな。 同志の失敗をフォローするため、裏切りを粛正するため、作戦には常に複数の人間が動いているのだろう」

自分たちに対する敵意を愛は確認した。

「お前は結界の影響が抜けるまで大人しくしていろ。 奴らに格の違いというやつを思い知らせてやる」
System「A」が再起動した。

飯田による指令は偽りだという蠍火。
中国四千年の歴史を闇から支えてきた刃千史に飯田が入り込める筈がないと言う蠍火に対して、飯田は淡々と経緯を説明する。
自分たちのチカラは世界の為に使うべきだという使命感に囚われた能力者の扱いは心得ている。
「私も自分の世界ではそういう組織に所属していたから」

飯田の能力は超越俯瞰。
世界で起きた過去、現在、未来の出来事を神の俯瞰で認識する能力。
「刃千史の幹部の過去を覗くことで、あたしのチカラを証明した。 そしてこの世界の未来を救うビジョンを提示したら快く協力してくれたわ」
だから自分の言葉は刃千史の意志を意味するという飯田は蠍火に命じた。

「ミクという子に緑炎執行なさい」
蠍火には視ることの出来ない未来、ミクは自分の両親の命を奪った能力者たちへの復讐に動くという。
その行為自体は未遂に終わるが、ミクのような境遇の子を復讐に駆り立てさせた能力者への怒りの炎が社会全体に飛び火するという。
「それは防ぐことが…」「出来ないわ」
ミクと絵を描きながらいくつかの可能性を探ってみた飯田は、ミクの存在がこの世界の未来に大いなる脅威を与えるという結論にたどり着いたと言う。

「感謝なさいよ。 神にも等しいこのチカラであんたたちの世界を救ってあげようていうんだから」
傲然と告げる飯田を目の当たりにした蠍火の掌中で、携帯電話が炎に包まれる。

「この世界を変えることが出来るのはこの世界に生きる全ての人の力デス」

刃千史に決別してでも、ミクを守るという蠍火に飯田は迫る。
「ならその炎でこの私を燃やしなさい」
ミクやリンリンを世界に対する脅威として、追討させることの出来る自分を殺すことが、ミクを守るということだ、と。

振りかざした緑炎を飯田に振り下ろそうとするリンリン、何度も発火と叫ぶが…。
「誰かの命を守るために誰かの命を奪うことなんて出来マセン」

変わってしまったリンリンを飯田は嘲笑う。
死亡フラグが立ちまくりだわよと。
悄然と院長室を後にするリンリンの背中を目にしながら、バッグから拳銃を取り出す飯田。
手にしたのは超小型のデリンジャー、弾頭は神経性の毒が散乱する特別仕様だ。

「こいつなら、カオリンでも外さねえだろ」
そう言ってデリンジャーを手渡した小柄の同僚の顔が何故か心に浮かび、飯田は顔をしかめる。
こんな近くで外す筈がないでしょう。 狙いを付けると無造作に引き金を引く。

リンリンは腰の辺りに鈍い衝撃を感じた。
撃たれた?
自分の背後で飯田が何か策を弄していたらしいことは判っていた。
だが銃撃のような直接的な行動はしないと思ったが…。
…ミクが抱きついていた。
泣きじゃくりながらミクが抱きついていた。
逃げるように言った自分の言葉を無視したミクのことを詰りかけたリンリンだったが…。
わたしのことを心配してくれたんだ。 こんな私のことを。
リンリンはミクを抱きしめるために膝をついた。
そしてミクを安心させるために言った。

「バッチリです」

院長室の中では飯田が砕かれた手首を不機嫌そうに見つめていた。
「A」の鋼鉄製のヨーヨーの仕業だった。
デリンジャーは愛の手の中にある。
新垣里沙によって封印されていた愛の忌むべき記憶を、蘇らせたことへの意趣返しのつもりなのかと飯田は毒づいた。
「だったら早くなさいよ」

「あなたは私に大切なことを思い出させてくれた。 自分の命すら顧みずに私のことを助けようとしてくれた大事な友達の存在を。 
そんなあなたには生きて欲しい。 自分で自分の命を奪って欲しくなんかありません」
愛と「A」は自分自身を撃とうとしていた飯田のことを制止したのだった。

「頭の中のこの辺に血の塊があるのよ」
飯田圭織の頭の中にある血腫、それが彼女の能力の根源だという。
飯田が十代の半ばの頃に交通事故に遭い、三日三晩の昏睡の果てに目覚めたとき、そのチカラが宿っていた。
超越俯瞰という神の視点。
学業、ギャンブル、投資。
自分のチカラを使えば、全ては思いのままだということは判っていた飯田だが、利用することはなかった。

「だって、全てのことがどうなるか判ってしまうんだから、バカらしいじゃない」

超越俯瞰の予知能力を使って自分の周囲の人間の未来を視た飯田は、それを誰にも明かすことなく満足していた。 判りきった未来へと歩む人々をバカみたいと見下ろしながら。

「大切だったのよ。 こんな私でも命をかけて救いたいと思ったぐらい大切な…」

予知で知り得た未来に介入しないという禁を破ったのは、飯田にとって大切な存在の危機を救うためだった。
交通事故によって両足を切断してしまうという忌まわしい未来からその人を救うべく、飯田は奔走した。
そして予知で垣間見たその日その時、その人の無事を確認した飯田は快哉の声を上げた。 
自分が神に等しい存在であるという確信。

「二週間後だったわ。 あの子が事故で亡くなったのは」

飯田は自分が視た未来を自分が変えることによって、自分の視た未来が歪んでしまうという負のループ現象に気付いてしまった。
その能力を見出され勧誘されたM。 Mが変質したダークネスに在り続けた飯田は、その能力を100%発揮することはなかった。
曖昧に伏せられ、高慢かつ思わせぶりな態度で告げられる未来の事実。
飯田から未来を告げられた者の殆どが、飯田のことを神様気取りの交信女と陰で嘲った。
しかし、それは未来を守るという飯田の信念がそうさせた擬態だった。

組織への協力を完全に拒否すれば、組織はどんな手段を使ってでも飯田の視た未来を知ろうとするだろう。 その結果未来は歪んでしまう。
未来を守る為に、未来への影響を最小限に抑える形で、自分の視た未来を伝える。
そういうやり方で飯田は未来を守ってきた。 そして飯田を統括する組織もそれで諒とした、少なくとも当面の間は。
たとえ全体の何十%でも明らかになった未来のビジョンを組織は有効活用した。
飯田と組織の微妙な関係はいつまでも続くかと思われた。 しかし…。

「視てしまったのよ。世界が消えてしまう未来をね」
自分が死ぬことには何の恐怖も覚えない飯田だったが、世界が消えてしまうという未来には心の底から絶望した。

「だって、あの子が生きていたという証さえ消し去ってしまうのよ、そんなの許せない」
飯田は世界の消滅を防ぐため、亜空間に偽装した世界に破壊者高橋愛を誘い込み、消失させるつもりだった。

「でも何も無いはずの世界に来てみれば、ちゃんと人が生きていて生を営んでいた」
蠍火やミクの生きる世界は自分が生み出したかのように感じたことで、飯田の目的は変容した。

「全ての世界を守れるなんて思わない。 でもせめて私の見出したこの世界だけは守ってみせるってね、でも…」

飯田の目がキャンバスに向けられた。 愛がキャンバスを覆っていた布を取り払うと、そこには…。
崩壊した都市、苦悶する人々、降り注ぐ豪雨。
「描けなかったのよ私には。 終末の雨が上がった後に架かる希望の虹を」

飯田は無傷な方の手でミクと絵を描いていたときに使ったクレパスを取った。

「あなたにはこのキャンバスに虹を描けるかしら」

「今の私には描けません。でも、いつか、必ず」  愛は差し出されたクレパスを手に取った。

たどたどしい愛の言葉を耳にした飯田は寂しそうに笑うと目を閉じた。 そして、その時が迫っているから一人にして欲しいと告げた。
飯田を残し自分たちが壁に開けた穴から去っていく愛と「A」。

「妹が居たのよ」 飯田の声がした。 「子犬みたいにじゃれついてきて、うっとうしかったけど、今になってみればあの頃が一番楽しかったわ」

病院から少し離れた公園に保田圭と小川麻琴がいた。
不甲斐ない自分を恥じて泣きじゃくる小川。

「いい加減になさい。 勝った者が、勝ち続ける者が強いわけじゃない。 負けた屈辱の中から立ち上がる勇気を持つ者が強いのよ」
そう差し出した保田の手を小川が握ろうとすると、掌を返した。

「でも全ての人間が強くある必要はない。 あんたは留守番してなさい」

Mに保存されていた細胞から生み出された再生クローンである現在の小川麻琴。
彼女が生まれ育った場所である富士の樹海の研究所を守るように指示した。
「あそこも人が住んでいなければ荒れ果てるばっかりだしね」

保田の申し出を小川は笑って固辞した。 まだ無理かもしれませんが、もう少し経てば立ち直れます。 だからあなたの力になりたい、と。
そんな小川に対し保田は別行動を指示した。

組織に背き行動している自分たちの動きを中澤裕子が察知したと。
保田の能力の前には中澤など恐れるに足らないと言う小川の盲信を保田は諫める。

「私は過去の遺物であるダークネスなど恐れはしない。でも中澤裕子と彼女の背後に感じる無限の存在には恐怖するわ」

保田は自分が過去に犯した過ちの後始末を小川に依頼した。 保田は保田で過去の決着をつけてくると言う。
高橋愛は泳がせて中澤裕子を引きつけてもらうと言った保田は小川に背を向ける。
保田が何処へ行くのか、何処で合流するのか尋ねた小川に対して保田は告げた。

「魔女を狩ってくるわ」

夕陽に照らされた病院前の広場。
芝の茂ったその場所で高橋愛とリンリンは向かい合っていた。
リンリンは自分を愛の仲間にして欲しいと頼んでいる。
強い抱擁が愛の答えだった。
もしも愛の身に危機が迫ったときは、自分を呼んで欲しいという。

「私には大した力もありませんが、勇気だけはアリマス」

どれだけ離れていても駆けつけると言うリンリンと強く抱き合って別れた愛。
院長室から持ち出していた一枚の紙を見る。
それは病院の資料の裏に走り書きされた絵。
瓦礫の山の中に見覚えのある看板が。
まさか喫茶リゾナントが…。
愛の胸騒ぎが収まらない。

 ――続く――



【次回予告】
瓦礫の前に立ち尽くす愛、そこは間違いなく喫茶リゾナントのあった場所だ。
事態を把握できない愛の目の前にもう一人の愛が現れる。
「ちょっと、あんた。 これはどういうこと?」
もう一人の愛を追跡してたどり着いた遊園地では謎の「ポロリ星人ショー」が開かれていた。
そしてポロリ星人と同じ姿形をした何人もの中澤裕子が姿を現す。
「全ての世界を統べて来た中澤ネットワークがお相手するで」
次回、モーニング戦隊リゾナンターR 第18話「中澤ネットワーク」
全ての世界の裕ちゃんを娶れ!!