『VanishⅡ~independent Girl~(8)』 - 3


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(3)
「カメ、小春、光井、覚悟は出来てるね」
高橋の問いかけに対して三人はそれぞれ答えを出していた
「愛ちゃん、愛ちゃんは絵里達のことを気にしないでください。絵里もサポートします」
「小春もがんばりますよ。道重さんを取り返しましょう」
「愛佳も後ろからですがサポートします!!」
「それじゃあ行くよ」

次の瞬間、高橋はさえみの後ろの空間に現れた
目標はさえみの後頭部。さえみの隙を狙い、思いを込めた蹴りを放つ
「そこですね」
さえみは振り向きもせず自身の背後、高橋のいる辺りへと手を伸ばす
「なんやと!?」
危険を感じた高橋は攻撃を中断し、再び亀井の横へと戻った

「言いましたよね、十八番は通用しないと」
「みたいやね」
表情は笑っている高橋だが内心はかなり動揺していた
というのもさえみの手をむけられた先の壁が綺麗に崩れていたからだ
「愛ちゃん、あの手は危険だね」
「うん、『物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)』、やはり敵にしたくない力だね」

「近づかなければいいんですよ!!高橋さん、小春に任せて!!」
高橋と亀井のほうに目を向けているさえみに向かって小春が雷を放った
赤い色の輝かしい雷はさえみにまっすぐ伸びていく
さえみはゆっくりと手を伸ばす
「・・・」
何も言わないが、雷はさえみに届く寸前で消えていった。
「遠距離攻撃も効果なし?」

「フフフ…皆さん、勘違いしていますよ。私の力を」
さえみが少し低い笑い声を響かせながら天井にあるシャンデリアを指差した
さえみの目が金色に光ると同時にシャンデリアに亀裂が入り、砕け散った
「こうやって見えるもの、もちろん触れるもの、全てを消せるんですよ」

「近づくのが危険、というわけではないんですね、高橋さん」
「でも近づかなくては何もできないし…」
「小春の雷が効かないみたいだし、どうしようか…」
何も言わずに亀井がカマイタチを突然放った
しかし、何も起こらずさえみは「無駄よ」と言って笑っている
「見えない風だとしても空気の震えでどこにくるかくらい予測できるわ
 『見えないから効くかも』、えりちゃんそんな浅はかな考えくらい想定の範囲内です」

「諦めんよ」
高橋が再び跳び、さえみの後ろに現れた
「無駄だっていっているのおわかりですか?」
さえみが手を伸ばし、現れた瞬間の高橋に0距離で光を放った
桃色の光が高橋を包みこみ、ゆっくりと高橋の姿が消えていく
「愛ちゃん!」「高橋さん!」
亀井、光井の悲痛な叫びが響く
「リゾナントリーダー高橋、大したことなかったですね」
「それはどうや?」
声がすると同時に高橋がさえみの真正面に現れ、さえみの顎に強烈なアッパーを入れた
そしてすぐに跳び、仲間の元へと戻り、久住にウインクを投げた

顎を押さえながらもさえみは無表情のまま高橋を睨みつける
「チッ、あれは小春ちゃんの幻覚でしたか…」
「そういうことですよ~愛ちゃんがあんな簡単にやられるわけないですよ☆」
「視界に入る前に攻撃すればええんやろ?それだけのことや」
高橋が簡単なことだ、とでもいうように微笑みかける
「いけます、これならさえみさんでも防ぎきれません!!」

「いや・・・それがそういうわけにはいかんみたいやね」
高橋が困り顔を浮かべているのに亀井が気付いた
先程から高橋は手を後ろに組んだままだ
「さえみさん、あなた…」
「愛ちゃん、何かされたんですか?」
亀井が高橋の腕を握り、さえみを殴った右手を自分に見えるように持ち上げた
「!!」

「あら、言っていませんでしたっけ?私に触れたものが壊れるように力を解放してますのよ」
さえみが近くにあった皿に触れた。すると皿は粉々に砕け散った
「ということは・・・」
光井が高橋の右手に視線を向けると・・・高橋の右手首から上が消えていた
「久住さんの雷も亀井さんの風も消される・・・でも触れたら否応なしに触れた部分が消される
 ただですら愛佳には何も攻撃の方法あらへん・・・どうすればいいんや?」

「愛ちゃん・・・」
亀井はすぐ横の高橋の顔を見つめるが、高橋の顔は暗い
「どうします?まだ続けますか?」
さえみが時折さゆみがみせる気だるそうな声で尋ねる
「無駄なんですよ、私に攻撃を与えようとすることは。全て無に消えるだけ
 それからついでに絶望的なことを教えて差し上げましょう」
さえみは右手に淡い桃色の光をともした
「私はさゆみのもう一つの存在、もちろん『崩壊』させるだけではなく『治す』こともできます
 なので先程高橋さんから頂いた、顎の傷、もう『消させて』いただきましたよ」
「じゃ、じゃあ、さえみさんを倒すには一撃で決めるしかないってこと?」
久住が光井に尋ねると光井は何も言わずに首を縦に振って答えた
「そんな…勝てないよ、勝てっこないよ、あんなのに・・・」

「そんなに悩んでいるなら、今度はこちらから行きますよ!」
さえみが4人に向けて光を放った
「みんな、あっしにつかまって!」
高橋の声に従い3人は高橋に触れ、跳んだ
「逃がしませんよ!かくれんぼみたいですね♪」
高橋といえども3人を連れての瞬間移動には限界がある
(どこか遠くに行くべき?それともこのまま逃げ続ける?どうする私)
心の中で自分自身との対話を始めた

「高橋さん、愛佳たちを気にしているなら大丈夫です!
ただ少しだけ遠いところに跳んでからにしてください」
「み、みっつぃ?」
久住は光井が自分を逃がしてほしい、そんなことを言ったので驚きの声を上げた
「道重さんを置いて逃げるって何考えているの!」
「違うわ!!新垣さん達にさえみさんが敵だって伝えんといけないやろ!
何も知らずに道重さんの元へと行ったら危険や!それを阻止させんと」
「あ、そっか、みっつぃ、冷静だね、こんなときでも」

「愛佳の言う通りですよ、愛ちゃん、エリ達だって自分の身くらい守ってみせます」
「…わかった、なるべくこの建物の端に逃げるから」
高橋はまた跳んだ―その数秒後には亀井、久住、光井の三人は古城の端の部屋に残された
「頑張るんやよ!!」
そう言い残し高橋はさえみの元へと戻っていった

「愛ちゃん、大丈夫かな?」
何度も仲間を連れて跳んだ高橋の身を心配する久住
「高橋さんならなんとかなる、無策で行く人やない。リーダーを信じましょう
 しかしさえみさんも派手なことしてくれはったわ」
三人の目の前にはすでに部屋と部屋の境目が無いくらいにぼろぼろになった光景が広がっていた
天井が抜け落ち、天井のかけらが家具を押しつぶしていたり、ソファの一部が見事に削られていたりする

「でもまさかさえみさんがあんなことを思っているなんて想像もしなかったな
 さえみさんがあんなに小春達のことを恨んでいたなんて」
「いや、あれは恨んでいるンとは違うと思いますわ、なんていうか妬みに近い気がします」
「妬み?」
「さえみさんは元々道重さんの孤独を生めるための存在だったわけや。そこに亀井さんが現れた
 自分の寂しさを埋めるために作りだされたさえみさんは焦ったはずや、自分の居場所を奪われて
 さらに愛佳達も道重さゆみさんの友達となっていく。ますます自分の価値を失って行った
 さえみさんはさゆみさんを守る存在として出現した。しかし、その守ることも必要なくなってきた」

そうして会話をしているうちにもさえみの放つ光は部屋を壊していく
みるみる内に壁に穴が空いて行き、建物内が一つの大きな部屋へと近づいていく
そして、ドシャーンという大きな音とともにれいなのキャーキャー言う声が聴こえて来た
「田中さんの声が聴こえた!!さえみさんがおるって忠告してきましょう!」
そういい光井、亀井、久住は新垣達の元へと駆けて行った

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

光井からの話を聴き終えた新垣達は言葉を失った
「さ、さゆやなくてさえみさんがおったと?しかも、帰りたいなら実力行使やないとあかん?」
「これはメンドクサイことになってしまったのだ。ただでさえこちらも問題が起きているのに」
「問題ってなんですか?」
光井が困り顔の新垣に尋ねた

「うん、それはね・・・」
新垣が雅を連れ去った熊が『熊井』という女の子であったことを伝えると光井は驚きの表情を受けべた
「熊井ちゃん?愛佳の後輩の?それが熊になっていた?」
「うん、そうなの。しかもその子をあいつらが狙っているの」

「おいおいあいつらとはひどい紹介の仕方だな」
吉澤が不満げな声を出して見せた
「仕方ないですって、一応敵なんですから」
マルシェも懐中電灯をしまっていた

「それで熊井ちゃんは今どこにおるんですか?」
「ミヤが上でみとる。あ、そういや、ミヤ!置手紙にはなんて書いてあったと?」
れいなが上の階に待機している雅に尋ねた
「あ、はい、熊井ちゃんはですね『逃げてください、今すぐに』って書いてあるんです」
「『逃げて』?自分から捕まえておいて何言っているんや?」

そこに高橋が音もなく現れた
「みんな、無事か?」
「愛ちゃん」「高橋サン」「高橋」とそれぞれ思い思いの呼び名で呼ぶ
マルシェと吉澤がいるのを見て高橋は一瞬戸惑いの色を浮かべた
「うおっ、なんであんたらがいるんや?」
「やっほー愛ちゃん、まだ元気なようだね」
マイペースなマルシェが挨拶を交わした

「ちょっとそんなことしている場合じゃないでしょ、愛ちゃんもマルシェも!
 今、さえみさんはどこにいるのよ!」
新垣が慌てて声を出した
「ここにおりますわ」
不気味な声が聴こえ、声のする方に顔を向けるとさえみが崩れ落ちたがれきに腰掛けていた
「道重」という吉澤に対し「さえみ」ですと答える

「役者は勢揃いの様ですね。意外な方もおられますけど」
さえみはゆっくりと、しかし全員の顔を眺めながら呟いた
「俺と会うのは初めてかもな、さえみさん」
吉澤が興味深々な様子で近づいた

「こいつがSSSランクの能力者か…あのお方と並ぶ数少ない能力者」
「何をおっしゃっているのか判りませんがそれ以上近づいたら、いや、ダークネスだから消しましょう」
言うや否やさえみは吉澤に向けて視線を合わせようと顔を向けた
吉澤はさえみの死角に逃げ込み、視線から逃げた
「おいおい、すこしくらい話させてくれてもいいんじゃねえの?」
軽い口調の吉澤に対してマルシェは半分あきれ顔だ
「あの人、楽しんでいます…」

吉澤はマルシェから距離をとり、椅子に座りこんだ
「あのさ、この事件、オマエ関わっているんだろ?」
「何のことでしょうか?」
「おいおいとぼけんなよ、熊井だっけ、あの子を連れてきたのも、あの現場から消えたのもお前の仕業だろ」
「さて、どうでしょうか?」
吉澤は脚をぶらぶらさせながら自論を進めようとするが、光井が割って入った
「どういうことや?さえみさんが関わっているって」

「落ちつけよ、光井愛佳、落ち着かねえとそこにいる不良娘と同じになるぞ」
「だれのことや?言うてみると!」
吉澤は何も言わずにれいなにむけて光弾を放つ

「まあ、道重がさらわれたのは本当なんだろうな
 ただ、あの現場で起きた消失事件、全て、さえみ、オマエがしたんだろ?」

「お前ならどんなに監禁されていたとしても逃げられるし、何人相手でも倒せる
 遺体が見つからないのも全て消すことができるお前の能力になら可能だ
 現場の景色もお前の綺麗な崩壊で再現可能」
「でも現場には血が流れていたんや、さえみさんなら血も残らない」

「あのなあ、『可愛い』道重さゆみを連れ去ったものを簡単にこいつが殺すと思うか?
 俺らの手下のどれだけが死ぬ前に地獄を見たと思う?死なない程度にいたぶるんだよ、こいつは
 もしくは『治し』ながら『壊す』ことが可能なんだ
 手首から先を消して、血が止まらないようにして失血死させる
 頸動脈を露出させて勢いよく、ショック死させる
 いくらでも血みどろにすることはできるだろ」

「それに熊井とか云う女の子を残してのも説明がつく
 熊井は人質として使えるからな。まさか獣化能力者とは思わなかったかもしれないがな」
「ミヤに向けた『逃げて』というメッセージ・・・」
その意味を理解し、黙り込む一同
「あいつはなるべく被害者を増やしたくないから、帰れなかったんだろうな」
「熊井ちゃん・・・」
「でも確かに吉澤の説明で納得いく部分はありますね」
光井が思い出したように言った
「唯一の生き残りのキーワード『黒い女』『闇』、どちらもさえみさんに当てはまる」

「そろそろおしゃべりはやめていただいてもよろしいですか?」
暇になったのだろうさえみはあくびをしている
「その前にさえみさん、今の推理が正しいか答えてくれないかな?」
高橋の問いに対してさえみは
「だって、さゆみを連れ去ったものを生かす必要なんてありませんもんね」
と推理が正しいことを認めた
「なんでや、なんでそこまでするんや!」と高橋が大声を上げたが、さえみは表情も変えずに
「邪魔な者は消すのみですよ。私は正義とかどうでもいいと思っていますので
 さて、そろそろ結論、出してくださいね、私と戦いさゆみを連れて帰る
 もしくはこのまま帰るか、もちろんダークネスのお二方は帰しませんけどね」

「そんなの」
高橋がゆっくりと立ち上がる
「決まっているよね」
新垣が安全装置を解除する
「何をするかなんて」
亀井が髪止めをはずす
「愚問やね」
れいながグローブをはめ直す
「小春達に出来ること」
小春がちいさく跳ねる
「それは、ただ一つや」
光井が背伸びをする
「道重さゆみサンを」
ジュンジュンが栄養剤を口に放り込む
「取り戻ス!」
リンリンがポケットから飴を取り出す

「それじゃあ、最後の戦いと行きましょう
 ルールは私を倒す、もしくはあなた達がさゆみに必要だと認めさせればさゆみを返します
 もう手加減はしませんよ。もし死んでもさゆみには忘れてもらいます
 そのためにあの子をここに残したんですから、熊井ちゃんをね」

「そうか、あの子をここに残せば、仲間が来る…
 記憶を消す能力『消失点』を持つ雅ちゃんが…そこまで考えていたのか?」
マルシェがさえみの頭の良さに驚きつつ、ポケットから銃を取り出す
「流れにのまれるんじゃねえぞ。道重さえみ、面白い、敵として申し分ねえな
おい、マルシェ、死ぬんじゃねえぞ、帰って上手い酒飲む約束忘れんなよ」
吉澤も靴ひもを結び直し、前髪を留め、戦闘態勢に入る

「さゆを」「「「「「「「取り返す」」」」」」」」
「さあ、楽しもうぜ」「まったく、メンドクサイですね」
「・・・」