『妄想コワルスキー・Full throttle』(後)【枕を三度叩いた・END】



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       ★          ★          ★

「金なんか持っとらん。 警察でもどこへでも突き出せばよか」

「上等じゃないか、クソガキ。 お望み通り警察に通報してあんたの親を呼びだして、あんたが飲み食いした分の代金はキッチリ払ってもらうよ」

「れいな、親なんておらんし」

「いいかげんなことを言ってるんじゃないよ」

「ちょっと新垣さん。その子のことは私に任せてくれる。 ねえあんた。 名前はれいなっていうの。 お金がないんだったら、ウチでバイトして返さない?」

「あんた何考えてるの。 そんな泥棒猫を店に入れたら何をしでかすかわかんないよ、まったく」

          ★          ★          ★       

「私のことをコソコソ嗅ぎ回るなんてどういうつもり」

「嗅ぎ回ってるつもりなんてない。 ただ愛ちゃんやあんたが夜になったら何処へ出かけるのか気になって」

「大人には大人の世界ってものがあるんだよ。あんたみたいなガキには関係ない」

「れいなガキなんかじゃない」

「他人のことばかり気になって、自分のことがお留守になるやつはガキさ」

「だって」

「今あんたがやるべきことはリゾナントに来たお客様を笑顔でおもてなしして、また来たいっていう気持ちになってもらうことさ」

「そんなこつ言われたってれいなうまく笑えんし」

          ★          ★          ★

「ったく、こいつら催眠で痛覚を鈍らされてるせいで、何発殴ったって効いてるんだか効いてないんだか。いっそひと思いに」

「待って新垣さん。この人たちの催眠を解くことは出来ないの?」

「簡単に言ってくれるけど、かなりの期間かけて構築された術者との信頼関係を壊すにはそれなりの手順っていうものが」

「お願い新垣さん」

「わかった。その代わり条件がある。その新垣さんっていう呼び方はいいかげんやめてくれないかな」

「じゃあガキさん。お願い」

「…とりあえず、一旦退こう。こんな乱戦状況じゃ話にならない」

「じゃあせめてあの人だけでも」

「待て!そいつは罠だ!!」

          ☆          ☆          ☆

怒っている
天が地が怒っている。
驕り高ぶった人間の愚かな振る舞いに怒っている。
その怒りは大地を揺るがし、天を裂き、全てを燃やし尽くす炎となってこの世界を襲う。

―何か揺れているな。

最初は音だった。
調度品が揺れている音で目覚め、身体に感じる振動で肝を冷やした。

―地震だ。 そんなに大きくはないみたいだけど。

思いながら今の自分の状態を確認しようとした里沙の身体の上に、何かが覆い被さってきた。

―ひっ、何。

柔らかな匂いが鼻をつく。
桃の果実っぽい。
それなりの重み、ジャラジャラという音。
人間の温かみ。

やがて揺れが収まった。
里沙の身体の上に覆い被さっている者はそのままの状態を保つ。
その重さが煩わしくなった里沙は声をかける。

「もう退いてくれるかな、田中っち。 あんたのアクセサリーが当たって痛くてしょうがない」

里沙の言葉を耳にしたれいなは慌てて里沙の身体の上から降りた。

「いきなり揺れ出したからびっくりしたと」

―意識のない私を守ろうとしたわけだ。

里沙はリゾナントの長椅子の上に横たえられていた。
身体の上にはブランケット。
締め付けが強すぎて気分が悪くならないようにするためか、上半身はインナー姿にさせられていた。

ブランケットを羽織って起きようとする里沙をれいなは慌てて止めた。

「もうじきさゆを送った愛ちゃんが帰ってくるからそれまで寝とった方がいいっちゃ」

「…さゆか」

気を失う直前の記憶が蘇る。

―さゆの精神探査を逃れるために、心の中を素数で満たそうとしたが、計算にモタモタしている間にテンパって気を失ったんだ。

―まったく醜態を晒したものだ。

愛がさゆみを送っていったということは、私の精神を探ることでさゆもかなり疲労したということだろう。

愛としてはさゆみもリゾナントで休ませたかったのだろう。
しかしどうしても外せない用事があるさゆみを一人送り出すことができなくて、最寄りの駅まで送ってったってところか。

里沙は現在の状況を推し量ることで働きの鈍っていた頭を再稼働させようとしていた。

―で、外から帰ってきたこの子を私のお守り役につけたのか。

派手な服装に安っぽいアクセサリーを身につけたれいながカウンター席に座っている。
自分が腰掛けている横の席にバッグを置いている。

「いつから私の面倒見てるのさ」

「いやれいな今帰ってきたところだから」

「ふーん、帰ってきたばかりねぇ」

―嘘だな。 私に気を使わせまいと気を使ってるんだ。 お客様に愛想笑いも出来なかったこの子が、そんなに細やかな心遣いをできるようになるなんて。

「じゃあ、田中っち。 私もう大丈夫だから部屋に行って着替えてきなよ」

里沙の勧めにもあいまいな返事を繰り返して、その場を去ろうとしない。

別にばつが悪いというほどではないが、何となく気まずい時間が流れる。
それを紛らわせようと、話しかけようとする。

「たな…」「ガキ…」

お互いに同じことを考えていたみたいだ。
苦笑いしながられいなに話すよう促した。

「こうやってガキさんと二人っきりになるのはあん時以来やね」

「ああ、そうだっけかな」

それだけでれいなが何を言っているのかわかった。

「あの時も暗かったかね」

「うん。でも今日と違ってあの時は朝早くだった」

あの時―誤って高橋愛を傷つけたことで自分を責めた田中れいながリゾナントを去ろうとした朝。

「あの時のことはれいな一生忘れられん。 ガキさんが止めてくれんかったらあのままリゾナントを出て行ったと思う」

「別にあんたのこと止めようと思ってたわけじゃない」

里沙の口許を見つめるれいな。

「泥棒猫が何か持ち出さないか見張ってただけなんだけど」

ひど~い、というれいなの顔はでも笑っている。

「でもガキさんがあん時言ってくれたことは今でも覚えとうよ」

「そんなに感動的な台詞を言った覚えはないんだけどね」

          ★          ★          ★

新生リゾナンターがまだ高橋愛と新垣里沙の二人だけだった頃の話だ。
愛が経営している喫茶リゾナントを一人の少女が訪れた。
席に着き注文する声が震えている少女のことを不審に思った里沙は愛に目配せをした。

―この子ちょっと様子がおかしいんじゃないかな

愛は里沙の心配をよそに、オーダー通りの料理を出した。
愛一人で切り盛りしている店だ。
そんなに手の込んだ料理を出せるわけではない。
オムライスにスープ、サンドイッチぐらいのものだ。
最初はおずおずと食べていた少女だったが、食が進むにつれ貪るように食べていった。
里沙はそんな少女のことを訝しげな目で見ていたが、勘定の段になって金を持ち合わせていないと少女が言い出すと詰め寄った。

「金なんか持っとらん。 警察でもどこへでも突き出せばよか」

「上等じゃないか、クソガキ。 お望み通り警察に通報してあんたの親を呼びだして、あんたが飲み食いした分の代金はキッチリ払ってもらうよ」

          ☆          ☆          ☆

「でもよくよく考えたらあたしリゾナントの経営には一切関わってなかったんだけどね。 あの頃もそして今も」

「まして、あの頃のガキさんはスパイやったし」

何気に言ったれいなの一言に顔色が曇ったか、れいながごめんと詫びてくる。

「いやいやいや、実際そうだったし。 でも強がってるあんただってブルブル震えていたよ」

「だって、れいな食い逃げとか万引きとかやったことないし。 ガキさんは鬼のような顔をしてたし」

「鬼ってねえ、あんた」

里沙とれいな、二人にしか共有できない空気が流れる。

          ★          ★          ★

金がないと支払いを拒む少女の腕を掴んだ里沙を愛がなだめた。

「ちょっと新垣さん。その子のことは私に任せてくれる。 ねえあんた。 名前はれいなっていうの。 お金がないんだったら、ウチでバイトして返さない?」

高橋愛に接触してリゾナンターの有力な支援者である寺田光男の動向を掴むという指令を受けていた里沙にとって、愛が無銭飲食の現行犯をどう扱おうと本来は関係のないことだった。
こういう状況に居合わせた人間なら、こういう反応を見せるだろうと、上辺だけの対応をするつもりだった里沙の口調が熱を帯びてきたのはどうしてだったのか。

「あんた何考えてるの。 そんな泥棒猫みたいな娘を店に入れたら何をしでかすかわかんないよ、まったく」

          ☆          ☆          ☆

「今は装備や機材の支援体制も整っているけど、あの頃の愛ちゃんはセミリタイアから復帰した状態だった。
寺田さんからの資金援助もなかった。 だからリゾナントの経営も楽じゃないのにバイトして返せとか何考えてんだと思ったわけよ」

「れいなもまさかそんな風に言われるなんて思ってなかった。 それにバイトて言っても皿洗いぐらいだろうって思ってたら、いきなりウエイトレスをやれって」

「ちょっとした罰ゲームだったよね。 誰得?の」

          ★          ★          ★

れいなの初バイトは、私服姿にエプロンを付け、仏頂面でトレイを抱えているだけで終わってしまった。
閉店時間になり、レジを締め売り上げを計算しはじめた愛は、所在なげに立ち尽くしていたれいなに声をかけた。

「あなた、れいなさん。 気の毒だけど今日のバイト代ではあなたが食べた料理の代金には足らないわね」

顔が曇ったれいなに愛は笑いかける。

「頑張って明日も続けようか。 あ、ウチに泊まってっていいから」

里沙は愛の甘さに付き合っていられないとその場を立ち去った。
数日後リゾナントを訪れた際には、本格的なウエイトレスの衣装に身をつつんだれいなの姿が見られた。
その表情は相変わらす硬いままだったが。

          ☆          ☆          ☆

「まあしかしあんたも大分苦労したね。笑顔でお客様をもてなせるようになるまで」

「愛ちゃんは黙って見守っててくれたけど、ガキさんにはかなりしごかれたと」

「そんなに笑うのが苦手だったら、お客のことを人間だと思わずお札だと思えとか、今思い返すとメチャクチャ言ってたわ」

「コーヒーを飲める店なんかいくつもある中でリゾナントを選んでくれたのはホントにありがたいっちゃ。でもいざ笑っていらっしゃいませって言おうとすると固まってしまって」

「おまけに優しい愛ちゃんと鬼のようなあたしとで夜な夜な出かけていたのも気になるし」

          ★          ★          ★

「私のことをコソコソ嗅ぎ回るなんてどういうつもり」

「嗅ぎ回ってるつもりなんてない。 ただ愛ちゃんやあんたが夜になったら何処へ出かけるのか気になって」

愛に信用されて、リゾナントに出入りするようになった里沙はダークネスからの新しい指令に困惑していた。
その指令は戦いの最前線から遠ざかっていた愛の実戦感覚を強化せよというものだったからだ。
上層部の意図を確かめようと連絡要員に子細を尋ねてみたが、彼もその不可思議な指令の目的は知らされていなかった。
それでも彼の推測を混じえて一つの仮説が組み上がった。


ダークネスは人類の根絶を目的とするカルト集団ではない。
領土を実効支配し、国家として承認させることを目指しているわけでもない。
破壊活動によって恐怖を与え、扇動工作によって憎悪を煽り、人心を支配して、世界を理想の形に作り替えるのが目的だ。

ダークネスは確信していた。
人は一人では何も出来ないあまりにも弱い存在であることを。
ダークネスは知っていた。
人が絶望の淵から立ち上がる強さを持った生き物であることを。

ただ恐怖を味あわせ、不信感や憎悪を煽るだけでは、人の心は闇に堕ちない。
ダークネスが世界中の人間の心を闇で覆い尽くすには、人間に希望を抱かせればい良い。
希望の象徴は強ければ強いほどいい。
闇に抗う正義の象徴に抱く人々の希望が頂点に達した時それを打ち砕けば…希望を失った人間は絶望の深みに堕ちていく。

新垣里沙は組織の駒に過ぎない。
与えられた任務を粛々とこなしていくだけだ。
精神感応と念動力。
高橋愛の持つ位相の異なる二つのチカラを有機的に組み合わせて、戦闘力をアップさせる手段として実戦の場を選んだ。
ダークネスと戦わせたわけではない。
ダークネスの名を詐る能力者や犯罪者グループの情報を入手して、愛を立ち向かわせたのだ。

愛の身の安全だけを考えたら、自分がマンツーマンで鍛え上げた方がいいだろう。
練習や実験の場でもチカラの覚醒や成長は起こり得る。
しかしチカラとは魂の輝きだ。
命を賭けた実戦の場でチカラを発動させることで得られる効果は、トレーニングモードで得られるそれと比較にならないぐらい大きい。
里沙が敢えて厳しい道を選んだのは、愛に強くなって欲しかったからなのかもしれない。
ダークネスの思惑を越えて。

愛の成長は速かった。
元々の資質が高かったこともあるが、実戦の場でチカラを発動した効果も大きかった。
そこに慢心があった。

         ☆          ☆          ☆

「愛ちゃんはなんでれいなのことをあんなにかまってくれたんやろう。 れいなにあんな力があることを知ってて、仲間にしようとしたんやろうか」

里沙は首を振った。

―私たちがあんなに引かれ合い集ったのは、私たちが能力者だったからなのは間違いない。
―だけどリゾナンターのリーダー愛が、ダークネスとの戦いのために能力者を仲間にしようとしていたとは思えない。
―私たちが能力者として生まれたことで、背負ってしまったかなしみが響きあい、引かれあったとしか言いようがない。
―その中心にたまたま高橋愛がいただけだ。

「もしも愛ちゃんがチカラが目的で、れいなに優しくしたんだったら、あの時だってれいなを置いて行かなかったと思うよ」

れいなが変な顔をした。

―私何か変なことを言った?

         ★          ★          ★

能力者が介在する武装強盗団の情報を入手したのは、警察庁のデータバンクからだった。
怪しげな情報を紹介する闇サイトで集めた人間を、“催眠”で使い捨ての操り人形に仕立てる能力者。
彼は自分のことをダークネスの一員だと名乗っていたが、それは犯行先の被害者を恫喝するための偽りだった。

その能力者は単体での戦闘力こそ見るべきものはないが、“催眠”で取り込める私兵の数の多さは決して侮れなかった。
躊躇っている里沙を尻目に、愛が率先して摘発に向かったのは、リゾナントの営業が終わり締めの作業を全部済ませてからのことだった。

強盗団の狙いは暴力団が運営する違法カジノの売上金だった。
カジノが設営された商業ビルの正面から襲撃した強盗団の一味は、警備していた組員の銃弾に倒された。
警察の摘発を逃れるためだろう。
銃弾の的となり倒れた強盗団の死骸を、組員たちが運び出そうとしたときに、それは起こった。


遠隔操作で作動する爆弾を仕込まれていた強盗団一味の身体が爆音とともに炸裂した。
その衝撃で警備の組員たちの大半が活動不能の状態に陥った。
抵抗する者が居なくなったのを見計らうように強盗団の主力が姿を現した。
まだ生きている警備の組員たちに止めを刺そうとしている状況を見てられなくなった愛は、飛び出して強盗団に戦いを挑んでいった。

トレーニングで鍛え上げた身体能力と里沙との実戦で精度と威力を上げた念動力を駆使する愛。
しかし能力者の“催眠”で意志を奪われた傀儡たちは、攻撃を受けて倒されても何事も無かったかのように立ち上がってくる。

「ったく、こいつら催眠で痛覚を鈍らされてるせいで、何発殴ったって効いてるんだか効いてないんだか。いっそひと思いに」

催眠で思考を操られているとはいえ、まともな人間なら訪れない闇サイトで集められた人間たちだ。
命までは取らずとも、手足を破壊して戦えないようにすれば手っ取り早いのだが、愛はそんなやり方を選ばなかった。

「待って新垣さん。この人たちの催眠を解くことは出来ないの?」

そんな愛のことを甘いと思いながら、その選択を良しとした里沙は、傀儡を操っている能力者を倒してから、催眠を解こうとした。

「簡単に言ってくれるけど、かなりの期間かけて構築された術者との信頼関係を壊すにはそれなりの手順っていうものが」

「お願い新垣さん」

「わかった。その代わり頼みがある。その新垣さんっていう呼び方はいいかげんやめてくれないかな」

「じゃあガキさん。お願い」

誤作動の危険性を考えれば、全員に爆弾が仕掛けられているとは思えないが、用心するに越したことはない。
そのために一旦その場を離脱して体勢を立て直そうとしたが、大声で痛みを訴える男を、愛は見捨てておけなかった。

「じゃあせめてあの人だけでも」

「待て!そいつは罠だ!!」


男は客としてカジノに潜入して、内部から傀儡を操っていた能力者だった。
部外者を装っていた男は、犯行を防ごうとする愛を襲った。
戦闘系の能力者でない彼は、拳銃を武器に用いた。
鳴り響く銃声、銃弾が愛の身体を掠める。

「お前らぁぁぁ、愛ちゃんに何するとぉぉぉ!!」

そこで聞こえるはずの無い声が聞こえた。
リゾナントの留守番を命じられたれいながいた。
今夜のことを何も聞かされずにいたれいなは、愛のことが心配でたまらなくなり後をつけて来ていたのだ。
その顔は怒りで歪んでいた。

「れいな、危ないから」

自分が傷ついたにもかかわらずれいなが戦闘に巻き込まれることを防ごうとする愛。
一方拳銃を手にした催眠能力者は、突然の乱入者に怒りの矛先を向ける。

「お前ら、さっきから何なんだよ。俺の邪魔ばかりしやがって」

今度はれいなに向けて引き金を引いた。

「むん!」

自分に向けた凶弾が発射されたのが目に入っていないのだろうか。
れいなは拳を突き出した。
もしれいなと男の間の隔たりが拳の届く程度の距離なら、少しは有効な反撃だったのかもしれない。
しかし両者の距離は20メートル以上、反撃に遠く及ばない、悲しい最期の悪あがきにしか見えなかったが…。

―何これ、まるで龍が飛んでいるみたい。


れいなの突き出した拳から炎が走っていた。
猛々しく荒々しい炎が一直線に男に向かう。
男の手にした拳銃から発射された銃弾は炎によって焼き尽くされたのか、急激な燃焼で発生した水蒸気によって軌道を変えられたのか、れいなには届かなかった。

突然男の身体が自動車に跳ねられたみたいに飛んだ。
れいなに人を傷つけさせないために愛が念動で飛ばしたのだ。
ビルの壁に強い力で叩きつけられた男の口から血が流れ出す。
一瞬後、男の立っていた場所を炎が襲う。
その炎熱の余波は愛にも及ぶ。

「熱っ」

「愛ちゃん!!」

れいなが悲痛な声を上げる。

―カテゴライズするならば、田中れいなが発動しているチカラはパイロキネシスというになるんだろう。

能力者の生体波動で物質の分子を超高速振動させ、その摩擦で発生する熱で物質を燃焼させる能力。
他の組織へ潜入するスパイの任務に就いた時点で、組織が掌握している能力者に関する情報は頭に入れていた。
しかし今眼前で展開しているれいなのチカラはそんな生易しいものではなかった。

物質を加熱し燃焼させる過程が抜けている。
まるで高橋愛が傷つけられた怒りの感情が激発し、そのまま炎となって顕現しているようだ。

―凄いけど、あいつは自分のチカラをコントロールできていない。 このままじゃ炎に取り込まれる。

自分が生み出した猛烈なこ劫火で愛を傷つけてしまったことに衝撃を受けたれいなは軽い放心状態に陥っていた。
そんなれいなの足下が裂け、炎が現出している。
アスファルトは高熱で溶けかかっている。


愛は強盗団やカジノを警備していた暴力団員が炎に焼け尽くされないよう、念動力で安全圏内に吹き飛ばしていた。
かなり荒っぽく行ったために、飛ばされた人間は身体を建物や道路に強く打ち付け、苦悶の声を漏らしていたが気に止める様子はなかった。

れいなを中心として幾筋もの炎の河が走っていた。
その河が愛とれいなを隔てている。

―おいおいマジ。 アスファルトまで融け出している。

アスファルトが何度で融け出すのか里沙は知らない。
ただそれほどの炎を生み出す発炎能力者の存在がこれまで確認されたことのないことは知っている。
自分の能力を戦闘に利用するパイロキネシストの中には、発火しやすい火種や火持ちの良い燃料を仕込んでいる者もいる。
それなのに、あのれいなって娘は。

―惜しいな。 これだけの炎を完全に使いこなせたなら、ひょっとして…でもあんなチカラの暴走状態を止められる人間なんていやしない。

「れいな、大丈夫だから。今わたしがそっちに行くからじっとしてて」

「愛ちゃん、ゴメン。 れいな愛ちゃんを傷つけるつもりなんてなかったと」

全てを諦めたような表情を見せていた。

「ウエイトレスを上手くできんでゴメン。 れいなどうやって笑ったらいいかわからんけん、お客さんにイヤな思いさせてしもうたかもしれん」

「そんなことない、れいな。 最近はあんたをお目当てに来てるお客さんもいるから。さあ、わたしと一緒に帰ろう」

聞こえているはずの愛の言葉がれいなの心には届いていない。

「昔がらこげんやったとよ。 パパに殴られて怖いて思った時、学校でからかわれて怒った時、どうしてかわからないけどれいなん周りで物が燃えてしまう」

―その頃はもっと小さな火だったんだろうな。 火事にもならないレベルで収まってしまう程度に小さな。


漠然とした思いはあった。
田中れいなもまた能力者ではないかという予感。
スパイという里沙本来の使命からすれば、れいなに関する調査も進めておくべきだったかもしれない。
しかし、愛以外の人間に頑なに心を閉ざすれいなの態度がそれを阻んだ。

それでもマインドコントローラーの里沙がその気になれば、れいなの秘密を曝け出すことは可能だったろう。
しかし愛の戦闘力を強化せよという指令に感けてしまっていた。

―高橋愛という能力者、それも精神感応と念動力という位相の異なるデュアルアビリティと寝食を共にしていたことが、れいなのチカラを加速的に強化した?
―それとも高橋愛にはもっと別のチカラが?

淡々と田中れいなに関する思考をまとめる里沙。
彼女の中でれいなはもう終わってしまった存在だった。
自らの中に秘めた能力を暴走させ壊れつつあるあわれな人間でしかなかった。
しかし、高橋愛にとってはそうではなかった。

れいなと自分を隔てる炎の河を前に叫ぶ。

「れいな、あんたのいる場所から炎の無い所へ逃げられない?」

「信じて欲しいっちゃ。 れいな火をつけたら悪いことは判ってる。 火をつけようと思ったことも無いけん。 でもでも…」

愛の顔に浮かぶ逡巡、そして強い意志。
両腕で顔を隠しながら、れいなに向かって跳ぶ。
念動を作用させ、強化した脚力で炎の河を越える。

「ひぃ」

脅えたれいなの手が愛の身体に触れる。
蒼白い炎が立ち昇る。


「愛ちゃん!!」

「大丈夫だから。 れいな、大丈夫だから」

「うわあああああん」

          ☆          ☆          ☆

「愛ちゃんと一緒にリゾナントで住んでいたことがれいなのチカラにも影響した。 まだあの時点では愛ちゃんも自覚していなか愛ちゃんの本当の力、共鳴増幅が作用した」

「れいなもそう思う。 それまでにもれいなが怒ったり泣いたりした時に、れいなの回りで物が燃えたりすることはあったと。 でもあん時みたいに大きな火になったことはなかと」

「そうでもなければ、あんたみたいな強力なパイロキネシストの存在をダークネスが放って置くはすがない。 それで…」

言葉を切った里沙を見つめるれいな。

「れいなはそのことをどう思う。 愛ちゃんと出会わなければあれほどのチカラを手にすることは無かったかもしれない。 もしかしたら普通に暮らしていけたかもしれないけど?」

「もし愛ちゃんのことを恨んでるかって云うんなら、答えはノーたい。 だって」

愛の負傷によって暴走する以前ににれいなが発生させた炎はすぐに消火できる程度のものだった。
中には自然と消えてしまったものもある。
そんな小さな炎でさえ、れいなの父親は恐れた。
俺の娘はそこら中に火をつける恐ろしいガキだ、と。
このまま放っておいては取り返しのない事態になると思った彼は、厳しくれいなに接した。
しかし、れいなは自分の意志で炎を発生させていたわけではない。
怒られ、蔑まれたことで感情が激発して、無意識の内に炎を生じさせていたのだ。

自覚していない不審火の責任を問われ、叱責され、度を過ぎた体罰を受けたことは更なる感情の激発を呼んだ。
頻発する発炎現象という悪循環。

「今のれいなにはあの時のパパの気持ちはわかる。 でも、れいなはパパにも他の子らにも怪我をさせたことはないけん。 でも…」

高橋愛は傷ついた。
れいなの発生させた炎によって。
自らの生んだ炎に飲まれようとしたれいなを助けるようとして、高橋愛は火傷を負った。

田中れいなにはそのことが許せなかった。
誰からも疎まれていた自分に優しい言葉をかけてくれた高橋愛を傷つけた自分が許せなかった。
誰も認めてくれなかった自分の事を認めてくれた高橋愛を傷つけたのが自分だという事実に耐えられなかった。
だから、田中れいなはリゾナントを去ろうとした。

          ★          ★          ★

朝と呼ぶにはまだ暗い夜明け前。
喫茶リゾナントの入り口から出て来た人影が一つ。
人影の主は自分が出てきた場所を暫しの間名残惜しげに眺めていた。
どれぐらいの時間が経ったのか。
新聞配達のバイクの走行する音が聞こえて来た。
人影の主―田中れいなは自分が出てきた扉に施錠しようとする。
そんなれいなに声をかける者がいた。

「喫茶リゾナントの看板娘がこんな朝早くにどこにお出かけだい」

その声を聞いたれいな驚いたようだが、どこかホッとしているようにも見えた。

「ガキさん。 止めても無駄やけん」





「何か勘違いしてるみたいだから言っとく。 私はあんたがリゾナントを出て行くのを止める気でここにいるんじゃない」

れいなの顔が失望で染まる。

「じゃあなんで」

「手癖の悪い泥棒猫がどさくさ紛れに何か持ち出していかないか見張るつもりだったんだけどね」

「れいな、そんなことせん!」

里沙は人差し指を口の前にかざす。

「静かに。 あんまり騒ぐと愛ちゃんが起きてきちゃうかもしれないだろう」

れいなは怒りを辛うじて静めると、手にしていたリゾナントの鍵を里沙に押し付ける。

「これ、もういらんけん。 あんたから愛ちゃんに返しとって」

里沙はそれを婉曲に拒んだ。

「いやあ、私だってこの店に直接関わってるわけじゃないし、そういうことは当事者同士でやってもらわないと後でトラブルになりかねないしね」

ならば後から郵便で送る、とその場を立ち去ろうとするれいなの腕を里沙は掴む。

「まあ、そう慌てないで。 こんな所で立ち話も何だから中で話そうじゃないか。 あんたが知りたがっていたことを教えてあげるからさ」

拒もうとしたれいなだったが、従わないなら梃子でも動かないという里沙の様子に渋々折れた。

「じゃあ、ちょっとだけ」

          ☆          ☆          ☆

「ふーん、きちんと開店準備してるじゃないか。 テーブルはチリ一つ落ちていないし、カップはピカピカに磨かれてる。 ナプキンも綺麗に折りたたんで」

これならすぐに営業できると言う里沙に対して、れいなは大声を出さないように頼む。

「一応薬は効いてると思うけど、愛ちゃんが起きてきたら困るけん」

「ああ、そうだっけ。 じゃあ今日は休業するのかな」

里沙の少し的外れな質問にれいなは首を振る。

「そんなことれいな知らんけん。 なあもういいっちゃろ。 愛ちゃんが起きる前にれいなこの店を出て行きたいから」

縋るような目で里沙を見つめる。

「出て行くだって!」

さも驚いたというように目を大きく開く。

「何であんたが出て行くんだい」

「わざとらしい。 愛ちゃんに、あんなに優しくしてくれた愛ちゃんに傷を負わせてしまったわたしがこれ以上この店におることが出来るはずないやろ」

れいなは吐き捨てた。

「でも傷は深手じゃあなかった。 まあしばらく風呂で身体は洗えないかもしれないけど、困るのはそれぐらいのもんだろ」

「そんなんやない」

そんなんじゃないとれいなは繰り返す。
傷の程度はどうであれ、大切な愛に傷を負わせてしまったことが問題なのだとれいなは言った。

「あんた、愛ちゃんが愛ちゃんがって言ってるけど私だってけっこう危なかったんだけどね。 そのことに感するお詫びとかは無し?」

傷ついた愛、動転しているれいなをリゾナントに連れ帰ったのも自分だしと言う里沙をれいなは撥ねつける。

「あ、あんたのことは好かん」

心情を吐露したれいなだが、里沙は堪えていないようだった。

「あ~あ、嫌われちゃったな。 ショック」

薄笑いまで浮かべている。
そんな里沙を見てれいなは苛立ちを隠さない。

「何がおかしか。 大体あんたと愛ちゃんは何であんな危ない所に二人っきりで行ってたと?」

「私たちはリゾナンター。 世界を闇で覆いつくすという野望を抱くダークネスに対抗し得る唯一の存在。
リゾナンターのリーダーは高橋愛。 かつてダークネスをあと一歩のところまで追いつめた旧リゾナンターの唯一の生き残り。
私新垣里沙は、ダークネスのやつらに奪われた大切なものを取り返すために一人で戦っていたけど、高橋愛の存在を知って手を組むことにした」

「はぁ?」

「ちなみにこの間のやつらはダークネスではない。 能力を悪用するちんけな犯罪者グループ。 高橋愛は戦いの第一線から遠ざかっていた。 
だからかなり実戦感覚が鈍っているのを戻す為に適当な悪者を捜しては、夜な夜な出かけてやっつけてたっていうのが私と愛ちゃんの夜遊びの真相」

「ちょお待って」

里沙の話す事実を消化しきれないれいなが悲鳴を上げる。

「あ、別にあんたのことはリゾナンターとしてスカウトしたわけじゃない。 あれはこの店のマスターの独断だ」

「えっ、れいながどうしたって」

「高橋愛が能力者として、戦士としてグレードアップしたらリゾナンターは変わる。 
いいかい、能力者は引かれ合う。 強化された高橋愛の能力は他の能力者と引かれ合い、引き寄せる。
集まった能力者を仲間にリゾナンターは戦闘集団として生まれ変わる。そして世界を闇で覆い尽くす野望を抱くダークネスに戦いを挑み、勝つ」

何かに取り付かれたような里沙の熱弁にれいなは巻き込まれてしまう。

「でも、高橋愛をリーダーに頂くリゾナンターに、田中れいな、あんたの居場所はない。 
あんたなんか要らない。 この程度のことで高橋愛の前から逃げ出すようなあんたなんかが、リゾナンターとして戦っていくことなんて…」

「ちょっと待って」

たまりかねたれいなが里沙の話を止める。

「れいな、そのリゾナンターになんかなりたいなんて一言も言うとらんし。 それに愛ちゃんの前からだって別に逃げ出すつもりなんて」

「無いとでも言うのかい。 ハア、笑わせるね。 逃げ出すんだよ、お前は。
お前は自分がいることで高橋愛を危険な目に負わせてしまうと思っているのかもしれない。
自分がいなければ高橋愛は傷つくこともないという風に、自分の心の中で言いわけしてるのかもしれない。
でも、私に言わせればそれは全部ゴマカシだ。 お前は逃げ出すんだ。 
高橋愛がお前のことを見放してしまわないか怖くて逃げ出すんだ。高橋愛がお前のことをどう思っているのか知るのが怖くて逃げ出してしまうんだ」

違うかい? 流石に話しつかれたのか一息継いだ。

「だって、れいな小さいときからずっと、ずっと何処にいても必ず居場所がのうなるけん。だから」

「自分がいるから皆が上手くいかない。 自分がいなければみんなは上手くいく。 そういうのは無しにしよう、ね」

えっ?と問い返すれいなに里沙は告げる。

「問題はあんたが本当はどうしたいかってことさ。  この店に居たいんだろ。 高橋愛の傍に居たいんだろ。
だったら迷うことはない。 ここにいればいいんだ」

「でも、れいなが愛ちゃんにあの火傷を…」

「あんたはまだ甘えていい歳だと思う。 あんたの犯した過ちで傷ついたって高橋愛があんたを責めることはない。 でもね…」

伏し目がちになったれいなにゆっくりと話しかける。

「もしこのままあんたが何も告げずリゾナントを出て行ったら、高橋愛はどうすると思う」

「どうするって?」

「あのバカはあんたをそんな気持ちにさせてしまった自分の事を責めるだろうね。 そしてあんたのことを見つけようとそこら中を探し回るね。
妙に真面目なあの女はこの店もちゃんと営業して、悪者退治もちゃんとこなしてそれからあんたのことを探し回るだろうね。
いくら傷が深手じゃなかったとはいえ、病み上がりの身体でそんなことをしてたら絶対倒れるね」

「そ、そんな」

一角の照明しか灯していなかったリゾナントの店内が明るくなった。

「れいな…」

「あ、愛ちゃん。 起きてきたらいけん」

愛の元に駆け寄ろうとするれいなだったが、一歩足を踏み出したところで止まってしまう。

「大丈夫だから。 私全然平気だから」

固まったれいなは里沙に救いを求める。
今自分はどうすればいいのか。 今自分は何と言うべきなのか、そして。

「ガキさん、こんな時れいなどんな顔すればいい?」

「何気取ってんだよ、このバカ!!」

強くれいなの背中を叩く。

「自分の心に素直になって、そのまま愛ちゃんの胸に飛び込めばいいんだ」

そう言うと席を立ち、店の出口に向かう。

「今日、休むにせよ営業するにせよちゃんと鍵はかけておきなさいよ」

振り返った里沙の目に、愛の胸で咽び泣くれいなの後姿が映った。
愛は里沙に感謝の眼差しを注いでいる。

―あ~あ。 私確かスパイだったと思うんだけどな。 それが一体何をしてるんだか。

          ☆          ☆          ☆

―まったく、何であの時はあんな風に動いちゃったんだろうね、わたし。

ダークネスのスパイとしての任務を完遂することを考えれば、あの時れいなは排除しておくべきだったのかもしれない。
でもそうしなかったということは、もうあの時点で里沙がダークネスを離脱して真のリゾナンターとなることは決定付けられていたのかもしれない。

―でも何であの時、れいなにあんなことを言っちゃうかな、私。 お前は高橋愛に失望されるのが怖いんだとか自分の心に素直になれとか。

視線に気づけば、れいなが黙りこくった自分の事をみていた。

れいなが心配そうにしている。
そんなれいなのことを見ていたら思い悩んでいることの答えが見えてきた。

な~んだ。一緒じゃん。

家族から見捨てられ、高橋愛に救われたれいな。 
捕らえられた家族を救うため、高橋愛に救いを乞うたわたし。

高橋愛の側に居たいはずなのに、一度はその場所を捨てようとしたれいな。 
みんなと一緒に居たいのに、心を偽り続けたわたし。

自分たちは全然違うと思ってたって、他の誰かから見れば多分ほとんど変わんない。

れいなはわたしなんだ。
わたしはれいななんだ。

あの時、れいながリゾナントを出て行こうとした時に、わたしがれいなにかけた言葉は、わたしが誰かに言って欲しい言葉だったんだ。
他人の心を操るマインドコントローラーを気取ってたくせに、自分の心を自分でどうにもできない私自身に向けて言いたいことだったんだ。

      ・
      ・
      ・

わたしは最低だ。
れいなはあんなに前にわたしが適当に言った言葉を今も胸に残してくれている。
そしてわたしのことを守ろうとしてくれた、助けようとしてくれていた。
なのにわたしときたら…。

ボン。キュッ。ボン! って勝手に舞い上がってた。
ボン。キュッ。ボン! と滑稽なくらい盛り上がってた。
ボン。キュッ。ボン!になれるとバカみたいな妄想を描いていた。

クソ・・・。
こんなあたしがもしも首尾良く「凡奇湯」で湯浴みすることが出来て、ボン。キュッ。ボン!の身体を手に入れたところで、中身はスカスカじゃん。
クソ・・・。

神様、お願いです。
もうボン。キュッ。ボン!な究極ボディへの進化など望みません。
いやもしも進化させて戴けるのならばこれにまさる喜びはありません。
ですが今のわたしの一番の望みは他にあります。
どうかもう一度私にチャンスを下さい。
今日のわたしの醜態を挽回する機会を与えてください。

「れいな」

「うわっ」

れいなが情けなさそうな顔をしている。

「あんた何て顔してるの?」

「ガキさんに改まってれいなって呼ばれると何か落ち着かないっちゃ」

ふーん、変なの。




「じゃあさ、れいな。わたしもうちょっとだけ眠るからさあ。愛ちゃんが帰って来る前に起こしてよ」

「そんなこつ言われても、愛ちゃんいつ帰って来るかわからんとよ」

少し困った様子のれいなによろしくと笑いかけて、毛布を頭からかぶる。

犯してしまった過ちを無かったことには出来ない。
だけどゼロから、あるいはマイナスからでもやり直すことは出来る。

次に目が覚めた時、わたしはボン。キュッ。ボン!なハートの持ち主に生まれ変わる。
そして困らせてしまったあの娘たちのことを優しく包もう。
切なる誓いをわすれないように、心に刻み込むために枕がわりのクッションを三度叩いた。




【枕を三度叩いた・END】



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最終更新:2011年04月23日 11:50