『Vanish!Ⅱ~independent Girl~』(3)


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<2 day>
ミヤ…助けに来てよ、お願いだから

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

久住がリゾナントに着いたのは日付が変わる頃になっていた
「高橋さん、話は聞きました。で、でも道重さんが誘拐されたなんて、小春信じられません」
仕事終わりの久住はセレブサングラスにばっちりメイクで、芸能人オーラがビンビンと放たれている
「そうなんだよね…で、疲れているところ悪いんだけど、小春、早速力を使ってちょうだい」
「もちろんです。えっと、何を写せばいいですか?」

久住の力は3つ。一つは『発電』、最近はこれを使用することが多く、文字通り電気を自在に操る能力
もう一つは『幻術』、幻覚を発生させる力で、プライベートで人ごみに紛れることに使っている…らしい

そして残った一つが『念写』、写真のように思念を視認する形で焼きつけることができる力
未来は写せないが過去に見た姿、及び今の姿を写すことができる
すなわち、高橋が久住に頼んでいるのは、事件現場および道重の連れ去られた場所の『念写』
道重をさらった犯人の特徴を掴み、連れ去られた場所を特定しようとしているのだ

「まず、この携帯電話を見つけた場所を写して。何者がさゆを連れ去ったのか知りたいから」
現場に落ちていた道重の携帯と白い模造紙が久住に渡された
「時間はいつごろでしたか?」と尋ねる久住に高橋は自分が跳んだ時間を伝える

「小春、お願い!早くサユを見つけるっちゃ!」
れいなも不安そうでいつも以上に久住に対して気づかいを示した。
緊急事態なのでもちろんリンリン、ジュンジュンも呼び出されている
「道重サンが無事ならいいデス…」
「久住、頼むゾ!」

ただ久住が静かにしてほしいとわかっていても、じっとしていられない者が一名いた。それは…
「エリ、ちょっとは落ち着くっちゃ!不安なのはわかるっちゃけど、小春の邪魔になるとよ!」
「う、うん、ごめん」
れいなに怒られても亀井は指をくわえたり、視線が常に動いて落ち着かない様子だ

「こら、カメ。いくらカメが焦ったってさゆみんが早くみつかるわけじゃないんだから!
 今は小春に任せることにしようね」
肩に手を置き、新垣がそっと優しく声をかけたので、亀井は幾分落ち着きを取り戻した
「神様、さゆを守っていてください」
亀井は胸の前で手を組み祈り始めた

「大丈夫ですよ、亀井さん。さっき視えましたから、亀井さんが道重さんを笑顔で抱きしめ合っている姿が」
「本当かいな、愛佳!・・・あ、ごめんっちゃ」
嬉しさのあまり大声を出してしまったれいなは久住が集中しているのを思い出しみんなに謝った

それからしばらくして久住が椅子から立ちあがり、高橋に写真を手渡した
「道重さんはやはり黒づくめの男に連れ去られたようです」
写しだされた写真には黒塗りの高級車に連れ込まれようとしている道重と犯人の姿が写っている

「そして、多分、犯人はここにいると思います」
そういい久住は古びた工場が写された一枚の念写写真を差し出した
「確かに同じ車が写っているね。ナンバーも一緒だし、小春、ありがとう」
久住から写真を受け取った高橋は細部に他に何か写っていないか注意深く目を凝らした

「愛ちゃん、それがどこか見当付いたと?」
「うん・・・多分、ここは○○区だね。この外観に見覚えがあるがし・・・よし、みんな、行くよ!」
八人は表に飛び出し、高橋が手を上げた
「ヘイ、タクシー!」
「…愛ちゃん、リゾナントカーさ、やっぱりみんな乗れるように改造しようよ」

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

目的の閉鎖した工場には男達が集まっていた
「どうだ、道重の様子は」
「静かに眠っています」
男達はみな黒いスーツに身を包み、サングラスをかけている
その中で一人の男だけが椅子に座っていた。雰囲気から推測すると彼が男達の首領なのだろう
「そうか、引き続き道重、他の能力者及びその卵を監視し続けろ。いいな」
一斉に男達が立ちあがり敬礼の姿勢を取り、足早に飛び出した

部屋を飛び出していった男の一人が走りながら隣にいた仲間に向かって言った
「おい、今日の獲物、すっげえ美人だと思わねえか?」
「ん?ああ、『みちしげ』とかいう女か。確かにめちゃめちゃ可愛いな」
「お?お前もそう思うか。昨日のJKもすげえ可愛いかったけど、今日のもめっちゃ上玉だよな」
更にもう一人の男が後ろから会話に割り込んできた
「今時珍しいぜ、あんだけ長くてストレートの黒髪なんて。くう~たまらねえぜ」

「・・・オマエ、何考えているんだ?少しでも手を出したら・・・」
厳しい目つきで男が仲間を睨みつけたので、睨まれた男は焦って「冗談、冗談」とかえした
「俺達はただボスの命令に従うしかないんだからな、ヘタなことしたら消されるぞ」
「わかってるって、さっきのは冗談だってw・・・チッ、もったいね」
男は小さく舌打ちをして、道重を監禁している部屋へと向かった

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

リゾナンターを2台載せたタクシーは目的の場所へ向かって走り始めた
一台目には高橋、久住、光井、リンリン、二台目には新垣、亀井、れいな、ジュンジュンが乗り込んだ
落ち着いていられない亀井を新垣に託し、光井が助手席に座り、目的地を運転手に伝えた
久住は少し疲れたのだろう、すぅすぅと寝息を立てて眠り始めた

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

椅子に座っていた男の持っていたグラスにワインが注がれた
「どうだね、道重は能力に目覚めているのか?」
「いえ、まだその方は確認できておりません。幾分、連れてきたのがほんの数時間前のことでして」
「そうか、あの方がこられるまでに確認しておくようにな」
男がワイングラスに口をつけたその瞬間、突然部屋の電気が消えた
「なんだ?どうした?ちょっとお前たち、調べに行ってきなさい」
男の指示に従い、数名が懐中電灯を手に部屋を出ていった

停電になるとどうして人間は静かになるのであろう、そして一段と音が響いてしまう
普段なら気がつかないような他人の息遣いの粗さや足音が耳に触ってしまう

              ドタッ

何かが倒れた音が部屋の外から響き、次いで「だ、だれだおま・・・」と先ほど出ていった男の声が・・・
男達は立ち上がり、椅子に座っている男の椅子のまわりに集まり警備を固めた
静かにコツッ、コツッという音が近づいてくるとともに、部屋が揺れているような感覚に男達は陥った
「大丈夫です、我々がついていますから」

靴音が男達のいる部屋の扉の前で止まり、静かにドアが開き、黒い影が現れた
男達はしゃがみこんで一斉に黒い影に対して銃口を向けた
「動くな。静かにその場でひざまずくんだ」

黒い影は忠告を無視し、男達のもとへと近づいてくる
「!! 撃て、ソイツを止めるんだ!」
合図とともに無数の弾丸が放たれた。
黒い影は小さく笑みを浮かべ、掌を前に突き出した

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

数十分ほど揺られ、リゾナンターは工場の前に到着した
タクシーの運転手の記憶を消し終えた新垣から領収書を受け取りながら高橋が全員に注意を呼び掛けた
「いい?みんな、小春の念写の通りならここにサユがいるはず。もしかしたら他の被害者も。
 でも、それは同時にここに犯人がいるということを意味している。気をつけて行動してね」
「もしかしたら相手は能力者かもしれないし、さゆみんがいないと傷も治せないんだからね」

「あっ!ちょっと待ってください!」
建物の内部に突入しようとした仲間を制止したのは光井だった
「光井サン?どうかしましたカ?」
「・・・視えました。田中さん、気ぃつけてください
田中さんに全力で向かっていく人影が見えます。髪が長くて…茶髪…これは、女の人?」
愛佳の予知にれいなは静かに頷き、気を引き締め直した

「愛佳、他に視えたものはない?」
「・・・視えたのは、それだけですね。すみません、高橋さん」
「いや、愛佳の予知のおかげでれいなの負傷を避けられるかもしれないんだから十分やよ」
高橋は満足げに頷き、先頭を切って入口のドアの近くへと駈け寄っていった
まったく灯りの点いていない建物の中の様子を探ろうとドアに耳を当ててみた
「・・・まったく音がしない。小春、体力残ってる?中の様子を写せない?」
振り返った高橋が目にしたのは、すでに地面に念写しようとしている久住の姿であった
「久住さんなら、もうしてはりますよ。愛佳ももう一度視てみようと思います」

その間に残りのメンバーに作戦を伝えた
「いい、まずなるべく犯人との接触は避ける。負傷を今回ばかりは避けないといけないでしょ
 だから行動するときは必ずぺアで行動して。
 エリはジュンジュンと、ガキさんは小春と、れいなはリンリンと、愛佳はあっしと一緒
 もしなにかあったらすぐさま助けを呼んで、勝手に戦わないで、いい?」
高橋はみんなを一旦見渡し、特段強い目で再度れいなを見つめた

「そして目的はサユの奪還。だけど他の被害者もいるかもしれん。
 見つけたら『警察に連絡しました』とかいって安心させてあげてね」

「それから・・・」「高橋さん!」
いきなり久住が大声を上げた
急いで久住のもとへと高橋と新垣が駈け寄り、「大きな声だしちゃダメじゃない」と注意した
「でも、これみてください」
久住は地面に映った念写の像を指差した

地面にはかすかな砂で構築された風景が写されていた。といっても単色で非常に分かりにくい
「みんな来て!小春が今、これに幻覚で色を付けます。しっかり見てください!」
「なんや、小春?っていうか、あんな大声だしたら犯人に勘付かれるやろ!」

文句を言いかけたれいなの脳裏に鮮明な小春の幻覚が貼りつけられた
「!な、なんや、これ・・・」「!!!」
高橋が何も言わずに一目散に扉へと駆け出し、そのままの勢いで工場内に侵入した

用意しておいた懐中電灯で照らしながら手当たり次第にドアを開けていく
「愛ちゃん、待って!」という新垣の声をものともせずに進んでいく

     バタン「違う」    バタン「ここじゃない」     バタン「ここでもない」

「ここや・・・」
ドアを開けた高橋は、中の様子を見て茫然とした
そこに7人が追いついてきた
「ガキさん・・・これ・・・」「小春の念写通りの光景・・・」

8人がいるのは会議室のようにだだっ広い部屋。机なり壁なりが全てボロボロになっていた
壁や床が血で濡れていることはないが、妙に部屋の中が埃っぽく、まるで台風が過ぎ去った後の光景だ
壁には大きな穴があいており、建物を支えているのであろう鉄筋が剥き出しになっている
2本しか脚がない椅子や不自然な形にえぐられたテーブルなどが散乱し…先ほどまで人がいたように感じられない

 ・・・ただどうしても人が先ほどまでいたとしか考えられない証拠が部屋の片隅に落ちていた
高橋が懐中電灯の光を当てて、本物かどうかを確認するためにれいなが近づいた
怖々ながら指先で触れたそれはまだほんのりと温かく、ゴムのような弾力があった
「愛ちゃん・・・・これ、本物の人の手っちゃ。指輪はめとるし・・・」
れいなはそれ―肘から上の腕を手に取った
「どういうこと?愛ちゃん、ここが犯人のアジトなんだよね。一体誰が」
新垣もその腕を見ながら、自分の中で考えを巡らしている

「そういえばみっつぃの予言当たらなかったね。どこにもいないじゃん
 未来を視たから変わったのかもしれないね~結果的にはよかったですね★田中さん」
「おかしいわ・・・愛佳しっかり、この眼で視たんやけどなあ」

「亀井さん、大丈夫デスカ?元気ないぞ」
「・・・え、何?ジュンジュン何か言った?」
「・・・」
ジュンジュンに引っ張られて歩いている亀井は心ここにあらずといった感じである

          ドスン   

「愛ちゃん、今の音なんやと思う?上から聴こえて来たとよ」
れいなが天井を見上げながら言った
「みんな、誰か上にいる。行くよ!」
八人は二階へと続く階段を探しだし、その音の出所へと走り出した(一名は引きずられてだが)
「誰がいるんだと思う、愛ちゃん」「普通に考えるなら敵だね」
そんな会話を走りながら交わしているが、頭の中には不吉なことばかりよぎる

階段を登っている最中にも再度何かを叩きつけるような音が聴こえて来た
「多分、あっちやね。みんな、気をつけて」
八人は気配を悟られないように細心の注意を払ってその音の出所へと近づいていく
「ここやね。ガキさん、まずあっしと二人で飛び込むよ。みんなはバックアップよろしくね」
高橋と目を合わせ新垣がウインクした。二人の間で通じる了解のサインだ

れいなの指が示すカウントダウンが0になった瞬間に高橋と新垣は部屋に飛び込んだ
薄暗い部屋の中を新垣がもっている懐中電灯が照らす

部屋の中心に女が座り込んでいた
いや、正確に言うならば床に倒れ込んでいる男の胸倉をつかみ、しきりに揺さぶっていた
「いい加減、教えろよ。知ってるんだろ、本当は!」
荒っぽい口調で男をやたら床に叩きつけている

「・・・」
何も言えずに高橋はその光景を見ていた
そして、新垣は「こっちに全然気付かないんだけど」と唖然の表情で固まっていた

「ん?」
ようやく二人がいることに気がついたようで、こちらを振り向き、「あ」と言った
振り向いたその顔を高橋、新垣は知っていた

気まずい沈黙がしばらく続いた後に高橋が恐る恐る口を開いた
「・・・みやびちゃんだよね?ここで何してるの?」
「・・・高橋さん、新垣さん、お久しぶりです」

「愛ちゃん、なんかあったと?」
れいなが心配そうな声を出しながら入ってきた
高橋、新垣、そして雅、3人の瞳がれいなを捉えた

「!! 田中さ~~~ん!!」
雅が目の色を変えてれいな目がけて全力で飛びこんでくる
「え?なんでミヤがおるかいな?」
雅の目はハートマークになり、れいな以外視界に入っていないようだ

「うりゃっ」
れいなが飛び込んでくる雅の顔に振りぬいたパンチをクリーンヒットさせた
「アウッ」
れいなの気持ちのこもった拳をくらった雅はれいなまであと少しというところで膝から崩れ落ちた
「ミヤ、次会った時、一発殴るっていっとったやろ!まだれいなは許していないとよ!」

その一部始終を見ていた光井が誇らしげに言った
「やっぱり愛佳の予知は当たってましたね。どうですか、久住さん!」
「みっつぃ、凄いけど・・・そんなドヤ顔で言っている場合じゃないと思うよ」
久住は幸せそうな笑顔で気絶している雅を指差しながら言った

亀井はそんなちょっとした騒動を離れた場所でぼんやり見ていた。そして静かな声で呟いた
「サユゥ、どこにいるの?」