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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」9-3


404 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:57:57.67 ID:chcZF3wP
執事「差、ですか」
女騎士「うん」

執事「差なんてついてないと思いますよ」

女騎士「そんなことはない。
 二人は一緒にソーセージを茹でたりして、
 なんだかすごく仲の良い雰囲気だったぞ」

執事「そう言うこともあるでしょうが、相手は勇者ですからね」

女騎士「判らない」

執事「ほら、覚えていますか? 砂丘の都を」

女騎士「ああ、うん。旅をしたな」

執事「わたしと勇者が宿を抜け出して、
 朝までパフパフで遊んで、
 あなたにこっぴどく怒られたでしょう?」

女騎士「ああ、まったくだ。何であんな事がしたいんだか」

執事「それに、ほら。あの演説のあとの、
 歌い手のお願い事件。あのときも勇者は喜び勇んで
 まるでトンビか鷹のように飛び出してゆきましたよね」

女騎士「思い出しても腹立たしい」

執事「いやはや、それは男性にとっては当たり前なのですよ」
405 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:59:22.90 ID:chcZF3wP
女騎士「?」

執事「“女の子と親しくなりたい、ちやほやして欲しい”
 そういう言う気持ちは、多かれ少なかれ、
 男性になら誰にでもあるものです。
 でも、勇者は人よりもそれが大きい。
 なぜだか判りますか?」

女騎士「スケベだからだろう?」

執事「まぁ、こほん。それも無きにしもあらずですが。
 本当は少し違います。
 勇者はね、やっぱり怖いんです。
 あれだけの力を持っていますから。
 人間から嫌われることが、
 人間から怪物だと思われてしまうことが怖いんですよ。

  だから、ああやって親しくされたり、
 優しくされると、つい嬉しくなってしまうんです」

女騎士「わたしは怪物だなんて思ったりしない。
 嫌いになんてならないのに」

執事「みんながそうであれば良かったんですけれどね……」

女騎士「……え?」

執事「それにね……」

女騎士「?」

執事「その一方で、特別な人が出来るのも、
 やはりとても怖いんですよ」
406 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 23:00:42.18 ID:chcZF3wP
女騎士「……」

執事「人間に嫌われるのが怖い臆病な勇者ですからね。
 あんまり臆病すぎて、私たちを置き去りにして
 一人で魔王のところへ行ったほどの勇者ですから。

  特別な人を作って、出来てしまって
 その人が離れていくのはたまらなく怖いでしょう。

  勇者が、魔王やあなたと深い関係になっていないのならば
 もちろん空気が読めないお調子者だというのもあるけれど
 どこかしら無意識のうちに、そう言った関係になるのを
 勇者が怯えて避けているのかも知れませんね」

女騎士「そうなのかな……」

執事「なんちて。にょほほほほ。
 真実なんて判らないですが、そうも見えると言うだけの
 話なんですけれどね」

女騎士「うん……」

執事「まぁ、そう落ち込まないでください。
 この老爺に素晴らしい策があります」

女騎士「本当か?」

執事「ええ、もちろん」こくり

女騎士「どんな策なのだ?」

執事「まず、勇者を人間だとは思わないことです」

女騎士「へ!?」
407 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 23:01:50.87 ID:chcZF3wP
執事「馬です。勇者を馬だと思いなさい」

女騎士「何で馬なのだ? いや待った」
執事「どうしたのです?」

女騎士「メモをとる」
執事「真剣ですね」

女騎士「藁にもすがりたい気分なのだ」
執事「はっはっは! この爺の策は縦横精緻にして
 脱出の隙を許しませんぞ。にょっほっほっほ」

女騎士「馬でどうするのだ?」

執事「馬ならば手慣れたものでしょう?
 馬を馴らす時にはどうします?」

女騎士「話しかける」
執事「それから?」

女騎士「触るな。首筋を撫でたり。
 ブラッシングをしたり。
 とにかく自分にわたしが触るのは、
 当たり前で、気持ち良いことだと思わせる」

執事「その通りです」

女騎士「さらには、人参やリンゴを与えたりもするな」
執事「それも標準的な手続きです」こくり

女騎士「そんな簡単なことで良いのか!?」
執事「基本は全く変わりません」
410 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 23:03:26.03 ID:chcZF3wP
女騎士「そうだったのか……」
執事「そして、そのあとは正攻法です」

女騎士「正攻法」メモメモ
執事「はっきり面と向かって自分の要求を伝えるべきです」

女騎士「よ、要求」
執事「キスをしたいであるとか、抱きしめて欲しいであるとか」

女騎士「はっ、はしたないっ」

執事「勇者相手ですからはっきり伝えないと始まりませんぞ。
 だいたいのところがおつむの程度も馬と同程度なのですから
 馬が迷ったり困ったりしている場合、それは乗り手の
 指示がはっきりしていないのです」

女騎士「それは……。確かにそう言うものだが」

執事「もちろん、普段の信頼関係なく、横暴な命令を出せば
 そのような乗り手は振り落とされてしまうでしょう。
 普段のさりげない接触が大事。こういうわけです」

女騎士「ぐっ。……そうだったのか」
執事「どうしました?」

女騎士「魔王め。もふる、もふると、
 子供じみていると思いきや
 まさかそんな深謀遠慮があったとは……」

執事「……良く判りませんがすごい殺気ですね」

女騎士「いや、感服したぞ、老師」
執事「老師っ!?」
414 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 23:05:26.12 ID:chcZF3wP
女騎士「一筋の光が射したような思いだ」
執事「にょっほっほっほ! それは良かった」

女騎士「あとは、まぁ。……うう」どよん
執事「どうしました」

女騎士「いや、いいんだ。これも現実」
執事「ははぁ」

女騎士「現実は己の力で乗り越えなければ」
執事「いやはや、それは浅はかですぞ。女騎士」

女騎士「え?」

執事「長所であれ、短所であれ、それは己の特徴っ」
女騎士「?」

執事「己の特徴、得意とする戦場で戦わずして
 どうやって勝利をつかむというのですっ!!」

女騎士「た、たしかに」ごくり

執事「そんな女騎士に、爺からのささやかなプレゼントを」

ごそごそ、しゅた

女騎士「これは……?」

執事「布地節約の決戦装備。もちろん未使用です。
 心が定まった時、この紙袋を開けなさい」

女騎士「良く判らないが、厚意はつたわった!
 やってみるぞ、この思いをぶつけてみるっ!」

執事「にょほほほほっ。面白ければ何でも良いのです。
 頑張ってください、女騎士よ!!」
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 23:17:48.90 ID:chcZF3wP
――大空洞、工事現場、いくつもの橋

コォォン! コォォォーン!

中年商人「いつ来てもすごいなぁ!」
土木子弟「おお。中年商人さん! 出来ましたよ!
 完成です、やっとここまできたんですっ!」

中年商人「ええ、一足先に宿舎によってきましたよ」
土木子弟「そうか。みんなも喜んでいたでしょう?」

中年商人「ええ、すごい有様だった。今晩は宴で?」
土木子弟「ええ、完成祝いですからねっ!」

コォォン! コォォォーン!

中年商人「やっと、ですね」

土木子弟「はい。これでも、色々心にかかる所はあるんですが、
 それでも当初の予定よりも石の橋を一つ増やし、
 出来る限りの場所を安全に通行できるようにしたつもりです」

中年商人「もうすでに橋を渡った商人仲間からも
 沢山の報告をもらっています。みんな感謝していますよ。
 この橋と、近日にでも出来る、リフトのお陰で
 多くの荷物が運べるようになる」

土木子弟「いいえ、俺こそ、こんな大仕事に抜擢してもらって。
 技術者として誇ることの出来る仕事を出来ました」
426 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 23:19:41.71 ID:chcZF3wP
中年商人「本来であれば、この大空洞にもう一つの計画通り
 八年かけた石造りの立派な街道もお願いしたいのですが」

土木子弟「やはり、資金ですか?」

中年商人「いえ、資金の件は我らの領分です。
 必要とあらばなんとしてでもかき集めますが。
 どちらかというと……」

土木子弟「もしかして……」
中年商人「ええ」こくり

コォォン! コォォォーン!

土木子弟「……」

中年商人「このあたりにも、もしかしたら斥候が
 来ては居ませんか? 旅商人の話では、大空洞の
 人間界側ではたびたび姿を見かけるようなのですが」

土木子弟「ええ、人間の軍が、と言う話ですね」

中年商人「そうです。ですから、ここも近いうちに
 戦場になるかも知れません」

土木子弟「……」

中年商人「そのような顔をなさらずとも!
 我ら人間は、ほら、わたしのように商人も多い。
 それが有益であるならば、いたずらに破壊したりはしない」

土木子弟「だといいのですが……」
429 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 23:21:55.25 ID:chcZF3wP
人魔族作業員「大将! お先にあがりますぜぇ!」
人夫「こんばんは、羊の鍋ですぜ-!」
巨人の作業員「まっている……ぞー……」

中年商人「……」

土木子弟「そうですね。ここの仕事は済ませたんだ。
 俺たちが居座って護ったとしても、
 橋を護りきれるはずもない。それに作業員の命は
 何よりも大切だ。もし橋が壊れたのならまた直す
 機会だってやってくるはずです」

中年商人「はい……。さーてっ、報酬の残りも
 お支払いしなければなりません。開門都市へ?」

土木子弟「そうですね。今晩んは騒いで、明日にでも」

中年商人「今後のご予定はおきまりですか?」

土木子弟「いえ、特に」

中年商人「では、一つ依頼があります」
土木子弟「なんですか? 工事かな」

中年商人「私たちのつかんだ情報によれば、
 いずれ開門都市が戦場になる可能性は低くない」

土木子弟「……」ごくり

中年商人「今回は私たち『同盟』の商人からではない。
 まだ依頼書も資金集めも終わっていない状況です。
 満足に賃金を支払えないかも知れない」

土木子弟「引き受けましょう」

中年商人「いいんですか? そんなに躊躇いなく」

土木子弟「ええ。どっちにしろ、
 帰りを待たなきゃならないひともいるもんですから。
 都市の防壁を作る。一度挑戦したかったテーマでもあります」
506 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 17:27:19.46 ID:iOYUExkP
――新生白夜直轄領、王宮行政庁舎

参謀軍師「なんだと?」

聖王国兵士「いえ、ですから……その」
聖王国騎士「予定していた量の硝石がないのです」

参謀軍師「無いだと? ふざけるな。
 この王宮を占拠した直後に確認したではないか」

聖王国騎士「ええ、もちろん確認した程度にはあります。
 木箱にして64個ですが……」

参謀軍師「あの倉庫の木箱は、では他には何が入っていたのだ?」

聖王国兵士「空でした」

聖王国騎士「倉庫入り口付近の木箱にだけ硝石が入っていて
 その他の木箱は空だった模様です」

参謀軍師「……っ」

聖王国騎士「いかがいたしましょう」

参謀軍師「その他の物資の状況は?」

聖王国騎士「衣料品や防寒具などは、おおよそ5万人分
 食料はこのままの人数で言えばひと月持つかどうか」

参謀軍師「……」

聖王国兵士「また、現在船を建造中ですが
 工具と、タールが大きく不足しています」
507 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 17:29:34.30 ID:iOYUExkP
参謀軍師「まずは、この白夜の国の領内の開拓村から
 強制徴収せよ。それで当面の工具や防寒具などは
 まかなえるはずだ」

聖王国騎士「いえ、それが……。
 事前の報告より白夜王国ははるかに貧しいようなのです。
 さらに、開拓村の殆どが無人で……。
 どうやら付近の国に難民として流出しているようで」

参謀軍師「……南部の乞食国家はこのざまか」

聖王国騎士「これもお耳に入れるべきかとも思うのですが
 諸国の王族や貴族の中には、すでに商人と手を組み
 自国や中央で買い付けた物資の海上輸送を
 始めているようです。
 聖鍵遠征軍内部でも嗜好品を中心に
 価格の高騰が始まっています」

参謀軍師「……っ。勝手なことを」

聖王国兵士「……」

参謀軍師「わかった。価格については教会や
 諸王国ともはかって適切な手を打つとしよう。
 海上運送については窓口を一元化し
 必需品の価格を統制する」

聖王国兵士「はっ」

参謀軍師「硝石については、追って調べろ。
 そもそも蒼魔族が半分しか持たずに我らを罠に
 かけたとは考えにくい。
 おそらく、何者かが硝石を持ち出したのだ。
 馬車で数百台にもなる荷物、
 人目につかずに隠しおおせるわけもない。
 難民にも聞き取り調査を行なえっ」

聖王国騎士「はっ!!」
512 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 17:55:06.67 ID:iOYUExkP
――冬越しの村、森の中

 ヒュッ! シュバッ!!

勇者「……っ!!」

 ヒュワン、シュバンッ!!

勇者「はっ!!」

女騎士「……」じぃっ

ビシッ!! ギリギリギリッ!

勇者「“雷雲呪”っ! “落雷呪”っ!!
 おおぉぉぉぉ!! “電撃呪”っ!!」

ビッシャーン!!!

勇者「はぁ……はぁ……」
女騎士「おい、勇者」

勇者「え? あ。女騎士」

女騎士「張り切りすぎだ、勇者。顔が真っ青じゃないか」

勇者「そんなことはない。リハビリだし」

女騎士「……」

勇者「もっともっと力を付けないと」
女騎士「勇者」
513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 17:56:41.71 ID:iOYUExkP
勇者「へ?」

女騎士「いいから、ちょっと来い」ぎゅ

勇者「痛たた。なんだよ」
女騎士「それ以上は練習禁止」

ざっざっざっ

勇者「そんなこと言われたって」
女騎士「見てて痛々しいよ」

勇者「そうかなぁ……」
女騎士 こくり

ざっざっざっ

勇者「でも、他になんにも取り柄がないしさ」
女騎士「そんなことも言うな」

勇者「……」
女騎士「勇者は別に戦闘が強いから勇者になった訳じゃない」

勇者「光の精霊の啓示を受けたからだろう?」
女騎士「ちがう」

勇者「じゃなんだよ」
女騎士「さぁ……。わたしにも判らないけれど」

ざっざっざっ
514 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 17:58:10.26 ID:iOYUExkP
――冬越しの村、湖畔修道会、本部修道院

勇者「でかくなったなぁ」
女騎士「色々建て増しした結果だ。
 ただいま……。戻ったよ」

修道士娘「院長。あ、それに剣士様」

勇者「どもども」しゅたっ

女騎士「湯は沸いているか?」ぐいぐい

勇者「いい加減はなせよ。耳千切れる」
女騎士「だめだ」

勇者「恥ずかしいっての」

修道士娘「ええ、水晶農園の方でしたら」

女騎士「ありがたい。行くぞ」

ざっざっざっ

勇者「ちょ、ま。まっ」

女騎士「少しも待たない」

修道士娘「院長さま、ご武運を~」
517 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 17:59:48.16 ID:iOYUExkP
――冬越しの村、湖畔修道会、本部修道院、水晶農園

がちゃん!

勇者「う、うわっ」
女騎士「どうした?」

勇者「すごい湯気だな」

女騎士「湯で暖房しているんだ。
 暖かい地方の植物を試験的に育てる仕組みだからね」

勇者「そうだったのか」
女騎士「初めてか?」

勇者「ああ、初めてだ。有るってのは聞いてたけれど」

女騎士「こいつはとんでもない金食い虫だよ。
 魔王に言われて作ってはみたものの、
 毎年暖房費が馬鹿にならないのし」

勇者「そりゃそうだろうよ」

女騎士「よし、ここだ」
勇者「ん?」

女騎士「湯だよ。暖房に使う湯の一部を、
 湯浴みに使えるようにしてあるの。
 汗を流したいだろ?」
518 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 18:01:48.89 ID:iOYUExkP
勇者「ああ、それはありがたいけど」

女騎士「脱げ」
勇者「脱げるよっ! 1人でっ。
 ってかこっちくるなよっ! へ、変態っ」

女騎士「変態とは失敬だな。一緒に入るなんて云ってない」
勇者「じゃぁなんだよっ」

女騎士「背中を流す」
勇者「~っ!!」

女騎士「いいじゃないか、腰には布でも巻いておけば」
勇者「そりゃそうだけど」

女騎士「ほら、脱げ」
勇者「判ったよ。脱ぐよっ! あっち向いてろよ」

女騎士「最初から素直に云えばいいんだ」
勇者「軽く負けた気分なんだぜ」

女騎士「もういいか?」
勇者「まだっ。だめだっ」

女騎士「ふむ」
勇者「……」もそもそ

女騎士「もういいだろう?」
勇者「むぅ。いいぞ」
519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 18:02:44.24 ID:iOYUExkP
女騎士「良し、そこに座れ」
勇者「こうか?」

女騎士「湯をかけるからな。熱かったら云えよ?」
勇者「うん」

女騎士「~♪」

ざっぱーん

勇者「うわ、あったけー」
女騎士「気持ちよいだろう?」

勇者「おお。いいな!」

ざっぱーん

女騎士「冬場に招待できないのが残念だ」
勇者「なんでさ? 冬の方が気持ちよいじゃないか」

女騎士「冬にここで湯に入ったら、
 魔王の屋敷に帰るまでの雪の中で、
 湯冷めどころか凍り付いてしまう」

勇者「ああ、そういえばそうだな」

ざっぱーん

女騎士「……泊まっていけばいいんだけどな」勇者「へ?」

女騎士「なんでもない」
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 19:57:29.96 ID:iOYUExkP
ざっぱーん

女騎士「~♪」 ごしごしごし

勇者「それ、なんだ?」

女騎士「柔らかいブラシだ。豚の毛で出来てる」
勇者「気持ちいいなー」

女騎士「だろう? わたしも愛用の品だ」
勇者「そうなのかぁ」

ざっぱーん

女騎士「~♪」 ごしごしごし

勇者「なんか、すごい手際がいいな。得意なのか?」

女騎士「仮にも騎士だからな。ブラッシングは得意だ」
勇者「そうなのか?」

女騎士「痒い所はないか?」
勇者「耳の後ろかな」

女騎士「よしきた」 ごしごし
勇者「はぅー」

女騎士「言葉がしゃべれる生き物の相手なんてちょろいものだ」
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 19:58:45.26 ID:iOYUExkP
勇者「なんのことだ? 今ひとつ良く判らないな」
女騎士「こちらの話だ」

ざっぱーん

勇者「ううっ」ぶるぶるっ
女騎士「耳に入ったか? 済まないな」

勇者「平気だ」

女騎士「次は腕だ、右腕をかせ」
勇者「うん。あー」

女騎士「~♪」 ごしごしごし
勇者「えっとさ」

女騎士「なんだ?」
勇者「いや、なんでもないけど……」

女騎士「変なヤツだな」
勇者「……いや、変じゃないんだけど」

女騎士「?」
勇者「くすぐったいのですが」

女騎士「男だろう? それくらい我慢しろ」

勇者「男だから我慢できないと云うこともあるわけで」
534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/02(金) 20:01:46.50 ID:iOYUExkP
女騎士「もうちょっとだから」 わしゃわしゃ
勇者「ううー」

女騎士「真っ赤だぞ」
勇者「女騎士が服着ててほんと助かってる」
女騎士「?」

勇者「熱い。水掛けて」
女騎士「うん、わかった」

ざぱーん

勇者「ふぅ……」

女騎士「次は左手を貸せ」
勇者「うん」

ごしごしごし

女騎士「勇者は、ちょっと頑張りすぎだと思うぞ」
勇者「……」

女騎士「少なくとも、わたしは、勇者に助けて欲しくて
 勇者を好きになった訳じゃない。それは多分、魔王も一緒だ」

勇者「え……。うぅ」
女騎士「何を真っ赤になってるんだ?」
535 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 20:03:02.46 ID:iOYUExkP
勇者「いや、そんなことを突然云われても……」

女騎士「ああ、そうか。
 面と向かっていったのはもしかして初めてだったかなぁ。
 わたしは勇者のこと、好きだぞ。
 好きじゃない相手の剣になりたい訳がないだろう?」

勇者「……」

女騎士「固まっちゃだめだ」 ごしごしごし

勇者「えっと、すまん」

女騎士「うん。良いんだ。時間がかかるのは理解したから」
勇者「……?」

女騎士「勇者は強いよ。戦ったら、多分わたしなんか
 足元にも及ばないだろう? 
 でも、だから、その方法で強くなるのはもう限界だと思う」

勇者「……」

女騎士「限界というか、その方向で強くなっても、
 もう実際には勝てる相手は増えないんだ。最強なんだから。
 勇者が強くなるには、もっと自分を好きにならないと」

勇者「……そんなの出来るわけないし」

女騎士「出来るよ」
勇者「……」

ざっぱーん
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 20:04:20.97 ID:iOYUExkP
女騎士「絶対できると思うぞ?」
勇者「そうかなぁ」

女騎士「一緒に旅をしていた頃の勇者も優しかったけれど
 今の勇者の方が何倍も優しいし、何倍も大きいさ」

勇者「……」

女騎士「だから、今勇者が抱えている悩みや、苦しみも
 そう言うの全部綺麗になくなるなんて云えないけれど
 もし仮に抱えたままでも、もっと強くなれるよ」

勇者「そうなれば、いいな」

女騎士「よっし。流すぞ~」

ざっぱーん!

勇者「これで終わりか?」

女騎士「いーや、ユブネに入る」
勇者「ユブネってなんだ?」

女騎士「そこの大きな桶だ。お湯が入ってる。
 肩まで湯につかるんだ。サムラーイの修行らしいぞ?」

勇者「そうだったのか。サムラーイなら仕方ないな」

女騎士「身体を煮ることによって精神を鍛えるんだ」
勇者「精神……。俺に足りないのはそれだな!」 くわっ!

女騎士「100数えるまで出ちゃだめだぞ」
546 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 20:29:52.78 ID:iOYUExkP
――冬の王宮、広間、対策本部

冬寂王「ふむ……。ではこれで」
妖精女王「ええ、準備は良いようですね」
羽妖精侍女 ぱたぱた

執事「よろしかったですな」

冬寂王「うむ。とりあえず、停戦、および平和条約の
 締結に向けての一歩を記すことが出来ましたな」

商人子弟「内容の方を一応確認いたしますと
 まず第一に大空洞から距離10里を中立地帯とし、
 その内側への武力介入の原則禁止。
 前二回の聖鍵遠征軍遠征、および極光党戦役における
 捕虜の引き渡し条項。また、同戦闘の責任追及の禁止。
 以降、互いの領土内にある事物の
 所有権を主張することの禁止。
 冬の国首都、および開門都市において
 互いの領事館を作りその連絡に努める。
 ……こうなっております」

冬寂王「何度か確認させていますが、
 念を押しますとこの条約は南部連合として行なうものであり
 連合加盟国の合意と署名は受けていますが
 中央諸国家のそれは受けていない。
 そのことを理解していただけるよう……」

従僕「……」

妖精女王「ええ、理解しています。あとはこの書類を
 わたしの側では、氏族会議の書き族長から、
 書名をいただいて」

冬寂王「こちら側では連合参加諸国の書名を全て記入し
 互いに交換すれば、締結ですな。内容についての
 判断は終わっているので、あとは形式的な処置と
 なりますが」
547 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 20:31:19.16 ID:iOYUExkP
妖精女王「この一歩は偉大な一歩です」
羽妖精侍女「デスデス」

商人子弟「そうなればよろしいですね」

執事「ところで、鉄の国の氏族連合軍の件はいかがしますか?」

妖精女王「蒼魔族があのように瓦解した以上、
 魔界へと引き上げさせるべきかと考えますが、
 連合のお考えはいかがでしょう?」

冬寂王「こちらとしても異存はありません」

妖精女王「では、近々知らせを立たせましょう」
羽妖精侍女「ハーイ」

商人子弟「さて、これからも忙しいですね」
従僕「はいっ」

執事「課題は山積みですなぁ」

冬寂王「我らがこれを言うのもなかなか微妙ですが
 中央諸国は白夜王国を占領し、新生白夜直轄領を
 宣言しました」

妖精女王「直轄領……」

冬寂王「教会勢力の運営地、ということですな。
 これにより、彼らは極大陸への足がかりを得たことになる。
 報告の知らせによれば、彼らは魔界へと侵攻し
 『聖骸』なるものを狙っているとか」
548 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 20:33:08.47 ID:iOYUExkP
妖精女王「その話は聞いておりますが、
 『聖骸』などというものはわたしも知りません。
 氏族会議でも学者に調べさせているはずですが
 現在までの所それが何であるかは判っていないのです」

羽妖精侍女 ぱたぱた

商人子弟「ふむ」

冬寂王「あるいはそれは実在しないのかも知れませんな」
商人子弟「そうですね……」

妖精女王「どういう事でしょう?」

冬寂王「ただ単純に領土的欲求を強く持った中央の諸国家が、
 地上から見て新たな可能性に満ちているように見える
 魔界に発展の余地を見いだし侵略する。
 その口実としてのでっち上げかも知れないという意味です」

妖精女王「その可能性は、悲しいですがあるのでしょうね」

執事「ですが、同時に彼らは『開門都市』の攻略をも
 予定しているようです。
 確かにゲートをくぐり抜けた、いままでは大空洞ですか。
 それをくぐり抜けた先で、魔王の城へと向かうのであれば
 あの都市は理想的な補給位置にあるのですが、
 だからといって他に目標と出来る場所が
 全くないわけでもなく。意図は良く判りませんな」

妖精女王「ええ、鬼呼、蒼魔、人魔のいずれの領地で
 あっても攻め得たはずです。確かにあの当時は我ら
 魔界の氏族は互いに不信感を居抱き合い、
 連携面では問題が多くありましたから、
 そこを突くには、竜族の保護下にありながら比較的
 開放されていたあの都市を落とすのが
 楽だったのでしょうけれど」
550 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 20:35:45.65 ID:iOYUExkP
執事「しかし、今度はちがうのでしょう?」

妖精女王「はい。今回は氏族会議の結束も固くなり
 決して望みはしませんが、以前のようなことはないかと
 考えています」

冬寂王(だが、魔界は未だにマスケット銃なるものを
 十分に理解していないのではないだろうか?
 あの武器が充分に配備された兵が、
 本当に十万もいるのだとすれば、魔界の抵抗などは
 薄紙のごとく破れてしまうに違いない……)

妖精女王「私たち妖精族は、身体も大きくはありませんし
 魔力はともかく、戦闘能力には劣ります。
 ですから、戦争は是が非でも避けたいのですけれどね」

商人子弟「そうですね、戦争にならずに済むのが
 一番ありがたいんですが」

冬寂王(それは難しいだろうな。
 ……ここまで諸国家や貴族を巻き込んでしまった以上、
 一戦も交えずに帰るというわけにはもはや行くまい)

執事 ちらり

冬寂王「ええ、それが最も望ましい結果ですな。
 しかし、同時に備えなくしての平和もまた
 あり得ないでしょう。
 大氏族会議の皆様方、また魔界を統べるという魔王に、
 くれぐれもよろしくお願いいたします」
556 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 21:05:00.94 ID:iOYUExkP
――冬越しの村、魔王の屋敷、執務室

魔王「んっ。うぅーん」ぽきぽき
メイド長「お背中が痛いですか? まおー様」

魔王「うむ、ちょっと根を詰めてしまった」
メイド長「肩でもおもみしましょうか?」

魔王「たのむぅ」
メイド長「ぐてぐてしてらっしゃいますね」

魔王「うむ……」
メイド長「手強いですか?」

魔王「なかなかになぁ。方策は思いつくのだが
 工作精度や冶金技術は一足飛びには上がらぬ。
 工具を作るための工具も必要だと思うし……」

メイド長「そうですねぇ」

魔王「あの遠征軍とやらは何とかならぬのかなぁ」
メイド長「そんなにあれが問題ですか?」

魔王「へ?」
メイド長「いえ、そんなに強大な脅威だとは
 思えないのですよね」

魔王「そうか?」
メイド長「はい」
557 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 21:07:51.03 ID:iOYUExkP
魔王「どうする気だ?」

メイド長「いえ、出かけていって、
 首脳部を100人ばかり上から順に殺せば済むのではないかと」

魔王「ああ、まぁ、確かにな」
メイド長「……」

魔王「だが、それで皆は納得するのかな」
メイド長「納得、ですか?」

魔王「ああ、納得だ」
メイド長「判りませんね」

魔王「そうだなぁ。うん。
 実を言えば、わたしの当初考えていた課題は
 殆どクリアされているんだ。

  たとえば、人間世界側の飢餓の問題は、
 馬鈴薯および玉蜀黍の栽培で随分緩和された。
 もちろん政治指導の混乱で飢餓が起こりえることは
 あるだろうが以前のような、
 根本的な飢餓は少なくなったと確信できる。
 また、女魔法使いの助力も得て種痘が広がり始めた。
 人間世界も魔界も、これで人口は増え始めるだろう。

  人間世界には南部連合なる経済圏が誕生し、
 しばらくは軍事的緊張が続くだろうが、
 その状況さえ乗り切れば、
 中央諸国家とも良い関係が築けるのだと思う。

  中央側がどう考えようと、多様性は世界安定の鍵だ。
 二つの経済圏が存在した方が、発展の速度も安定度も
 増すことは確実なのだからな」
559 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 21:12:03.81 ID:iOYUExkP
魔王「また、魔界では長い間続いていた種族間のわだかまりも
 合議制の会議と、いくつかの事件を経てゆっくりとだが
 融かされつつある。魔族という氏族社会に、人間という
 異分子が紛れ込んだことによって、潤滑油的な効果が
 有ったのかも知れない。

  現在進んでいる交易街道の計画は、
 確実に氏族同士の架け橋となるだろう。
 魔界は歴史の新しい局面へと入ったのだ。

  こうして考えてみると、
 “人間界の飢餓”“南部と中央の使役関係”
 “魔界の側の氏族間の対立”。
 どれも解決の道しるべは出来たのだ。

  もちろんいずれも根の深い問題だし、
 これからもトラブルはあるだろう。
 だが、それらは乗り越えられないものではないはずだ。
 またそれら全てをわたしが背負うつもりもない。
 ここはみんなの住む世界なのだから、みんなだってその
 進歩には参加してもらわねば困る」

メイド長「そうですね」

魔王「しかし、だとすると、
 今これから起きようとしている戦争
 ……つまり、中央の教会が考えている第三次聖鍵遠征軍は
 “システム上避けえない戦争”では無いということになる。

  追い詰められて否応なく行なう戦争ではない。
 欲望に駆られたのか、
 それとも何らかの狂信によるものなのかは
 わたしには判らない。
 けれど、そこには飢餓や経済的な逼迫とは
 また別種の力学が働いているように思われるのだ」
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 21:16:25.99 ID:iOYUExkP
魔王「だが、以上の考察を正しいとすると
 原因を取り除く……、つまり、食糧の自給率を
 上げるであるとか、話し合いによって氏族間の鬱積した
 わだかまりを低下させるとか、
 その種の手法で解決させられるのかどうかは疑問だ。

  聖鍵遠征軍首脳部にはそれなりの能力もあれば損得勘定も
 有るのだろうが、少なくとも参加している民衆は
 宗教的な情熱に突き動かされているわけであろう?
 そうであれば、損得勘定で矛を収めさせることも
 難しいと予想することが出来る。

  これはなかなかの難問だ。
 そんな彼らを“納得”させる方法は、
 暗殺なんかじゃないと思うんだよ」

メイド長「ではなんです?」

魔王「その答えがわからないから悩んでいる」

メイド長「困りましたね」ぎゅぅ
魔王「ううう。痛いぞ。メイド長」

メイド長「すみませんっ」なでなで

魔王「何か見落としているような、
 間違っているような気もする」

メイド長「そうなんですか?」

魔王「食糧の問題も雇用の問題も外交の問題も
 経済を中心に回っている。
 経済が上手く行かなければ世界は幸せにはなれない。
 でも、経済が上手く行くだけでも
 幸せにはなれないのかもしれないな……」
563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 21:47:45.37 ID:iOYUExkP
――鉄の国南部、辺境の森、獣人族の大天幕

ばさっ

東の砦将「よう!」

軍人子弟「お邪魔しているでござるよ」

東の砦将「あんたも飽きないな!
 こんな森の中へ何度も何度も。
 何か面白いことでもあるのか?」

軍人子弟「面白いもなにも、見ず知らずの世界の話が
 聞けるなんてそうそうできる事じゃないでござるよ」

メイド妹「うんうんっ♪」

東の砦将「そりゃそうだが。おや?
 ……こっちのちっこいお嬢さんはなんだい?」

軍人子弟「ああ、これは拙者の妹分でござる」
メイド妹「ござるー♪」

東の砦将「元気いいなっ!」
獣牙戦士「面白い娘だぞ」

東の砦将「そうなのか?」

人間傭兵「なかなかに気合いが入ってるな。あははは」
564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 21:49:17.76 ID:iOYUExkP
軍人子弟「今日の所は、差し入れにきたでござる」
メイド妹「うん、そうそう!」

東の砦将「差し入れ?」

獣牙戦士「すごく美味いぞ」

軍人子弟「この娘は、なんというか、
 料理の妙を心得てござってなぁ」

メイド妹「どんどん食べて!」
  「美味いぞう」「おう、たいしたもんだ!」

人間傭兵「もういっぱいくれや」
東の砦将「ほほう」

軍人子弟「本人の希望もあって今日は一緒にきたでござるよ」
メイド妹「ですです。魔界のお料理の話も聞きたかったから」

東の砦将「そうかそうか。嬢ちゃんは料理人かい」
メイド妹「未来の宮廷料理人ですっ」

ばさっ

銀虎公「何事か?」

軍人子弟「本日もお邪魔させていただいたでござる」
銀虎公「ふむ」

軍人子弟「もうそろそろご出立だとか」
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 21:52:06.96 ID:iOYUExkP
銀虎公「今朝知らせが入った。
 偵察部隊と合流の上、明後日には出立する」

軍人子弟「ならば、それまでには是非、一献なりと
 さしあげないと、帰すに帰せないでござる」

銀虎公「……」

軍人子弟「人間界の酒も、決して悪くないでござるよ。
 これは、鉄の国で取れた強い酒でござる。
 雅な華やかさはないでござるが、この大地の酒でござる」

銀虎公 ちらっ「料理を振る舞ってくれたのか?」

メイド妹「美味しいので一杯どうぞっ」

銀虎公「物怖じしないのだな」
軍人子弟「拙者の妹分は特別でござるよ」

メイド妹「ささ。熱いうちに!」
銀虎公「いただこう」

軍人子弟「酒もつぐでござるよ」
銀虎公「うむ」

とくとくとく……

軍人子弟「魔界には月がないと聞いたでござる」

東の砦将「ああ」ごっくごっくごっく
銀虎公「あの、白いものか」

軍人子弟「今宵は月が沈むまで飲むでござるよ」
572 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/02(金) 22:18:10.44 ID:iOYUExkP
――蔓穂ヶ原にほど近い廃砦

ガサガサッ!!

傭兵斥候「おい。まずいぞっ!」

ガサガサッ!

傭兵弓士「どうしたんだ?」

傭兵斥候「遠征軍の部隊が、こちらに向かってくる。
 マスケットとか言うヤツも一緒だ」

ちび助傭兵「どれくらいなんだ?」

傭兵斥候「随分横に大きく広がってて判らない。
 一つの部隊は20人~50人くらいだが、
 そんな部隊がわんさとある。
 どうやら、硝石を持ち逃げしたのがばれたらしい」

傭兵弓士「そりゃぁ、あんだけ難民にも見られているしな」

器用な少年「や、やばいじゃないか! 逃げようぜ」

生き残り傭兵「そうも行かない」

ちび助傭兵「ああ、逃げてはだめだ」
若造傭兵 こくり



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