魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」@ wiki
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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」@ wiki
ja
2023-12-10T23:07:50+09:00
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登場人物
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2023-12-10T23:07:50+09:00
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年表
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ネタバレ満載まおゆう年表
#contents
**数百年前~
・疫病と飢餓が続く
**?戦前
・魔界は地方豪族や領主が次々と王を名乗って争う戦国時代
**約50年前
・南部諸王国の街を中心に『南部独立都市および自由商人による経済同盟』(通称:『同盟』)結成。
**17年前
・勇者誕生(戦争開始時には歩けるようになったとなると、逆算すると17年前が妥当)
・第43代魔王『紅玉の瞳』即位(4年目春に治世20年となると、17年前)
**15年前
・第一次聖鍵遠征軍の魔界侵攻。ゲートの封印が解かれる。兵員約1500名
・人間と魔族の戦争開始。中央大陸の景気は上昇局面に入る。
**?戦中
・中央大陸危機会議設立。これにより疫病と飢餓による死者が30%まで低下。南部諸王国に戦時支援基金を支援
・第二次聖鍵遠征軍が開門都市を占領
・南氷海の極光島、魔族に占領される
**12年前春(四年目秋から見て15年前)
・勇者、老賢者と修行中。
**11年前夏(四年目冬から見て14年前)
・勇者、領主の館へ。貴族の一家の心ない言動に傷つく
**10年前
・メイド姉誕生(メイド妹との年齢差は2歳)
**8年前
・メイド妹誕生(四年目春時点で12歳)
**8年前冬(四年目冬から見て11年前)
・老賢者、死去。
**2年前(四年目冬から見て5年前)
・勇者、パーティーと行動中。自身の過去は話さず。
・勇者、魔界の小さな村で執事(弓兵)に世界を救う理由を語る。
**1年前
・勇者、パーティーと別れて単身魔王城へ
**1年目秋
・魔王、勇者と邂逅
・魔王、冬の国の冬越し村で農法改革に着手
・元逃亡農奴であるメイド姉妹、冬越し村の屋敷で雇用される。
**1年目冬
・魔王、三子弟(貴族子弟・軍人子弟・商人子弟)およびメイド姉妹に対する教育を開始。
・魔王、湖畔修道会に馬鈴薯栽培・輪作などの伝播を依頼。冬越し村に湖畔修道会の修道院を建設することも依頼。
**2年目春
・冬越し村の湖畔修道会の修道院建設開始。
・勇者、魔界で女魔法使いを捜索するとともに、黒騎士として魔界の粛清を開始。
**2年目初夏
・魔王、改良羅針盤を開発
・勇者、黒狼砦にて魔狼元帥・魔狼将軍を粛清し、妖精女王を救出。
**2年目夏
・冬越し村の湖畔修道会の修道院完成
・魔王、同盟の元に改良羅針盤を提供
・冬越し村で2回目の馬鈴薯の収穫
・農機具の改良、修道学院の設立、風車の発明
・勇者、火竜大公に開門都市を攻略するための軍勢の撤退を依頼。火竜大公は勇者が来年春までに開門都市を奪還し魔王の直轄領にすると言う約束に基づき、これを合意。
・同盟に改良羅針盤が届いてから1月後、同盟が魔王に接触。魔王、玉蜀黍を使った中央大陸中央部の荒野の開拓というアイディアを同盟に売り、同盟に戦争の早期終結を求める。
**2年目秋
・冬越し村の修道院に水晶農園建設。加鼓亜などの熱帯植物が栽培される
**2年目冬
・''第一次極光島攻略作戦''。
白夜王を司令官とする南部諸王国の軍艦200、兵員7000で極光島に進軍するも、南氷海上で魔族の攻撃を受け敗北。
生存者は軍艦15、兵員500。
冬の王戦死。
・冬寂王即位
・このころから冬の国への開拓民の流入が始まる。
・魔王、ひそかに冶金師に依頼しブラックパウダー(黒色火薬)を開発し始める。
・魔王、鉄の国の職人に依頼し、マスケット(火縄銃)の開発を始め、その手稿(『The genius's Manuscript』)を書く。
・冬越し村の年越祭。
**3年目年始の冬
・魔王、冬寂王を訪問し、塩を提供。引き換えに戦闘を一昼夜遅らせるよう進言
・勇者、妖精族を用いて聖鍵遠征軍を幻術で恐慌状態に陥らせる。
・東の砦将率いる兵士500を残し、開門都市の聖鍵遠征軍撤退。
・東の砦将、有力商人および有力魔族を招き開門都市に臨時自治政府を開く。
・''第二次極光島攻略作戦''
司令官は女騎士。
年明けから1週間後、冬の国沿岸に現れた流氷を海水と塩で結合し極光島に架橋。陸戦で極光島を制圧。
人間側の兵約12000、魔族側の残存兵約8000
開門都市より撤退した聖鍵遠征軍約8500が援軍に現れるが、極光島より撤退した魔族軍7500と衝突し兵員2500を失う。
女騎士、魔族側の司令官である南氷将軍を一騎討ちで討ち取る。
極光島奪還。
冬の国などの南部諸王国は西回り航路の安全を確保し潤う一方、魔界では貴重な塩の生産地を失う。
**3年目早春
・第二次極光島攻略戦の凱旋式。
・冬の国、鉄の国、氷の国の三国による''三国通商協定''を締結。
**3年目晩夏
・メイド長、一時的に旅に出る。
・このころ、ポンプが開発される。
・メイド妹、炭酸飲料を開発
・商人子弟、冬の国の文官に就職
・開門都市連絡会議。縁日が開かれる。
**3年目秋
・魔王、鉄の国の工房に依頼し、活版印刷機を開発。
・魔王、冥府殿の封印のため、魔界へ旅立つ。
・このころ南氷海のニシンを用いた肥料が使われ始める。
・冬の国で役人の一般公募が始まる。
**3年目冬
・勇者、青年商人に魔界を見せる
・女騎士、勇者を主として剣をささげる。
・白夜王が『紅の学士』の異端性を中央聖光教会に告発。
・中央聖光教会、『紅の学士』の引き渡しを要求。
・貴族子弟、氷雪の女王の命により諸国漫遊の旅へ
・メイド姉、『紅の学士』として演説を行う。冬寂王は紅の学士を保護し、湖畔修道会は紅の学士を聖人と認め、中央聖光教会と決別。
・南部諸王国三カ国(冬の国・氷の国・鉄の国)、湖畔修道会を国家宗教に認定。
・このころ南部諸王国三カ国で農奴解放政策が始まる。南部諸王国に近い国々から農奴が流入。
・氷の国の工場で印刷が始まる。
・青年商人による同盟の小麦、鉄、塩、木炭の大量買い付け
・氷の国の吟遊詩人による湖畔修道会の布教開始。
・青年商人、中央諸国の貴族たちに生産物買い取り証書(小麦引き渡し証書)と引き換えに、翌年の小麦の代金を先払いする。
・メイド姉妹は出版のために氷の国へ。女騎士も護衛として同行。
・冬の国で戸籍と里家制度が始まる。
・『同盟』の本部を湾岸都市から湖の国の首都に移転。
・中央諸国で穀物などの物価急上昇
・商人子弟、三国通商同盟外に輸出される物資に関税を掛け、中央諸国への物資流出と物価上昇に対する防衛をするよう進言。給金の現物支給、馬鈴薯の定額制なども提案。この鉱石が認められ、商人子弟、冬の国の財務長に昇進。
・対三国通商同盟の軍が招集される
・火竜公女、湖の国にいる青年商人を訪れ、塩の買い付けを行う。
・白夜の国、盗賊を支援し鉄の国を荒らさせる。
・聖光教会、三国通商同盟を破門し、宣戦布告。
・''南部草原会戦''開始
中央諸国軍は、冬の1月め、第四兎の日が参集予定日だが、参集の遅れや冬の国の策略、士気の低さで会戦が遅れる。
三カ国通商同盟軍は女騎士率いる約4,500名。中央諸国は霧の国の青灰王率いる近衛騎士団、斧騎士団、山の国の重装騎士団、梢の国の弓騎士団、傭兵団など推定総勢20,000名
・青年商人、南部草原会戦のころには10人委員会の委員に就任した模様
・聖王国が金貨の再鋳造を計画。旧金貨28枚を新金貨10枚に変換。
・メイド姉妹は氷の国から鉄の国に疎開。
・中央、書状により蒼魔族をけしかけ南部に進軍させる。
・魔王の大陸のゲートより蒼魔族2670名が人界に侵攻。女魔法使いが転移魔法で撤退させる。
・勇者、地殻ごとゲートを破壊し、地上界(人界)と地下界(魔界)をつなげる。
・青年商人、冬の国を訪れ商人子弟と交渉。『同盟』の三カ国通商同盟領内の通行件に関する特例措置、極光島の租借、三カ国通商同盟の各首都に同盟の商館を建設すること、三カ国通商同盟が備蓄する馬鈴薯の引き取りなど。目的は中央と南部の二大通貨体制の樹立と、魔族との交易。
・''白夜の国、鉄の国に侵攻''
白夜側、片目司令官。軽騎兵1500、歩兵500、傭騎兵400、傭兵600 の総勢約3000名
鉄の国、軍人子弟。兵士400、即席兵500。
網で足止めした白夜騎兵を塹壕より石弓で攻撃。斜傾陣で白夜軍を左翼に誘導し長槍部隊で攻撃。右翼攻撃を諦め、左翼に向かい側面を見せた白夜軍を石弓で攻撃。
鉄国、死者18名、負傷者221名。白夜国、死者304名、負傷者892名、捕虜450名。
鉄の国の勝利に終わる。
・魔王、一月ぶりに冥府宮より出るが、精神汚染が進んでおり、メイド長と交戦。メイド長、魔王を玄室に封印。
・''南部草原会戦''
中央征伐軍の参集完了。全体会議が始まる。非戦闘員含む総数40,000、兵力28,000、うち騎馬兵力9,000。
三カ国同盟、周辺の農家に腐り水を含ませた飼葉を手配し、中央征伐軍の馬の体調を崩させ、さらに開戦を遅らせる。
・女魔法使い、冬の宮殿を訪れ、魔王の天然痘の予防法(種痘)のアイディアを伝える。
・勇者、魔王を救出し、正気に戻らせる。
・勇者が冥府殿の扉を破壊したため、歴代魔王の霊が世に放たれる。
・メイド姉妹、鉄の国の鋳造工房で片目司令官に襲われるが、軍人子弟が片目司令官を成敗し救出される。
・''南部草原会戦''
中央征伐軍の傭兵約1000が独断で三カ国同盟軍と衝突。
三カ国同盟軍は女騎士率いる冬国騎士約200で迎撃、森の中で敵兵力を数回分散し、各個撃破。
降雪により、中央征伐軍の王弟元帥、戦争を春まで延期することを決断。
・第三回聖鍵遠征軍の召集開始
・聖王国でマスケットが開発される。異端審問事件の時、魔王が鉄の国の工房に残した手稿(「『The genius's Manuscript』)が流出したため。マスケット量産開始。
・同盟、三カ国通商同盟が備蓄する馬鈴薯を買い取り、中央諸国に輸出。
・三カ国通商同盟、魔界への調査団派遣を決定。
・魔王、忽鄰塔(大部族会議、クリルタイ、Quriltai)の召集を宣言。
・魔王、冬越し村に帰還。
・中年商人、開門都市に行き、塩を納品。
・魔界で為替機構が軌道に乗る。郵便、公共工事での病院建設、獣人族と鬼呼族の共通憲法署名なども
・魔王一行、魔王城東翼、別館、古城民宿“まおー荘”で慰安旅行。
・土木子弟と奏楽子弟、開門都市へ向かう。
・執事(弓兵)率いる冬の国の諜報部隊、魔界へ向かう。
・貴族子弟、氷の国に帰還。三ヶ国通商への参加を希望しているのは湖の国、梢の国、葦風の国の三カ国と、その他都市領主24。中央と白夜、赤馬の国に挟み撃ちになる懸念があるため、公的には表明できず。
・軍人子弟、鉄の国の護民卿に就任。大量に流入する開拓民を屯田兵や工房に吸収することで対処。街道の新設・拡張、鉄工所の建設。
・中年商人、土木子弟を大空洞架橋計画に誘う。
**4年目春
・魔界、鵬水湖の畔で''忽鄰塔''(大族長会議、クリルタイ、Quriltai)開催
・青年商人、火竜大公に極光島で産出される塩の1/3を優先的に買い付けることができる権利を売り、極光島の事業に対する出資および魔界での販路形成の強力を求める。
・貴族子弟、湖の国の外戚の王女と赤馬の国の王子の恋を取り持つ。
・魔王、三子弟に忽鄰塔に使うための各種サンプルの採取を指示。
・勇者、魔王を侮辱した獣人族を十人抜きで謝罪させる。
・執事率いる冬の国の諜報局、忽鄰塔に潜入。
・鬼呼族の姫巫女、親書により停戦合意
・忽鄰塔において、蒼魔族以外の7氏族から停戦の合意を得る。
・蒼魔王、第三十四代魔王"紅玉の瞳"の廃位を要求。賛成4票(蒼魔族、獣人族、機怪族、巨人族)、反対3票(妖精族、鬼呼族、竜族)、棄権1票(人魔族)。
・東の砦将、人間族による新たな魔界の氏族『衛門族』を結成。火竜大公と鬼呼の姫巫女の後見により、忽鄰塔大会議に参加する大氏族の一角となる。衛門族は魔王廃位議決に反対。これにより、魔王廃位議決は過半数を得られず、棄却される。
・魔王暗殺未遂事件。魔王、毒矢に倒れる。
・魔王、死を装う。
・刻印の蒼魔王子、蒼魔王を暗殺。蒼魔の刻印王として即位。
・蒼魔の刻印王、新魔王就任を宣言
・執事により、暗殺者が判明するが、蒼魔の刻印王が暗殺者を口封じに殺害。
・魔王生存が発覚。魔王、蒼魔の刻印王の捕縛を命ずるが、蒼魔族反乱を起こし逃亡。
・蒼魔族軍、約1万数千、自領に向かう。
・魔王、魔王としての権威を一時的に大氏族会議に委譲。議長を火竜大公とし、妖精女王を九大氏族以外の中小部族の後見とする。
・土木子弟、大空洞架橋計画を立て、作業開始。
・聖王国南部の開拓地、光の子の村で農民を集め、マスケット兵として訓練。光の子の村は聖王国だけでなく中央諸国のあちこちに作られる。
・第一回大氏族会議、蒼魔族領の監視、各地の蒼魔族の保護、各領民への今回の事件の告知を決定。
・聖王国、新金貨を流通させる。新旧交換比率10:35
・奏楽子弟、地上へ旅立つ。
・メイド妹、カスタードプディングを発明。
・開門都市に同盟の商館が建つ。羊、牛などの地上の家畜の導入、貨幣経済の導入を進める。
・開門都市の大通り補修計画
・機怪族、バネ板式の馬車を発明。
・同盟、聖教会に小麦引き渡し証書を売却。中央の貴族や領主は教会に小麦を引き渡す義務を負う。同盟、大量の新金貨を獲得。
・大空洞の木製の橋完成
・赤馬国の外交特使、氷の国を訪れ三ヶ国通商同盟への参加を表明。
・冬の国で里戸制度と戸籍調査が進む。それにより予算が組めるようになる。
・マスケットの後継機であるフリントロックの研究が始まる。
・銃の部品ごとの分業体制が始まり生産速度が上がる。
・メイド姉、旅立つ。
・第二回大氏族会議。銀虎公の提案により蒼魔族に降伏勧告を送る。書面は紋様の長が行う。
火竜公女、九族大路および十八枝道を提案。その工費を確保するために債符を起こす。
・火竜公女、勇者と決別。
・青年商人、魔界で債を興す。
・湖の国で奏楽子弟とメイド姉が出会う。
・鬼呼族の姫巫女、土木職人集団である普請組を立ち上げる。
・メイド姉と奏楽子弟、湖の国の修道院の文書館で調査。五大精霊の伝承を発見。
・蒼魔族軍約25,000が蒼魔族領を出る。民間人約一六万人は取り残される。
・蒼魔族軍、大空洞を通り、白夜の国に侵攻。白夜王を殺害し、白夜の国を征服。
・冬寂王、鉄の国へ向かい、三ヶ国通商同盟の本部を鉄の国へ移す。
・同盟、聖王国の戦争準備を受け、鉄・石炭の流通を押さえる。
・税収不足の楡の国、野盗を用いて冬の国から略奪する計画
・蒼魔騎兵2000、鉄の国国境を威力偵察。軍人子弟、投石機で国境の道の崖を崩し閉鎖。
・魔王回復し会議に復帰。大氏族会議、蒼魔族討伐遠征を決定。総大将魔王、右軍将軍銀虎公(8000)、左軍将軍東の砦将。妖精女王を外交特使。碧鋼大将率いる機怪族は旧蒼魔族領の金山・鉱山・工房を封鎖凍結し、領民を統治。
・メイド姉と奏楽子弟、聖王国聖光教会の大教会の書庫に潜入。宝珠の伝説を発見。メイド姉と奏楽子弟、外なる図書館へ。
・貴族子弟とメイド妹、氷の国の外れの交易村で器用な少年を回収。
・三ヶ国通商同盟、南部連合に拡大。参加国は冬の国、氷の国、鉄の国、湖の国、梢の国、葦風の国、赤馬の国、および自由交易都市複数。
・南部連合の軍勢 軍人子弟軍3500 + 冬の国5000(女騎士の騎馬部隊500、冬寂王の部隊、歩兵部隊1500の合計2000 第二次編成部隊3000) = 合計約8500。氷の国は鉄の国国境付近の哨戒。
・大主教、第三次聖鍵遠征軍に参加する貴族・領主の借金や借入物の支払いを一時的に免除。そのため中央の多くの領主・貴族が第三次聖鍵遠征軍に参加。物価高の影響もあり、農奴開拓民も多数参加。
・第三次聖鍵遠征軍約10万、南へ進軍。
・聖王国、蒼魔族と馬車4500台分の食料および武具4000人分と、馬車450台分の硝石を取引。なお、蒼魔族には450台分の硝石が残る。
・''蔓穂ヶ原の戦い''
紫涙河源流付近の泥炭地、蔓穂ヶ原に布陣。
南部連合、冬国騎馬500、歩兵1500、鉄国3500、合計5500。1週間後に冬国二次編成部隊3000追加。鉄国開拓民の工兵多数。
蒼魔族20,000、奴隷歩兵多数
・貴族子弟一行、冬の国辺境の森林の野盗化した傭兵団に白夜の国の首都解放を要請。
・''蔓穂ヶ原の戦い''
第三次聖鍵遠征軍乱入。鉄の国の開拓兵と交戦。
・妖精女王、三ヶ国の王たちに蒼魔族討伐のための魔王軍の通行許可を依頼。合わせて三ヶ国通商同盟との停戦を求める。
・勇者、蒼魔の刻印王と交戦
・傭兵団、白夜の首都を解放。
・魔王軍、蒼魔族の側面より攻撃。
・百合騎士団、大規模集団術法で勇者と刻印王を捕縛。
・第三次聖鍵遠征軍約四万、南部連合軍、蒼魔族、魔王軍に無差別発砲。魔王軍撤退。
・勇者、執事と傭兵団に救助される。刻印王、傭兵隊長に討たれる。傭兵、教会軍と交戦し壊滅。
・南部諸王国軍、堰を切り蔓穂ヶ原の水位を上げ、泥炭を延焼させて撤退。
・聖鍵遠征軍、白夜の国を制圧。新生白夜直轄領となる。大空洞への海路を確保する。
・メイド姉と奏楽子弟別れる
・南部諸王国軍の被害約3500、蒼魔族二万ほぼ壊滅、聖鍵遠征軍被害約6000
・正式に南部連合結成を宣言。三ヶ国通商同盟解散。
・同盟、銅の国にある中央の秘密性鉄公房の諜報開始。
・貴族子弟と生き残った傭兵ら、聖鍵遠征軍の硝石を盗む。
**4年目夏
・フリントロックの作成始まる。
・大空洞の橋のいくつかが完成する
・中年商人、土木子弟に開門都市の防壁工事を依頼。
・南部連合と魔族の停戦平和条約の交渉が進む。
・鉄国に滞在する氏族連合軍、撤収へ
・メイド姉、傭兵らと合流し、隊長代行となる。教会軍に発見されたため、隠した硝石を爆破。
・中央諸国で金属確保のための教会の鐘の接収が始まる。
・魔王、外なる図書館に向かい、ライフルの技術を調査。
**4年目秋
・鉄の増産のため、中央諸国で木炭の価格高騰。
・フリントロックの量産が始まる。
・メイド姉ら、白夜直轄領で船を奪い極大陸へ向かう。
・魔王、鉄の国のギルドでライフル作成交渉。
・勇者、女魔法使いの話を聞き、単独行動へ。
・冬の国の首都で妖精族の領事館の建設
・メイド姉、魔界へ到着。冬国諜報部員と接触。火焔山脈へ向かう。貴族子弟は開門都市へ。
・第三次聖鍵遠征軍、白夜直轄領より魔界へ進発。総勢約243,000名(マスケット部隊10万、フリントロック部隊250、槍兵・大盾部隊14万、貴族軍35,000、騎馬戦力1万)、非軍事参加者80,000。残存部隊5000、槍兵4000、落葉の国に管理を一任。
・天然痘の予防法に対する手紙が氷の国に殺到。
・勇者、王弟元帥ら第三次聖鍵遠征軍に接触し、同行する。
・同盟、湖の国を渡る木炭に馬車一台あたり金貨60枚の関税をかけるよう要請。銅の国でのマスケット製造を遅らせるため。
・同盟、教会に代わり為替業務を行うことを目論む。
・第三次聖鍵遠征軍、魔界到着
・聖百合騎士団、勇者の身柄引き渡し要請。
・開門都市、聖鍵遠征軍接近を竜族、鬼呼族、旧蒼魔族領の機怪族に警告。市民にも公にする。
・王弟元帥、別働隊5万を率いて旧蒼魔族領へ。本隊は約15万
・メイド姉、火焔山脈に到着。火竜大公に「ひかりのたま」を譲るよう要請。それに対し、火竜大公はという遠征軍の幾ばくかでも引かせるという条件を出す。
・鬼呼の姫巫女、紋様の長、開門都市に到着。巨人族・獣人族・竜族の兵も集結し、総勢6万
・''開門都市の攻防戦'' 聖鍵遠征軍側司令官、霧の国の青灰王。マスケットによる飽和攻撃により防衛側の約半数30,000が戦死。
・魔王軍、開門都市前の戦場に到着し、撤退支援。
・銀虎公、魔王をかばい戦死。魔王軍、開門都市に入城。
・聖鍵遠征軍、開門都市砲撃開始。
・同盟、教会の為替証を大量購入。
・女騎士、修道院騎士団と義勇兵を率いて魔界へ出発
・南部連合会議、派兵を決定。
・同盟、西の海岸自由都市などで大量の為替を現金化。その都市の教会で資金不足発生。パニックに陥った領主から為替を買い取る。
・メイド姉、旧蒼魔族領を占領しているかのように装い、王弟元帥軍を足止め。王弟元帥、食料馬車4000台分、硝石、馬車1,000台分の供出を求める。勇者、王弟元帥と交渉を続ける
・魔王、火竜大公への白紙委任状を火竜公女に託す。
・メイド姉ら、食料馬車を供出。5日の足止め中に領内の食料の持ちだし、隠蔽、鉱山の閉鎖が進む。
・王弟元帥、聖鍵遠征軍本隊より帰還要請を受ける。
・副官率いる獣人族部隊、遠征軍の宿営地・集積地を襲撃。
・青年商人、聖王都八角宮殿にて同盟の為替業務許可の勅命を得る。教会に、為替が降りなかったことによる損害賠償金貨33億枚を請求する。聖国王、その33億の代わりに聖王都に湖畔修道会を建築する許可を出す。
・メイド姉、食料850台および医薬品を供出。王弟元帥、旧蒼魔族領から開門都市へ。
・メイド姉、勇者を名乗る。
・女騎士の軍、副官の軍と合流。総勢約7000。集積地襲撃を続ける
**4年目冬
・火竜公女、青年商人に助けを求める。
・南部連合軍30,000、大空洞を超える。
・王弟元帥、開門都市前の聖鍵遠征軍本隊に戻る。後方の南部連合軍迎撃に向かう。
・青年商人、火竜大公に結納品を納める。
・青年商人、火竜公女によって魔王を名乗らされ、火竜公女は勇者を名乗る。
・火竜公女、火竜大公に開門都市での忽鄰塔開催を要請。
・王弟元帥、馬防柵を設置。
・城壁への狂信兵突撃が続く
・女騎士の軍、南部連合軍と合流。
・青年商人、開門都市で魔王と会い、都市防衛を引き継ぐ。
・聖鍵遠征軍、人間爆弾で開門都市の防壁・南部大門を突破。市街戦に突入。聖鍵遠征軍、指揮系統混乱。
・勇者、メイド姉一行から離脱。開門都市へ向かう。
・南部連合軍、王弟元帥軍と交戦。
・勇者、招嵐万雨呪で開門都市に雨を降らせる。
・農奴兵の一部、食料不足により、反乱を企てる。
・大司教、捕縛祈祷で勇者の力を吸収。
・軍人子弟、女騎士より南部連合軍の采配を預かる。女騎士離脱。
・執事、大司教と交戦し死亡。
・女魔法使いとメイド長、天塔起動システムの調査・修理・清掃を行う。
・魔王、勇者と合流
・王弟元帥軍と南部諸王国の戦闘による王弟元帥軍の被害4000
・南部連合軍、夜間に開門都市側へ移動開始
・東の砦将率いる開門都市南門周辺に放火。北門の包囲を解かせるための陽動を行う。
・南部連合軍に王弟元帥軍の決死隊6000が接近。ライフル兵、指揮系統を分断。
・大主教、聖戦を宣言。全兵力を都市と後方に振り分ける。
・南部連合軍、王弟元帥軍の前に食料と開拓民募集のビラを乗せた馬車を置き撤退。食料の奪い合いで前線混乱。
・女魔法使い天塔起動。勇者と魔王と女騎士、天塔を登る。
・大主教、従軍大司祭を殺害。天塔を登る。
・百合騎士団隊長、カノーネによる同志討ちをはじめ遠征軍混乱。
・南部連合軍、聖鍵遠征軍の兵士の受け入れ、収容を開始。
・忽鄰塔により魔族数万が開門都市に接近。
・女騎士、大主教と交戦。
・器用な少年ら傭兵一行、開門都市の9つの丘の神殿の鐘楼で鐘を鳴らす。
・王弟元帥軍、南部連合軍、開門都市軍、メイド姉一行が一堂に会する。
・メイド姉、王弟元帥に光の精霊の聖骸として「ひかりのたま」を贈与。
・女騎士、大主教を打ち破る
・女魔法使い、解放された歴代魔王の魂を自らの体に封じ込め死亡?
・青灰王と百合騎士団隊長、死亡?
・開門都市の戦闘停止へ。
・魔王と勇者、光の精霊を説得。そして光の精霊の救済を願う。
・不死鳥世界をめぐる。
・魔王、勇者、女騎士、別大陸にて生存?
**6年目
火竜大公病に伏せる
**7年目
火竜大公、病死
#comment_num2(num=10,log=「年表」コメントログ)
2015-09-12T12:47:58+09:00
1442029678
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*魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」のまとめ
このwikiは「2ちゃんねる」のニュース速報VIP板・パー速VIP@VIPServiseで人気を博したママレードサンドさんによる小説、【魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」】スレのまとめwikiです。
このwikiを作るにあたって、こちらの"[[魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」まとめサイト>>http://maouyusya2828.web.fc2.com/]]"様を参考にさせていただきました。
勝手ながら引用している部分も多々ありますが、問題があれば編集お願いします。
みなさんの助力でここが充実していけば嬉しい限りです。
また、この素晴らしい物語を提供してくれたママレードサンドさん、本当にありがとうございました。
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**書籍化
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検索用タグ:『まおゆう』『魔王勇者』『魔王と勇者』『The Over Side of That Hill』『あの丘のむこうへ』『魔我断』『魔我勇断』
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1-2
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**魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」1-2
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****160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:44:06.99 ID:AIDyRnsCP
勇者「で、挨拶がどうとか」
メイド長「ああ、そうでした。
その学術の研究と、新しい農作指導のために
この村に興味を持たれてやってくる、というような
説明をいたしております」
魔王「そうか、話が早くて助かる」
勇者「そうだな、農業ともなれば時間がかかるものな」
メイド長「ええ。……まおー様」
魔王「ん?」
メイド長「魔王軍の方はいかがしましょう」
魔王「ああ。そうだな」 ちらっ
勇者「どうかしたか?」
魔王「勇者と私は、魔王の大広間で決闘をしたとしよう。
そこで両者共に深い傷を負ったという噂を流せ。
私はその傷を癒すために冥界温泉で療養中だ。
勇者は生死不明、一説によると落ち延びたと」
メイド長「かしこまりました」
****162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:48:41.23 ID:AIDyRnsCP
魔王「それでいいか? 勇者」
勇者「ああ。かまわない。俺はどうせ魔王のものだしな」
メイド長「あたあた、まぁまぁ」にこっ
魔王「からかうな」
魔王「この噂で、まぁ1年くらいの時間は稼げよう。
魔王軍の急進派も何かの策略ではないかと見て
しばらくは動きを控えるだろう」
勇者「1年か」
魔王「その他にも手は打つ。粘るつもりもあるが
まぁ、3年と云ったところだろうな、猶予は」
勇者「……」
魔王「その間に『まだ見たことのない結末』を
見つけなければならない」
勇者「見たいだけじゃなかったのか?」
魔王「……見つけ出さないと、私の持ち主に嫌われる」
勇者「あ、その。そ……そっか。そうだな」
****164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:53:49.41 ID:AIDyRnsCP
魔王「それはいいとして、だ」
勇者「お、おう」
魔王「この地で結果を出したいのは、農法の改善だ」
勇者「のーほー?」
魔王「農業の方法だ」
勇者「農業の方法たって、
種撒いて芽が出て収穫するだけだろ?」
魔王「その方法を改善する」
勇者「うーん。改善なんてあるのか?」
魔王「同じ土地で麦を収穫し続けると
どんどん質がわるくなるのはしっているか?」
勇者「あー。聞いたことがあるぞ。
大地の恵みみたいな物がなくなっちゃうんだろう?」
魔王「この辺りで広く行なわれているのは三圃式農業という
もので、畑を3種類に分ける。
それぞれ夏に使う、冬に使う、一年間お休みと分けるんだ。
そしてローテーションさせてゆく」
****165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:59:01.92 ID:AIDyRnsCP
勇者「工夫してあるんだな。ふむふむ。
いや、まてよ? そもそも何でローテーションするんだ?
どんどん新しい畑を開拓すればいいじゃないか。
新しい場所なら大地の恵みもたくさんある」
魔王「ばかもの。
誰もが勇者のように化物じみた戦闘能力と体力と
破壊魔法を使えると思ったら大間違いだ」
勇者「そ、そか?」
魔王「開拓には長い時間と労力がかかる。
それにそうやって開拓範囲を広くすれば、
収穫や種まきなどで移動しなければならない
距離も広がるし、魔物や野生動物から防衛しなければ
ならない敷地も広がってしまう」
勇者「そういえばそうか」
魔王「そこで3分割ローテーションを行なっているのだが」
勇者「ふむふむ」
魔王「この手法をより改善して、
食料の供給量を増やすのが当面の目的だ」
****167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:06:07.19 ID:AIDyRnsCP
勇者「目的は判った。けれど、具体的にはどうするんだ?」
魔王「輪作……つまりローテーションという概念は良いんだ。
これを4回転式に改善しようと思う」
勇者「ふむふむ」
魔王「すなわち、大麦を作る畑、クローバを作る畑、
小麦を作る畑、かぶを作る畑に4分割する。
この四つをセットにして4年周期で畑を活用するんだ」
勇者「なんか、3ローテと大差がないように聞こえるな」
魔王「3ローテは1周期に一回お休みがあるだろう?
こちらは4周期にお休みらしいお休みはクローバーだけだ」
勇者「それがそんなに大きい差なのか?」
魔王「差が出る秘密は、麦以外にある。それがカブだ」
勇者「シチューに入れると旨いけど、そんなに作っても
飽きるだろう?」
****169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:10:12.33 ID:AIDyRnsCP
魔王「もちろん人間が食べても良い。
麦ばかりだと健康に悪いからな。だがこのカブは
畜産の使うんだ。具体的に云うと豚の餌にする」
メイド長「豚、ですか?」
魔王「知ってるとおり、この寒くて貧しい地方では
肉食というのは冬場の重要な栄養素だ。
冬には充分な果物も野菜も採れないし、
充分な穀物が無い事の方が多い。
そこで豚を食べるわけだが、豚は生きているから
活かしておくためには食料が必要だ。
冬の間は人間の食糧すら不足するだろう?」
勇者「ああ、そうだな。だから豚は冬になる前に、
最低限の数を残してしめちゃうんだ。
それでソーセージやベーコンやハムにして、
冬の間の食糧備蓄をする。南部諸王国じゃ
何処でも見られる冬の始まりの風物詩って所だ」
魔王「冬場……つまり農作物が充分では無い時期の
代替え的補助食料なのに、結局は農業と同じように
季節に支配されている。これは非効率的なことだ」
****173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:17:28.72 ID:AIDyRnsCP
勇者「……云われてみれば、そうだな」
魔王「そこでクローバーとカブを使う。
クローバーは夏場の間、豚や羊などの牧草になる。
畜産をおこなえば肥料も出してもらえるしな。
カブは冬の間に飼料として役立つ」
勇者「そうかっ!」
魔王「そうだ。この方法は『畑を休ませない』、
『畑を痩せさせない』、『農作物以外も豊かにする』
の三つのアイデアで出来ているんだ」
勇者「そこでこの村な訳か」
メイド長「どういう事ですか?」
勇者「この村みたいな、農業も畜産もやって、
ある程度自給自足の体制の方がこの農法には都合が
良いんだよ。データ採りの意味でも。
都市部や、小麦ばっかりを大量生産している、
それが出来ちゃうような温暖な地域では意味が薄い。
東方の米みたいな穀物にも効果が薄い。
『寒くて貧しい地域を救う』アイデアだから」
メイド長「そういうことでしたか!」
****175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:22:32.70 ID:AIDyRnsCP
魔王「他にもいくつかある。北氷海の魚による肥料とか
、農機具にも改良の余地がある」
勇者「へ? 色々あるんだな」
魔王「難しいのは、農地と村の統廃合だ。
放牧地にした場合、羊などの動物はコントロールに
難があるしな。いまの危険な時勢だと、この種の
『開墾した権利』の縄張り争いは、たやすく利権の
争いに変化してしまうのだ」
勇者「そうだな、それは予想がつくよ」
メイド長「でも、人間は土地を重視する、
って、まおー様はいってましたよね。
話し合いで解決するんですか?」
魔王「そこで魔族だ」
勇者「?」
魔王「魔族で村を攻める。
どうせたいした守備軍もいないだろう?
ちょっとした中隊規模で充分だ。
脅して適度に放火でもしてやる。
最悪の場合は主立ったものを殺すこともあるかもしれない」
勇者「……」
****177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:26:08.44 ID:AIDyRnsCP
魔王「村人が立ち退いたあとに、魔王軍は駆けつけた
騎士団と一戦して引き上げる。開拓民は戻ってくる
だろうが、それは領主の庇護下に入ってのことだろう。
その状況なら、農地の整理や、村と村との統廃合も
問題なく行くだろう」
勇者「……」
魔王「幻滅したか?」
メイド長「……まおー様」
魔王「むろん、手心は加える。そもそもこの手法は
王国側、少なくとも騎士団には内通者というか
こちら側の理解者が必要だ。
だがこの種の作戦には事故がつきものだ。
血が流れないと云うことはあり得ないだろう」
勇者「……」
魔王「だが、わたしは何かをすると決めたんだ。
このまま、血まみれの夢に似た消耗戦を100年繰り返し
取り返しのつかない停滞を過ごすつもりはない。
わたしは『終わった後の物語』が読みたいんだ」
****178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:31:23.17 ID:AIDyRnsCP
魔王「愛想が尽きたか?
魔王なんて嫌いになったか?
で、でもダメだぞっ。
勇者は私のものだから。
絶対に手放すつもりはないぞっ」
メイド長「……」
魔王「それとも、やっぱり魔王を退治するつもりになったか?
それならそれで仕方がないが……。
私は勇者のものだから
その剣を避けるなんて出来ないけど……」
勇者「それでも……」
魔王「……」
勇者「それでも、救われる人はいるんだろう?
この3年間の秘密休戦で救われる人はいるんだろう?
それにその4ローテーションの工夫が上手く行けば
毎年何万人もの飢えた子供たちが春を迎えられるんだろう?
――そして戦争を終わらせるための余裕が、
人間の手に戻ってくるんだろう?」
****179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:34:26.27 ID:AIDyRnsCP
魔王「そうだ」
勇者「なら俺はやっぱり魔王の剣だ」
メイド長「……」
勇者「俺は何をすればいい?
……まぁ、うっすらと判っちゃいるんだが」
魔王「予想通りだ。
勇者には『正義の味方』をやってもらう。
攻め込んだ魔王軍を撃退する、南部諸王国領主の
軍事的先鋒だ」
勇者「茶番だな」
魔王「うん。悪の首魁とこんな話をしているいま、
それは限りなく茶番だろう」
勇者「100回地獄へ行っても救われないな」
魔王「判るなんて云わない」
勇者「でも『その役が』いないと始まらないもんな」
****240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 14:42:09.44 ID:AIDyRnsCP
――冬越しの村
魔王「思ったより難航しそうだな」
勇者「ああ、そうだな」
メイド長「あんなに分からず屋だとは思いませんでした」
勇者「仕方ないさ。俺たちにとっては挑戦だけど
この村の人たちは、一年不作になっただけで人死が
出るんだ」
メイド長「それはそうですが……」
魔王「考えてみると、この地よりも魔界の方が
気候的には恵まれているな」
勇者「そういやそうだな」
メイド長「勇者様は魔界のあちこちに旅されたのですか?」
勇者「ああ、人間では一番の魔界通だと思うぞ」
メイド長「しかし、村長があの態度ですと
農業技術の改良ですか? 難しいのでは……」
魔王「うむ。……露骨に断ってくるわけでもないので
対処に困るな」
勇者「村長から見たら、魔王は貴族の令嬢に見えるんだ。
正面から反対はできないさ」
****243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 14:49:16.30 ID:AIDyRnsCP
メイド長「それならいっそ……」
魔王「却下」 メイド長「しかし、まおー様。目的のために手段は」
魔王「農地改革のために、細かい利権争いをする
領主や地主を取り除くのはやむを得ない。
生産性を上げるためには、必要なことだ。
でもそれは、農業技術が発展して集約農業が
可能になって初めて出来ることであって
その技術的な先行試験場で、指導者を
取り除くことには百害あって一理もない」
勇者「だよなぁ」
メイド長「困りましたね」
魔王「ん……。やはり教育程度がネックなのか」
勇者「教育?」
メイド長「関係あるのですか?」
魔王「まぁ、いろいろとな。次の段階でと考えていたのだが
あちこちに手を入れなければ物事が進まないようだ」
****245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 14:54:32.24 ID:AIDyRnsCP
メイド長「何をするのです?」
魔王「考えても見ろ。私たちがこの村で生産性を
向上させても。それを他の村や王国にも伝えて
いかなければ、全体的な変化は望めない。
でも私たちが一カ所ずつ教えて回るのは
時間的に見ても経済的に見ても不可能だ」
勇者「道理だな」
魔王「だから、新しい技術を覚えて様々な国へ
伝えるため専門の人員、まぁ、部下でも同盟者でも
いいんだが、そういった人材も必要だ」
勇者「ふむ」
メイド長「それで、教育ですか」
魔王「ところで聞くが人間界の教育とはどうなってるんだ?」
勇者「そんなこと云われてもなぁ。そもそも教育って何だよ」
****246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:00:09.67 ID:AIDyRnsCP
メイド長「……」
魔王「えーあー」
勇者「いやだからさー。当たり前みたいに
難しい言葉を使われても」
魔王「つまり、知識を子供や年下の存在に伝えると云うことだ」
勇者「何だ、簡単な説明じゃないか。そんなのは
人間社会にだって当然あるよ。そもそも教えなきゃ
赤ちゃんは話せるようにだってならないだろう?
このあたりじゃ、まずは子供はじいさんか
ばあさんに預けられて、まとめて育てられるな。
両親は畑や狩に出かけるから、同年代の複数の家の
子供がまとめて面倒を見てもらう」
メイド長「効率的なんですね。お年寄りにも仕事が出来ます」
勇者「ある程度年甲斐ったら、農作業の手伝いをすることに
なるな。魔王みたいな理屈での話じゃないけれど、
いつ何処に何を作付けするかとか、天気の読み方だとか、
獣の避け方だとか、そう言う知識は数年も働けば自然と
身につくもんだ」
****249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:24:38.66 ID:AIDyRnsCP
勇者「それから、この地方の冬は深いんだ。
雪がどっさり降るし、冬には嵐がやってくることも多い。
この地方のこんな村では、冬の間は殆ど家の中に
閉じ込められるんだ。そんな間、農民たちは
細かい工芸品を作ったり、羊毛で衣類をこしらえたりする。
子供たちは長い冬の間、村の智慧者たちから
いくつものお話を教わる。英雄譚や王の話、神々の話だな。
あー、なんだ。魔族の話も出てくるぞ。
それから、ちょっと目端の利く若者や村長の子弟は
読み書きを習ったりもする」
魔王「ふむ」
勇者「都市部だとまた話が違うな。
都市部で教育と云えば、教会でのミサと家庭教師だ。
家庭教師ってのは、知ってるか?
えーっと、物語や読み書きや算術を教えてくれる
個人用の語り部みたいなものだ。
裕福な商家や貴族の家では両親が家庭教師を雇って、
自分の子供に様々な知識と技術を教えさせる」
メイド長「勇者様もその口ですか?」
勇者「まぁ、そうだな。とは云っても、俺の場合は
剣の教師とばっかりつるんで遊んでいたようなものだけど」
****250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:33:52.38 ID:AIDyRnsCP
勇者「どうだ? 教育ってこういう事の事じゃないのか」
魔王「いや、まさにそう言うことだ」
勇者「人間社会のことも任せておけっ」
魔王「まぁ、で、その人間社会の教育は未開なので」
勇者「未開っ!?」
魔王「む。表現が悪かった。『発展の過程における
初期的な未発達の状態』だな」
勇者「同じじゃねぇか」
魔王「からかっただけだ」
勇者「くぅ」
魔王「だが、自然な教育だよ。無理がない」
勇者「……」
魔王「とはいえ、こちらは不自然な発展を望んでいるから
不自然で気合いの入った教育をしなければならない。
……だがなぁ、教育って云うのは金がかかるんだ」
勇者「金かぁ。俺勇者だし、勇者の装備を売れば
そこそこ金にならないか?」
****252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:40:23.28 ID:AIDyRnsCP
メイド長「えーっと、勇者の剣と勇者の盾、
勇者の鎧ですか……38万Gくらいにはなりますね」
勇者「なっ? すげーだろ?」
メイド長「どれくらい必要なのですか」
魔王「むぅ。そうだなぁ、今年度の予算計画は
流動的でいくつかのパターンを考えているのだが
切り詰めた案で5600万G程度かな」
勇者「お、おれの……勇者の……装備が……」
メイド長「落ち込まないでください。勇者様」なでなで
魔王「メイド長。それ以上の接触は禁止だ」
メイド長「はい、まおー様♪」
魔王「なかなかに難儀な話だなぁ」
勇者「まったくだな」
メイド長「まぁ、そろそろ冬になりますし、
どちらにせよ本格的な農業実験は春からでしょう?
この冬を使ってゆっくり手を打てばいいですよ」
****254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:43:06.05 ID:AIDyRnsCP
魔王「そうは云っても」
勇者「気は焦るよな。3年しかないし」
メイド長「まぁまぁ、今日は豚肉とカブのシチューを
作ってあるんですよ」
魔王「旨そうだな」
勇者「ああ、考えてても仕方ないか」
メイド長「では、調理の仕上げがありますので
わたしはこれで。夕食はあと1時間ほどです。
お呼びに上がりますので、暖炉にでも当たっていて
くださいね」
魔王「ああ、頼んだぞ」
ぱたり
勇者「……ふぅー」
魔王「疲れたか? 勇者」
勇者「んー。身体は何も疲れてないんだけどな。
普段考えないようなことを考えて、頭が疲れたよ」
魔王「ふふふ。そうだろうな」
****256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:46:39.50 ID:AIDyRnsCP
魔王「なぁ、勇者」
勇者「ん?」
魔王「暖炉が暖かいぞ?」
勇者「おう。暖かいな。この地方の寒さも、暖炉の前だと
多少許せるよな」
魔王「なぁ、勇者」
勇者「ん?」
魔王「そのぅ、良かったらなのだが。隣に来ないか?」
勇者「なんで?」
魔王「この角度が、暖炉が暖かくて気持ちよいのだ」
勇者「そなのか?」
魔王「そうなのだ。ほら、特等席だぞ」
勇者「ん。ほんとだ。あったけー」
魔王「どうだ?」
勇者「自慢そうな顔するなよ、魔王」
魔王「む。……まぁ、たしかに暖炉が暖かいのは
私の手柄ではないがな」
****257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:50:45.68 ID:AIDyRnsCP
魔王「……」
勇者「……」
魔王「勇者?」ぺ、ぺとっ
勇者「ん?」
魔王「さ、触って良いか?」
勇者「別に良いけど」
魔王「変な意味はないぞ。勇者の髪は暗い色だから
ちょっと触れてみたくてな。ああ、つんつんしてるな」
勇者「ご先祖様にサムラーイがいたんだ」
魔王「なんだそれは?」
勇者「東方の戦士だよ。鎧も兜も真っ二つにする技が
使えたんだとさ」
魔王「そうか、勇猛な戦士殿だったんだな」
勇者「一族全員戦いの家系なんだ」
魔王「そうか? それ以外にだって、
勇者には素晴らしくて良いところが沢山だぞ?」
****259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:54:50.43 ID:AIDyRnsCP
勇者「そうかなー」
魔王「そうだぞ、たとえば、私が側にいても怯えないとか」
勇者「魔王はひ弱だし、女の人じゃん。運動不足だし」
魔王「でも魔王だからな」
勇者「そう言うものかな」
魔王「そう言うものなんだ」
勇者「なんだかしおらしいな」
魔王「さ、作戦なのだ」
勇者「?」
魔王「これから勇者相手に交渉をだな、するのだ」
勇者「何の?」
魔王「それを云っては交渉にならんではないか」
勇者「云わないで伝わるものか」
魔王「事は微妙を要する問題なのだ。出来るだけ誤解を
受けないようにきちんと説明をしたい」
勇者「話してみれば?」
****261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:58:09.56 ID:AIDyRnsCP
魔王「つまり、外は寒いだろう? 冬の嵐到来だ。
そしてここは暖かくて居心地がよい。
じきに夕食のお迎えが来るまでは二人は暇で、
さしあたってやることがないだろう?
もちろん今後やるべき課題は山積みでそれらに対して
考察を加えるという任務が巨大にそびえ立っているわけだが、
勇者は現在頭が疲れているという状況にあり、
効率的な作業は望めないわけだ」
勇者「あー」
魔王「もちろんこれはわたしの方で考えた草案というのも
愚かな一私案に過ぎないわけだが勇者の現在の疲労状況を
鑑みるにこのような俗説民間信仰の類も一概にその効能を
否定するわけにも行かないのではないかと思えるのだ時に
戦士はそのような蜜園で疲れを癒すと古書にもある勇者は
そのような爛れた習慣はないというかも知れないが」
勇者「で、なにをどーしたいんだ?」
魔王「勇者に膝枕してみたい」
勇者「よしきた」ぼふんっ
魔王「あっ。あわっ。勇者……」
勇者「俺は魔王のものなんだ。遠慮は無用だぜ」
****265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 16:03:32.95 ID:AIDyRnsCP
魔王「勇者」
勇者「んぅ……」
魔王「勇者の頭、もふもふしてるぞ」
勇者「遊ぶなよ」
魔王「撫でているだけだ」
勇者「魔王も良い匂いだぞ?」
魔王「毎日ちゃんと湯浴みしてるからな」
勇者「真面目だな」
魔王「うむ、真面目なのだ。
勇者のモノになって以来メイド長が容赦なくてな。
以前は研究続きで一週間着替えないなんて事も
少なくなかったんだが」
勇者「魔王は太ももすべすべだな」
魔王「そ、そうか? 太くないか?」
勇者「寝心地良いぞ」
魔王「そうか。救われる。勇者は本当に
寛大な心の持ち主だな」
勇者「あーえーうー。……えろ欲求の持ち主ではあるんだが」
魔王「?」
****272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 16:12:30.35 ID:AIDyRnsCP
魔王「その、勇者」
勇者「なんだー?」
魔王「さっきの、遠慮は無用というの」
勇者「?」
魔王「あれは本当か?」
勇者「うん、そうだぞ」
魔王「そ、そうなのか」おろおろ
勇者「……どした?」
魔王「う、うむ」
勇者「押し黙るなよ。怖いから」
魔王「私も自分がちょっぴり怖いぞ」
勇者「はぁ?」
魔王「いや、怯えてなどいられるか。
『まだ見ぬものを求める』。
それが私の生涯のテーマだったではないかっ」
勇者「??」
魔王「その、勇者……」じぃっ
勇者「何だよ、気軽に云えばいいぞ」
ガ タ ン ッ
****275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 16:24:44.37 ID:AIDyRnsCP
魔王「何だ、あの音は」
勇者「裏手? ……納屋かっ?」
ダダダッ
魔王「えいこれ! 待てと云うのだ!」
――納屋
勇者「ここかっ!」
魔王「真っ暗ではないか」
???「……。……」
勇者(人の気配?)
魔王「しばし待て、明かりの呪文を……」ぽわっ
姉 がたがたがた
妹 ぶるぶるぶるぶる
勇者「……なんだ? 子供だぞ」
魔王「どうしたのだ? 殆ど下着ではないか」
****279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 16:29:26.13 ID:AIDyRnsCP
メイド長「あらあら、まぁまぁ」
魔王「メイド長」
メイド長「また迷い込んできたのですね」
魔王「こやつらは何なのじゃ?」
メイド長「逃亡奴隷ですわ。この館は長い間無人でした。
無人の割には廃墟ではありませんでしたし、
周辺の村とは違う系統の権力に属していますからね。
そう言う場所は逃げ込む先として使われてしまうんですよ」
勇者「奴隷?」
メイド長「ええ、そうですよ」
勇者「奴隷なんて、そんなのどこから来るんだよ」いらっ
メイド長「そこら中にいるではないですか?
ここらにいる人間はその殆どが奴隷でしょう?」
勇者「ちがうっ。奴隷なんかじゃないっ!」
メイド長「あら。私の見当違いなのでしょうか」
勇者「奴隷制は野蛮だ。俺たちは許していない」
メイド長「そんなことをおっしゃられても」
****282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 16:33:04.54 ID:AIDyRnsCP
魔王「この者たちは、農奴なのだな」
勇者「農奴……?」
メイド長「やっぱり奴隷ではないですか」
魔王「農奴と奴隷は違う」
勇者「ほらみろ。この南部諸王国に奴隷はいないんだ」
メイド長「そうでしょうか?」
魔王「農奴は奴隷とは違い、個人財産が認められている。
家も持てるし、農機具も自前のものがもてる。
家族と一緒に暮らすことも出来るんだ」
勇者「まぁ、当たり前だな」
姉 がたがたがた
妹 ぶるぶるぶるぶる
魔王「その一方で、職業選択や移動の自由はない。
主に荘園……地主の農地で、農作業を行なうための
労働力として、選択の自由無く働かされる存在だ」
勇者「……」
メイド長「……奴隷とは違うのですねぇ。へぇ~」ふんっ
****283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 16:38:20.18 ID:AIDyRnsCP
勇者「……」ぎりっ
魔王「メイド長、それ以上は云うな。奴隷制は悲劇的かも
しれないが社会制度の中で経済的にも意味があったのは
事実なのだ」
メイド長「そうでしょうか?」
魔王「メイド長っ」
メイド長「……差し出口を。申し訳ありません」
魔王「……」
勇者「……」
妹 ぶるぶるぶるぶる
姉「あ、あのぅ……。あ、あさにはでてゆきますっ。
ごめ、ごめいわく……かけませんから…っ…
どうか、ひとばんだけ」
メイド長「……」
魔王「メイド長。初めてではないのだろう?
いままではどのように対処していたのだ?」
****285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 16:42:32.64 ID:AIDyRnsCP
メイド長「逃亡奴隷……農奴でしたか。それは重罪です。
付近の有力者との関係も悪くなります。
すぐさま通報して引き取りに来てもらっていました」
魔王「そうか」
勇者「……」
メイド長「勇者様、ご気分が優れないようですが?」
勇者「……厳しすぎないか?」
メイド長「自分の運命をつかめない存在は虫です。
私は虫が嫌いです。羽をもがれたようで見るに堪えません」
魔王「……っ」
勇者「あのなぁ!」
メイド長「大事の前の小事ではありませんか?
このような些末時で付近の有力者の方々の
心証を悪くされても益のないことだと思いますが」
魔王「そう……だな……」
勇者「魔王……」
メイド長「では」
魔王「いや、連絡は明日の朝まで待つ。
湯を沸かせ。もう少しましな衣服もあるだろう。
反論は抜きだ。今回はそうする。もう、決めた」
****286 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 16:47:50.29 ID:AIDyRnsCP
――小さな部屋
魔王「あー。なんだ」
勇者「……歯切れ悪いな」
魔王「私は魔王であり経済屋だ。こういうのは苦手なんだ」
勇者「俺だって勇者で剣士なんだ。苦手だ」
姉「あの、ありがとうございます」
妹 おどおど
勇者「おう、気にしないで良いぞ」
姉「こんなりっぱなふく、はじめてです」
妹 こくり
勇者「そか? なんだかこの屋敷に残されてた古着だけど」
魔王「あー。腹はくちくなったか? 寝床は平気か?」
姉「はい。わらはふかふかで、
あたたかくて、きれいなへやです」
勇者「こんな小汚い部屋でもか……」
魔王「そう言う境遇なのだろう」
****289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 16:57:08.31 ID:AIDyRnsCP
姉「その、こんなによくしてもらったのですけど」
姉「あしたの、あさには、その……」
魔王「それは……」
勇者「……」
姉「おねがいです、つうほうしないでください。
いえ、そうじゃなくて」
妹 じわぁ
姉「にげますから。ほんのすこしだけ。よあけから
すこしのあいだだけ、まってください」
ガチャリ
メイド長「何を言ってるんですか。ろくな靴もない。
服も最低限。お金も道具も何もない。
街へ行って乞食でもやるつもりですか?」
妹「あ、あぅぅぅ」
勇者「どうにか……。どうにかなんないのか?」
****291 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 17:02:44.67 ID:AIDyRnsCP
メイド長「なりません。奴隷の生活は惨めですよ。
何も出来ない。何の希望もない。
自分自身の罪でそう居続けるしかできないと
自分で自分に言い聞かせながら生きてゆくのです。
この世の地獄かも知れませんね。
でもね」
姉「……」
メイド長「やっていることはメイドと代わりはありませんよ。
主人の意を受けて、主人の言葉なら何でもしたがう。
主人の夢を叶えるため、そのために命を捧げる。
奴隷とたいした違いは有りはしません」
魔王「メイド長。私はお前を奴隷だなどと思ったことは
有りはしないぞ」
メイド長「ええ、まおー様。
私もそのような扱い、まおー様より受けた覚えはありません。
でもだからより一層、正視に耐えません。
私と同じ仕事をしながら、
自らの手に運命をつかむことの出来ない
その弱さは、灼かれて死んで償うべきかと思います」
妹「ちがうよっ!! ちがうもんっ!」
****292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 17:07:38.70 ID:AIDyRnsCP
妹「ちがうよっ、めがねのおねえちゃんはいじわるなのっ。
わたしたちはちゃんとにげてきたもんっ。
なにもできないわけじゃないもんっ。
みやこにいって、ふたりで、くらすんだもんっ」
勇者「……それは」
メイド長「何を夢物語を」
妹「でも、やるんだもんっ」
メイド長「百歩譲ってその熱意を努力と呼んでも
良いでしょう。しかし、それをなすに当たって
他者の家に忍び込み、あまつさえその厚意にすがり。
そればかりか寝床と食事を与えてくれた
その他者の立場を逃亡によってさらに悪くする。
そのような方法を是とする。
それがあなたたち農奴のやりようですか?」
妹「だって、だってぇ!」
メイド長「もう一度云います。
自分の運命をつかめない存在は虫です。
私は虫が嫌いです。大嫌いです。
虫で居続けることに甘んじる人を人間だとは思いません」
姉「……」
****294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 17:13:49.12 ID:AIDyRnsCP
メイド長「判りましたか?」
姉「はい……」
メイド長「謝罪を」
姉「このやかたのみなさま……きぞくさまには
ご、ごめいわくを、かけました。ごめんなさい」
メイド長「よろしい」
姉「……」
妹「ひっく……う。うううぅ」
メイド長「……」 じぃっ
姉「……」
メイド長「……それだけですか?」
妹「やぁ……。もどるの、やだよぅ……こわいよぉ」
姉「……いもうと、しずかにして」
****297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 17:17:39.30 ID:AIDyRnsCP
メイド長「……」
姉「わたしたちを、ニンゲンにしてください。
わたしは、あなたがうんめい、だと――おもいます」
メイド長「頭を下げる時は
そのように這いつくばってはいけません。
せっかくスカートをはいているのですから
指先で軽くつまみ、ドレープを美しく見せながら
優雅に一礼するのです」
姉 ぺ、ぺこり
メイド長「……魔王様。この館は魔王城に比べれば
掘っ立て小屋も同然ですが私1人ではいささか手が
足りません。メイドを雇ってもよろしいでしょうか?」
勇者「いいのかっ? メイド長。あんなに嫌いだって
いってたのに。許してくれるのかっ?」
メイド長「嫌いなのは虫です。メイドを嫌う人は
この世界に存在しません。たとえそのメイドが
新人であってもです」
魔王「許す。鍛えてやってくれ」
****302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 17:27:33.55 ID:AIDyRnsCP
――雪の森の中
メイド妹「ゆーしゃーさまー。ゆーしゃーさまー」
メイド妹「ゆーしゃーさまーはどこですかー。
おいしーパンを、おとどけですよ」
ヒュンッ!
勇者「おう、お使いお疲れ」
メイド妹「わっ。どこにいたの?」
勇者「転移魔法だよ。声、森の中に響いてたぞ」
メイド妹「へへーん♪」
勇者「まぁ、この辺はすっかり安全になったから
平気だろうけどな。不用心なヤツだ」
メイド妹「ゆーしゃさまに、おとどけものです」
勇者「お!」
メイド妹「おひるごはんですー! クルミのパンと、
タマネギとベーコンのオムレツですー」
勇者「旨そうだな」
メイド妹「おねーちゃんがつくりましたっ」
勇者「順調に仕事覚えてるな。感心感心」
****306 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 17:33:55.68 ID:AIDyRnsCP
メイド妹「おいしい?」
勇者「美味いぞ! 温かい紅茶がまた泣かせるな。
走ってきたんだろう?」
メイド妹「うんっ」
勇者「一口飲め?」
メイド妹「うんっ!」
勇者「昼間とは云え、屋外作業は辛いなぁ。
なんかこー滅入るよ、まったく」
メイド妹「あ、そだ。とうしゅのおねーちゃんから
でんごんがあった」
勇者「何だ、先に云えよ」
メイド妹「『きょうは、いのしし6とうがのるまだ。
くまならいのしし2とうぶんにかぞえても、よい。
それから、かわのじょうりゅうをみてきてくれ。
はんらんしそうなばしょがあれば、
まほうでこわすか、なおしてくれ』」
勇者「人使い粗いな」
****307 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 17:39:27.05 ID:AIDyRnsCP
勇者「そういや、学校はどうした?」
メイド妹「ごごは、からだのたんれん」
勇者「お前は鍛錬良いのか?」
メイド妹「まだ、せいとすくないから。
おなじ年のこ、いないの。ゆうしゃさまに
ごはんをとどけるのが、ごごのうんどうー」
勇者「お。『年』っておぼえたのか」
メイド妹「とーしゅのおねーちゃんが、
もじおしえてくれるんだよ」
勇者「忙しいクセにまめだな、魔王」
メイド妹「あと、さんすー」
勇者「算数か」
メイド妹「うまくやると、儲けでうはうは」
勇者「あの経済屋め。『儲け』だけは書けるのか」
メイド妹「損益分岐点、もかけるよ?」
****310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 17:43:22.75 ID:AIDyRnsCP
勇者「あと、2匹か、イノシシ換算で」
メイド妹「なべー!」
勇者「突然どうした」
メイド妹「いのなべ?」
勇者「ああ、あれは美味いな!」
メイド妹「いのなべにしよー!」
勇者「お前は食い気ばっかりだな」
メイド妹「ゆーしゃさまが、ごはんとってきてくれる」にこっ
勇者「……ああ、そうだな」
メイド妹「ごはんいっぱいは、とても幸せだよ」
勇者「そだな」
メイド妹「けんかないもん。
そんちょーのあとつぎさまにぺとぺととしなくていいの。
まいにちあったかい。おふとんほかほか。
ふくがきれい。おねーちゃんとふたりで
ずっといっしょにいられる。それは幸せ」
勇者「……」
メイド妹「どうしたの?」
****312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 17:47:21.28 ID:AIDyRnsCP
勇者「いや、勇者って相当に役に立たないなと思って」
メイド妹「?」
勇者「知識があるわけでもなければ、
金勘定が出来るわけでもない。農業も動物の世話も
出来ないし、先生は……出来るって云っても剣くらいだ。
こうなってみるとつくづく思い知る。
俺、口先ばっかり平和とか云ってたけれど
平和ってどういうモノなのか、どうすれば平和になるのか
平和になったらどうすればいいのかなんて
ちっとも考えてなかったよ」
メイド妹「むずかしーね」
勇者「難しいな」
メイド妹「いのししべーこん、おいしいよ?」
勇者「あれ、好きなのか?」
メイド妹 こくん
勇者「気に入ったのか?」
メイド妹 うんうん
勇者「じゃ、勇者のお兄ちゃんとしては、もうちょい
イノシシやっつけて、減らしてくるかね~」
****316 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 18:05:28.67 ID:AIDyRnsCP
――館の広間、授業中
魔王「……以上が南部諸王国の現在の経済状態から
導かれる戦争の最大規模となる」
貴族子弟「……」めもめも
商人子弟「……えっとえっと」
軍人子弟「……」
魔王「私は専門ではないが、古来軍隊が壊滅すると
されている損耗率は」
軍人子弟「……最後の一兵まで戦い抜くでござる」
魔王「おおよそ30%と言われている。3割だな。
ゆえに、この常備軍および恒常的な傭兵戦力によって
戦線維持は難しく、散発的な会戦と拠点防衛が
現在魔王軍との戦闘の要旨となる」
魔王「ここまでで質問は?」
メイド姉「聖鍵遠征軍はどうでしょう?」
魔王「うむ、あれは例外だな」
****317 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 18:17:58.51 ID:AIDyRnsCP
魔王「聖鍵遠征軍について知っているところを述べよ」
貴族子弟「あっ。はい。聖鍵遠征軍は中央大陸の
危機会議によって結成された、聖なる遠征軍です。
目的は邪悪なる魔族を殲滅しこの戦争を終結させること。
この15年の間に2回おこなわれました。
南の極点にある魔界門から魔界へと侵攻して
魔族の重要都市二つを破壊、魔王の都まで
迫りましたが、神のご加護虚しく魔王の卑劣な
補給線破壊行為により撤退を余儀なくされました」
魔王「おお。ほぼ満点だな。
――このような遠征軍は巨大な兵力を背景にして
行なわれる。まず第一に必要なのは世界規模での
戦争終結への熱意だ。ただ一度の大遠征で終戦が
成し遂げられるのならば犠牲を払う価値があると
世界中の人間が望んでこそ、その戦いに身を
投じる参加者が生まれるわけだな」
魔王「もう一つは経済的バックアップだ。
本講の授業で何度でも扱うが、経済の支援無くして
社会も戦争行為も成り立たない。人間は食べなければ
飢えて死ぬ生き物なのだ」
****321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 18:21:39.10 ID:AIDyRnsCP
貴族子弟「時には金や食料よりも重要なことがある」だむんっ
軍人子弟「算盤をはじいて戦など出来ないでござる。先生」
商人子弟「……そうでしょうか」
軍人子弟「飢えだなんて精神的な弱者の言い訳だ」
貴族子弟「そもそも領主が保護している人民に
飢えなどは存在しないじゃないですか」
メイド姉「飢えたことがないんですね」
魔王「……次は、南氷海。すなわち南部諸王国と
極点である、魔王の大陸を取り巻く海についてだ。
この海は軍事的、経済的な意味で非常に大きな意味を
もっている。現在魔王軍との戦いのおよそ25%が
海を舞台に行なわれており……」
ちりーん、ちりーん、ちりーん
メイド長「お嬢様、授業終了のお時間です」
魔王「もうそんな時間か。では、本日はこれで終える。
明日はこの続きだ。それから、剣士様が明日の午後は
手ほどきに来るそうだぞ」
軍人子弟「まっておったでござる」
貴族子弟「明日はあたりだな」
魔王「では、解散。わたしは長老の家に移動して
夜間の農業講座をしなければならないのでな」
#right(){{&link_up(ページトップへ)}}
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#center(){[[<前1-1へ>1-1]]|[[次1-3へ>>1-3]]}
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2014-05-02T17:19:00+09:00
1399018740
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1-1
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/13.html
**魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」1
----
****9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 16:50:11.37 ID:s4r1gUtjP
魔王「どーしてもか?」
勇者「アホ云うな。お前のせいでいくつの国が
滅んだと思ってるんだ」
魔王「南の森林皇国のことか?」
勇者「空は黒く染まり、人々は貧困にしずんでいった」
魔王「考え無しに森林伐採して木炭作りまくって
公害で自滅したんだろう」
勇者「公害……?」
魔王「あー。えーっと。そうか、まだ判らないか」
勇者「誤魔化すなっ! 聖王国の大臣憑依だって
魔族の仕業じゃないかっ!」
魔王「欲の皮の突っ張った大臣が政権奪取と
王族の姫君大集合ハーレムを作ろうとして失敗しただけだ。
そもそも逮捕された後に魔族の洗脳とか言い出すのは
人間の悪人の悪い習慣だと思うぞ」
****10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 16:55:18.10 ID:s4r1gUtjP
勇者「ごまかすのか……許せん……」
魔王「誤魔化してない」
勇者「南部諸王国と戦争はどうなんだ。俺は戦場で
何百という人間が魔族の軍勢に倒されているのを
この目で見てきたんだ」
魔王「それで?」
勇者「は? 人間世界を侵略してきた魔王、貴様を
許しはしない!」
魔王「どちらが侵略したかという点については見解の相違だ。
こちらにはこちらの言い分はあるが、まぁ、戦争してるのは
事実だなー」
勇者「貴様は悪だ」
魔王「じゃぁ、悪でも良いけど。当然私を殺した後には
南部諸王国の王族も全部抹殺して回るんだろうな?」
****14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 16:59:14.49 ID:s4r1gUtjP
勇者「は? 悪はお前だけだ」
魔王「人間が魔族を殺していないとでも?
魔族は悪で人間が善だって誰が決めたんだ?」
勇者「……っ」
魔王「そこで『俺が法だ!』とか『俺が神だっ!』とか
『俺がガンダムだっ!』とか云えたら、お前も
もうちょっと生きるのが楽なのになぁ……」
勇者「うるさいっ!!」
魔王「勇者は好きだから、この話はやめてやる」
勇者「好きとか云うな」
魔王「この資料を見ろ」
勇者「なんだ、これ……羊皮紙じゃないのか?
薄くて白くてつるつるだ……」
魔王「プリンタ用紙だ。それはどうでもいい。書いてある
ことが重要なんだ」
勇者「……えっと、需要爆発……雇用? 曲線?
消費動向……経済依存率?」
****16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:06:53.97 ID:s4r1gUtjP
魔王「わかったか?」
勇者「なんだこれは。邪神の儀式か?」
魔王「違う。経済的視点から見た巨大消費市場としての
戦争の効用だ」
勇者「……効用?」
魔王「そうだ」
勇者「戦争に意味なんてあるものかっ。
貴様ら魔族が人間世界を滅ぼすための侵略だ」
魔王「勇者がどーシテもと云うなら、ちゃんと戦ってやる」
勇者「っ」
魔王「話によっては、討たれてやっても良い」
勇者「その首差し出せ」
魔王「だから、半日ほど話を聞け」
勇者「……」
魔王「これは100年ぶりのチャンスなのだ」
****18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:11:55.79 ID:s4r1gUtjP
勇者「良いだろう、話せ」
魔王「じゃぁ、説明する。手元の資料の一ページ目を」
ぺらっ
勇者「表だ」
魔王「グラフというのだ。……これは中央大陸のこの
50年の消費量と景気を可視化したものだ」
勇者「……え」
魔王「気がついたように、我らが戦争を始めた15年前
から中央大陸の景気は上昇局面に入った」
勇者「……嘘だっ」
魔王「嘘ではない。2ページ目を見るが良い。
こちらには各種統計資料が添付されている」
勇者「戦争で数多くの死者が……」
魔王「戦争を始めてから人間世界の人口は順調に増加を始
めている」
勇者「そんなのは理屈で考えておかしいだろうっ。
戦争で人が死ぬことはあっても、人が増える道理など
あるものかっ」
****19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:15:50.07 ID:s4r1gUtjP
魔王「まぁ、一般解はそうだな。
しかし、この世界における戦前の常識では違う。
戦前の――まぁ、この戦前は数百年続いたわけだが
世界では、人間の死因は疫病と飢餓だったのだ」
勇者「……」
魔王「この二つは非常に強大な敵で
人間はこの二つを結局500年以上克服できなかった。
人口は増えるどころか、時に疫病が猛威を振るい
国単位で滅亡することも少なくなかった」
勇者「疫病も飢餓も人間には御し得ないものだ。
神が人間に与えた試練と行ってもいい。
魔族の侵略と一緒にするなっ!」
魔王「まぁ、降りかかるについてはそうかも知れないな。
しかし、だから克服できないとか、克服してはいけないと
いうものでもなかろう?」
勇者「それは……」
****22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:23:52.82 ID:s4r1gUtjP
魔王「現に戦争が開始されてからこれら二つの
原因にする死者は30%まで低下した」
勇者「理由は? ……なぜ? 魔族の暴威を見かねた神の恩寵か」
魔王「私は結構長生きしてるが、神など見たことはないよ。
理由は明白だ。最大の原因は中央大陸危機会議の設立だよ」
勇者「……?」
魔王「つまり、魔族との戦争に対して、人間の王国
連合を組んだからだ」
勇者「それで、なぜ死者が減るんだ……?」
魔王「食料の多い国が少ない国へ送ったり、医療の
進歩した国や農業技術の進歩した国が指導を行なった
からだな」
勇者「それこそ人間の手柄じゃないかっ!」
魔王「その程度のことも魔族と喧嘩しなければ
実行できない人間が大きな事を言ってはいけないよ」
****25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:31:05.78 ID:s4r1gUtjP
勇者「……」
魔王「そんなに悔しがるな。魔族だって大差は
ない事情だった」
勇者「そう……なのか……?」
魔王「戦国だったからな。地方豪族や領主が次々と
王を名乗っては一族郎党血まみれの戦いを送っていた」
勇者「……」
魔王「まぁ、そんな事情で、戦争は人間と魔族を救った」
勇者「……」
魔王「そんなに唇をかむな。血が出てしまうぞ?」
勇者「触るなっ!」
魔王「……君が望まない限り、触れないよ」
勇者「……」
魔王「私の言い分も判ってくれるか?」
勇者「……」
****27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:35:13.26 ID:s4r1gUtjP
勇者「戦争に意味が……結果的にあったかも知れない」
魔王「そう言ってもらえるとほっとするよ」
勇者「だが続けて良い理由にはなってない。
始めて良い理由にもなっていない。
お前は戦争犯罪人だ。いますぐ戦争を中止して
戦争犯罪者として法廷に立つんだ」
魔王「んー」
勇者「私利私欲でやった訳じゃないってのは
いまの話で、ちょっとだけ判った。
俺が付き添ってやるから投降しろ」
魔王「それは難しいな」
勇者「なぜだ?」
魔王「理由は二つある。6ページ目の資料を見てくれ」
ぺらり
魔王「ここに消費市場としての『南部諸王国』と
『中央大陸』の物流の関係が記してある」
****29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:41:53.98 ID:s4r1gUtjP
勇者「物流……?」
魔王「まぁ、早い話、物の流れだ。食べ物や着るものや、
生活用品から武器、鉄、木材に至るまで全てだな」
勇者「これは『南部諸王国』でどんどん使ってるのか?」
魔王「そうだ。戦争は何でも大量に消費されるからな」
勇者「……『南部諸王国』はどうやって支払ってるんだ?」
魔王「ん?」
勇者「だって物を買ったらお金が必要だろう?」
魔王「ああ、良いところに気がついたな。偉いぞ」
勇者「撫でようとするなっ」
魔王「うっかりだ。そう、許可がない限り触れない。
私は契約を重視するタイプなのだ」
勇者「どうやって購入してるんだよ」
魔王「中央大陸危機会議決議による、戦時支援基金でだ」
勇者「……?」
魔王「わからないか。つまり、全世界が戦争中の
『南部諸王国』に義援金を送ってるんだ」
勇者「そうだったのか!! 人間の善の心に祝福を!
どうだ魔王、これが人間のもつ優しさだ」
****31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:46:14.18 ID:s4r1gUtjP
魔王「まぁ、そのお金で中央大陸の数多くの国は
自分の国の品物を買ってもらってるんだ。
つまり、お小遣いを上げて自分の店の商品を
買わせているだけさ」
勇者「……?」
魔王「このランクの説明は多少難しいかな。……つまり、
富をため込むってのは『お金持ち』にはなれても
『豊か』にはなれないんだ。
お金を渡して、使ってもらう。物もお金も流れが
よどみなく太いことが豊かなんだよ」
勇者「……難しい」
魔王「まぁ、そう言う物なんだ。
全部を自分でやったりせずに、得意な分野で協力する。
これは理論的に正しいことだ。
麦と塩、木材と鉄を交換することで国も人々の暮らしも
豊かになる」
勇者「それはまぁ、何となく判る。王立広場の市場みたいな
もんだろう?」
魔王「うん、そのとおりだ」
****33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:49:30.81 ID:s4r1gUtjP
勇者「でも、この場合、違うだろう」
魔王「違うとは?」
勇者「中央大陸の国家は、戦争で疲弊した『南部諸王国』に
善意からお金を送ってるんだ。結果として、その物流?
が良くなったとしても、送ったお金は自分の物じゃないか」
魔王「ふむ」
勇者「つまり特産品同士を交換してるわけじゃない」
魔王「してるんだよ」
勇者「与えているだけじゃないのか?」
魔王「『南部諸王国』は、中央大陸に安全を
輸出しているんだ。つまり、戦争で血を流して
人間世界を防衛することでお金を得ている。
――見たことがあるんだろう?
人間世界の『全て』が戦火にまみれていたのかい?」
勇者「……」
魔王「新しく発明された馬車、豊かな光、豊富なご馳走
毎晩のように舞踏会を開いている国はなかったかい?
ブドウ畑で酔いしれている貴族はいなかったかい?」
****35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:53:30.25 ID:s4r1gUtjP
勇者「……それは」
魔王「つまり、そういうことだ。人間社会は
『南部諸王国』の巨大消費と防衛ラインという存在に
現在依存しているんだ」
勇者「い、ぞ……ん?」
魔王「そうだ、頼っている。溺れているというような意味だな」
勇者「でも、大多数の人間は戦う力なんて持っていないんだ。
そのためには、『南部諸王国』の戦士団や騎士団に
守ってもらい、せめて食料を送るしかない。
その何処がいけないって云うんだよっ!!」
魔王「まぁ、感情的にはそれが真実だろう。
そこまで否定したりはしない。
でも同時に、経済的にこの市場が無くなると
人間社会の物流や為替が破滅するのも確かなことだ」
勇者「破滅……?」
魔王「そうさ。その資料にあるだろう? これだけの
巨大消費がなくなったら、中央大陸の生産者は
大ダメージを受ける。特に鉄鋼業や造船業がね。
このダメージは波及して、数十万の死者がでる」
****36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 17:56:58.63 ID:s4r1gUtjP
勇者「そんな……」
魔王「まぁ魔王の云うことだから嘘かも知れないけどね」
勇者「嘘なのか?」
魔王「少なくとも私は本気だ。もしかしたら避ける方法が
あるかも知れないけれど、私は知らない」
勇者「……」
魔王「さて、この物流と依存型のいびつな経済構造が
二つの理由のうち、一つだ」
勇者「まだ……あるのか」
魔王「もう一つは比較的簡単に説明できる」
勇者「……」
魔王「説明が簡単なだけで問題が簡単なわけではないが」
勇者「どういう理由なんだ?」
魔王「魔族との大戦争で人間社会は結束した。
物流が改善されて、医療技術もひろまって
疫病と飢餓は少なくなったと云っただろう?」
勇者「ああ、云ってたな」
****38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:00:13.15 ID:s4r1gUtjP
魔王「アレは説明の半分なんだ。確かに物流が以前よりは
活発になった。以前は国民の半分が餓死するような国の
隣では大豊作の国があり、協力なんてしなかったからね」
勇者「うん……」
魔王「だが、物流が改善されたとはいえ、この世界の
食料生産そのものが劇的に向上した訳じゃない」
勇者「……?」
魔王「判らないのかい? ……つまり、まだ餓死者は
いるんだよ」
勇者「ああ。旅の途中でいくつもの村で、飢えた子供を見たよ」
魔王「そんな世界で、『大戦争による死者』が居なく
なったらどうなる? 長い戦争で剣を振るう以外に
生きる術を知らない何十万人もの人間が中央大陸に
あふれるんだ。彼らは生きているから食料を必要とする。
人間は増えるぞ? ――でも、食料はそこまで増えない。
この世界にはまだ輪作の概念すらないんだ」
勇者「そんな……」
魔王「それが現実なんだ」
****41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:04:32.19 ID:s4r1gUtjP
勇者「だって、だって」
魔王「だいたい、何で君は1人でここにいるんだ?」
勇者「……へ?」
魔王「腐っても魔王城だぞ。そりゃ警備をくぐり抜けて
こんな所まで来れちゃう君は突然変異というか、
それこそ冗談みたいな奇跡だけど」
勇者「何を言ってるんだ?」
魔王「戦争を終わらせるのは、軍の仕事だろう?
君は勇者じゃないのか?」
勇者「勇者だよっ。それが俺の天命だっ」
魔王「敵の王の命を単身仕留めるのは
暗殺者の仕事じゃないのかい?」
勇者「……っ!?」
魔王「多分ね。……人間の王たちも判っているよ」
魔王「この戦争が終わったら、勝っても負けても
人間は滅びてしまうって」
勇者「……」
魔王「だから君を1人で送り出したんだよ」
****44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:07:55.85 ID:s4r1gUtjP
勇者「……」
魔王「一方的なことを云ってしまったけれど、それは
魔族の側も事情は一緒でね。知っていると思うけれど
一口に魔族といっても、その内情は様々なんだ。
有角族や飛翼族、鉄蹄族。スライムや遊びコウモリ
なんていう低級なヤツらも沢山いる。
悪戯好きなだけの種族も多いけれど、有力な氏族は
ひどく好戦的だし、種族中心主義だ」
勇者「そうなのか……」
魔王「うん、そうなんだ。
私はね……見ての通り、腕も細いし、ひ弱で華奢だろ?」
勇者「魔法で戦うんじゃないのか?」
魔王「そりゃまぁ、使えるけれど。
大魔法使いというほどじゃない」
勇者「なら、どうして魔王になれたんだ?」
魔王「要領とタイミングと、なんだろう。
……多分、偶然で」
****49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:18:08.19 ID:s4r1gUtjP
魔王「私の一族は変わり者が多くて、魔界の端っこで 長年研究をしていてね。私の専門は経済なんだ」
勇者「経済ってなんだ?」
魔王「信じられないなぁ、人間の文明の程度は」
勇者「なんかむかつく」
魔王「魔族も人のことは云えない。
この戦争が終わったら、たとえ魔族の側が
勝ち残ったとしても、前にも増した乱世が始まるよ。
今度は人間の土地を舞台にして、奴隷を奪い合う
恐ろしい時代が幕を開けるだろう。
有力な魔族は人間の王国を次々と勝手に略奪して
それぞれを自分たちの『植民地』と呼ぶ時代だ。
裕福になった戦闘的な氏族は
その富で弱小氏族を従えたり、より大きな戦力を
調えて魔族統一を目指すだろうけれど
いまよりもっと混沌とした魔界はたやすく統一なんか
出来るわけが無くて、いまよりずっと多くの
血が流れるだろうね」
****52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:22:11.68 ID:s4r1gUtjP
勇者「植民地?」
魔王「他人の土地に攻め込んで支配して、
自分たちの場所であるかのように利益を吸い上げること」
勇者「許されるわけ、無いっ」
魔王「人間が勝ったら魔族の土地に同じ事をするだろうね」
勇者「人間は、そんなことっ」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「しないって、云えないだろう?」
勇者「……」
魔王「まぁ、いろんな世界がそうやって滅びていったんだ」
勇者「世界?」
魔王「ああ、それは私たち一族の研究だよ。
気にしないで。でも、私は……」
****53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:26:43.76 ID:s4r1gUtjP
魔王「私は、まだ見たことがない物が見たいんだ」
勇者「……」
魔王「勇者になら、判るかも知れないと思ったんだよ」
勇者「何を、だよ」
魔王「言葉では言い表せないけれど」
勇者「お前学者なんだろ?」
魔王「学者……? ああ、うん、そんな物だ」
勇者「じゃぁ、説明しろよ」
魔王「うーん、つまり」
勇者「……」
魔王「『あの丘の向こうに何があるんだろう?』って
思ったことはないかい? 『この船の向かう先には
何があるんだろう?』ってワクワクした覚えは?」
勇者「そりゃ……あるけど。わりと、沢山」
魔王「そうだろう? 勇者だものな!」
勇者「何でそんなに嬉しそうなんだよ」
****54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:30:05.56 ID:s4r1gUtjP
魔王「だから、そう言う物が見たいんだ」
勇者「……勇者になりたいのか?」
魔王「近い。でも、違う。だって私は学者
なのだろうし、いまのこの身は魔王だ……」
勇者「……」
魔王「やってて幸せとは云えないけれど
責任を感じるし他の誰かに押しつける気はない。
勇者じゃない私が、勇者になりたいなんて
そんな夢物語で時間を浪費するつもりはないんだ。
けれど」
魔王「見たことがない物は、見てみたい」
勇者「……そか」
魔王「だから、もう一度云う。
『この我のものとなれ、勇者よ』
私が望む未だ見ぬ物を探すために
私の瞳、私の明かり、私の剣となって欲しい」
勇者「断る」
****57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:34:02.22 ID:s4r1gUtjP
魔王「だめか?」
勇者「だめ」
魔王「絶対か?」
勇者「絶対」
魔王「交渉の余地はないのか?」
勇者「ない」
魔王「……」
勇者「……ないぞ? ほんとだぞ」
魔王「あると見た」
勇者「くぁ、なんでそこで上目遣いなんだよ。
学者がとって良い態度かよっ」
魔王「学者であると同時に私は経済屋なんだ。
経済屋は決して諦めない。どんなことにでも
妥協して明日を目指すんだ」
勇者「なんだか俺より勇者っぽい」
****59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:39:17.01 ID:s4r1gUtjP
魔王「故事によれば『世界の半分』を交渉材料にするらしい」
勇者「へー」
魔王「余裕たっぷりだな」
勇者「そんなので転ぶ勇者がいるかよ。
もしいたらそいつは勇者でも何でもない。
1から出直せって話だ」
魔王「うん、私の知っている故事でも
結末はそうなっていた」
勇者「ださっ」
魔王「私もそう思う。そもそもその魔王だって
世界征服が終了していた訳じゃないだろうに。
自分が所有していない物件の50%を譲渡するなんて
商道徳にてらしても法的観点から見ても
契約の有効性に疑問を持たざるを得ない」
勇者「そういう嘘つきだから勇者にふられるんだよ」
魔王「仰せの通りだ」
****61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:44:23.58 ID:s4r1gUtjP
勇者「だからといって魔界の50%譲渡とか云ったって
俺は絶対うんなんて云わないからな。
そんな見知らぬ土地なんかもらったってちっとも
嬉しくない。そもそも賄賂や金品で転ぶなんて
勇者のすることじゃないぞ。
人間ってのは、ベッド一個のスペースと、
毎日腹が満ちる程度の食い物があればそれで充分なんだ」
魔王「清貧の志だな」
勇者「貧しいとか云うな。魔王のクセにっ」
魔王「私としても領土の割譲をテーマに交渉する気はない」
勇者「そうなのか?」
魔王「領土割譲は、後世の統治から見た場合、
民族問題やプライド上の問題があって、紛争の火種に
なることもしばしばなのだ。眼前の交渉が重要とはいえ
後世に禍根を残すのは気が進まない」
勇者「ふぅん……。そういうものなのか」
魔王「そうなのだ。それにだいたい『50%』という
言い方が良くない。それでは結局『こちらとそちら』が
再生産されるだけではないか」
****66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:50:17.49 ID:s4r1gUtjP
勇者「どうゆうこと?」
魔王「つまり、世界を分割するのが問題だ、ということだ。
その分割という発想は、結局現在の問題である
『人間世界と魔族世界』という対立を
『勇者の支配地域と魔王の支配地域』という対立に
問題をすり替えただけだという話だ」
勇者「あー。もっともな話だ」
魔王「だろう? それは交渉でも妥協でもなく
ただの時間稼ぎに過ぎない」
勇者「ふむ」
魔王「故にその種の論法は却下だ」
勇者「じゃぁ、交渉も失敗だな。時間もちょうど半日だ。
……戦闘するような気分じゃなくなっちゃったけれどさ」
魔王「いや、ちゃんと提案はある」
勇者「あるのか?」
魔王「半分などとけちくさいことは云わない。
でも大地は私の物ではないから差し出せない。
勇者が欲しい。代価は私にはらえる全て。
つまり、私自身だ。
これだけは私の意志で勇者に捧げられる。
お願いだから私の物になってくれ」
****68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:55:56.79 ID:s4r1gUtjP
勇者「……お、お、おまっ」
魔王「口をぱくぱくさせると間抜けに見えるぞ」
勇者「なっ何をっ」
魔王「交渉の提案だ」
勇者「何言ってるか判ってるのかっ?」
魔王「判っている」
勇者「しょ、正気かっ!?」
魔王「もちろんだ」
勇者「もうちょっと物考えて発言しろ!
わ、わ、わ、わきまえろっ!!」
魔王「そんなに驚かないでも良いではないか。
人間世界では15にもなれば農夫の息子だろうが
宿屋の娘だろうが、そこら中でこのような睦言と
甘やかな契約を交わして乳繰りあっていると聞く」
勇者「聞くなよっ」
魔王「正確には書物で読んだわけだが。
――読んだだけで実体は不明で経験もない。
これも一つの『未だ見ぬ物』だな」
****71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 18:59:54.23 ID:s4r1gUtjP
勇者「何を」
魔王「優れた提案とは提案した時点で
提案者の目的の一分を達せられるのだ。
『純潔を捧げる願い』を告白するなどと
私の人生に訪れるとは思っていなかった知見だ。
精神的に平静ではいられないなんて貴重だな」
勇者「まるっきり平静に見えるよ」
魔王「ダメか?」
勇者「だっ、だめっ!!」
魔王「絶対か?」
勇者「ぜ、ぜ、ぜ」
魔王「前回よりもさらに余地があるように見える」
勇者「近寄るなっ」
魔王「許可無い限り触れたりしない。私は奥手なんだ」
勇者「契約主義者ってさっきまでは云ってたじゃないか」
魔王「それは真実だ。『奥手』というのは
真実にかぶせる演出上の工夫だ」
****75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 19:05:18.00 ID:s4r1gUtjP
魔王「勇者」
勇者「何だよっ」
魔王「んぅ。話づらいな」
勇者「あんだけ悲惨な未来をぺらぺら解説して
やがったじゃないか」
魔王「あれは専門分野の講義だったから」
勇者「どんだけ死にものぐるいな専門分野なんだよ」
魔王「経済というのは血が流れない戦争なんだ」
勇者「おっかないよ。戦闘能力のない魔王を
初めておっかないと思ったよっ」
魔王「怖がらせるのは本意ではないし……。
混乱させたら申し訳ないと思うけれど」
勇者「……」
魔王「少しセールストークをする」
勇者「うー。押されてる」
魔王「私を独占すると色々便利だぞ?」
勇者「たとえば?」
魔王「家計簿を付けるのが得意だ。完璧を約束できる」
****80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 19:09:56.32 ID:s4r1gUtjP
勇者「なんだかなぁ。家計簿か」
魔王「それにね」
勇者「?」
魔王「この戦争の向こうに行ける」
勇者「それは出来ないって云ってたじゃないか」
魔王「もちろん、すぐには無理だ。人間の王たちも
納得はしまい。私が投降しても、それは秘密裏に
処理されて、偽魔王が立てられるだろう。
それくらいこの戦争は、人間社会に必要になって
しまっている」
勇者「……」
魔王「でも、だからこそ、それが『別の結末』を
迎える事ができるのならば、
それは私にとってだけじゃない。
三千世界にとって『未だ見ぬ物』じゃないだろうか?」
勇者「……」
魔王「どうだ?」
****88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 19:17:09.59 ID:s4r1gUtjP
勇者「それが」
魔王「ん?」
勇者「おまえなんだ」
魔王「うん、これが私なのだ」
勇者「ずっとそんなこと考えてきたんだ」
魔王「戦争を終わらせるのが軍だとすれば
終わる着地点を模索するのが王の役目だ」
勇者「そのために俺を欲しがったのか?」
魔王「うん、まぁ。そうとも云える」
勇者「……」
魔王「いや、誤解しないでくれっ。
勇者が欲しいのは本当だぞ?
向こう側を一緒に見に行く連れが欲しいだろう?
朝の散歩に一緒に出かけるような気分なんだっ。
それから家計簿も本当だ。偽りはない。
なんだったら賃借対照表や生涯賃金提案書も書けるぞっ。
足りないかっ? 足りないのか?
そうだな。……あまりにも粗末な粗品だが
一緒にいるのも得意だ。私は静かな魔王だからな。
部屋に置いておいても邪魔にはならないことに定評がある
添い寝とかも多分役に立たないほど下手だろうが
セット商品についている細々とした備品程度でいいならな
付けることが出来る」
92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 19:24:09.48 ID:s4r1gUtjP
勇者「あー」
魔王「契約詐欺にならないようにあらかじめ
告げておかなくてはならないのだが、
私は料理は不得手だ。料理は科学なのだろう?
わたしにはゲル化や乳化を行なうための
洗練された手先の技術が欠けているようで
調理に関して期待してもらっては困る」
魔王「それから、あー。
世間の、ほら。大多数の一般的な性別において
男性を有する成人の人間が望むような外見的
肉体的な美しさには欠けていると思われる。
運動不足だしな」
勇者「そうか? そ、そんなことないだろ」
魔王「いいや、そんなことはあるのだ。
これは侍女たちの用意した魔王のお仕着せであって
欠点が隠れて、と言うか、見えないだけで、
二の腕とかつまめるのだっ」
勇者「泣きそうになるなよ」
魔王「ぷるぷるなのだぞ!?」
97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 19:29:31.81 ID:s4r1gUtjP
勇者「いや、その……大変美味しそうに見えます。
……特に胸とかおっぱいとか」
魔王「いや、いいんだ。無用な慰めだ。
それに地味すぎて、こればかりは申し訳ない。
思うに我が一族の頭部は長い伝統で
見てくれよりも中身を重視してきたはずで」
勇者「そうか?」
魔王「私も娘時代、つまり150年ほど前だが
その時代にもうちょっとこう、何というか
身なりやお手入れに気を配っておけば
こんな一世一代の交渉時、リコールにおびえる経営者の
気分を味合わないで済んだはずなのに……」
勇者「用語が難しいな」
魔王「世の中は色々難しいのだ」
勇者「まったくだな」
****100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 19:34:36.34 ID:s4r1gUtjP
魔王「とにかく、そう言った外見的な物については
あまり満足のいく案件ではないのだが、経済を
中心にした知識と……知識と……。
それくらいしか誇れないのか、私は」
勇者「……」
魔王「あと誇ることが出来るのは、貞淑さくらいだ。
私は長命種で、学者の家系の出だからな。
それに純然たる契約主義者でもある。
私にとっていったん締結されれば
この種の契約は魂にまで食い込み
過去も未来もその一転において鋼に勝る強度を持つだろう。
――側近く侍る。健やかなる時も病める時も寄り添おう。
それは約束できる」
勇者「……」
魔王「どうだ? 私の物にならないか?
私はあんまり我が儘は言わないぞ。
『丘の向こう側』に一緒に行ってくれれば
それだけで満足だ」
****103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 19:40:31.38 ID:s4r1gUtjP
勇者「沢山殺すことになるんだろうな」
魔王「ああ。……うん。誤魔化さない」
勇者「河が血で染まるほどかな」
魔王「うん、終わるまでは。手を血で汚さない約束は
できない。私も、勇者も、非道なことを
沢山することになるだろう」
勇者「裏切り者と呼ばれるかな」
魔王「それは、正体を隠すことも出来る。
私の誇りにかけて、勇者の伝説は綺麗なままに
出来るはずだ」
勇者「必要なのか?」
魔王「それは違う。このままワルツのように戦争を
消耗を繰り返し、屍山血河の平和を享受することも
この世界に許された選択肢の一つだ」
勇者「それはそれでおびただしい犠牲だろう」
魔王「でも勇者が直接的手を汚さないで済む」
****104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 19:46:44.08 ID:s4r1gUtjP
勇者「なんだよ契約したくないのかよ」
魔王「騙して契約したくないんだ」
勇者「そか」
魔王「騙して手に入れたものは、一夜で失われる」
勇者「信義に厚いんだな」
魔王「善悪の話じゃない。ゲーム理論で証明された
商道徳レベルでの話だよ」
勇者「よし、お前の物になる」
魔王「いいのか?」
勇者「いいんだよ。……あー、いっとくけどなっ」
魔王「?」
勇者「おっぱいのためじゃないからなっ!」
魔王「こんなものがいいのか?」 ふにふに
勇者「自分で揉むなっ」
魔王「勇者」
勇者「何だよ、魔王っ」
魔王「触れたい。触って良いですか?」
****110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 19:57:12.81 ID:s4r1gUtjP
勇者「……」
魔王「信用してないな?」
勇者「口調がいきなり丁寧でびっくりしただけだ」
魔王「少しだけだから、触らせてくれ」
勇者「判った」
魔王「……」 おずおず
勇者「魔王、手がひんやりしてるな」
魔王「冷たいか? 済まない」
勇者「いや、気持ちよい」
魔王「私は、勇者のものだ」
勇者「俺は魔王のものになる」
魔王「契約成立だ」 勇者「契約成立だな」
魔王「嬉しいぞ」にこっ
勇者「……。くぁっ。は、はなれろっ」
魔王「そうか?」
勇者「で、最初の一手はどうするんだよ」
魔王「そうだな……まずは、麦から手を付ける」
勇者「麦か……。長い旅になるな」
魔王「もちろん。わたしは勇者と一生離れる気は
ないんだからなっ」
****133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 23:39:08.74 ID:s4r1gUtjP
――冬越しの村
勇者「うぉ、寒くなってきたな」
魔王「これから冬に向かっていくからな」
勇者「こんな中途半端なところで良いのか?」
魔王「中途半端とは?」
勇者「いや、だからさ。魔王の話によれば
いまの人間、中央大陸にとって麦は食料として大事だ。
ってことを基本にしてるんだろう?」
魔王「ああ、そうだ」
勇者「だったら、もっと農業大国の湖の国とか
紫旗女王国とかさ、そっちに行った方が良いんじゃね?」
魔王「話が聞いてもらえるならな」
勇者「あー」
魔王「勇者もしばらくは姿を見せない方がよいと思う」
勇者「そうか?」
魔王「ああ。あんな風に私の所へよこされたんだ。
誰かが勇者を疎ましく思っていたのかも知れない」
勇者「んなことないって」
****137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 23:45:31.80 ID:s4r1gUtjP
魔王「それに何処に行って紹介するにしたところで
説得力を出すためには実際の実験と資料が必要だ」
勇者「そりゃそうだ」
魔王「この村でそのための手はずを整える」
勇者「そう、なのか?」
魔王「うむ。手の者を忍び込ませているのだ」
勇者「手回しが良いな」
魔王「何事も根回しと調整が必要だ」
勇者「この村か」
魔王「ああ、何の変哲もない村だろう?」
勇者「うん、こんな村は沢山知っている」
魔王「『南部諸王国』辺境部では典型的な開拓村だな。
複合的な大規模農業を中心に小作農や職人たちが
緩やかな村を形成している」
勇者「魔王軍との戦いもあるだろうになー」
魔王「それでも大地にしがみついて生きてゆくんだ。
人間はそこがすごいところだ」
****139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 23:49:39.59 ID:s4r1gUtjP
勇者「で、手の者ってのは」
魔王「ああ。小さな一軒家を用意してもらってるんだが。
どこなのだろうな。この村としか聞いてないんだが」
勇者「あー。そうなのか? 探せば判るんだろうけれど
そろそろ陽も暮れるし、こんな寒い中をうろつき回るのは
ぞっとしないなぁ」
魔王「うむ、もっともな指摘だ」
勇者「だよなぁ」
メイド長「まおー様ぁ~まおー様ぁ~♪」
勇者「ば、ば、ばっ」
魔王「おお。この声は」
メイド長「まおー様~♪」
魔王「おお、紹介しよう。勇者!」
勇者「この馬鹿っ。一応人間の村だぞっ!
まおーまおー叫んでどうするっ!」
魔王「む。そう言えばそうだ。以後注意するように」
メイド長「はい、まおー様!」
****142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/03(木) 23:55:53.42 ID:s4r1gUtjP
魔王「まぁ、大丈夫だ。そんなに怒ってくれるな」
勇者「むー」
メイド長「怒りすぎると皺が取れなくなりますよ」なでなで
勇者「こいつは何なんだ?」
魔王「これは私の側近で、メイドを束ねるメイド長だ」
メイド長「ご紹介にあずかったメイド長です。
まおー様のことは幼い頃から世話をさせていただいて
おりますわ。この度は勇者様とまおー様のご結婚
まことに喜ばしく、お見守りさせていただいてきた
この身、この胸の内も震えんほどです」
勇者「突っ込みどころはたくさんあるんだけど、
最大のものは結婚なんてしてないって事だぞ」
メイド長「そうなんですか?」
魔王「期間無制限の相互所有契約だ」
メイド長「あらあら、まさに結婚じゃないですか」
魔王「白詰草とクローバーほどに違う」
メイド長「それじゃ同じものじゃないですか」
****145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:02:31.05 ID:AIDyRnsCP
魔王「あえて名前を変えることによる風情の違いがある」
メイド長「ああ、そうでしたか!
メイドと召使いと側女と寝室奉仕奴隷のようなものですね」
魔王「それも風情か?」
勇者「……」
メイド長「風情は大事ですよ。男女間の機微の80%は
風情で構成されていると言っても過言ではありません」
魔王「なんと! それでは殆ど具材がないではないか?」
メイド長「そこがミソなんですよ」
勇者「あのー。寒いんだけど」
メイド長「おやおや、まぁ!」
魔王「勇者が寒いと云っているんだ。どうにかならんか?」
メイド長「では、こちらへ。ご案内しますわ」
魔王「おお、首尾はどうだ?」
メイド長「さほど大きくはありませんが、
村はずれの古い館を改修してございます」
魔王「でかしたぞ、メイド長」
****147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:12:08.05 ID:AIDyRnsCP
――古びた洋館
勇者「なんだよなんだよ。充分でかいじゃないか」
メイド長「とんでもない。魔王城の1/100以下です」
勇者「あれはダンジョンだろ。一緒にするな」
魔王「いや、私はあそこに住んでたんだがな」
勇者「ああ、そっか」
メイド長「こちらへどうぞ。
ただいまお茶をお持ちしましょう」
魔王「すまんなー」
勇者「側近って、どんな関係なんだ?」
魔王「うむ。ああ見えてメイド長はわたしの親戚なのだ」
勇者「学者なのか?」
魔王「んー。学者というと語弊があるな。
学者一族と云うより『好奇心を抑えられない一族』なのだ。
しかも専門ジャンルを追求してしまう類の。
彼女は、私から見ると年上なのだが、
なんだか『メイド道』とやらに目覚めてしまってな」
勇者「ふむ……」
****149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:17:39.88 ID:AIDyRnsCP
メイド長「殿方における騎士道と似たようなものですわ」
魔王「早いな」
メイド長「紅茶でございますよ。
蜂蜜をたっぷり入れておきましたから」
魔王「まぁ、そんなわけで、ずっと一緒に育ったし
魔王軍の指揮なんかを任せたこともある」
勇者「おいおい、メイドってそんなことも出来るのか!?」
メイド長「主人のどのような求めにも応える。
それが私の『メイド道』ですわ」
****152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:25:10.69 ID:AIDyRnsCP
魔王「これは、この館はどういう物件なんだ?」
勇者「そうだ、気になってた」
メイド長「さる貴族の別邸だったらしい建物でございます。
その貴族……騎士家だったそうですが、その家そのものは
跡継ぎを戦争で亡くされ、この館は手放されたとか」
魔王「正規の手段で手に入れたのだろうな?」
メイド長「ええもちろんです。
修繕を依頼した職工の方々への支払いも現金で行ないました」
魔王「うむ」
勇者「……穏当だな、以外に」
魔王「いずれ実力行使でなければ意を通せない相手も出てくる。
穏やかに通るところで無駄に暴力は使いたくない。
……嫌われると困る」
勇者「?」
魔王「なんでもない。
……で、我らはこの館に逗留して。んー身分は
どうしたものかな」
****153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:32:06.31 ID:AIDyRnsCP
メイド長「村長以下主立った方々へのご挨拶は
すませております。聖王都の神学院で研究なされた
高名な学者の姫君だと」
魔王「そんなんで通るのか」
勇者「格好さえどうにかすれば余裕だろう?」
魔王「この白衣とローブではだめかな」
勇者「ダメっぽいんじゃね?」
メイド長「ダメでしょうね」
魔王「着心地が良いんだが」
勇者「姫君ってのは着心地度外視で服選ぶんじゃねぇかな」
メイド長「そうですね。視線を意識せざるを得ない服で
緊張感を維持しているのかと思われます」
魔王「緊張感がないと!?」
メイド長「そうは申しておりません。しかし……」
魔王「なんじゃ」
メイド長「お耳を拝借いたします」
魔王「ふむふむ……」
****158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:35:41.98 ID:AIDyRnsCP
魔王「勇者、勇者」
勇者「どうした?」
魔王「緊張感のない肉は駄肉か?」 じわぁ
勇者「なんで半べそなんだよ」
魔王「そう言われたのだ」
勇者「あー」
魔王「駄肉か? 駄肉なのか!?」
勇者「あー。そのー」
メイド長「お茶のお代わりはいかがでございましょう?」
魔王「ゆるんでぷにってしまうのか?」
勇者「コメントしづらいな」
メイド長「冬場は特に運動が不足しますからね」
魔王「うううう」
勇者「……その、たまには着飾るのも良いんじゃないか?
目先が変わって。その、風情とか云うヤツだ」
メイド長「さようでございますよ、まおー様」
魔王「そ、そうか……」
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2014-05-02T17:18:19+09:00
1399018699
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元ネタ
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/87.html
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作中で使われたオマージュ・パロディの元ネタ
性質上このページには様々な作品のネタバレが大量に含まれておりますのでご注意。
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***基本設定
ドラゴンクエスト1・2・3+精霊ルビス伝説
-光の精霊
炎の少女、精霊ルビス
-最初の勇者
黒髪の少年、ディアルト。真名は「ロト」
-不死鳥
ラーミア
-ひかりのたま
DQ3に登場。
DQ1のボス「竜王」の祖先である竜の女王から貰える。
ゾーマの「やみのころも」を消すことが出来る。
-やみのころも
DQ3のラスボス「ゾーマ」がその身に纏う。
ひかりのたまを使うと消すことが出来る。
やみのころもを消すとゾーマの各種ステータスが下がる。
-ようせいのふえ
DQ1・3に登場。
DQ1では城塞都市メルキドを守るゴーレムを眠らせることが出来る。
DQ3だとルビスにかけられた封印を解くのに使う。
-竜王・死導・憎魔
竜王:DQ1
死導=シドー:DQ2
憎魔=ゾーマ:DQ3のそれぞれラスボス
-おおぞらをとぶ
&youtube(http://www.youtube.com/watch?v=zfb8KUTYHm8)
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-外なる図書館
瀬良の図書館とも。
クトゥルー神話に出てくるセラエノ図書館が元
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-1スレ目19「俺がガンダムだっ!」
「機動戦士ガンダム00」でガンダムエクシアに搭乗した刹那・F・セイエイの台詞。
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-「事はすべてエレガントに運べ」
貴族子弟のセリフ
元ネタは新機動戦記ガンダムWの登場人物トレーズのセリフ
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-「仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明」
女魔法使いのセリフ
元ネタは宮沢賢治の詩集「春と修羅」の序より
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-「跳んだり跳ねたり光ったり」
女騎士のセリフ
元ネタはキャンディベルOP「跳んだり跳ねたりキラキラしたり」
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-NDC番号
日本で使われている図書分類法における分類コード
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-「恋する信者は執事さんのことを思うといけないマスケット兵になっちゃうのかも知れないのですぞ!?」
執事の妄言
CAGEの18禁美少女ゲーム、「恋する妹は切なくてお兄ちゃんを想うとすぐHしちゃうの」
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-J.R.R.トールキン『指輪物語』
4スレ402レスの詩
いざ生き者の学をまなばん!
まずあぐるは、自由の民よ、四族の名前。
はじめに生(あ)れし草の民らよ。
次は、水辺を治めし、湖の民。
三が荒れ地の砂の民。真に剛毅闊達なる。
四が南の、荒れ地に住まいし風、開拓の民にして興武なり。
『指輪物語』第二部 二つの塔 第四章 木の髭の詩の一節
いざ生き者の学をまなばん!
まずあぐるは、自由の民の四族の名前。
はじめに生(あ)れしが、エルフの子らよ。
次が穴掘りドワーフ、暗闇住まい。
三が土生のエント、山ほど古し。
四が常命の人間、馬を御したり。
黄金なる小麦の乗り手よ、何処(いずこ)へゆくか。
吹き鳴られたる角笛、今どこに。
土に触れたるたくましい指、紅く燃えたる炉辺の火よ。
春は何処? 春は何処?
実りの時よ、丈高く、頭を垂れる黄金の麦。
『指輪物語』 第二部 二つの塔 第六章 黄金館の王 の詩の一節
あの馬と乗り手とは、どこへ行った?吹きならされた角笛は今どこに?
兜と鎧かたびらは、風になびいた明るい髪の毛は、どこに?
竪琴を奏でた指は、赤く燃えた炉辺の火は?
春はどこに?実りの時と丈高く熟れた穀物は、どこへいったか?
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-東の砦将「んっなみぃがおっどるぜぇ♪ っぽをたてろ~♪」
アニメ『ガンバの冒険』OPテーマ曲 『ガンバのうた』 (作詞:東京ムービー企画部 作曲:山下毅雄 歌:河原裕昌)
&youtube(http://www.youtube.com/watch?v=OB2clihUEcE)
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-遠からん者は音にも聞けっ、近くは寄って目にも見よっ。
『平家物語』など。武士が名乗りを上げる時の言葉。
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-粗にして野でも、卑にはあらず
城山三郎『粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯』
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-5-2 496の火竜公女の言葉
火竜公女「――天が下のすべての事には季節があり
すべてのわざには時がある
生まるるに時があり 死ぬるに時があり
植えるに時があり 植えたものを抜くに時があり
殺すに時があり いやすに時があり
こわすに時があり 建てるに時があり
泣くに時があり 笑うに時があり
悲しむに時があり 踊るに時があり
石を投げるに時があり 石を集めるに時があり
抱くに時があり 抱くことをやめるに時があり
捜すに時があり 失うに時があり
保つに時があり 捨てるに時があり
裂くに時があり 縫うに時があり
黙るに時があり 語るに時があり
愛するに時があり 憎むに時があり
戦うに時があり 和らぐに時がある」
旧約聖書「伝道の書」 3章1~8節 の言葉が元ネタ
2014-05-02T17:15:07+09:00
1399018507
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書籍版章タイトル一覧
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2014-04-29T16:20:36+09:00
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アニメ化について
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/456.html
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&u(){}&u(){}&u(){}&u(){}&u(){}
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2014-04-29T16:00:05+09:00
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