ランナーズ2010_DRrep1

ランの始まり

ドラゴン・アローにとってこの日のランは、"マドナッグ"スカーレットのメールから始まった。

生来のテクノロジーとの愛称の悪さと常識の無さから、シアトルに来て以来途方にくれていたドラゴン・アローだが
知己を得たスクワッター、J・Jの紹介を得て、影の走り手として当座の稼ぎを得る手段を得ることができた。

彼の最初のランとなった先日のビズを特に大きな失敗もなく終え、
つながりの緩やかなあのチームの貴重な魔法使いとして認められた、とまで行くかはわからないが、
マドナックからのメールはドラゴン・アローがシャドウランナーとして生きる事を許された証のように思え
彼の導師精霊である私は隠しようのない安堵を感じた。

これで現代の恐るべきモンスター、貧困によって殺される心配はなくなるだろう。
少なくとも、当座の間は。

辿りつくまで

ディスプレイに写ったメールの文面は、形而上の存在である私からは知るべくもないが、
リトリーツ・カフェ(アーバンブロウルチームの熱烈なサポーターであるスポーツバー)へ11時だか12時に
ランを受けるつもりがあるものは集合しろ、というものであるらしかった。

時間について不確かなのは、彼がメモを残そうとしたその最中にメールソフトがフリーズし、
コムリンクからメールのデータが失われたからであり、
その惨事に備えてスカーレットはドラゴン・アローに文面のメモを物理的に残すよう指示をしたらしいが、
残念なことにその効果は限定的にしか発揮されなかった。


「汚染物質(アレルギー持ちである彼にとっては致命的だ)を落とすために知己からシャワーを借りる」、「集合場所まで徒歩で向かう」、「ナビケーションソフトが相も変わらずフリーズする」
などの時間のロスによりドラゴン・アローがリトリーツ・カフェにたどり着いたのは11時半の事だった。
集合時間は幸い12時だったらしく、彼はチームのメンバーから白い目を向けられずにすんだ。

本日のチーム

今回リトリーツに集まったランナーはアローの他に3名。
いずれも前回には顔を合わせたメンバーだ。
だが、記録を残し始めたのは今回が初めてであることだし、簡単な覚え書きを残しておく。

今回の仲介役である"マドナッグ"スカーレット
驚異的な戦闘感覚と銃の腕を持ち合わせたジレットにして、電子戦にも長けた運び屋。
金銭的にがめついが、面倒見の良い大人の女性だ。
大人びた様子には実のところ背伸びも感じられる。だが私はそれを好ましく思う

白い肌に赤い目をした、幼い少女"アキラ"
見た目に反して、というわけではないが、極めて優秀なハッカー。
最近姿を顕にした「テクノマンサー」と呼ばれる存在らしく、その腕前はマトリクスの覇者と呼ぶにふさわしい。
有名なプロゲーマーであり、金銭的に困っている様子も見受けられないが、彼女はそれでも影を走り続けている。

エルフ族の少女、"Moonlight"リリー・月影
イングラム・ホワイトナイトを自在に操る、恐るべきコンバット・アデプト。
いや、武器の重みにとらわれず"ガンスリンガー・アデプト"と呼ぶべきだろうか。
それほどまでに彼女の腕前は自由自在だ。

この世界では珍しいことに、ティーンエイジャーからそう離れてもいない、若い女性たちばかりだ。
しかしいずれも専門分野は違うが、ドラゴン・アローに勝るとも劣らない影の世界のプロフェッショナル達だ。
彼女らの存在が、彼にさらなる成長の糧になってくれればと私は考る。
もちろん、彼女らにとっても彼がそうであるようにと願っている。

依頼

定刻通りに現れた依頼人はエージェントスミスの女性版と言った風情のミスター・ジョンソンで、
いつものごとく我々に依頼のサマリーだけを示し、それをビズとするかの決断を迫った。

詳細の説明の内容の前に開示された依頼の内容は
忘れ物を取り返す簡単なお仕事
報酬は4万\
というものだ。

スカーレットの持ち込む依頼は危険度も報酬もピカイチという評判だが、
それに恥じぬ内容だと言って良いだろう。

しかし、今月中に収入なければ不法居住のショバ代(たった500\なのだが)すら
ままならなくなるドラゴン・アローにとって選択の余地があるわけでもなく、
各自もそれぞれ預かり知らぬ理由により依頼を引き受けることにしたようだ。


依頼人との交渉により明らかになったビズの内容は以下のとおりだ
忘れ物=輸送中にロストしたコンテナの"中身"
コンテナの"中身"が何かの詳細は開示しない、コンテナが開封されていなければそのままとすること
"中身"は有機物であり、覚醒生物の一種
連れて帰る際、"中身"から抵抗を受ける可能性がある
"中身"が死亡、もしくはかなりの負傷を負っていた場合、報酬を減額する。
"中身"はドラゴンではない

コンテナを運んでいたトラックは3日前にシアトルのスラムで証跡をロストした。
トラック、コンテナ共に追跡用のタグが付けられていたが、何者かにより無力化されている
警備は精々短機で武装した警備員1名ほど。ご冥福をお祈りします。

もしトラックの輸送関係者が生存していたとしても特に期にすることは無い。

期限は1週間、ただしAs Soon As Possible

なお、なぜ"中身"がドラゴンでないことが明らかになったのかについては、コメントを差し控えさせて頂く。


リトリーツ・カフェ内での調査

はじめに手掛けたのは、トラックとコンテナに付いたタグの証跡を追うこと。
これはアキラが3時間足らずで仕上げてくれた。

その間に彼がやったことは机の上の合成バターピーナッツを平らげ、
ダーツにトライしたスカーレットのブルズアイに拍手を送ったくらいのものだ。

アキラの調査内容と、各自の持ち合わせの知識を付きあわせた結果、以下のことが判明した。
  • トラックが消息を経ったのはドラゴン・アローのねぐらに程近いスラム街。
  • スラムのそのあたりは覚醒者のゴーギャング"デッド・ウォーロックス"の縄張り。
 (高名な魔術結社との関係は不明、おそらく無いと思われる)
  • そのため、その周辺はしばしばスマグラーの密輸ルートになっている。
 (事前に話と幾許の"謝礼"を包んでおけば逆に安全というわけだ)
  • 消息を経つ直前、トラックが用意されたルートを離れた。


"コンタクト"

次は得られた情報を元に各々のコネにコンタクトを取ることになる。
リトリーツ・カフェから一旦解散し、思い思いの先へと散っていった。
再び顔を合わせたのが、ピュージェット湾が赤く染まる17時ごろ。
アキラが事を終えたのが15時ほどだから、それから2時間ほど、そのために時間を費やしたことになる。

ドラゴン・アローは知己のスクワッターに、"デッド・ウォーロックス"の動向やスラムの情勢について聞いてまわることにした。
比較的生活が荒んでいない本日のチームの中では、路地裏で話を聞けるドラゴン・アローの存在は貴重だ。
それが喜ぶべきことなのかどうかは、分からないが。

ドラゴン・アローと行動を共にしなかったものの詳細は知る由もないが、
リリーは知己の武器屋にスラムでの武器の流れと"マジでイカス"武器はないかを尋ねに、
アキラは知り合いのブロガーに"中身"のようなものに心当たりがないか、情報提供を求めたようだ。
スカーレットは今回役に立つコンタクトに心当たりがなかったのか、徒歩でスラムに向かおうとしたドラゴン・アローを見かねたのか、
スラムまでSUVでドラゴン・アローを送り届けてくれた。

道中でドラゴン・アローが獣精霊の召喚に失敗するなどの失態を見せたが、
高位の精霊の召喚は簡単ではないということで、一つ彼女には納得いただきたいものだ。
アローも最近ようやく安定して祖霊と交信できるようになって来たと安心していたのだが、
なかなか成長を見守るというのも難しい。

アローはスクワッターから"デッド・ウォーロックス"が近頃ボスに入替りがあったこと。
彼は企業をドロップアウトした元俸給メイジであること。
近頃、"デッド・ウォーロックス"は懇意の密輸屋を裏切って何かをやらかしたらしいこと、
彼らには手に入れた貴重なブツを保管するための場所―ソレがどこかはわからないが―があることを聞きだした。

アキラは"デッド・ウォーロックス"の新リーダーが未だ企業のひも付きであること、
ミツハマは覚醒生物を好んで扱い、またデッド・ウォーロックスとの関係も良好だったので、落とし主はその関連ではないか、と何者かのコメントを我々に話した。
そう話すアキラはそれまでとは打って変わって、ランに乗り気だった。何か琴線に触れる事があったのだろうか。

リリーはこれといって情報を得ることはできなかった。
しいて言えば「武器の流れに特に変わったことは無い」ということだろうか。
しかし、彼女は何か琴線に触れる"マジでイカス"得物を見つけたらしく、終始上機嫌だった。

これで、情報は明確に出揃った。
落とし主―どこの誰かは知らないが―は表に出せない覚醒生物を運ぶために、いつものように懇意にしている覚醒ギャングの縄張りを経路として選び。
しかし別の企業―こいつも誰かは知らない―が俸給メイジを使って、"デッド・ウォーロックス"を掌握しており、運ばれるはずだったブツを横取りした。

後は"中身"が我々の手の届かない所に運ばれる前に、"デッド・ウォーロックス"を殲滅し、取り戻すだけだ。


さて、ここで一つ不安を吐露しよう。
スクワッターとの会話のおり、ドラゴン・アローは「ギャングの新リーダーは自分より強いか?」と冗談めかして尋ねた。
ギャングの頭領程度なら「ドラゴン・アローが間違いなく優れている」と笑って太鼓判を押せる。

しかし相手が正規の訓練を受けた優秀な俸給メイジならどうだろうか。
確実に劣っているとは言わない。
しかし一部の専門分野を除き分が悪いのは容易に予想がつく。
そしてその対処に有効な手立て―アストラル界での活動能力―持つのは今回のチームではドラゴン・アローだけなのだ。

彼がスクワッターとの約束通りにランを無事走り終え、共にささやかな祝宴を挙げられる事を祈っている。
竜殺しの英雄は決して約束を破ってはいけないのだから。

探索

問題は"デッド・ウォーロックス"の宝物庫がどこにあるかはわからない、ということだ。
その所在は彼らの秘密であり、コンタクトから得られるたぐいの知識ではない。

解放はドラゴン・アローの提案が採用された。
幸運にも―相手にとっては不幸にも―ドラゴン・アローは"デッド・ウォーロックス"のメンバーを目にしたことがあり、
獣の精霊の協力により、彼を追跡することが可能だった。
後は彼か、彼の周囲に宝物庫の在処を「教えて」貰えばいい。


それから数十分後、獣の精霊は我々をスラムハズレの酒場へと誘った。
アキラが10秒足らずで突き止めたことには、
  • 中には9名ほどのギャンガーが酒をかっくらっている。
  • 彼らの中にはギャングのNo.3格が「巡回」に来ており、たしなんで入るが、酒量は控えている。
  • No.3のコムリンクを調べた限りでは"宝物庫"の場所はわからない。
  • "宝物庫"にはギャングのNo2と、リーダーが呼び出した"強力な"精霊が見張りについている。

とのことだった。

ここで、酒場にSUVで横付していたチームではちょっとした議論になった。
No.3ならおそらく宝物庫の在処を知っているだろう、だがその確証はない。
「教えて」もらうためには少々荒事が必要になるが、9人はいささか多い。
所詮烏合の衆なのだから危なげはないだろうが、出来れば嗅ぎまわっていることを知られたくはない。
連絡の暇もなく覚醒ギャングのNo.3を含めた9人、というのはリスクがある。


結論は別の方向からもアプローチをかける、というものだ。
彼らはもうしばらく飲んだくれていそうだし、ちょうど近くにトラックが消息を絶った場所がある。
誰が提唱したかは覚えていないが、大体皆がそういう雰囲気になっていた。

トラックは直ぐに見つかった。

それは酒場から車で30分ほど離れたダウンタウンの元倉庫のすぐそばに止められていた。

トラックの上にはあるべきコンテナはなく、そのかわりにチンピラが一人、
退屈そうに見張りに立っていた。

彼の存在は気にせず、アキラがトラックの移動履歴などを漁った結果、
このトラックは意図的に移動させられたものであることがわかった。
また、トラックを見るにコンテナのサイズはかなり大きく
やすやすと長い距離を人の手で(トロールの手であっても)動かせないことは容易に想像がついた。

(注:他PCには公開されたかは覚えていませんが、移動履歴を漁った結果、このトラックは本来ミツハマ系列の製薬会社から"ミツハマ都市開発"の倉庫へと移動する予定だったことが判明しました。ドラゴンアローは知る由もありませんが、アキラはミツハマと少なからざる因縁を持つため、この情報により随分とモチベーションを上げたようです)


さて、我々は図らずも"宝物庫"を見つけたのか。
正直ステルスタグをしっかり切ってくるような襲撃の手際からは少々お粗末で、疑いの眼を向けたいところなのだが、
その答えはまたもやアキラが2秒で見つけてきた。

倉庫の様々な機能(空調や自動扉等)を制御するノードには設置カメラによるモニターも含まれていて、
それを掌握したハッカーにとっては中身は丸見え同然か、それ以上だった。

倉庫は30メートル四方ほどの大きさの2階建てで、1階部分にはトラックがそのまま入るほどの高さがあった。
見張り付きでトラックが横付されている道路側の壁は一面シャッターで区切られていて、そこから倉庫の半分ほどまでは直接トラックが乗り付けられる形になっている。
その15×30程のスペースにはギャングメンバーらしいチンピラがが4名、倉庫を真ん中で仕切る壁よりにたむろしており、その内3名は短機で武装していた。
また、短機をマウントした中型の戦闘ドローン、ニッサン・ドーベルマンが2体。犬型のバイオドローンが1体、扉の方面を警戒中。
二階は8×8程の一部屋のみで、(道路面を南側とすると)道路側の、東の橋にある階段で階下とつながっており、
どうやらモニタールームになっているらしく、チンピラが一人、画面を見つめ座っていた。

一階部に置かれたコンテナ―目的の物と思われる大きさのもの―は開け放たれており、
倉庫の、道路側にいる我々から見たら奥に当たるスペースに、今回の依頼の対象である"中身"、
いや、解き放たれた今では"元中身"となったソレは、いた。
ツールボックス

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