「おい今月のmarisaコンテストの大賞はもう決まったのか?」
「はい、部長。これなんてどうでしょう?」
「え~と『永遠亭に拉致られて人体実験。』?
 随分ありきたりじゃないか。」

「でもmarisaの対応が凄かったんですよ。見てください。」
「ん?凄いじゃないか!脱出するなんて。marisaも頑張ったな!」
「ええ。でも実験のせいで知らぬうちに姿は変わり果てていたんです。
 博麗神社に逃げ込むも、化け物と間違えられ親友に殺されると・・・」

「一回助かったと思わせて、どんでん返しなのがいいな!
 死ぬ間際に鏡で自分の姿に気付く所も凄くいい。
 これで決まりだな。」






株式会社ZUNTENDO。世界的なゲームメーカーである。
進化の袋小路に達してた既存路線を捨て、新たなゲームを模索している。
そこで作られたのが、オンライン型少女シミュレーションゲーム『marisa』である。
所謂サウンドノベル型のゲームであるが、このゲームの革新的なところは、
『プレイヤーが神となって主人公の運命を操れる』ことである。

舞台は架空の世界、幻想郷。
妖怪変化が蹂躙跋扈し、人の命は現代社会より遥かに軽いという世界観だ。
だが、必ずしも地獄のような殺伐とした世界ではない。
妖怪と人間のパワーバランスは上手く保たれてるし、互いに交流を持つ事だってある。

主人公はそんな世界に住む少女、霧雨魔理沙である。
男勝りのお転婆な性格ながら、少女らしい一面も兼ね備えている。
彼女の友人は巫女の霊夢、魔法使いのアリス、パチュリー、メイドの咲夜など。
『レミリア』とは、紅魔館の館主である吸血鬼。
いつも紅魔館に忍び込んでは悪さをする魔理沙には業を煮やしている。



このゲームの目的は、魔理沙を災難に導き、その反応を見守ることである。
まずプレイヤーは魔理沙の周りに起きる出来事を入力する。
例えば、『アリスが家にやってくる』『散歩中、雨に降られる』などである。
それは事細かに設定してもいいし、
基本的なところだけ決めて後は成り行きに任せてもいい。
とにかく誰であろうと、自然現象であろうと、思いのままに操作できる。

ただし、大事なルールは『魔理沙の行動は操作出来ない』ことだ。
例えばアリスが家にやってきても『お茶を出してやる』と命令することは出来ないし、
雨が降ってきても『雨宿りできる場所を探す』と操作することも出来ない。
ならば、各々の状況下での魔理沙の行動は誰が決めるのか・・・?
それが超高速演算スーパーコンピュータ『marisa』だ。

プレイヤーが設定したシナリオはネットワークを通じてZUNTENDO本社に送られる。
本社サーバーに鎮座する『marisa』が無数の魔理沙達の行動をシミュレートするのだ。
そうして出来た物語が文章になり、プレイヤー側に返されるのだ。

またプレイヤーは任意で『marisaコンテスト』への投稿が出来る。
練りに練った自慢の設定、または魔理沙が取った意外な行動・・・
これは、と思う作品がZUNTENDO本社へ送られる。
その中から選りすぐりの作品が全てのプレイヤーに公開され、共有される。
作る楽しみが好評でネット上でも大いに話題を呼んだ。



では実際に、上で挙げた永遠亭に拉致される例を見てみよう。
始めに投稿者が設定したのは以下のようなことだ。
『永遠亭の勢力が魔理沙をさらいにくる。』
『魔理沙をさらった永琳は、彼女にあらゆる人体実験を施す。』
『妹紅は真相を知っているが、口封じされている。』
『霊夢を始めとした友人達は誰も助けてくれない。』

まず、最初と2番目の項目について・・・
予定通り永遠亭の八意永琳が因幡達を率いて霧雨宅に強襲をかけた。
この時、魔理沙が抵抗し逃げ切る可能性もゼロではなかった。
もしそうなれば、その時点でこのストーリーは終了していただろう。
しかし魔理沙はあえなく捕まり、滞りなく人体実験される運びとなった。

3番目の項目について・・・
妹紅が物語に絡むような展開にならなかったので意味がなかった。
これをどうしても生かしたいなら
『妹紅が魔理沙の前に現れる』など入力すれば良かっただろう。

4番目の項目について・・・
実際に誰も助けに来てくれなかったが、それだけではない。
霊夢に惨殺されるラストも、『助けてくれない』の一つである。

また、見ての通り魔理沙が逃げ出すことなど何も書いていない。
これは逃げ出そうとする魔理沙の意志がもたらした結果だ。
それは魔理沙の行動が制御出来ないが故のイレギュラー。
魔理沙の予想以上の足掻きがありふれた物語に彩りを加えた。

ただ、勿論これはあくまで成功例である。
魔理沙が実験中に死ぬ可能性や、そもそも最初の強襲で倒れる可能性すらあった。
先程述べたように魔理沙が捕まらないこともあるし、
実験で姿は変わらず、かつ博麗神社ではなく人里あたりに逃げ込んで、
救助されるハッピーエンドだってある。

つまりはこのゲームは運の要素が強い。
魔理沙の努力や気紛れ次第でどうにでもなるのだ。
あえて一つコツがあるとすれば、魔理沙の希望を絶やさないこと。
魔理沙が自殺してしまうのは初心者にありがちなミスだ。



それにしてもこんな複雑な処理を、それも極めて大量に同時処理する
スーパーコンピュータ『marisa』とは一体何であろう?

『marisa』は魔理沙の行動を処理する部分と、
それ以外の人物や自然現象を処理する部分に分けられている。
後者は普通のスーパーコンピュータだ。
送信されてきた設定に従い、アルゴリズムによって処理される。
この部分は基本的に従来型のゲームのノウハウによって動いている。

しかし、前者---
プレイヤーが唯一操作出来ない、このゲームの最大の魅力である魔理沙自身の意志。
それを司るのはただのコンピュータには到底不可能だ。
魔理沙は自分で考え、行動しなければいけないのだから・・・



「どうだ?marisaの容態は?」
「実に良好ですよ。このままなら余裕で100歳まで長生きできますね。」
ZUNTENDO本社サーバ室。
普通のサーバ室には絶対にある筈のないものが、そこにあった。

ピコーンピコーン
立ち並ぶサーバの中で、金髪ロングの少女がベットに横たわっている。
人工呼吸器や点滴を付けられ、頭からは電極が伸びていた。
そう、これこそが超高速演算スーパーコンピュータ『marisa』なのだ。

『霧雨魔理沙』とは彼女がかつて人間だった頃の名前だ。
幼い頃から虐待を受けていた彼女は、万引きの常習犯だった。
ある日、いつものコンビニで万引きをしたところをGメンに見つかった。
隙を突いて店から逃亡したが、出てすぐの道路でトラックに撥ねられた。
二度と目覚めない体になったのを、法人ZUNTENDOが養子に向かい入れたのだ。

ゲームクリエイター達は彼女の脳髄に電極を取り付け、サーバに繋いだ。
ゲームのキャラクターに生きた魂を籠める為に。
もう彼女は人間ではなくなっていた。



「で、新しい方はどうよ?」
「sanaeの調子もいいですよ。システム障害も殆どないですし。」
『sanae』とはゲーム『marisa』の大ヒットを受けて開発されたシリーズ2作目、
及びその為に新たに設置された超高速演算スーパーコンピュータのことである。

元々妄想癖の強い内向的な少女だった彼女は、虐めを苦に自殺未遂。
一命は取り留めたものの、やはり二度と目覚めない体になった。
現実世界でも虐めにあっていたこともあり、ZUNTENDOが目を付けたのだ。
彼女は幻想郷の風祝『東風谷早苗』として主人公に抜擢された。
『早苗』から『sanae』に変わった今でも、相変わらず虐められ続けている。

現在は、『marisa』と『sanae』を繋いで同じ世界に共存させる計画が進行中だ。
たった一人のイレギュラーで物語は大きく変わる。
それが二人になれば、どれほどの相乗効果が期待出来るだろうか?
開発者達の夢は尽きない。



「おや?marisaが泣いてますよ?」
眠れるmarisaの頬を一筋の涙が伝う。
「よっぽどエグい目に遭ってるんだな。どれどれ・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・排水口行きだな、こりゃ。」
「そうっすね。」

排水口とは、レーティングが施された成人以上専用サーバのことである。
○○○として何本もの○○○を○○○まれ、全身○○○○○になるといったエロから
レミリアと咲夜に遊び半分に○○され○を○○られるといったグロが取り扱われる。






ついに今日、ZUNTENDOからmarisaコンテストの賞品が届いた。
まさかあんな適当な設定であそこまで面白くなるとは予想だにしなかった。
俺は届いた小包を乱暴に開け、中身を取り出す。
そこにはずっと欲しかったミニ魔理沙人形(アリス印付き)が入っていた。

「ひゃっほぅぅぅ!!!やったぜ!!」
つい歓喜の声を上げてしまう俺。
この人形は無線で本物のmarisaと繋がっている。
つまり、俺はこれから魔理沙と一緒に暮らすんだ。



え?・・・どう遊ぶかって?決まってるだろ。
「オラァ!!」ゴス!!
ミニ魔理沙人形の腹を思いっきり殴りつける。
「ごはっ!!ごほっ!!痛っ!!」
人形から魔理沙の声が聞こえてきた。

俺は人形を床に叩きつけ、何度も足で踏む踏む踏む。
「ひぃ!!やめ!!お願い!!!やめて・・・くださ・・・」
正に本物の魔理沙を足蹴にしてるような感覚がたまらない。
しかも品質管理に定評があるZUNTENDOなので、簡単には壊れない。

「次はミニ早苗を狙うぜ!」
俺はゲーム機の電源を入れた。





  • 欲しいなww -- 名無しさん (2010-04-09 12:23:09)
  • 人形虐めたいけどもし本当に手に入ったら普通に可愛がってしまいそうだ
    -- 名無しさん (2010-04-09 16:27:07)
  • 精神的なダメージを狙いたいな
    魔理沙以外の全員が、突然魔理沙に異常なほど親しく接しはじめる
    けど全員魔理沙を心底嫌悪してて、魔理沙に見られていないときは延々魔理沙の陰口を言ってるとかで -- 名無しさん (2010-04-09 22:55:22)
  • ZUNTENDOうけたw -- 名無しさん (2010-04-10 00:11:02)
  • アリス人形欲しいなぁ -- 名無しさん (2010-04-10 00:47:40)
  • 早苗人形なんてものを手にしてしまったら
    僕は愛でて愛でて一緒に買い物なんかに行ったりして
    近所から変人扱いされてそれでも早苗さんがいれば平気だよ
    愛してるよ早苗さんちゅっちゅ -- 名無しさん (2010-11-04 18:53:14)
  • 霖之助人形が欲しい -- 名無しさん (2011-08-31 10:18:21)
  • これやってみたい -- zxcv (2013-02-02 21:57:32)
  • reimuも出せるなw -- 名無しさん (2013-02-04 00:51:24)
  • youmuもしくはtyenも期待 -- 名無しさん (2014-07-02 02:00:26)
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最終更新:2014年07月02日 02:00